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湯口 貴史*; 小北 康弘; 加藤 丈典*; 横田 倫太郎*; 笹尾 英嗣; 西山 忠男*
Journal of Asian Earth Sciences, 192, p.104289_1 - 104289_16, 2020/05
被引用回数:6 パーセンタイル:31.11(Geosciences, Multidisciplinary)本研究は、花崗岩質マグマから晶出した石英を用いて、石英の生成メカニズムや結晶化温度からマグマ溜りの冷却プロセスに関する熱的変遷を論じた。本研究では、中部日本の土岐花崗岩体に産出する石英に着目し、(1)石英粒子の形状や産状の情報、(2)石英の結晶内部構造を反映するカソードルミネッセンス(CL)パターン、及び(3)石英中のチタン濃度から算出した結晶化温度を取得することで、石英の連続的な成長様式に関する新知見を得た。土岐花崗岩体の石英は、複数のCLパターンに区分できる。それらのCLパターンの相違は、メルト(マグマ)の温度やメルト中のチタンの拡散性に依存する。石英のCLパターンと結晶化温度条件から、土岐花崗岩体を形成したマグマの冷却温度条件を詳細に区分した。本研究により、マグマ溜りの詳細な熱史の解明に石英を用いたアプローチの有用性が示された。
柴田 大受; 水田 直紀; 角田 淳弥; 坂場 成昭; 大崎 貴士*; 加藤 秀樹*; 井澤 祥一*; 武藤 剛範*; Gizatulin, S.*; Shaimerdenov, A.*; et al.
Proceedings of 9th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2018) (USB Flash Drive), 7 Pages, 2018/10
高温ガス炉(HTGR)の炉内構造物には黒鉛が用いられている。空気侵入事故による黒鉛構造物の酸化は、安全性の観点から重要な課題である。黒鉛表面へのSiC被覆は、黒鉛の耐酸性を向上させる有望な技術である。しかし、炉内構造物への適用については、この材料の高温、中性子照射に対する健全性を確認することが重要である。原子力機構と日本の黒鉛メーカは耐酸化黒鉛の研究開発を進めてきた。原子力機構とカザフスタンINPとは、ISTCパートナープロジェクトの枠組みを利用して耐酸化黒鉛に対する中性子照射効果について調べた。本報は、SiC被覆を施した耐酸化黒鉛への中性子照射後試験の結果について述べるものである。耐酸化黒鉛のうち、ある一つの銘柄については照射後の酸化試験において優れた特性を示した。
水田 直紀; 角田 淳弥; 柴田 大受; 大崎 貴士*; 加藤 秀樹*; 井澤 祥一*; 武藤 剛範*; Gizatulin, S.*; 坂場 成昭
炭素材料科学の進展; 日本学術振興会第117委員会七十周年記念誌, p.161 - 166, 2018/10
原子力機構及び日本の黒鉛メーカ4社(東洋炭素,イビデン,東海カーボン,新日本テクノカーボン)は、高温ガス炉の炉内構造材料に用いる黒鉛の耐酸化性を向上させることを目的に、CVD法によりSiCコーティングを施した耐酸化黒鉛の研究を進めている。本報では、国際科学技術センター(ISTC)のパートナープロジェクトとして実施した、カザフスタン共和国の核物理研究所(INP)のWWR-K炉による耐酸化黒鉛の中性子照射試験について紹介する。照射試験に先立ち、各試験片に対して未照射条件での酸化試験を行った結果、耐酸化試験片全てにおいて、CVD法により施されたSiCコーティングが十分な耐酸化性を示すことがわかった。中性子照射試験は終了しており、今後はWWR-Kホットラボでの炉外酸化試験を行う計画である。
柴田 大受; 角田 淳弥; 坂場 成昭; 大崎 貴士*; 加藤 秀樹*; 井澤 祥一*; 武藤 剛範*; Gizatulin, S.*; Shaimerdenov, A.*; Dyussambayev, D.*; et al.
