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佐藤 達彦; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; 松谷 悠佑; 松田 規宏; 平田 悠歩; et al.
Journal of Nuclear Science and Technology, 9 Pages, 2023/00
被引用回数:5 パーセンタイル:98.08(Nuclear Science & Technology)放射線挙動解析コードPHITSは、モンテカルロ法に基づいてほぼ全ての放射線の挙動を解析することができる。その最新版であるPHITS version 3.31を開発し公開した。最新版では、高エネルギー核データに対する親和性や飛跡構造解析アルゴリズムなどが改良されている。また、PHIG-3DやRT-PHITSなど、パッケージに組み込まれた外部ソフトウェアも充実している。本論文では、2017年にリリースされたPHITS3.02以降に導入された新しい機能について説明する。
Walter, H.*; Colonna, M.*; Cozma, D.*; Danielewicz, P.*; Ko, C. M.*; Kumar, R.*; 小野 章*; Tsang, M. Y. B*; Xu, J.*; Zhang, Y.-X.*; et al.
Progress in Particle and Nuclear Physics, 125, p.103962_1 - 103962_90, 2022/07
被引用回数:48 パーセンタイル:96.94(Physics, Nuclear)原子核-原子核衝突や原子核の状態方程式の研究において、反応計算モデルは重要なツールとなり、世界中で開発が進んでいる。本論文は、原子力機構のJQMD-2.0を含め、現在開発中の複数のコード開発者の協力により、これらコードを同じ条件で比較することで共通点や差異を明らかにしたプロジェクトTransport Model Evaluation Project (TMEP)を総括したものである。参加したコードはBoltzmann-Uehling-Uhlenbeck(BUU)法に基づく13のコードと、Quantum Molecular Dynamics (QMD)法に基づく12のコードであった。プロジェクトでは、Au原子核同士を衝突させてその終状態を観測する現実的な計算や、一辺が640nmの箱に核子を詰めて時間発展させる仮想的な計算を行った。その結果、BUU法コードとQMD法コードは計算原理が異なるため、計算の設定に関係なく系統的な差異が生じることが明らかになった。その一方で、同じ方法を採用するコード間の比較では、時間発展を細かく計算することでコード間の差は埋まっていき、一定の収束値を持つことが示された。この結果は今後開発される同分野のコードのベンチマークデータとして有用なものであるだけでなく、原子核基礎物理学の実験や理論研究の標準的な指針としても役に立つことが期待される。
涌井 隆; 若井 栄一; 直江 崇; 粉川 広行; 羽賀 勝洋; 高田 弘; 新宅 洋平*; Li, T.*; 鹿又 研一*
超音波Techno, 30(5), p.16 - 20, 2018/10
J-PARCの核破砕中性子源の水銀ターゲット容器(幅1.3m、長さ2.5m)は、水銀容器と二重壁構造を持つ保護容器からなる薄肉(最小厚さ3mm)の多重容器構造で、溶接組立による複雑な構造を持つので、溶接部の検査が重要である。溶接検査の精度を向上することを目的として、欠陥を有する試験片(厚さ3mm)を用いて、新たな超音波法の適用性を検討した。50MHzの探触子を用いた水浸超音波法計測では、直径約0.2mmの球状欠陥を検出できた。その大きさは、目標とする最小検出欠陥寸法(0.4mm)より十分小さい。また、フェーズドアレイ超音波法で評価した未溶接部長さは、断面観察より得られた結果(0.81.5mm)と良く一致した。
涌井 隆; 若井 栄一; 直江 崇; 新宅 洋平*; Li, T.*; 村上 一也*; 鹿又 研一*; 粉川 広行; 羽賀 勝洋; 高田 弘; et al.
