Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
蓬田 匠; 秋山 大輔*; 大内 和希; 熊谷 友多; 東 晃太朗*; 北辻 章浩; 桐島 陽*; 河村 直己*; 高橋 嘉夫*
Inorganic Chemistry, 61(50), p.20206 - 20210, 2022/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Chemistry, Inorganic & Nuclear)近年、U(VI)が(IV)に還元される時の中間体や、長期安定性をもつU(V)化合物の特異的な物性に関する研究が注目されている。しかし、U(V)の電子状態を詳細に分析した例は少ない。本研究では、U(V)の化合物のFeUO中のU(V)の電子状態を高エネルギー分解能蛍光検出(HERFD)-X線吸収端微細構造分光法(XANES)によって調べた。X線発光分光器を用いて取得したFeUO
中のUのL
端HERFD-XANESスペクトルから、従来のXANESスペクトルにはないピーク分裂をはじめて観測することができた。理論計算によるXANESスペクトルのシミュレーションの結果、このピーク分裂が良く再現でき、6d軌道の分裂によるものであることが明らかになった。この発見により、環境中で従来検出が困難であったU(V)の検出が容易になると期待され、環境科学をはじめとした幅広い分野での応用が期待される。
秋山 大輔*; 日下 良二; 熊谷 友多; 中田 正美; 渡邉 雅之; 岡本 芳浩; 永井 崇之; 佐藤 修彰*; 桐島 陽*
Journal of Nuclear Materials, 568, p.153847_1 - 153847_10, 2022/09
被引用回数:1 パーセンタイル:68.2(Materials Science, Multidisciplinary)ウラン酸鉄,ウラン酸クロム、およびその固溶体を合成し、これらのウラン酸塩が異なる熱的安定性を示すメカニズムを研究した。熱的安定性を評価するため、ウラン酸塩試料の熱重量分析を実施した結果、ウラン酸クロムの分解温度(約1250C)に対してウラン酸鉄は低温(約800
C)で分解するが、クロムを含む固溶体では熱分解に対する安定性が高まることが分かった。この熱的安定性と結晶構造との関係性を調べるため、エックス線結晶構造解析,エックス線吸収微細構造測定,メスバウアー分光測定,ラマン分光分析による詳細な結晶構造と物性の評価を行ったが、本研究で用いたウラン酸塩試料の間に明瞭な差異は観測されなかった。そのため、熱的安定性の違いは結晶構造に起因するものではなく、鉄とクロムとの酸化還元特性の違いによるものと推定した。クロムは3価が極めて安定であるのに対して、鉄の原子価は2価と3価を取ることができる。このため、ウラン酸鉄の場合には結晶中でウランと鉄との酸化還元反応が起こり、低温での分解反応を誘起したものと考えられる。
桐島 陽*; 秋山 大輔*; 熊谷 友多; 日下 良二; 中田 正美; 渡邉 雅之; 佐々木 隆之*; 佐藤 修彰*
Journal of Nuclear Materials, 567, p.153842_1 - 153842_15, 2022/08
被引用回数:2 パーセンタイル:86.49(Materials Science, Multidisciplinary)福島第一原子力発電所事故では、UOやZr,ステンレス鋼(SUS)の高温反応により燃料デブリが形成されたとみられる。この燃料デブリの化学構造や安定性を理解するため、UO
-Zr-SUS系模擬デブリ試料の合成と物性評価を行い、より単純な組成の試料と比較した。模擬デブリ試料の合成では、不活性雰囲気(Ar)もしくは酸化雰囲気(Ar + 2% O
)において1600
Cで1時間から12時間の加熱処理を行った。
Npおよび
Amをトレーサーとして添加し、浸漬試験ではUに加えてこれらの核種の溶出を測定した。試料の物性評価は、XRD, SEM-EDX,ラマン分光法およびメスバウアー分光法により行った。その結果、模擬デブリの主なU含有相は、加熱処理時の雰囲気に依らず、Zr(IV)およびFe(II)が固溶したUO
相であることが分かった。模擬デブリ試料の純水もしくは海水への浸漬試験では、1年以上の浸漬の後も主な固相の結晶構造には変化が観測されず、化学的に安定であることが示された。さらに、U, Np, Amの溶出率はいずれも0.08%以下と、溶出は極めて限定的であることが明らかとなった。
熊谷 友多; 日下 良二; 中田 正美; 渡邉 雅之; 秋山 大輔*; 桐島 陽*; 佐藤 修彰*; 佐々木 隆之*
Journal of Nuclear Science and Technology, 59(8), p.961 - 971, 2022/08
被引用回数:1 パーセンタイル:68.2(Nuclear Science & Technology)東京電力福島第一原子力発電所事故では核燃料と被覆管,構造材料が高温で反応し、燃料デブリが形成されたと考えられる。この燃料デブリが水の放射線分解の影響により経年変化する可能性を調べるため、模擬燃料デブリを用いて過酸化水素水溶液への浸漬試験を行った。その結果、過酸化水素の反応により、ウランが溶出し、ウラニル過酸化物が析出することが分かった。また、模擬燃料デブリ試料のうちウランとジルコニウムの酸化物固溶体を主成分とする試料では、他の試料と比較してウランの溶出は遅く、ウラニル過酸化物の析出も観測されなかった。この結果から、ウランとジルコニウムの酸化物固溶体は過酸化水素に対して安定性が高いことを明らかにした。
