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小嵐 淳; 永野 博彦*; 中山 理智*; 安藤 麻里子; 永岡 美佳
Chemosphere, 389, p.144715_1 - 144715_11, 2025/11
放射性セシウム(
Cs)汚染は、特に森林生態系において長期的な課題となっている。土壌微生物が
Csの運命を左右する役割は未だ不明な点が多い。本研究では、有機層と鉱物土壌における微生物、有機物、粘土鉱物の相互作用に着目して、微生物による
Csの保持を評価した。その結果、微生物による
Cs循環によって有機層中に生物利用可能な
Csプールが維持されていることが示された。この微生物の関与は、有機層中の
Cs放射能濃度が低下するにつれて減少した。鉱物土壌では微生物による
Csの保持は最小限であり、粘土鉱物による固定化を間接的に促進する役割が示唆された。有機層における微生物による
Cs保持は、地域、森林の種類、沈着後の時間に関わらず、
Csの利用可能性によって制御されていることが明らかになった。これらの知見は、ヨーロッパと日本の森林における有機層における
Csの残留性の違いを統一的に説明する。
阿部 有希子; 中山 理智*; 安藤 麻里子; 丹下 健*; 澤田 晴雄*; Liang, N.*; 小嵐 淳
Geoderma, 455, p.117221_1 - 117221_11, 2025/03
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Soil Science)森林土壌に蓄積されている炭素の半分以上が下層土壌(30cm以深)に存在している。しかし、下層土壌の陸域炭素循環における寄与やそれを制御する要因については未解明な点が多い。そこで本研究では、下層土壌からのCO
放出量を定量評価するとともに、CO
放出に影響を与える要因を明らかにすることを目的とした。有機炭素蓄積特性の異なる2つのタイプの森林土壌(火山灰土壌と非火山灰土壌)を対象に、深さ60cmまでの土壌を採取し、培養実験により深さごとのCO
放出速度を測定した。また、放出されたCO
の放射性炭素同位体比を分析した。その結果、下層土壌からのCO
放出は、全体(深さ0-60cm)の放出量の6-23%を担い、1950年以降に固定された有機炭素の分解に起因していることが明らかになった。下層土壌からのCO
放出は、土壌微生物が利用しやすい有機炭素の量と微生物バイオマス量に規定されていることが示唆された。
Battulga, B.; 中山 理智; 松岡 俊将*; 近藤 俊明*; 安藤 麻里子; 小嵐 淳
Water Research, 264, p.122207_1 - 122207_12, 2024/10
被引用回数:9 パーセンタイル:88.31(Engineering, Environmental)環境中のマイクロプラスチック(MP、サイズ:
5mm)上の微生物の付着とバイオフィルムの形成に対する注目が高まっている。ここでは、微生物の生態と水生生態系への影響についての理解を深めるために、プラスティスフィア内の微生物群集を調査する。我々は、16S遺伝子とITS遺伝子のアンプリコン配列を使用して、日本の2つの対照的な沿岸地域のMP、地表水、底質、海岸砂における細菌および真菌群集の構成と多様性を特定した。サンプルの種類と研究場所に応じて、大幅に異なる微生物の多様性と分類学的組成が検出された。炭化水素分解群集の定着とMP上での病原体の発生の結果として、微生物分類群の複雑なプロセスがMP関連バイオフィルムの特性、ひいてはMPの特性に影響を与える。この研究は、MP関連バイオフィルムにおける微生物の代謝機能に焦点を当てており、これは地球生態系に対するプラスチック破片の真の影響を明らかにする鍵となる可能性がある。
中山 理智; 阿部 有希子; 安藤 麻里子; 丹下 健*; 澤田 晴雄*; Liang, N.*; 小嵐 淳
Applied Soil Ecology, 201, p.105485_1 - 105485_12, 2024/09
被引用回数:4 パーセンタイル:67.54(Soil Science)森林において窒素は植物の生育の制限要因である。樹木を含む植物は種間の養分競争が苛烈な時、表層に加え下層土壌からも窒素を吸収している。しかし、下層土壌における窒素循環に関する知見は限られている。本研究では、2つの異なる土壌タイプに成立する日本の森林において、窒素の純無機化速度および硝化速度の深度プロファイル(0-60cm)を調査した。またPLS-PMモデルを用いて、窒素循環に重要な要因の特定を行った。土壌重さ当たりの窒素無機化、硝化はAndosolの表層で高く、深度とともに低下したが、Cambisolにおいてその傾向は見られなかった。微生物バイオマス量と土壌有機物量は表層における窒素循環の空間分布を規定することが知られているが、深度方向の窒素循環にもそれらが重要であることがPLS-PMモデルによって明らかとなった。さらに、土壌体積当たりで計算をすると、土壌タイプや深度に関わらず窒素無機化速度は一定であった。これにより、Andosol, Cambisolの双方において、下層土壌は重要な植物の窒素吸収源であることが示唆された。