Journal of Nuclear Materials, 506, p.3 - 11, 2018/08
被引用回数:3 パーセンタイル:30.05(Materials Science, Multidisciplinary)J-PARCの核破砕中性子源の水銀ターゲット容器は、水銀容器と二重壁構造を持つ保護容器からなる薄肉(最小3mm)の多重容器構造で、TIG溶接により組み立てられる複雑な構造を持つ。容器の健全性を評価するためには、溶接部等の欠陥を正確に測定することが重要である。溶接部の非破壊検査方法として、放射線透過試験では検出が難しい欠陥形状等もあるので、超音波探傷試験の併用が有効である。JISで規定されている非破壊の超音波探傷試験方法では、厚さが6mm以上のものを対象としているため、薄肉構造の本容器の検査には適用できない。そこで、より有効な検査方法を開発するため、寸法が分かっている微小な欠陥を持つ試料に対して、様々な超音波探傷法による測定を試みた。その結果、最新のフェーズドアレイ法(FMC/TFM)では、計測値(約1.3mm)と実寸法(約1.2mm)とほぼ同じであり、これまで、欠陥測定が困難であった薄肉構造においても、正確な欠陥検知が可能であることが初めて分かった。
小川 達彦; 佐藤 達彦; 橋本 慎太郎; 仁井田 浩二*
Physical Review C, 98(2), p.024611_1 - 024611_15, 2018/08
被引用回数:1 パーセンタイル:11.61(Physics, Nuclear)GeVからTeV級の原子核-原子核衝突による粒子生成は、重イオン加速器の安全設計や宇宙線被ばく評価などで非常に重要で、様々な反応モデルが考案されてきた。しかし、従来のモデルは核子間に働く相互作用が座標系に依存しており、運動する入射核と静止しているターゲット核が同じ座標系に移行すると本来は安定な核が壊れる問題があった。ここでは、人為的なバイアスを計算アルゴリズムに導入することで安定性を補っていたが、その副作用として残留核の質量や粒子の放出量が過小評価される問題があった。そこで、核子間の相互作用を座標系に依存しないよう記述した反応モデルJAMQMDを構築した。このモデルでは、原子核-原子核衝突反応を再現した際に核は座標系によらず安定を保ち、重陽子を含む多様な残留核の形成と二次粒子の生成も実験値をよく再現することも確認できた。さらに、3年前に開発された原子核-原子核衝突反応モデルJQMD Ver.2は3AGeV以下の入射エネルギーでしか適用できなかったが、JAMQMDでは入射エネルギーの制限をなくすことができた。そのため、JAMQMDは、放射線防護研究のみならず基礎研究の解析や計画などにも有益なモデルといえる。
佐藤 達彦; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; Tsai, P.-E.; 松田 規宏; 岩瀬 広*; et al.
Journal of Nuclear Science and Technology, 55(6), p.684 - 690, 2018/06
被引用回数:775 パーセンタイル:100(Nuclear Science & Technology)粒子・重イオン輸送計算コードPHITS Version 3.02を開発して公開した。核反応モデルや原子反応モデルを改良することにより、適応エネルギー範囲や精度を向上させた。また、計算効率を向上させる新しいタリーや、放射性同位元素を線源とする機能、医学物理分野にPHITSを応用する際に有用となるソフトウェアなど、様々なユーザーサポート機能を開発して、その利便性を大幅に向上させた。これらの改良により、PHITSは、加速器設計、放射線遮へい及び防護、医学物理、宇宙線研究など、幅広い分野で3000名以上のユーザーに利用されている。本論文では、2013年に公開したPHITS2.52以降に追加された新機能を中心に紹介する。
橋本 慎太郎; 佐藤 達彦; 岩元 洋介; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 仁井田 浩二*
核データニュース(インターネット), (120), p.26 - 34, 2018/06
放射線の挙動を模擬できる粒子・重イオン輸送計算コードPHITSは、加速器の遮へい設計や宇宙線・地球科学、放射線防護研究等の広範な分野で利用されている。PHITSでは、放射線が引き起こす物理現象を輸送過程と衝突過程の2つに分けて記述しており、さらに核反応が含まれる衝突過程を「核反応の発生」、「前平衡過程」、「複合核過程」の3段階的に分けて計算することで模擬している。これらの計算では断面積モデルKurotamaや核反応モデルINCL4.6やJQMDといった数多くの物理モデルが使用されており、PHITSの信頼性を高めるために、我々は各モデルの高度化を行ってきた。本稿は、日本原子力学会2018年春の年会の企画セッション「我が国における核データ計算コード開発の現状と将来ビジョン」における報告を踏まえ、PHITSにおける核反応モデルの役割を解説するとともに、近年我々が行ってきた様々なモデルの高度化や今後の展開についてまとめたものである。
