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小伊藤 優子
海外事情, 73(3), p.47 - 62, 2025/05
近年、地球温暖化対策の観点から原子力発電が再評価されているが、ロシアのウクライナ侵攻により地政学的リスクが顕在化した。原子力発電に必要な濃縮ウラン燃料の供給不安が課題となり、原子力サプライチェーンの再構築が急務となっている。また、中国は新型炉の研究開発と建設を急速に進めており、国際的な原子力市場での影響力を拡大している。この状況は欧米諸国に危機感と競争意識を高め、エネルギー安全保障の観点から原子力開発への投資と支援制度の整備を加速させている。日本でも福島第一原子力発電所事故以降停滞していた原子力政策が再び動き出し、次世代革新炉の開発に向けた議論が本格化している。こうした国際的な潮流を踏まえて本稿では、米国と日本の原子力開発の動向を比較し、政策課題や制度的枠組みを整理し、政策的示唆を導くことを試みた。その結果、米国の原子力政策は技術開発から商業化までの各フェーズを、エネルギー安全保障の観点から原子力産業を再興するというビジョンで戦略的に接続し、包括的な支援体制を構築していることが明らかになった。一方、日本はカーボンニュートラルの方針のもとで技術開発・インフラ整備・規制への支援が断片的に行われているため、戦略的観点から原子力開発のあり方を再考する必要があるという示唆を得た。以上を踏まえて、日本の今後の原子力開発のあり方を問いかけるとともに、試論を述べる。
小伊藤 優子
核なき時代をデザインする; 国際政治・核不拡散・国際法からみた現実的プロセス, p.128 - 136, 2024/12
本論文は、JSPS科研費「安全保障を損なわない核軍縮」(21H00688)の研究成果の一部である。同研究事業では、核兵器を政治や軍事、国際人道法、科学技術など多角的な観点から総合的に評価するとともに、外務省の「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」による提言(2018年3月29日)のフォローアップを目指して核兵器のない時代に向けた政策や制度などを検討した。本論文は、NPTの成り立ちについて、条約の無期限延長が決定される前と後に分けて概観し、運用方法となっているコンセンサス方式に着目して核をめぐる秩序の形成に果たす役割を評価し、NPTの価値の再考を試みた。あわせて、脱炭素社会の実現に向けて原子力発電の価値が再評価される状況下において、日本が開発を進める次世代革新炉が、非大量破壊兵器地帯構想の実現に向けて貢献し得る可能性について試考した。
小伊藤 優子
日本原子力学会誌ATOMO
, 65(5), P. 298, 2023/05
東京電力福島第一原子力発電所事故(1F事故)から12年目を迎えようとしており、この間、原子力をめぐる状況は大きく変化した。本稿は、日本原子力学会誌における特集「1F事故を経てこれからなすべきことは何か、1F事故の何を次世代に伝えるか」に寄稿するものである。本稿では、1F事故を経て国民が原子力利用に対して消えない不安と疑問を抱き続けていること、また、日本をめぐる安全保障環境は対立と協調が絡み合う複雑な様相を呈していることを踏まえて、高速炉・新型炉等の次世代革新炉開発及びその担い手に求められることを論じている。あわせて、日本原子力学会に期待される役割を論じている。
小伊藤 優子
エネルギーレビュー, 42(4), P. 24, 2022/03
エネルギーは人々の営為に欠かせないものである。しかし、エネルギーをめぐる議論は従来、賛成と反対、利益と損益など、二項対立で整理されがちであった。カーボンニュートラルが宣言された今、新たなエネルギーシステムを創造すべく様々な政策の投入や投資が積極的に行われており、二項対立的な議論の整理を脱することができるのではないかと期待される。こうした状況を踏まえて、エネルギーについて考えたり語ることについて、問いかける。
小伊藤 優子
臨床政治研究, (10), p.1 - 23, 2019/12
本論文は、今後の高速炉開発に関する教訓を得るため、性能試験再開から炉内中継装置の落下トラブル、そして東京電力福島第一原子力発電所事故後に廃止措置が決定されるまでの政策過程について、原子力政策を牽引してきた内閣府と福井県の役割や論点の推移について、議会議事録及び公開資料を用いて史的展開を整理した。そして、国政レベルにおいては政権交代、県政レベルにおいては県知事と県議会の力の不均衡という政治的要因が、国と地方自治体の相関関係を硬直化させたことを明らかにした。以上を踏まえて、既存の政策決定構造下における行為主体の役割及び相互作用について基本的な相似性がある、国家安全保障をめぐる在日米軍基地の整理・統合に携わる行為主体の役割と比較した結果、高速炉開発に関する政策過程については、国政レベル及び県政レベルの政治的要因について調整機能を有するアクターの活動が重要であると考えられる。