谷口 武士*; 磯部 一夫*; 今田 省吾*; Eltayeb, M. M.*; 赤路 康朗*; 中山 理智; Allen, M. F.*; Aronson, E. L.*
Science of the Total Environment, 899, p.165524_1 - 165524_13, 2023/11
被引用回数:13 パーセンタイル:78.28(Environmental Sciences)乾燥地の生態系は強度の乾燥と適度な降水の季節的なサイクルを経験する。乾燥地の植物は典型的にはパッチ状に分布しており、多くは繰り返す乾湿ストレスを生き抜くために根の内生微生物と共生している。群集合体は多くのシステムで見出されているが、乾燥地における機能微生物によるコロニー形成や季節の移り変わりとの関係は不明である。ここでは、米国南西部の高温砂漠における乾季と雨季の根の内生微生物分類群、およびその根のコロニー形成と関連した形質を調べた。5種類の砂漠性低木について、16S rRNAおよびITSの遺伝子プロファイリングを行い、内生微生物系統の季節変化を分析した。また、微生物形質との関係における中立的な群集モデルへの適合度を評価した。夏には、属特異的ではないものの、放線菌(グラム陽性菌)が増加した。真菌類では、夏に糸状菌が選択的に増加した。冬期には、窒素固定や植物成長促進を行うグラム陰性菌属が増加した。中立モデル解析の結果、内生細菌については確率的な影響が強いが、菌類については特に夏季に弱い影響が見られた。中立モデルで予測された頻度よりも高い頻度を示した分類群は、環境適応性と共生形質を共有していたが、病原性真菌の頻度は予測値以下であった。これらの結果は、細菌と真菌の群集形成が異なる制御を受けていることを示唆している。細菌群集は、乾燥に対する細菌の反応(反応形質)と植物に対する有益な効果(効果形質)を介して、確率的および決定論的なプロセスの影響を受けていた。菌類については、夏期に菌根菌が植物によって選択された。乾季と雨季の両方で植物による有益な微生物の制御が行われていることから、この砂漠の自然生態系には植物-土壌の正のフィードバックが存在することが示唆された。
堅田 元喜*; 山口 高志*; 渡辺 誠*; 福島 慶太郎*; 中山 理智*; 永野 博彦*; 小嵐 淳; 舘野 隆之輔*; 久保田 智大
Atmospheric Environment, 298, p.119640_1 - 119640_12, 2023/04
被引用回数:1 パーセンタイル:9.77(Environmental Sciences)Moderately elevated reactive nitrogen (Nr) deposition due to anthropogenic activities can have an impact on forest production via throughfall and canopy retention processes. Forest fragmentation can increase dry deposition of atmospheric ammonia volatilized from agricultural areas, and consequently increase spatial variability of Nr deposition even within the same forest (edge effect). However, little is known about the edge effect and its impact on forest production in a deciduous broad-leaved forest in Asian countries. Here, we performed the field observations of atmospheric concentration and deposition of inorganic Nr gases and particles in a Japanese fragmented forest from May 2018 to April 2019. The results demonstrated that annual dry deposition of ammonia was dominant in the annual total dissolved inorganic Nr deposition at the forest edge, including the edge effect. Additionally, agricultural activities such as fertilization in the area surrounding the forest likely enhanced the potential of canopy retention of NH
, known as Nr species readily absorbed by tree canopy.
