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論文

Prediction of composite neutron source spectra by combination of JENDL-5 and PHITS

小川 達彦

Annals of Nuclear Energy, 216, p.111256_1 - 111256_12, 2025/06

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)

AmBeに代表されるような、アルファ線を放出するアクチノイドと軽元素から構成される複合中性子源の性能を、多面的かつ絶対値でシミュレートできる新しい方法を開発した。この手法はモンテカルロ放射線輸送コードPHITSを用いて、$$alpha$$粒子用JENDL-5断面データライブラリと、ATIMAによる阻止能計算、ラティスジオメトリ計算機能を組み合わせることで、複合線源の様々な観測量を再現できる。従来の複合中性子源シミュレーション法は、測定値や近似的な断面積、多数イベントを平均した積分量などを使用するため、線源の特性パラメータ(アクチノイド粒径や線源のマクロなサイズ)を変更できなかったり、イベント内に放出される粒子間の相関を考慮できないなどの問題があったが、本手法ではそれらの問題が克服されている。この手法を用いて複合中性子源の様々な量、アクチノイド粒径依存性、中性子放出絶対強度、中性子および光子のエネルギースペクトル、中性子多重度、中性子放出の時間構造などを予測できることを示した。特に中性子の放出絶対強度とエネルギースペクトルについては、$$^{241}$$AmBe、$$^{241}$$AmF、$$^{241}$$AmB、$$^{239}$$PuBe、$$^{242}$$CmBe、$$^{238}$$Pu$$^{13}$$Cの6種類の線源で実験値と比較し、実験値の絶対値に不確定性がある$$^{239}$$PuBeを除いて矛盾ない結果が得られた。この方法を用いれば、複合中性子源から生じる中性子のシミュレーションにおいて、カウントレート、コインシデンスイベントの量、ガンマ線によるノイズなど、実用的な定量指標の計算が可能になる。

論文

Development of a chemical code applicable to ions based on the PHITS code for efficient and visual radiolysis simulations

松谷 悠佑; 吉井 勇治*; 楠本 多聞*; 小川 達彦; 大西 世紀*; 平田 悠歩; 佐藤 達彦; 甲斐 健師

Physical Chemistry Chemical Physics, 27(14), p.6887 - 6898, 2025/04

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Chemistry, Physical)

水の放射線分解により生成されるラジカルは、DNA損傷誘発、染色体異常、発がんなど、放射線による生物影響の評価において重要な役割を果たす。粒子および重イオン輸送コードシステム(PHITS)では、あらゆる荷電粒子について水中の原子相互作用を推定できる飛跡構造解析モードと、ラジカルをシミュレート可能な電子線専用の化学コード(PHITS-Chem)が先行研究にて開発された。本研究では、あらゆるイオンビームに適用可能なPHITS-Chemコードを開発すると同時に、化学種間の反応をより効率的に検出する空間分割法や化学種の4次元可視化機能を整備した。更新されたPHITS-Chemコードは、文献にて報告される陽子線、$$alpha$$粒子線、炭素イオン線のG値と比較することにより検証され、PHITSオリジナル3次元描画ソフトPHIG-3Dによりラジカルの拡散動態を直感的に評価することに成功した。また、空間分割法の導入により、計算精度を維持しながら計算時間を大幅に短縮(約28倍高速化)することにも成功した。開発したPHITS-Chemコードは、粒子線治療においてラジカルにより誘発される生物効果の正確かつ直感的な理解に貢献することが期待される。

論文

Overview of PHITS Ver.3.34 with particular focus on track-structure calculation

小川 達彦; 平田 悠歩; 松谷 悠佑; 甲斐 健師; 佐藤 達彦; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 松田 規宏; et al.

EPJ Nuclear Sciences & Technologies (Internet), 10, p.13_1 - 13_8, 2024/11

放射線挙動解析コードPHITSは、モンテカルロ法に基づいてほぼ全ての放射線の挙動を解析することができる放射線挙動解析計算コードである。その最新版であるPHITS version 3.34の、飛跡構造解析機能に焦点を置いて説明する。飛跡構造解析とは、荷電粒子が物質中を運動する挙動を計算する手法の一つで、個々の原子反応を識別することにより原子スケールでの追跡を可能にするものである。従来の飛跡構造解析モデルは生体を模擬する水だけにしか適用できず、遺伝子への放射線損傷を解析するツールとして使われてきた飛跡構造解析であるが、PHITSにおいてはPHITS-ETS、PHITS-ETS for Si、PHITS-KURBUC、ETSART、ITSARという飛跡構造解析モデルが補い合うことにより、生体の放射線影響だけでなく、半導体や材料物質など任意物質に対する適用が可能になっている。実際にこれらのモデルを使って、放射線によるDNA損傷予測、半導体のキャリア生成エネルギー計算、DPAの空間配置予測など、新しい解析研究も発表されており、飛跡構造解析を基礎とするボトムアップ型の放射線影響研究の推進に重要な役割を果たすことが期待できる。