小伊藤 優子
no journal, ,
本研究は、高速炉開発に関する政策決定構造の全容を明らかにすることを目指して、行政文書、議会議事録等の文献調査及び関係者へのインタビュー調査を実施し、行為主体間の相関関係に着目して政策過程を分析し、国家安全保障における高速炉開発の意義について考察する。本報では、高速増殖原型炉もんじゅを事例に、建設から廃止措置決定に至るまでの論点の推移を関係行為主体の相関関係に着目して分析した結果等について報告する。
小伊藤 優子
no journal, ,
本報告は、次世代核燃料サイクルとして高速炉サイクルを挙げて、プロコン議論により抽出した国際関係における論点((1)脅威の変化と核拡散抵抗性の評価、(2)SMRを用いた多国間燃料供給体制からの移行)を報告する。その上で、試論として実用化を促す政策オプションの可能性を示し、トークショップ参加者との意見交換を通して論点の洗い出し及び政策オプションの検討等を行う。※本トークショップは、JSPS科研費21H00688の助成を受けている。
大滝 明; 中村 博文; 小伊藤 優子; 佐藤 良樹*
no journal, ,
今後の核燃料サイクルで考慮すべき事項として、プルトニウムの適正な利用やMOX使用済燃料貯蔵量の増加が考えられる。これらの対策を具体化するため、高速炉サイクルを用いて解決する方策について検討し、核燃料サイクル諸量の見地より高速炉サイクル導入の効果を評価した。本報では、軽水炉マルチリサイクルの可能性、軽水炉と高速炉を併用した際の使用済MOX燃料貯蔵量の削減効果、地層処分施設の有効利用性等について報告する。
小伊藤 優子
no journal, ,
本報告では、高速増殖原型炉もんじゅの性能試験再開から廃止措置決定に至る過程について、(1)政権交代、(2)炉内中継装置の落下トラブル発生、(3)東京電力福島第一原子力発電所事故発生という3つの事象に着目し、議会議事録及び公開資料を用いて内閣府や福井県の役割及び論点の史的展開を考察した結果を中心に報告する。
小伊藤 優子
no journal, ,
東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故は、原子力利用に対する日本国民の関心を高めることになった。こうした状況で日本政府は、原子力への依存度を低減する方針を示し、2016年12月には高速増殖原型炉もんじゅ(以下、「もんじゅ」と略記)の廃止措置を決定した。日本の高速増殖炉は、アメリカを盟主とする西側諸国と協力しつつ進められてきた。特に、財政的事情から高速炉開発の中断及び施設の閉鎖を余儀なくされたイギリスは、「もんじゅ」を、自国の技術維持と核不拡散に資するプルトニウム管理技術を確立するためのプラントとみなしていた。本報告では、「もんじゅ」開発に携わってきた国内外の技術者へのオーラル・ヒストリーをもとに、日米関係において「もんじゅ」が担っていた役割を浮かび上がらせる。
小伊藤 優子
no journal, ,
高速増殖原型炉もんじゅ(以下、「もんじゅ」と略記)は、2010年5月に性能試験を再開した。同年8月に炉内中継装置が落下し、その原因究明と回復作業の途上で東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、福島事故)が発生し、新規制基準への対応に必要な時間的・経済的コストが重視された結果、廃止措置が決定された。この間、ステークホルダー各々が、エネルギー安全保障の観点から高速炉サイクル実用化における国産技術の重要性を認識していたにもかかわらず、高速炉開発の在り方について見直しが行われ、政策合意の再形成が図られた要因の一つとして、政策決定構造に変化が生じたことが挙げられる。本研究では特に、原子力政策の推進を主導してきた内閣府と地方自治体の論点及び役割に着目して政策決定構造の変化に伴う課題を抽出する。
中村 博文; 大滝 明; 大場 恭子; 向井田 恭子; 小伊藤 優子
no journal, ,
原子力機構は、もんじゅの残念な結果に対する反省の1つとして、社会との対話に不十分な点があったと認識した。現在の軽水炉発電は、再生可能エネルギーとともに、将来の脱炭素社会を担う実用段階の技術選択肢であり、更に高速炉などの第4世代炉はその代替と成り得る技術選択肢として開発を進めてきた。しかし、社会に新たな技術を導入するためには、地域社会や国民の新技術(高速炉・新型炉・核燃料サイクル)に対する認識が政策決定などに大きく影響を及ぼすと考える。そのため、平成30年度から新技術に対する社会の受容性に関する社会環境研究に着手したのでその構想を報告する。