中山 理智; 舘野 隆之輔*
Plant and Soil, 17 Pages, 2023/00
被引用回数:4 パーセンタイル:47.08(Agronomy)植物細根の周辺土壌(根圏)の微生物は根滲出物や根との共生によって非根圏の微生物とは異なっており、植物の生育に重要な役割を担っている。しかし、特に冷温帯林の植物の休眠期に関して、根圏微生物の季節的な変動は不明である。我々は根圏の微生物群集を冷温帯の落葉広葉樹林において、休眠期の開始時、終了時そして成長期において調査した。外生菌根菌の相対優占度は成長期には根圏で高かったが、休眠期はその違いが不明瞭であり、共生している植物からの炭素供給の季節性が重要であることが示唆された。一方で、主に細菌から構成される根圏の主要な小グループは季節的な変動をせず、pHや含水率などの物理化学性に強く影響されていた。これらの結果は、根圏の真菌、細菌群集は植物の休眠期に対して異なる適応をしており、微生物同士および微生物と植物根との関係性が根圏において季節的に異なることを示唆するものである。
永野 博彦; 中山 理智*; 堅田 元喜*; 福島 慶太郎*; 山口 高志*; 渡辺 誠*; 近藤 俊明*; 安藤 麻里子; 久保田 智大*; 舘野 隆之輔*; et al.
Soil Science and Plant Nutrition, 67(5), p.606 - 616, 2021/10
被引用回数:3 パーセンタイル:16.48(Plant Sciences)北海道の牧草地に囲まれた冷温帯林において、大気からの窒素沈着量と土壌の微生物群集特性との関係を調査した。窒素沈着量の緩やかな増大(年間10kg N/ha未満)が土壌微生物群集に及ぼす影響について明らかにすることを本研究の目的とした。調査対象の森林において6つの実験区画を設置し、そのうち3つを草地に隣接した林縁、他の3つを草地から少なくとも700m離れた林内に設置した。2018年5月から11月まで、各プロットでの窒素沈着を測定した。2018年8月には、すべての実験区画からリター層と表層土壌(深さ0-5cm)を収集し、微生物活性の指標として正味の窒素無機化と硝化速度、また微生物量の指標として微生物バイオマス炭素・窒素およびさまざまな微生物の遺伝子量(すなわち、細菌16S rRNA,真菌のITS,細菌のamoA、および古細菌のamoA遺伝子)を測定した。森縁の窒素沈着量は、林内の窒素沈着の1.4倍多かった一方、最も沈着量が多い場合でも3.7kg N/haであった。窒素沈着は、正味の窒素無機化および硝化速度、16S rRNAおよび細菌のamoA遺伝子の存在量と有意に相関していた。環境DNA解析に基づく土壌微生物群集構造は、リター層と表層土壌で異なっていたが、林縁と林内では類似していた。土壌の炭素/窒素比、および硝酸とアンモニウムの含有量に対する窒素沈着の有意な相関も観察された。以上より、窒素可給性の低い森林では、林縁における緩やかな窒素沈着の増大が土壌微生物の活性と存在量を増大させることが示された。
荻野 正貴*; 大脇 英司*; 白瀬 光泰*; 中山 雅
コンクリート工学年次論文集(DVD-ROM), 39(1), p.703 - 708, 2017/07
塩化物イオンの拡散係数はコンクリートの耐久性を評価する重要な指標であるが、耐久性の高いコンクリートは物質透過抵抗性に優れるため、測定に時間を要する。われわれは非定常の電気泳動操作にEPMAを組み合わせた迅速法について検討した。浸入した塩化物イオンについて、浸入範囲と濃度分布を求め、塩化物イオンの分布から電気泳動が主たる輸送機構ではないと判断される浸入範囲を除外し、Nernst-Planckの式により拡散係数を求めた。この拡散係数は、塩水浸せき試験により得られる値とほぼ同等である。従来の試験と比較し、試験期間を1
2割程度に短縮できる可能性があることが確認できた。
朝比奈 潔*; 曽家 正孝*; 小川 光*; 赤坂 孝之*; 岩田 俊雄*; 福留 豊*; 中山 準平*
PNC TJ4058 89-005, 178 Pages, 1989/06