Proceedings of 8th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2016) (CD-ROM), p.567 - 571, 2016/11
高温ガス炉(HTGR)に用いられている黒鉛について、さらなる安全裕度を確保するため、耐酸化性を向上させることが望ましい。黒鉛表面へのSiC被覆は、そのための候補技術である。原子力機構と日本の黒鉛メーカ4社:東洋炭素,イビデン,東海カーボン,新日本テクノカーボンとで、耐酸化黒鉛を炉内黒鉛構造物に適用する研究を進めている。国際科学技術センター(ISTC)のパートナープロジェクトとして、カザフスタン共和国の核物理研究所(INP)のWWR-K炉により、照射キャプセル2体により耐酸化黒鉛に対する中性子照射試験を実施した。WWR-K炉で、照射温度1473Kにおける10サイクル200日間の照射試験を完了した。最大の高速中性子(E0.18MeV)照射量は、中央の照射孔に装荷したキャプセルで1.2
10
/m
、炉側部の照射孔に装荷したキャプセルで4.2
10
/m
であった。照射後の試験片について、寸法、重量測定、光学顕微鏡による外観観察を実施した。今後、炉外での酸化試験を行う計画である。
湯口 貴史*; 岩野 英樹*; 加藤 丈典*; 坂田 周平*; 服部 健太郎*; 平田 岳史*; 末岡 茂; 檀原 徹*; 石橋 正祐紀; 笹尾 英嗣; et al.
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 111(1), p.9 - 34, 2016/02
被引用回数:19 パーセンタイル:49.98(Mineralogy)花崗岩体の形成・発達に関する熱進化の解明は、大陸地殻の発達・進化を考える上で、有用な知見をもたらすことができる。本研究ではジルコンに着目し、(1)カソードルミネッセンス像観察に基づくジルコンの内部構造の分類: LLC (low luminescence core)/ OZ (oscillatory zonation)、(2)Ti-in-zircon温度計より内部構造ごとの結晶化温度の決定、(3)内部構造ごとのU-Pb年代の決定を実施し、ジルコンの成長は2つのイベントを経ることを見出した。
角田 淳弥; 柴田 大受; 坂場 成昭; 大崎 弘貴*; 加藤 秀樹*; 藤塚 公仁弘*; 武藤 剛範*; Gizatulin, S.*; Shaimerdenov, A.*; Dyussambayev, D.*; et al.
Proceedings of 7th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2014) (USB Flash Drive), 7 Pages, 2014/10
黒鉛は、黒鉛減速・ヘリウム冷却炉である高温ガス炉(HTGR)の炉内構造物として使用される。HTGRの空気侵入事故時には、TRISO被覆燃料粒子の表面にSiOが形成され、SiCの酸化は進行せず、核分裂生成物は燃料粒子内に保持される。近年提案された安全性の新しい概念を導入した本質的安全高温ガス炉の安全性を究極に高めるため、耐酸化燃料を炉内黒鉛構造物使用に使用することで、TRISO被覆燃料粒子及び燃料コンパクトの破損を防ぐことが期待される。黒鉛の表面にSiCを被覆した黒鉛は、耐酸化黒鉛の候補材の一つであり、原子力機構と黒鉛製造メーカ4社は、耐酸化黒鉛開発の共同研究を立ち上げた。また、国際科学技術センターパートナープロジェクトの下、原子力機構とカザフスタン核物理研究所は、耐酸化黒鉛に及ぼす照射の影響の研究を開始した。照射試験に使用する黒鉛を選定するため、耐酸化黒鉛の予備酸化試験を実施した。本報告は、耐酸化黒鉛の予備酸化試験の結果、照射目試験計画、照射試験及び照射後試験計画について述べる。
柴田 大受; 角田 淳弥; 永田 寛; 斎藤 隆; 土谷 邦彦; 坂場 成昭; 大崎 弘貴*; 加藤 秀樹*; 藤塚 公仁弘*; 武藤 剛範*; et al.