小川 達彦; 橋本 慎太郎; 佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; 釜江 常好*
Proceedings of 3rd International Conference on Particle Physics and Astrophysics (ICPPA 2017) (Internet), p.391 - 398, 2018/04
被引用回数:0 パーセンタイル:0.11(Astronomy & Astrophysics)宇宙線重イオンに起因する高エネルギー線生成の反応において、重イオンは高速で地表に向かって進み、その破砕片から生じる即発線はドップラー効果により数100MeV程度の高いエネルギーを持ち、地表でも観測できる。そのため、近年、宇宙放射線物理においてこの反応への高い関心が寄せられている。しかし、この高エネルギー線の生成を計算で再現するためには、破砕反応を個々のイベントに分けて計算し、核破砕片の励起エネルギーや角運動量を計算し、さらに原子核構造データをもとにした脱励起計算をする必要がある。粒子重イオン輸送計算コードPHITSは、他のコードにはないこのような過程を模擬できるモデル等を含んでいる。例えば、近年PHITSは破砕片生成を計算するJAERI Quantum Molecular Dynamics (JQMD)モデルを改良し、破砕片の電荷や質量分布をより正確に再現することが可能となった。また、近年実装されたモデルEBITEMは、励起エネルギーや角運動量の情報に基づき、蒸発過程後の脱励起を再現できる。以上のように、最新のPHITSは、宇宙線重イオンに起因する線生成に対して優れた再現性を発揮できる。本研究は、PHITSを用いた宇宙線重イオンに起因する反応の統合的なシミュレーションにより、重イオンに起因する高エネルギー線生成の再現について貴重なアプローチを図ったものである。
佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; 松田 規宏; 奥村 啓介; et al.
EPJ Web of Conferences, 153, p.06008_1 - 06008_6, 2017/09
被引用回数:6 パーセンタイル:95.25(Nuclear Science & Technology)粒子・重イオン輸送計算コードPHITSは、原子力機構を中心とする日本やヨーロッパの研究所が共同で開発しているモンテカルロ放射線輸送計算コードである。PHITSには、様々な物理モデルやデータライブラリが含まれており、ほぼ全ての放射線の挙動を1TeVまで解析可能である。現在、国内外2500名以上のユーザーが、加速器設計、放射線遮へい、放射線防護、医学物理、地球惑星科学など様々な分野で利用している。本発表では、PHITS2.52からPHITS2.82までの間に導入した新しい物理モデルや計算機能などを紹介する。
佐藤 達彦; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; 松田 規宏; 岩瀬 広*; 仁井田 浩二*
放射線, 43(2), p.55 - 58, 2017/05
粒子・重イオン輸送計算コードPHITSは、原子力機構が中心となって開発しているモンテカルロ放射線輸送計算コードである。PHITSには、様々な物理モデルやデータライブラリが含まれており、ほぼ全ての放射線の挙動を1TeVまで解析可能である。これまでに、放射線施設の設計、医学物理計算、放射線防護研究、宇宙線・地球惑星科学など、工学,医学,理学の様々な分野で国内外2,500名以上の研究者・技術者に利用され、現在もその応用範囲は拡がっている。本稿では、その最新版であるPHITS2.88の特徴をまとめる。
岩元 洋介; 佐藤 達彦; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; 松田 規宏; 細山田 龍二*; 仁井田 浩二*
Journal of Nuclear Science and Technology, 54(5), p.617 - 635, 2017/05