東海再処理施設では、貯蔵されているアスファルト固化体等の廃棄物を搬出するための搬出施設の建設が計画されているが、この搬出施設の仕様を決定するにあたっては、適用技術の評価が必要となる。本研究では、検査設備、搬送・荷役設備について広く調査を行い、その適用性を評価した。評価の結果、ほぼ全ての設備に対して、従来の技術を合理的に利用できることが判った。ただし、ドラム缶内の放射性核種量の測定設備については、現状では測定すべき核種の種類及び要求される測定精度が明らかでないため、多くの核種を定量する要求がある場合を想定して、計算手法を用いることが最適であると評価した。施設の機能については、受入れる廃棄物の種類を決定するための検討を行った。本施設は、アスファルト固化体を搬出するためには不可欠であるが、他の低レベル廃棄物については、本施設あるいは、貯蔵施設で対応でき、個別に施設を設置するメリットはないことが判った。
中山 理智; 阿部 有希子; 安藤 麻里子; 小嵐 淳
no journal, ,
植物は主に表層土壌から窒素を吸収しているが、養分競争が生じる環境では下層土壌からも窒素を吸収することが知られている。しかし、下層土壌における窒素動態はいまだ不明な点が多い。そこで、火山灰土壌および非火山灰土壌の4つの森林において、表層0-60cmにおける窒素無機化・硝化速度の深度による違いとその制御要因の解明を目的とした研究を行った。結果として、土壌重量当たりの窒素無機化・硝化速度は火山灰土壌において深度とともに低下したが、非火山灰土壌では深度方向の違いは有意には見られなかった。一方で、土壌体積当たりでは火山灰土壌、非火山灰土壌ともに深度方向で有意な差は見られなかった。また、表層における空間分布と同様に、土壌深度による土壌炭素・窒素量および微生物バイオマス量の変化が窒素無機化速度の変化と関連していることが明らかとなった。以上のことから、窒素無機化速度の垂直・水平方向の違いにはともに土壌炭素・窒素量と微生物バイオマスが重要であり、また、下層土壌も植物にとって重要な窒素供給源である可能性が示唆された。
阿部 有希子; 中山 理智; 安藤 麻里子; 小嵐 淳
no journal, ,
森林土壌に蓄積されている炭素のおよそ半分が下層土壌に存在している。下層土壌に蓄積された炭素は微生物に分解されにくい状態で存在していると考えられてきたが、近年、炭素循環に対して大きく寄与している可能性が指摘されている。下層土壌への新たな有機物供給によって、土壌有機物の分解が促進されること(プライミング効果)も報告されているが、その研究例は乏しい。本研究では、火山灰の有無による有機物と鉱物との相互作用の違いに着目し、新たな有機物供給に対する分解応答を評価することを目的とした。火山灰土壌と非火山灰土壌が分布する4か所の調査地の表層(0-10cm)と下層(40-60cm)の土壌を最大容水量の64%に調整し、最大容水量の1%の水または
Cでラベルしたスクロース溶液を添加後、20
Cと30
Cで培養した。スクロース添加によって、火山灰土壌の下層では正のプライミング効果が認められたが、培養後90日目のスクロース添加の有無による炭素放出量の差は、いずれの土壌においても添加量の半分程度であった。したがって、土壌へのスクロース添加は有機物分解を促進したが、90日間の培養ではスクロースの一部は分解されずに土壌中に残留している可能性が示唆された。
阿部 有希子; 寺本 宗正*; 中山 理智; 安藤 麻里子; Liang, N.*; 小嵐 淳
no journal, ,