no journal, ,
高温ガス炉(HTGR)における空気侵入事故では、被覆粒子燃料の機械的な損傷を避けるため、酸化に対して炉内の黒鉛構造物の形状を維持することが重要である。高温ガス炉のさらなる安全性向上のためには、SiCで表面を被覆した耐酸化黒鉛の開発が重要であり、日本の主要な黒鉛メーカ4社と共同で、耐酸化黒鉛の開発を進めている。日本の技術である耐酸化黒鉛について早期に高温・中性子照射環境下での成立性を明らかにするため、HTGR開発に大きな興味を持っているカザフスタンと協力し、高温での照射試験が可能な核物理研究所(INP)のWWR-K炉を用いた照射試験計画を進めている。照射温度は1200Cを目標とし、照射試験は2014年4月から開始する予定である。カザフスタンでは、将来にHTGRを建設する場合に、本研究で得られた知見を設計に反映することが可能となる。
加藤 あすか*; 加藤 丈典*; 小北 康弘; 湯口 貴史*; 笹尾 英嗣
no journal, ,
本研究では、北上山地の久喜花崗岩体の石英の結晶化プロセスを解明することを目的として、石英のカソードルミネッセンス(以下、CL)パターンとチタン濃度、鏡下観察による形状と産状の情報から石英の結晶化プロセスを論じた。CL像の解析結果、CLパターンとして明暗の領域からなる層状構造を持つもの、輝度の明暗が不規則に分布するもの、輝度の明暗が均質に分布するものが認められた。チタン濃度定量の結果、チタン濃度は12211ppmから357
11ppmの定量値を得た。チタン活動度を1とし、Wark and Watson(2006)の地質温度計を用いて結晶化温度の計算を行うと772
24から927
20
Cの広い結晶化温度を得た。また、明暗の領域が層状構造をもつゾーニングの粒子においてCL像の明るい領域ではチタン濃度が高く、暗い領域ではチタン濃度が低い傾向を有する。この傾向はCLパターンが異なっていても同じ傾向を示した。これは、CL像の輝度の変化が石英の結晶化成長に伴ってメルト中から結晶に取り込まれるチタン濃度の変化を反映することを示す。また、広い結晶化温度幅を有することから、石英はマグマが固化する温度(ソリダス)付近から高温までの広い温度条件で結晶化することを示唆する。
小北 康弘; 加藤 丈典*; 湯口 貴史*
no journal, ,
珪長質マグマの地殻への貫入から定置、固化の間に生じる種々のマグマ溜りプロセスは、石英などの初生鉱物の結晶成長の履歴として記録され得る。石英の結晶成長プロセスは、そのカソードルミネッセンス(以下、CL)像観察やチタン濃度定量を行うことで明らかにすることが可能となりつつある。しかし石英中にはチタンの他にも微量に含まれる元素が知られており、その含有量とCLパターンとの関係や、結晶成長の様式との関連については明らかにされていない。そこで本研究では、石英中のチタン濃度・アルミニウム濃度とCLパターンとの関係を明らかにすることを目的として、マグマ起源の石英についてCL像観察とチタン濃度・アルミニウム濃度定量を実施した。また、本研究では電子線マイクロアナライザを用いて石英中のチタン濃度とアルミニウム濃度を同時に定量する技術の構築を目指した。北上山地、遠野複合深成岩体(以下、遠野岩体)の石英に対してCL像観察を行った結果、多くの自形・半自形粒子では、結晶成長様式を推定可能なゾーニング(パターンA)が、他形粒子では、粒子内の局所的な領域のみ高輝度なCLを有する傾向(パターンB)が認められた。遠野岩体の石英のアルミニウム濃度は、ほとんどの分析点で検出限界以下となり、CLとアルミニウム濃度に相関が無いと判断できる。チタン濃度はCLパターンA、BともにCLの輝度に対応したチタン濃度が得られた。チタン濃度から地質温度計を用いて石英の結晶化温度を導出したところ、サンプル(岩石採取地点)ごとの傾向の相違が認められることから、得られた温度に基づいてマグマ溜り内の温度の不均質性を議論可能である。
湯口 貴史*; 加藤 丈典*; 小北 康弘; 渡邊 みのり*; 加藤 あすか*; 伊藤 大智*; 横山 立憲; 坂田 周平*; 大野 剛*
no journal, ,