熊谷 友多; 日下 良二; 中田 正美; 渡邉 雅之; 秋山 大輔*; 桐島 陽*; 佐藤 修彰*; 佐々木 隆之*
放射線化学(インターネット), (113), p.61 - 64, 2022/04
東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故では燃料や被覆管、構造材料等が高温で反応して燃料デブリが形成されたとみられている。1F炉内は注水や地下水の流入で湿潤な環境にあり、放射線による水の分解が継続していると考えられ、これが燃料デブリの化学的な性状に影響する可能性がある。1F燃料デブリの組成や形状については、いまだに十分な情報が得られていないが、炉内や周辺で採取された微粒子の分析結果では、様々な組成が観測されており、事故進展における温度履歴や物質移動の複雑さを反映していると考えられる。1Fサンプルのように複雑組成の混合物については、水の放射線分解が与える影響に関する知見が乏しい。そこで、水の放射線分解の影響として想定すべき燃料デブリの性状変化を明らかにするため、模擬デブリ試料を用いてHO
水溶液への浸漬試験を行った。その結果、H
O
の反応により、模擬デブリ試料からウランが溶出し、過酸化ウラニルの形成が進むことが分かった。またUO
相の固溶体形成によるH
O
に対する安定化が観測された。これらの酸化劣化の過程は、ウラン含有相の反応性や安定性に基づいて説明できることを明らかにした。
Li, Z.*; Piankova, D.*; Yang, Y.*; 熊谷 友多; Zschiesche, H.*; Jonsson, M.*; Tarakina, N. V.*; Soroka, I. L.*
Angewandte Chemie; International Edition, 61(6), p.e202112204_1 - e202112204_9, 2022/02
被引用回数:3 パーセンタイル:41.13(Chemistry, Multidisciplinary)Ce(III)水溶液の放射線誘起酸化反応によるCeO形成過程を研究した。Ce(III)はガンマ線照射による水の放射線分解で生じるOHラジカルによりCe(IV)に酸化され、水に対する溶解度が減少するため析出し、最終的にはCeO
が生成する。この反応過程を透過型電子顕微鏡観察とX線結晶構造解析を用いて調べた。その結果、ガンマ線照射によって生成するCeO
は、いくつかの中間的な状態を経てメソ結晶体を形成することを明らかにした。水溶液中でCe(III)が酸化されると、CeO
析出の前駆体としてアモルファスなCe(IV)水酸化物が生成する。その後、Ce(IV)水酸化物中でCeO
のナノ粒子が成長する。このCeO
ナノ粒子はアモルファス組織の中でゆっくりと配向性を有するようになり、ナノ粒子間の相互作用により規則的な構造を形成したメソ結晶体となる。さらに、このメソ結晶体を徐々に乾燥させることでメソ結晶体がさらに構造化した超結晶(supracrystal)となり、複雑な階層化アーキテクチャが形成されることを明らかにした。
熊谷 友多; 木村 敦*; 田口 光正*; 渡邉 雅之
Radiation Physics and Chemistry, 191, p.109831_1 - 109831_8, 2022/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Chemistry, Physical)本研究では、疎水性ゼオライトによる吸着を併用することで、放射線による水中有機物の分解処理の高効率化を試みた。水中有機物の放射線分解処理では、水分解に由来するラジカルの反応を利用するが、それらのラジカルと反応する夾雑イオンが存在すると分解処理の効率が低下するという課題がある。そこで、吸着処理を併用することで夾雑イオンの影響を低減する方法について研究した。組成におけるSi/Al比が高く、疎水性を呈するモルデナイト型ゼオライト(HMOR)を吸着材として利用したところ、HMORに吸着する2-chlorophenolおよび2-chloroanilineの分解反応は、夾雑イオンの存在下でも高い反応効率で進行した。一方で、HMORにほとんど吸着しない2-chlorobenzoic acidの分解反応では、HMORによる吸着処理併用に有意な効果は認められなかった。これらの結果から、吸着によってゼオライト細孔内に有機物を濃縮し、水中の夾雑イオンと空間的に分離することで、放射線による分解反応を促進できることが分かった。
熊谷 友多; 永石 隆二; 木村 敦*; 田口 光正*; 西原 健司; 山岸 功; 小川 徹
Insights Concerning the Fukushima Daiichi Nuclear Accident, Vol.4; Endeavors by Scientists, p.37 - 45, 2021/10