論文

Coulomb spike model of radiation damage in wide band-gap insulators

Costantini, J.-M.*; 小川 達彦

Quantum Beam Science (Internet), 8(3), p.20_1 - 20_16, 2024/08

本研究では、不導体材料における放射線照射損傷の発生メカニズムを、クーロンスパイク法に基づいて説明する理論を構築した。ほぼ同じ密度(2.65)を持つフッ化リチウムと二酸化ケイ素を標的とし、ほぼ同じLETを持つ核子辺り1MeVのNiイオンとKrイオンを照射した場合について、PHITSの飛跡構造解析機能ITSARTとETS-for-Siを用いて電離の空間分布を計算し、電離(カチオン)の間に生じる静電気エネルギーを推定した。この静電気エネルギーが運動エネルギー、ひいては標的中の熱に変換されると仮定すると、二酸化ケイ素の中では、運動するカチオンの核的衝突によって付与される熱で、結晶の溶融が発生することを説明できた。また、フッ化リチウムではフォノンが付与される熱を受け取るが、それが十分でないため溶融に至らないことを説明できた。実験的な観測によると、二酸化ケイ素でのみ溶融後の冷却によって生じたと思われるアモルファス相が見られることから、本研究の理論解析は実験的事実と符合する妥当なものと判断される。

論文

Numerical intercomparison of PHITS and Geant4 Monte Carlo codes for fast neutron inelastic scattering applications

Meleshenkovskii, I.*; Van den Brandt, K.*; 小川 達彦; Datema, C.*; Mauerhofer, E.*

European Physical Journal Plus (Internet), 139, p.565_1 - 565_9, 2024/07

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Physics, Multidisciplinary)

速中性子散乱による非破壊分析は物質の成分分析手法として有用であるが、分析に用いられる中性子ビームや測定器には様々なパラメータがあり、実際の応用のためにはモンテカルロ放射線輸送計算コードによるシミュレーションなどで最適化する必要がある。しかし、モンテカルロ放射線輸送計算コードは核データや反応モデルによって散乱反応の観測量を計算していることから、既存コードが速中性子散乱を正確に描像できるかどうか、またコード間で観測量にどれほどの差異が生じるかは、信頼性の高いシミュレーションのために必要となる。そこで本研究では、世界的に広く用いられているモンテカルロ放射線輸送計算コードとしてPHITSとGeant4を例にとり、速中性子散乱における観測量を計算して相互に比較した。標的としてはホウ素、鉄、ネオジム、ディスプロシウムを用い、これらが2.5MeVの中性子に照射された際に、標的から出射する中性子のエネルギースペクトルを計算した。また、中性子照射された標的から生じるガンマ線を検出することを想定し、100keVから9000keVのガンマ線を、CeBrガンマ線検出器で検知した場合の波高スペクトルを計算した。これらの計算の結果、標的からの出射中性子スペクトルはホウ素ターゲットの場合に弾性散乱ピークと非弾性散乱成分の間に両コードで異なる傾向が見えるほかは、よく合致することが分かった。この傾向についても、弾性散乱の計算アルゴリズムの違いが原因であることが示唆されている。

論文

Defect formation simulated by track structure calculation model

小川 達彦; 岩元 洋介

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 549, p.165255_1 - 165255_4, 2024/04

 被引用回数:1 パーセンタイル:63.95(Instruments & Instrumentation)

原子欠陥は固体の照射効果を決定する重要な要素である。入射放射線やその二次粒子の撃力によって原子が弾き出されると、その標的物質の機械的・電気的。化学的性質が変化する。PHITSのDPAタリーのように、非弾性核反応断面積やラザフォード散乱断面積を元にした欠陥生成計算モデルは存在するが、巨視的な平均的欠陥密度の計算に用いられ、転移のように欠陥の空間的配置に影響される現象の計算には直接使えない問題があった。そこで本研究では、原子力機構が開発する汎用放射線輸送計算コードPHITSの飛跡構造解析コードITSARTを応用し、放射線による原子欠陥の空間的配置を計算した。ITSARTは原子の弾性散乱を含め、荷電粒子の反応をナノスケールで一個づつ計算することができるため、欠陥を生じるような反応を個として識別した計算が可能である。まず精度検証のためITSARTにより銅のDPA(Displacement Per Atom)を計算したところ、文献値と合致することが確認できた。同じ方法を用いて600MeVの陽子線に照射されたSiO$$_{2}$$で、欠陥の空間的配置を計算することに成功した。ユーザーはPHITSの出力を分子動力学モデルなどの後段の計算に送ることで、欠陥の更なる時間発展を計算することが可能になると期待される。

論文

Development of a model for evaluating the luminescence intensity of phosphors based on the PHITS track-structure simulation