石英は珪長質深成岩中に普遍的に含有される鉱物である。このため、石英の結晶化プロセス(結晶の内部構造や温度条件などの結晶化の際の情報)は、花崗岩質マグマの貫入・定置に関するマグマ溜りプロセスの情報を保存する。本研究では宮崎県の大崩山花崗岩体の石英の結晶化プロセスを解明することを目的とする。1つの珪長質の深成岩体において、その岩体内部の異なる岩相においても石英はしばしば共通して産出する。本研究で対象とする大崩山花崗岩体は鉛直方向において上方の珪長質の黒雲母花崗岩から、ホルンブレンド黒雲母花崗岩を経て、下方の苦鉄質のホルンブレンド黒雲母花崗閃緑岩へと変化するが、そのいずれでも石英は観察される。このため、複数の岩相の石英から温度条件などの結晶化の際の情報を取得し、結晶化プロセスを解明することは、深成岩体全体のマグマ溜りプロセスの把握へと発展可能である。本研究では石英の結晶化プロセスの解明に、カソードルミネッセンス(CL)像およびチタン濃度を組み合わせる方法を用いる。本研究は、1)薄片による石英結晶の観察、2)分離した石英の複数断面による観察の2つのアプローチにより、マグマ溜りの中の石英結晶の石英粒の三次元的な内部構造と成長特性を明らかにした。薄片中のジルコンを包有する石英は、ジルコンの結晶化に続いて石英の結晶化が生じたことを示す。このことは、冷却中のマグマ溜りの中で石英の結晶化温度はジルコンの結晶化温度よりも低温であるという制約を与える。このような岩石学的な制約により、適切な地質温度計の採用が可能となり、正確な石英の結晶化温度の決定が可能となった。分離した石英結晶の複数断面を用いた観察により、結晶粒子内の三次元内部構造と真の結晶化の開始地点が取得できる。花崗岩体内の岩相間のCL特性や結晶化温度の違いは、時空間的なマグマ溜りプロセスの解明に貢献する。
小北 康弘; 加藤 丈典*; 湯口 貴史*
no journal, ,
花崗岩を含む深成岩体は、地下深部でマグマ溜りが徐冷することにより形成される。珪長質な深成岩は大陸地殻の主要な構成岩石であり、その形成プロセスの解明は、大陸地殻の発達・進化の解明に寄与する。また、深成岩体冷却の温度・時間履歴は、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業におけるサイト選定や安全評価のための有用な知見となりうる。深成岩体に産出する石英は、そのチタン濃度から結晶化温度を推定することができ、深成岩体冷却の物理条件の議論に有用である。本研究では、深成岩体の定置から固化に至る冷却プロセスの温度条件を制約することを目的とし、東北日本、遠野複合深成岩体の石英について結晶化温度の推定を行った。遠野岩体は、岩体中央部と周辺部で形成環境の違いが指摘されている。石英中のTi濃度は、中心部で最大28711ppm、周辺部で最大472
14ppmとなった。濃度の最低値は、いずれの領域においても検出限界(15ppm)以下となった。Ti濃度の分布幅を石英の結晶化温度の幅と読み替えると、石英が結晶化した温度の幅は、岩相ごとに異なるといえる。このことは、石英が結晶化に要した時間の幅、つまりマグマの冷却時間が各岩相で異なると解釈できる。なお、本研究は発表者が大学在籍時に実施した内容である。
小北 康弘; 湯口 貴史*; 加藤 丈典*; 横田 倫太郎*; 笹尾 英嗣; 西山 忠男*
no journal, ,
本研究では、中部日本の土岐花崗岩体を対象とし、(1)石英の岩石記載と(2)CL観察、(3)チタン濃度定量分析を組み合わせて議論し、石英の結晶化プロセスについて言及を行う。具体的には、(1)石英の岩石記載では、結晶の外形や産状に着目し、(2)CL観察では、ゾーニングの有無や、ゾーニングの様態に応じてパターン分類を行った。(3)チタン濃度定量分析では、名古屋大学のEPMAを用いて高精度のチタン定量分析を行い、TitaniQ温度計を用いて結晶化温度を決定した。分析の際には、結晶の形状や産状、CLパターンを考慮しつつ分析点を決定した。その結果、石英のCLパターンはオシラトリーゾーニングを含む複数のパターンに区分でき、それらは形状や産状そして結晶化温度と関連を持つことが明らかになった。これらの結果から、石英が冷却する花崗岩質マグマ中で、結晶化プロセスの連続的なイベントを持つことを論じる。また中部日本の土岐花崗岩体は3つの岩相を有するが、石英は3つの岩相で共通して観察される。このため3岩相を通じて産出する石英の結晶化プロセスから、土岐花崗岩体の形成プロセスに関する考察を行う。
加藤 凛乃*; 肥田 剛典*; 堤 英明*; 高田 毅士
no journal, ,
原子力施設のより現実的な地震応答解析モデルの構築を目的に、実地震時における強震観測記録を最大限に活用してわれわれの開発したシステム同定手法を利用して、モデル構築を行い、その妥当性検証も行った。
湯口 貴史*; 岩野 英樹*; 加藤 丈典*; 坂田 周平*; 服部 健太郎*; 平田 岳史*; 末岡 茂; 檀原 徹*; 石橋 正祐紀; 笹尾 英嗣; et al.