福島第一原子力発電所の放射性汚染水の処理では、汚染水から放射性のセシウムやストロンチウムを除去するためゼオライトが吸着剤として用いられる。吸着処理中や処理後の吸着剤保管時には、水の放射線分解で水素が発生する。安全な処理のためには発生する水素量の評価が重要である。そこで、ゼオライト系吸着剤と海水との混合物からガンマ線照射により発生する水素を測定し、処理時の水素発生量を評価した。海水のみ、吸着剤1wt%添加、約50wt%添加の試料について測定した結果、吸着剤量が1wt%では、海水のみの場合と同等の水素発生量であったが、約50wt%では減少した。しかし、約50wt%添加試料で測定された水素発生量は、混合物中の海水の放射線分解からのみ水素が発生するとして見積もった水素量よりも大きく、吸着剤に付与された放射線エネルギーが水素発生に寄与することが示唆された。汚染水中の核種分析の結果を元に、本研究の実験結果から水素発生量を評価した結果、処理前の汚染水1tからは標準状態で3.6mL/h、処理後の吸着剤では高放射線場となるため、吸着剤1tから1.5L/hの水素が発生すると見積もられた。
McGrady, J.; 熊谷 友多; 渡邉 雅之; 桐島 陽*; 秋山 大輔*; 北村 暁; 紀室 辰伍
RSC Advances (Internet), 11(46), p.28940 - 28948, 2021/08
被引用回数:2 パーセンタイル:28.42(Chemistry, Multidisciplinary)The rate of U release is affected by bicarbonate (HCO) concentrations in the groundwater, as well as H
O
produced by water radiolysis. To understand the dissolution of U
O
by H
O
in bicarbonate solution (0.1 - 50 mM), dissolved U concentrations were measured upon H
O
addition (300
M) to U
O
/bicarbonate mixtures. As the H
O
decomposition mechanism is integral to U dissolution, the kinetics and mechanism of H
O
decomposition at the U
O
surface was investigated. The dissolution of U increased with bicarbonate concentration which was attributed to a change in the H
O
decomposition mechanism from catalytic at low bicarbonate (
5 mM HCO
) to oxidative at high bicarbonate (
10 mM HCO
). Catalytic H
O
at low bicarbonate was attributed to the formation of an oxidised surface layer.
日下 良二; 熊谷 友多; 蓬田 匠; 高野 公秀; 渡邉 雅之; 佐々木 隆之*; 秋山 大輔*; 佐藤 修彰*; 桐島 陽*
Journal of Nuclear Science and Technology, 58(6), p.629 - 634, 2021/06
被引用回数:5 パーセンタイル:66.18(Nuclear Science & Technology)Studtite and metastudtite are uranyl peroxides formed on nuclear fuel in water through the reaction with HO
produced by the radiolysis of water. However, it is unclear how the two types of uranyl peroxides are generated and distributed on the surface of nuclear fuel. Here, we used Raman imaging technique to exemplify distribution data of the two uranyl peroxides formed on the surface of a U
O
pellet through immersion in a H
O
aqueous solution. As a result, we observed that studtite and metastudtite are heterogeneously distributed on the U
O
surface. No clear correlation between the distributions of studtite and metastudtite was observed, suggesting that the two uranyl peroxides are independently generated on the surface of U
O
. We anticipate that this Raman imaging technique could reveal how these uranyl peroxides are generated and distributed on the surface of the nuclear fuel debris in the Fukushima-Daiichi Nuclear Power Plants.