被引用回数:96 パーセンタイル:99.72(Nuclear Science & Technology)粒子・重イオン輸送計算コードPHITSは、加速器遮蔽設計、医学物理計算など様々な目的で利用されている。本研究では、最新のPHITSバージョン2.88を用いて、核反応による粒子生成断面積、中性子輸送計算、電磁カスケード等に対する58ケースのベンチマーク計算を実施した。本稿では、このうち特徴的な結果を示した22のケースについて詳細に報告する。ベンチマーク計算の結果、100MeV以上の陽子、中性子、重イオン等の入射反応や電磁カスケードについては、PHITSによる計算結果は実験値を概ね再現した。一方、100MeV未満の粒子入射反応は、PHITSが設定を推奨している核内カスケードモデルINCL4の適用範囲外のエネルギー領域であるため、再現性が悪いことが確認された。また、100MeV以上の陽子入射反応のうち、核分裂成分の収率に対して、蒸発モデルGEMの高エネルギー核分裂過程の取り扱いの問題から実験値を再現しない場合があった。これらの課題は、評価済み核データJENDL4.0/HEをPHITSに組み込むこと等で改善していく予定である。以上のように、本研究でPHITSの様々な適用分野における計算精度を検証するとともに、今後の効率的な改善に重要な指針を得ることができた。
小川 達彦; 橋本 慎太郎; 佐藤 達彦
Journal of Nuclear Science and Technology, 53(11), p.1766 - 1773, 2016/11
被引用回数:7 パーセンタイル:55.03(Nuclear Science & Technology)核共鳴蛍光散乱反応(NRF)は、断面積ピークのエネルギーが同位体固有であることや、標準的な線検出器で測定が行えることなどから、核物質探知のための非破壊検査に対する応用が期待されている。現在のところNRFに関する研究では、逆コンプトン散乱を用いた単色光源の開発が進められており、実験技術は急速に進歩している。一方でシミュレーションはMCNP、Geant4などのコードで、これまでに測定された断面積を用いて、U-235など数核種のNRFを扱えるモデルが非公式版として開発されたものの、汎用的にNRFを再現できるモデルは開発されていない。本研究では、LiからBkまでの不安定核を含む1071核種について、ENSDF(Evaluated Nuclear Structure Data File)に掲載されている準位の情報と、原子核の準位間遷移に関する理論計算を組み合わせることで、汎用的にNRFを模擬するモデルEGNRF(ENSDF-based Generalized Nuclear Resonance Fluorescence model)を開発した。さらに、EGNRFを放射性核種生成や核物質探知のシミュレーションに応用する試験を行い、EGNRFの有効性を明らかにした。本モデルは、2015年12月25日に公開されたPHITS Ver.2.82に実装され、ユーザーに提供されている。
岩元 洋介; 佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; 松田 規宏; 岩瀬 広*; et al.
JAEA-Conf 2016-004, p.63 - 69, 2016/09
粒子・重イオン輸送計算コードシステムPHITSは、原子力機構を中心に、複数の国内外の研究機関の協力の下で開発が進められている。同コードは、様々な核反応モデルやデータライブラリにより、中性子・陽子・重イオン・電子・光子等のほとんどの種類の粒子の輸送を取り扱うことが可能で、ソースプログラム,実行ファイル,データライブラリといった全ての構成要素が一つのパッケージにまとめられて配布されている。現在、1800人を超える研究者等がPHITSユーザーとして登録されており、核技術、加速器施設の設計、医学物理といった様々な分野で利用している。本発表ではPHITSに組み込まれている物理モデルを簡単にまとめ、最新のミューオン核反応モデル、脱励起モデルEBITEMについて紹介する。また、IAEA-CRP「初期の放射線損傷断面積」の活動の下で行っている、PHITSを用いた材料のはじき出し断面積、はじき出し原子エネルギースペクトル、カーマの計算結果について紹介を行う。
小川 達彦; 橋本 慎太郎; 佐藤 達彦; 仁井田 浩二*
EPJ Web of Conferences, 122, p.04005_1 - 04005_6, 2016/06