大気中の二酸化炭素濃度上昇に伴う気候変動は地球規模で重大な環境問題となっている。土壌から放出される二酸化炭素(土壌呼吸)は陸域生態系の炭素循環において主要なフラックスであるが、時空間的な不均一性が非常に大きいことが知られている。土壌呼吸量を正確に推定するために世界各地で土壌呼吸の観測が行われているが、海岸砂丘における観測例はほとんどない。気候変動に伴う土壌呼吸量の応答を正確に予測するためには、様々な地域や生態系における土壌呼吸量を把握し、その規定要因を明らかにする必要がある。本研究では、観測例の少ない海岸砂丘における土壌呼吸速度の時空間変動とその規定要因を明らかにすることを目的とした。鳥取大学乾燥地研究センター内の海岸砂丘のクロマツ林において20か所の土壌呼吸速度の測定地点を設置し、2023年6月から土壌呼吸速度を月1回測定した。さらに、3ヶ月おきに測点周囲から深さ0-5cmの土壌を採取し、土壌炭素量や微生物バイオマス量、水抽出有機物量(WEOC)などを測定した。2023年6月から12月までの土壌呼吸速度には大きな空間変動が認められ、変動係数は43-67%を推移した。また、土壌呼吸速度は地温の上昇に伴い指数関数的に変化したが、8月には一時的な低下が認められた。この要因として、夏期の地温上昇とそれに伴う土壌乾燥の影響を受けた可能性が考えられる。2023年6、9、12月に各測点周囲から採取した土壌のWEOCはいずれの月においても土壌呼吸速度と正の相関関係が認められた。このことから土壌有機物の少ない砂質土壌における土壌呼吸速度の空間変動にWEOCが寄与している可能性が示唆された。
Battulga, B.*; 中山 理智*; 安藤 麻里子; 小嵐 淳
no journal, ,
Aquaculture is one of the important food sectors in the world and is now threatened by plastic pollution. Microbial infections like bacterial and fungal pathogenic taxa (harmful microorganisms that attack their host's immunity) cause harm to fish and marine life. Given the potential interaction between plastics and dangerous species, it is important to enhance our understanding of pathogenic species colonized on microplastic (MPs:
5 mm in size of plastic debris) in the coastal environments. Using the amplicon sequencing of 16S and internal transcribed spacer (ITS) genes, we uncovered the composition and diversity of bacterial and fungal communities in samples of MPs, surface water, bottom sediment, and coastal sand in two contrasting coastal areas of Japan. Differences in microbial diversity and taxonomic composition were detected depending on sample type (MPs, water, sediment, and sand) and the research site. The enrichment of pathogens, especially animal pathogens and fungal parasites, in MPs compared to surrounding environmental media (water, sediment, and sand) has implications regarding the ecotoxicological effect of MPs on the ecosystem. The current study provides critical discussion in terms of pathogens on MPs.