樋川 智洋; Peterman, D. R.*; Meeker, D. S.*; Grimes, T. S.*; Zalupski, P. R.*; Mezyk, S. P.*; Cook, A. R.*; 山下 真一*; 熊谷 友多; 松村 達郎; et al.
Physical Chemistry Chemical Physics, 23(2), p.1343 - 1351, 2021/01
被引用回数:5 パーセンタイル:67.1(Chemistry, Physical)An(III)/Ln(III)分離用抽出剤であるヘキサニトリロトリアセトアミド(HONTA)の、SELECT (Solvent Extraction from Liquid waste using Extractants of CHON-type for Transmutation)プロセス条件下における放射線影響を、米国INLが有する溶媒テストループを用いて調べた。HPLC-ESI-MS/MS分析の結果、放射線照射により、HONTAが線量に対して指数関数的に減衰し、ジオクチルアミンをはじめとする多様な分解物が生じることがわかった。またHONTAの減衰及び分解物の生成により、アメリシウム及びユーロピウムの抽出及び逆抽出挙動が低下する結果が得られた。パルスラジオリシス実験からは、このHONTAの減衰は、溶媒であるドデカンのラジカルカチオンとの反応((HONTA + R
) = (7.61
0.82)
10
M
s
)によることがわかった。一方、アメリシウムやユーロピウムとの錯形成により、反応速度定数は増加した。この反応速度の増加は、錯形成によって異なる経路の分解反応が生じた可能性を示唆している。最後にナノ秒の時間分解測定からHONTAの直接効果,間接効果共に100ns以下の短い寿命を持つHONTAラジカルカチオンとマイクロ秒以上の長い寿命を持つHONTA励起三重項状態が生じることを明らかにした。これらの活性種はHONTAの分解における重要な前駆体となると考えられる。
樋川 智洋; 津幡 靖宏; 甲斐 健師; 古田 琢哉; 熊谷 友多; 松村 達郎
Solvent Extraction and Ion Exchange, 39(1), p.74 - 89, 2021/00
被引用回数:1 パーセンタイル:0(Chemistry, Multidisciplinary)マイナーアクチノイド分離プロセスの放射線に対する成立性を評価するうえで、抽出溶媒の吸収線量の予測は不可欠である。本論文では、溶媒抽出時に現れるエマルションなどの構造を考慮した吸収線量評価手法を提案する。モンテカルロ法に基づいた放射線輸送コードであるPHITSを活用し、高レベル放射性廃液からのマイナーアクチノイド一括回収するプロセスを対象として、抽出溶媒への放射線エネルギー付与シミュレーションを行った。シミュレーションの結果、アルファ線によるエネルギー付与量はエマルション構造に、ベータ線及びガンマ線については抽出に用いる装置サイズに依存することを示した。さらにこれまでの線量評価では評価されてこなかった透過力の高いガンマ線によるエネルギー付与がマイナーアクチノイドの大量処理を考えるうえで重要になることを示唆した。
樋川 智洋; 村山 琳*; 熊谷 友多; 山下 真一*; 鈴木 英哉; 伴 康俊; 松村 達郎
UTNL-R-0501, p.24 - 25, 2020/12
東京大学大学院工学系研究科が有するライナック研究施設を利用して平成31年度に得られた成果をまとめたものである。マイナーアクチノイド(MA)の分離プロセスで利用が見込まれるジグリコールアミド抽出剤について、ドデカン及びオクタノール溶液中における放射線分解過程をパルスラジオリシスにより調べた。その結果、アルコールを添加することにより、ジグリコールアミド抽出剤の放射線分解過程は、これまで考えられてきたラジカルカチオンを経由するドデカン単一溶媒中での分解過程とは異なることが示唆された。
青柳 登; Nguyen, T. T.*; 熊谷 友多; Nguyen, T. V.*; 中田 正美; 瀬川 優佳里; Nguyen, H. T.*; Le, B. T.*
ACS Omega (Internet), 5(13), p.7096 - 7105, 2020/04
被引用回数:2 パーセンタイル:14.59(Chemistry, Multidisciplinary)Rare-earth phosphates often appear as an accessory phase in igneous or metamorphic rocks; however, these rocks are composed of myriad chemical elements and nuclides that interfere with the qualitative or quantitative analyses of the rare-earth phosphates over a range of concentrations in the absence of a pretreatment. In addition, the limit of each analytical methodology constrains the approach as well as the usefulness of the results in geoscience applications. Here, we report the