no journal, ,
花崗岩体の形成・発達に関する熱進化の解明は、大陸地殻の発達・進化を考える上で、有用な知見をもたらすことができる。本研究ではジルコンに着目し、(1)カソードルミネッセンス像観察に基づくジルコンの内部構造の分類、(2)Ti-in-zircon温度計より内部構造ごとの結晶化温度の決定、(3)内部構造ごとのU-Pb年代の決定を実施し、ジルコンの成長は4つのイベントを経ることを見出した。得られたデータに基づいて土岐花崗岩体の貫入・定置から結晶固化へといたる熱進化について考察を行った。
奈良 郁子*; 山崎 慎一*; 渡邊 隆広; 土屋 範芳*; 宮原 ひろ子*; 加藤 丈典*; 箕浦 幸治*; 掛川 武*
no journal, ,
地質試料や湖沼堆積物試料を用いて過去の環境変動を推定するためには、物質の循環と供給源を把握する必要がある。本研究ではロシアのバイカル湖から採取した堆積物の無機化学分析を実施した。特に、ルビジウム、ストロンチウムおよびカリウムの相対量から、バイカル湖の集水域での冬季東アジアモンスーンによる水循環変動、化学風化、物質循環、および物質の供給源の推定を試みた。本研究で得られたバイカル湖のルビジウム/ストロンチウム比の変動は、既報である中国のレス堆積物から推定されている冬季東アジアモンスーンの変動とよく一致した。したがって、湖沼堆積物中のルビジウム/ストロンチウム比は過去の冬季東アジアモンスーン変動の指標となることが示唆された。
小北 康弘; 加藤 丈典*; 湯口 貴史*
no journal, ,
マグマ溜りの冷却に伴って生じる結晶質岩内部の割れ目は、地下水流動や物質移行の経路となり、その分布は、結晶質岩体の温度時間履歴(冷却プロセス)と密接な関連がある。珪長質な結晶質岩体において、複数の岩相に共通して石英が産出する場合、岩体の冷却プロセスの推定には、石英に着目する手法が有効である。石英の結晶化温度は、石英に含有されるチタン濃度を基に推定可能である。本研究では、結晶質岩体の冷却温度条件を制約することを目的とし、遠野複合深成岩体に産出する石英のチタン濃度の定量や周辺のチタン含有鉱物の記載を行った。遠野岩体は、含有鉱物や化学組成の違いにより、中心部相, 主岩相, 周辺部相の3岩相に区分されている。それぞれの岩相に産出する石英のチタン濃度をEPMAにより定量した結果、主岩相で最も高い値を示した。この結果は、遠野岩体の既存の形成モデルとは異なる解釈が必要となる。Ti濃度定量結果の妥当性を評価するために、石英周辺の鉱物を観察したところ、いずれの岩相でも、TiOを主成分とする鉱物(ルチル)は認められなかった。岩石薄片のX線分析顕微鏡による測定を行った結果、各試料の中にTiを含む領域が認められた。Ti強度には岩相間で相違があり、中心部相で699cps、主岩相で1631cps、周辺部相で2048cpsとなった。石英の周辺にルチルが存在しない場合、石英の結晶化温度を算出するためには、イルメナイトやチタナイト等のTi含有鉱物の存在を検討する必要がある。なお、本研究は、発表者が大学在籍時に実施した内容に、原子力機構での分析結果を加えた内容である。また、本研究で用いた岩石試料は、発表者が大学在籍時に採取した試料である。
山嵜 勇人*; 加藤 丈典*; 小北 康弘; 湯口 貴史*
no journal, ,