鈴木 優里*; 永野 博彦*; 鈴木 一輝*; 平舘 俊太郎*; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 阿部 有希子; 中山 理智*
no journal, ,
近年観測されている降雨の頻度減少および強度増大は、土壌の乾湿サイクルを顕在化させ、土壌有機物分解由来の二酸化炭素(CO
)放出を増大させることが明らかになってきている。本研究では、乾湿サイクルによる土壌CO
放出増大現象は、乾燥で死滅した微生物細胞の湿潤下での分解によって生じていると考え、土壌CO
放出増大量と微生物バイオマス炭素量の変化の量的関係を調査した。その結果、土壌CO
放出量増大は微生物バイオマス由来の炭素のみでは説明できず、他のプロセスも関与していることが示された。
阿部 有希子; 高木 健太郎*; 安藤 麻里子; 中山 理智*; Liang, N.*; 小嵐 淳
no journal, ,
泥炭土壌には莫大な量の炭素が蓄積しているが、わずかな気温上昇でも土壌からの二酸化炭素(CO
)放出量が増大し、その効果は長期的に持続する可能性が高い。さらに、気温上昇に伴い土壌が乾燥し、好気的な環境に変化した場合、土壌有機物の分解がより促進されることが予測される。しかし、温度と水分の複合的な環境変化が泥炭土壌の炭素動態にどの程度の影響を与えるのか、その実態は明らかではない。本研究では、泥炭土壌における環境変化に対する有機物の分解応答を定量評価することを目的とした。表層(0-20cm)と下層(40-60cm)の土壌を最大容水量(WHC)の40、60、80、100%に調整後、20
Cと30
Cで培養し、CO
濃度を測定した。放出された炭素の起源推定のために、CO
の放射性炭素(
C)年代を評価した。温度が10
C上昇した時の炭素放出量の上昇率は、いずれの深さもWHC40%が高い傾向を示し、表層で3.4倍、下層で4.2倍であった。また、温度とWHCの違いに関わらず、下層では表層に比べて古い有機物が分解されていた。泥炭土壌では、乾燥が温度上昇の影響を増大し、特に下層では長期間蓄積された有機物の分解が促進されることが示唆された。
鈴木 優里*; 平舘 俊太郎*; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 中山 理智*; 鈴木 一輝*; 阿部 有希子*; 永野 博彦*
no journal, ,
土壌の乾燥と湿潤の繰り返し(乾湿サイクル;DWC)の激甚化は、微生物が担う土壌の温室効果ガス動態を変動させる可能性が高い。そこで本研究では、土壌培養実験により、DWCが土壌の微生物相およびCO
、N
O、CH
動態に及ぼす影響について調査した。培養期間中、CO
、N
O、CH
濃度を定期的に測定し、培養開始時と終了時の土壌に対して細菌・古細菌16S rRNA遺伝子および真菌ITS領域を対象とした微生物群集組成の解析を実施した。細菌・アーキアおよび真菌群集組成は、DWC区において特に大きく変化した。また、培養期間中の総CO
放出量は、DWC区で対照区よりも有意に大きかった。N
O生成に関わる硝化関連遺伝子群およびCH
生成の関連遺伝子群の相対存在量は、特にDWC区で大きな変化がみられ、硝化関連遺伝子群は増加し、CH
生成の関連遺伝子群は減少傾向にあった。発表では、N
O及びCH
計測結果も踏まえた考察を行う。
渡辺 誠*; 則定 優成*; 黄瀬 佳之*; 山口 高志*; 中山 理智*; 福島 慶太郎*; 舘野 隆之輔*; 永野 博彦; 小嵐 淳; 堅田 元喜*
no journal, ,
近年問題となっている人為起源の反応性窒素の大気から森林生態系への沈着は、自然の窒素循環を乱して富栄養化をもたらすだけでなく、森林の生産性にも影響をおよぼす。一方、森林における窒素沈着には空間的な不均一性がある。特に風上側の林縁においては乾性沈着や霧沈着による窒素沈着が多くなることが指摘されている。そのため、林縁では森林の中心部分(林内)に比べて、森林の生産性や樹木の窒素利用特性が異なる可能性がある。そこで本研究では畜産地域に隣接し、窒素沈着の影響を受けやすいと考えられる森林の林縁と林内において、窒素沈着量の違いが森林の生産性および立木の窒素利用特性に与える影響に関する比較調査を行った。北海道標茶町のミズナラが優占する落葉広葉樹林を調査対象とした。この森林の中で畜産地帯に隣接した林縁部と林内部に、調査区(10m