specific mineral characterization of rare-earth (RE)-containing ores from Yen Phu mine, Vietnam, using a range of state-of-the-art spectroscopic techniques in conjunction with microscopy: Mssbauer spectroscopy, infrared microspectroscopy, time-resolved laser-induced fluorescence spectroscopy (TRLFS), and scanning electron microscopy with energy-dispersive X-ray spectroscopy. Because the distribution of each element in the deposit differs, such combinatorial works are necessary and could lead to more plausible answers to questions surrounding the point of origin of rare-earth elements. The results of our M
ssbauer spectroscopic analysis indicate that the three ores sampled at different locations all contain magnetite-like, hematite-like, and iron(III) salts other than hematite. In addition, we confirmed the presence of phosphate around the grain boundary in the magnetite-like mineral phase by infrared microspectroscopic analysis. The present analytical findings of trace amounts of europium(III) using TRLFS suggest that the europium ions generate identical luminescence spectra despite being embedded in three different matrices of iron minerals. This demonstration highlights the benefits of combinatorial spectroscopic analyses to gain insights into the effects of the environment of REs on their solid-state chemistry and shows the potential utility of TRLFS as a resource mining tool. Further applications of this approach in the analytical screening of rocks and minerals are feasible.
熊谷 友多; Jonsson, M.*
Dalton Transactions (Internet), 49(6), p.1907 - 1914, 2020/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Chemistry, Inorganic & Nuclear)使用済核燃料を直接地層処分した場合には、放射線に起因する化学反応によって使用済核燃料の母材である二酸化ウランが6価ウランに酸化され、その結果ウラニルイオンとして水に溶け出す。この溶解反応の速度は地下水成分に影響される。深地層環境においても地下水には有機物が含まれることから、二酸化ウランへの吸着が考えられる有機酸の影響を研究した。本研究では、フタル酸を用いて二酸化ウランへの吸着挙動を調べ、フタル酸が吸着した二酸化ウランの溶解挙動を調べた。その結果、フタル酸は二酸化ウランに強く吸着されるが、放射線の模擬として過酸化水素を用いた反応では、ウランの溶解挙動は炭酸塩水溶液と同等であった。この結果から、吸着フタル酸は二酸化ウランの表面で生じる酸化還元反応にはほとんど影響を与えないことが分かった。一方で、放射線照射による二酸化ウランの溶解反応は、フタル酸水溶液中では抑制された。この結果から、水の放射線分解で生じるラジカル種は水溶液中でフタル酸と反応し、二酸化ウランの酸化が進みにくくなることが示唆される。
熊谷 友多
放射線化学(インターネット), (107), p.77 - 78, 2019/04
過酷事故および直接地層処分における核燃料の化学変化を理解する基礎として、二酸化ウランの水溶液中での酸化的溶解反応を調べた。この反応は、使用済核燃料から発される放射線が周囲の水を分解し、過酸化水素などの酸化剤を発生されることから始まる。この酸化剤が二酸化ウランの表面を水溶性の高い6価の状態とすることで、核燃料の母材である二酸化ウランが溶解する。本研究では、この酸化と溶解の反応過程において、過酸化水素の反応が二酸化ウランの表面に反応中間体を形成する可能性を調べた。そのために、反応過程における過酸化水素濃度の減少とウラン濃度の増加を時間分解で測定した。その結果、過酸化水素を高濃度にすることで、二酸化ウラン表面での過酸化水素の分解が活性化されること、一方で反応速度が低下することが分かった。これらの結果は、二酸化ウランの表面の反応性の変化を示しており、反応中間体が表面に蓄積されることを示唆する。