被引用回数:0 パーセンタイル:0.06(Physics, Nuclear)重粒子線がん治療施設などの重イオン加速器の放射線安全評価においては、原子核-原子核反応の正確なモデル化が重要となる。放射線輸送計算コードPHITSはその反応モデルとして、JAERI量子分子動力学モデル(JQMD)を採用してきた。このモデルにより、残留核や二次中性子の生成をある程度正確に計算することができたが、核子間に働く相互作用が相対論不変な形式になっておらず、座標変換によって核内の定常状態から離脱する問題があった。この問題により、加速器の構造材や遮へい材として用いられる鉄や鉛などの核は反応を起こす前に崩壊しやすく、反応による崩壊とそうした疑似的崩壊が区別できなくなっていた。そこで、原子核内における核子間の相互作用を座標変換の相対論的効果に対して安定な形式に直す、核反応前の原子核を時間発展させて崩壊しないかチェックする、核媒質内効果を考慮して核子間の弾性散乱断面積を補正するなどの工夫を施した。この改良型JQMD(JQMD 2.0)を用いて、銀ターゲットに対する炭素イオン入射反応におけるフラグメント生成断面積を計算したところ、より正確に実験値を再現できることを確認した。
小川 達彦; 佐藤 達彦; 橋本 慎太郎; 仁井田 浩二*
EPJ Web of Conferences, 117, p.03011_1 - 03011_8, 2016/05
被引用回数:1 パーセンタイル:65.9(Nuclear Science & Technology)原子核-原子核衝突反応におけるフラグメントの角度分布は、原子核理論研究及び粒子線応用において重要な要素である。量子分子動力学(QMD)モデルは汎用放射線輸送計算コードにおいて原子核-原子核衝突反応とそれに伴う破砕片の生成を再現するために広く採用されている。しかし、QMDモデルは破砕片の角度分布を実際より広く見積もる傾向があり、PHITSに実装されているJQMDもこれにあてはまる。そこで、原子核同士の周辺が擦れるような周辺衝突に関する反応の描像を改善することで、角度分布のより正確な再現を可能にした。ここでは、最初に核子間の相互作用を相対論不変な形式に書き直すことにより、反応を起こしていない核が疑似的に崩壊することを防いだ。これにより、周辺衝突した核と疑似的に崩壊した核が区別できないという、従来抱えていた問題を解決した。さらに、核子-核子間の弾性散乱断面積が核の外側でパウリブロッキングの減少により増加する効果を取り込み、周辺衝突の場合核子-核子散乱断面積が大きくなる効果の反映を可能とした。その結果、改良版JQMD(RJQMD)はJQMDと比較して、衝突反応で生じるフラグメントの角度分布をより正確に再現することが可能になった。
佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; 松田 規宏; 橋本 慎太郎; 岩元 洋介; 古田 琢哉; 野田 秀作; 小川 達彦; 岩瀬 広*; 中島 宏; et al.
Annals of Nuclear Energy, 82, p.110 - 115, 2015/08
被引用回数:34 パーセンタイル:93.49(Nuclear Science & Technology)原子力機構が中心となり日欧の複数機関が協力して汎用モンテカルロ粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを開発している。PHITSは、幅広いエネルギー範囲のほぼすべての放射線の挙動を扱うことができ、そのすべてのコンポーネントは1つのパッケージにまとめられ、RIST, OECD/NEA Databank, RSICCを通じて全世界に配布されている。その結果、PHITSユーザー数は国内外で総計1,000名を超え、工学・理学・医学のさまざまな分野で利用されている。本論文では、PHITSの概要について紹介するとともに、イベントジェネレータモードやビーム輸送機能などPHITSに組み込まれた幾つかの重要な機能について解説する。
小川 達彦; 佐藤 達彦; 橋本 慎太郎; 佐藤 大樹; 津田 修一; 仁井田 浩二*
Physical Review C, 92(2), p.024614_1 - 024614_14, 2015/08
被引用回数:44 パーセンタイル:92.28(Physics, Nuclear)重イオンによる被ばくが生じる宇宙活動や重粒子線がん治療などの線量評価では、原子核-原子核反応のモデル化が重要となる。しかし、モデルの検証で必要な核反応による核種生成断面積は、エネルギーに対する系統的な測定例がほとんどなかった。そこで、本研究では厚いターゲットを使用して、炭素イオン照射により生成する様々なエネルギーの破砕片を多段のシンチレータに通して検知する測定法を開発した。この測定による結果から破砕片の電荷や質量、生成時のエネルギーを求め、破砕片生成断面積をエネルギーに対して系統的に明らかにした。また、放射線輸送計算コードPHITSは、原子核-原子核反応のモデルとして、JAERI量子分子動力学モデル(JQMD)を採用してきたが、数100MeV/uのエネルギーで原子核の中心同士が遠い場合の反応(周辺衝突反応)での核種生成を過小評価する問題があった。従来のJQMDは核子間に働く相互作用が相対論不変な形式になっていなかったため、実験室系から重心系への座標変換によって核子のエネルギーが変化し、原子核が反応前に励起・分解していた。そこで、核子間の相互作用を相対論不変な形式に直した改良型JQMD(JQMD2.0)を開発した。JQMD2.0を用いて計算したところ、フラグメント生成断面積の測定値のうち、特に周辺衝突反応で生成する核種の生成をより正確に再現した。