40m)を3か所ずつ設置した。2018年5月から11月まで各調査区で林内雨による窒素沈着量および大気アンモニア濃度の観測を行った。5月と10月に各調査区において立木の胸高直径測定を行い、1成長期間における胸高断面積合計の増加量を算出した。また林床植生であるササの乾重量を測定した。7月に各調査区のミズナラ成木(平均樹高16m)に登はんし、樹冠内の5高度から、当年に伸張したシュート(枝および葉)を採取した。採取したシュートについて、乾重量、単位葉面積あたりの葉乾重量(LMA)、および葉のRubisco、クロロフィルおよび窒素の各濃度を測定した。林縁部の窒素沈着量および大気アンモニア濃度は林内に比べて有意に高かった。また立木の胸高断面積合計の増加量とササの乾重量も林内よりも林縁で高く、特に胸高断面積合計の増加量は窒素沈着量と有意な正の相関を示した。ミズナラのシュート乾重量およびRubiscoへの窒素分配割合は樹冠下部から上部にかけて増加し、葉の窒素濃度およびクロロフィル濃度への窒素分配割合は樹冠上部から下部にかけて低下した。しかし、LMAと森林位置(林縁・林内)を説明変数とした逸脱度分析の結果、いずれのパラメータについても、林縁と林内の間に有意な違いは認められなかった。以上より、調査対象とした畜産地帯に隣接した落葉広葉樹林において、(1)林縁の窒素沈着量は林内に比べて高いこと、(2)窒素沈着量の違いはミズナラの光合成の窒素利用特性に影響を与えないが、林分レベルのバイオマス生産を増加させることが明らかになった。
堅田 元喜*; 福島 慶太郎*; 小嵐 淳; 山口 高志*; 渡辺 誠*; 永野 博彦; 中山 理智*; 舘野 隆之輔*; 黄瀬 佳之*
no journal, ,
地球温暖化をはじめとした地球環境問題の理解と解決には、複数の学術分野の研究者らが連携する研究(学際研究)が必要という考えが広まりつつある。このような認識は、森林物質循環に関する研究課題に対しても当てはまると思われ、学際研究を通じた新たな発見が個別研究を推進するなどの研究者へのメリットもある。一方で、研究者にとって学際研究を追求することにはリスクもある。例えば、助成金の確保、業績の評価、論文出版などに困難があるといわれている。また、専門性の違いによるコミュニケーションや手法の創意工夫は学際研究を進める上で最も重要かつ労力を要する部分であるが、それらが評価される機会は限られている。我々は、2017年に大気・水文・生態・微生物・地球化学などの専門家で構成されるプロジェクトチームを結成し、京都大学北海道研究林標茶区の天然林を対象に窒素沈着の影響評価を行ってきた。本発表では、このプロジェクトで行われた学術分野間の交流や挑戦を振り返りながら、学際研究のメリットとリスクについて考える。
Battulga, B.; 中山 理智; 安藤 麻里子; 小嵐 淳
no journal, ,
水環境中のプラスチックは長期間生態系への影響が懸念されることから関心が高まっている。本研究では、バイオフィルムが水環境中の有機物循環に与える影響を明らかにするため、日本の沿岸河川におけるマイクロプラスチックに含まれる微生物群の構成とバイオフィルムの特徴に着目した。本研究の目的は、マイクロプラスチックの微生物バイオフィルムを抽出して、マイクロプラスチック・表層水・土壌に含まれる微生物群の構成等を明らかにすることである。試料は2021年から2022年の異なる季節において2つの沿岸河川で採取した。マクロプラスチックからバイオフィルムを抽出するため、超音波シリンジ処理を用いた分析法を新たに開発した。分析の結果、マイクロプラスチックの形態や微生物の分類とともに、それらの季節変動が明らかになった。