黒部川花崗岩はジルコンのU-Pb年代が10-0.8Maであり、地表に露出する花崗岩の中では世界で最も若い岩体であるため(Ito et al., 2013)、年代学的な研究が盛んに行われてきた。また、黒部川花崗岩の祖母谷温泉付近では、優白質岩と優黒質岩が非常に狭い範囲で混在する領域が認められる。本研究の目的は、この優黒質岩と優白質岩の混在領域における岩石学的情報を取得し、それらの形成プロセスを解明する事である。本研究は両岩相の主要鉱物である石英に着目し、カソードルミネッセンス(CL)像から得られる内部構造とチタン(Ti)濃度の関係から、優黒質岩と優白質岩の形成プロセスの相違を論じる。石英のCL像取得は山形大学のSEM-CL (JEOL IT100A + Gatan mini CL)を用いた。化学分析には名古屋大学宇宙地球環境研究所のEPMA (JEOL JCXA-733)を使用した。分析条件はYuguchi et al. (2020)に従った。優黒質岩と優白質岩の石英のCLパターンの特徴として、累帯構造がない点が挙げられる。一方、多くのCLパターンは石英が複数のサブグレインから構成されることを示唆する。この粒子中ではCL像の輝度の明暗とTi濃度が関連せず、CLパターンとTi濃度の関連を示したYuguchi et al. (2020)と異なる結果となった。Ti濃度の最大値は、優黒質岩が4411ppm、優白質岩が116
11ppmであり、優黒質岩と優白質岩の石英のTi濃度の含有量には異なった特徴を持つ。これらをWark and Watson (2006)のTitaniQ地質温度計に適用すると、優黒質岩は728
116
C、優白質岩は869
21
Cの温度条件が得られた。今後はデータの拡充により両岩相の生成温度の相違を検証する。
渡邊 みのり*; 加藤 丈典*; 小北 康弘; 湯口 貴史*
no journal, ,
石英は珪長質な深成岩に普遍的に産出する鉱物であり、石英の結晶化プロセスの解明はマグマ溜まりの冷却過程の解明に寄与する。本研究ではカソードルミネッセンス(CL)パターンと微量に含有されるチタン(Ti)濃度の情報から、石英の結晶化プロセスを論じる。研究対象は宮崎県北部の大崩山花崗岩体である。大崩山花崗岩から採取した試料を観察・分析し、CL像およびTi濃度を取得した。石英のCL像取得は山形大学のSEM-CL(JEOL IT100A+Gatan mini CL)を用い、石英中のTi濃度定量は名古屋大学宇宙地球環境研究所のEPMA(JEOL JCXA-733)を用いた。Ti濃度定量の分析条件は、4つの分光結晶(PET)をTiの検出に割り当て、加速電圧15kV, 照射電流60nA, ビーム径20m、1回の測定時間を200s(ピーク: 100s, バックグラウンド: 50sずつ)とし、同一地点で8回(計1,600s)カウントした値を積算することにより1点の定量値を得た。大崩山花崗岩体の石英のCL観察の結果、オシラトリーゾーニングなどの累帯構造を持つ内部構造がしばしば観察される。石英のTi濃度は17
11ppmから382
10ppmの幅を有し、全点の加重平均は93
11ppm(N=148)となった。TiO
の活動度を1と仮定し、TitaniQ地質温度計(Wark and Watson, 2006)を適用すると、チタン濃度に対応して最高温度が939
20
C、最低温度が556
68
Cと導出された。コアのCL低輝度域において比較的高いTi濃度を持つのに対して、リム部の高輝度域でも比較的高いTi濃度を示す。つまり、CLの輝度の明暗とTi濃度が関連しない可能性を示しており、CLパターンとTi濃度の関連を示したYuguchi et al. (2020)と異なる結果となった。