Sihver, L.*; 佐藤 達彦; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 仁井田 浩二*
Proceedings of IEEE Aerospace Conference 2015, 8 Pages, 2015/06
長期間の宇宙空間のミッションの計画立案には、宇宙機や人体内の放射線場の正確な予測が必要となる。原子力機構が中心となって開発しているPHITSコードを宇宙放射線防護分野に利用するためには、核反応モデルの高度化が重要となる。本論文では、最近、開発・改良されたPHITSの核反応モデルに関して、その概要をまとめる。具体的には、全反応断面積計算モデルKurotamaの改良、核内カスケードモデルINCLの導入、統計マルチフラグメンテーションモデルSMMの開発、歪曲波ボルン近似DWBAとINCLの複合モデルの開発を紹介する。これらの改良や開発したモデルについては、実験データとの比較により計算精度を検証した結果も示す。
小川 達彦; 佐藤 達彦; 橋本 慎太郎; 仁井田 浩二*
Proceedings of Joint International Conference on Mathematics and Computation, Supercomputing in Nuclear Applications and the Monte Carlo Method (M&C + SNA + MC 2015) (CD-ROM), 11 Pages, 2015/04
インクルーシブ断面積と運動量・エネルギー保存則に従いながら、核反応イベント毎のエネルギーや運動量を復元する新しい放射線輸送計算アルゴリズムを開発した。これまでのモンテカルロ計算アルゴリズムでは、粒子の平均的挙動を解析することはできたが、平均値周りの分散を考慮することはできなかった。さらに、核反応から生じる二次粒子の運動や残留核の反跳を計算することは不可能であった。この問題を解決するために、PHITSで平均値周りの分散や二次粒子・残留核の挙動を解析するイベントジェネレータモードをさらに改良し、従来精度に問題のあった(n,np),(n,na)などの荷電粒子放出反応にも適用できるようにした。さらに、この新しいアルゴリズムの影響力を評価するため、線量換算係数の評価やソフトエラー見積り、放射線損傷計算など様々なケーススタディに適用し、その影響が顕著であることを示した。なお、この新しいアルゴリズムはイベントジェネレータモードバージョン2として、2014年夏リリースのPHITSバージョン2.70以降に実装され、ユーザーに配布されている。
岩元 洋介; 佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; 松田 規宏; 橋本 慎太郎; 古田 琢哉; 野田 秀作; 小川 達彦; 岩瀬 広*; 中島 宏; et al.
JAEA-Conf 2014-002, p.69 - 74, 2015/02
粒子・重イオン輸送計算コードシステムPHITSは、原子力機構を中心に、複数の国内外の研究機関の協力の下で開発が進められている。PHITSは、様々な核反応モデルやデータライブラリにより、中性子・陽子・重イオン・電子・光子等のほとんどの種類の粒子の輸送を取り扱うことができる。PHITSはFortran言語で記述されており、ソースプログラム、実行ファイル、データライブラリといった全ての構成要素が一つのパッケージにまとめられている。このパッケージは、国内へは高度情報科学技術研究機構、国外へは経済協力開発機構原子力機関のデータバンク、または米国放射線安全情報計算センターを通して、利用希望者へ配布されている。現在、1000人を超える研究者がPHITSユーザーとして登録されており、核技術、加速器施設の設計、医学物理といった様々な分野で利用している。本発表ではPHITSに組み込まれている物理モデルを簡単にまとめ、重要な機能のイベントジェネレータモード、データライブラリを用いた計算、適用例として材料の放射線損傷を計算するための機能を紹介する。また、PHITSのさらなる高度化に必要な核データコミュニティへの要望を示す。