熊谷 友多; Fidalgo, A. B.*; Jonsson, M.*
Journal of Physical Chemistry C, 123(15), p.9919 - 9925, 2019/04
被引用回数:11 パーセンタイル:53.89(Chemistry, Physical)ウランの酸化還元による化学的な変化は環境中のウランの動態を支配する重要な反応であり、特に4価の二酸化ウランが6価のウラニルイオンに酸化され水に溶けだす反応は使用済燃料等の環境中における化学的な安定性を評価する上で重要な反応である。この酸化による二酸化ウランの水への溶出について、二酸化ウランの過定比性の影響を調べるため、過酸化水素および線照射による反応を調べ、定比のUO
と過定比のUO
との間で反応挙動を比較した。その結果、定比のUO
は酸化還元反応に高い活性を示し、表面の酸化反応は速やかに進み、酸化反応の進展とともに徐々にウランの溶出が加速されることが観測された。一方で、過定比のUO
は反応性は低いものの、酸化反応が生じると速やかにウランが溶出することが分かった。また、過酸化水素による反応と
線照射による反応を比較した結果、ウランの溶出ダイナミクスは酸化剤の濃度に依存して変化することが分かった。そのため、使用済燃料等で想定される放射線による酸化反応を検討する場合、高濃度の酸化剤を用いた試験では、ウランの溶出反応を過小評価する可能性があることを明らかにした。
Fidalgo, A. B.*; 熊谷 友多; Jonsson, M.*
Journal of Coordination Chemistry, 71(11-13), p.1799 - 1807, 2018/07
被引用回数:23 パーセンタイル:86.86(Chemistry, Inorganic & Nuclear)二酸化ウランは水中では表面から酸化され、徐々に溶出する。放射線環境下では、水の放射線分解で生じる過酸化水素が二酸化ウランを速やかに酸化するため、溶出が促進される。この過酸化水素による二酸化ウランの酸化反応においては、過酸化水素がウランを酸化せずに分解する副反応が生じることが知られていたが、その反応スキームは分かっていなかった。そこで、この二酸化ウランと過酸化水素の反応について、ウランが酸化された後に速やかに溶出する溶液条件において、過酸化水素濃度に対する依存性を調べた。その結果、過酸化水素の濃度が高くなるにつれて、反応速度定数が下がり、ウランの溶出収率も低くなることが観測された。これは、表面に反応中間体が蓄積され、反応が阻害されたことを示唆する。本研究で用いたウランの溶出が促進される溶液条件では、酸化されたウランが表面に蓄積されることは考えにくいことから、この反応挙動の変化は表面ヒドロキシルラジカルの蓄積による現象であると推定した。
熊谷 友多; 木村 敦*; 田口 光正*; 渡邉 雅之
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 316(1), p.341 - 348, 2018/04
被引用回数:2 パーセンタイル:24.5(Chemistry, Analytical)放射線を利用した水環境汚染物質の分解処理をゼオライトによる固相抽出を用いて効率化する可能性を探索するため、2-クロロフェノール(2-ClPh)をモデル物質としてゼオライト共存下での放射線誘起反応を研究した。3種のゼオライトを比較した結果、Si/Al比率の高いゼオライト(HMOR)を用いることで2-ClPhの放射線による分解反応を効率化できることを明らかにした。HMORは疎水性を示すゼオライトであり、水溶液中の2-ClPhに対して優れた吸着能を示した。この吸着能を利用してHMORに2-ClPhを濃縮してから線を照射することで、2-ClPhの脱塩素反応が高効率で進むことが分かった。この固相抽出による反応効率の向上は、水溶液を10倍濃縮することに相当した。これは、2-ClPhが高濃度に吸着したことで、HMORが
線から吸収したエネルギーが効率よく分解反応に使われたためと考えられる。
田口 光正*; 熊谷 友多; 木村 敦*
IAEA-TECDOC-1855, p.106 - 116, 2018/00
廃水中の微量医薬品成分や抗生物質を分解除去する技術として、ゼオライト吸着材と放射線を組み合わせた方法を開発した。ゼオライト吸着材には組成のシリカ成分を高めることで疎水化したHMORというゼオライトを用いた。2-chlorophenol(2-ClPh)をモデル分子としてHMORの吸着性能を調べた結果、希薄水溶液からの吸着では99%以上の除去率が観測された。また、2-ClPhをHMORに吸着した状態で照射することで、水溶液の照射に比べて分解が促進され、水溶液を10倍濃縮する場合と同等の効果があることが分かった。さらに、医薬品成分の分解への適用性を検証するため、クロフィブラート(高脂質血症治療剤)、トリクロサン(抗菌剤)の分解について照射試験を行った。これらの医薬品成分は塩素を含むため、分解の指標として照射による塩化物イオンの生成量を測定した結果、HMORの併用によって分解効率がおよそ2倍に向上することが分かった。