平田 悠歩; 甲斐 健師; 小川 達彦; 松谷 悠佑; 佐藤 達彦

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 547, p.165183_1 - 165183_7, 2024/02

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Instruments & Instrumentation)

蛍光体の粒子線に対する発光効率は消光効果により低下することが知られている。蛍光体検出器を用いて正確な線量分布を得るためには、消光効果のメカニズムを理解することが不可欠である。本研究では、PHITSに実装された任意の物質に対する飛跡構造解析モードに基づいて蛍光体の発光強度を推定する新しいモデルを開発した。開発したモデルにより、BaFBr検出器の消光効果のシミュレーションが可能となり、その結果を対応する測定データと比較することにより検証した。このモデルは、様々なの蛍光体検出器の開発に貢献することが期待される。

論文

Development of nuclear de-excitation model EBITEM Ver.2

小川 達彦; 橋本 慎太郎; 佐藤 達彦

Journal of Nuclear Science and Technology, 61(1), p.68 - 73, 2024/01

 被引用回数:1 パーセンタイル:27.70(Nuclear Science & Technology)

原子力機構が中心となって開発・普及を行う汎用モンテカルロ放射線輸送計算コードPHITSは、原子核の電磁気的脱励起過程(ガンマ線、内部転換電子を放出する脱励起過程)を理論モデルEvaluated Nuclear Structure Data File (ENSDF-)-Based Isomeric Transition and isomEr production Model (EBITEM)により計算する。本研究では、同モデルを特に中性子捕獲反応の高精度化に焦点を当てて改良した。従来、中性子捕獲反応を起こした原子核は、理論モデルである単核子模型と一部の核しかカバーしないReedyらの文献値で脱励起を計算していたところ、すべての天然核種をカバーするEvaluated Gamma Activation File (EGAF)で計算するように改良した。また、その後に続く脱励起に使われる原子核構造データは、ガンマ線放出のデータが載っているENSDFを2013年に取得して使っていたが、内部転換電子放出のデータも含むReference Input Parameter Library 3 (RIPL-3)に差し替えた。これにより内部転換電子放出過程も計算できるようにし、この過程を飛跡構造解析モデルのために開発した原子脱励起モデルにさらに繋げることで、オージェ電子や蛍光X線の放出も計算できるようにした。この新しいバージョンのEBITEMを使って、中性子捕獲から生じるガンマ線スペクトルを計算し、文献値や核データと従来以上によく一致することを確認した。同モデルは次のPHITS公式リリースに実装し、ユーザーに提供する予定である。

論文

Recent improvements of the Particle and Heavy Ion Transport code System; PHITS version 3.33

佐藤 達彦; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 小川 達彦; 古田 琢哉; 安部 晋一郎; 甲斐 健師; 松谷 悠佑; 松田 規宏; 平田 悠歩; et al.

Journal of Nuclear Science and Technology, 61(1), p.127 - 135, 2024/01

 被引用回数:119 パーセンタイル:99.97(Nuclear Science & Technology)

放射線挙動解析コードPHITSは、モンテカルロ法に基づいてほぼ全ての放射線の挙動を解析することができる。その最新版であるPHITS version 3.31を開発し公開した。最新版では、高エネルギー核データに対する親和性や飛跡構造解析アルゴリズムなどが改良されている。また、PHIG-3DやRT-PHITSなど、パッケージに組み込まれた外部ソフトウェアも充実している。本論文では、2017年にリリースされたPHITS3.02以降に導入された新しい機能について説明する。

論文

Atmospheric ionizations by solar X-rays, solar protons, and radiation belt electrons in September 2017 space weather event

村瀬 清華*; 片岡 龍峰*; 西山 尚典*; 佐藤 薫*; 堤 雅基*; 田中 良昌*; 小川 泰信*; 佐藤 達彦

Space Weather, 21(12), p.e2023SW003651_1 - e2023SW003651_11, 2023/12

 被引用回数:1 パーセンタイル:17.57(Astronomy & Astrophysics)

大気に降り注ぐ高エネルギー粒子によるオゾン層などの影響を調べるには、それら粒子による電離量の空間・時間分布を正確に把握する必要がある。そこで、我々は、2017年9月に発生した太陽フレア時における大気圏内電離量の空間・時間分布に対する観測値を粒子・重イオン輸送計算コードPHITSによる計算値と比較した。その結果、計算値は観測値をファクター2の範囲内で再現できることが分かり、本研究で開発した手法が宇宙天気研究に貢献できることを明らかにした。

論文

Development of an electron track-structure mode for arbitrary semiconductor materials in PHITS

平田 悠歩; 甲斐 健師; 小川 達彦; 松谷 悠佑*; 佐藤 達彦

Japanese Journal of Applied Physics, 62(10), p.106001_1 - 106001_6, 2023/10

 被引用回数:4 パーセンタイル:52.19(Physics, Applied)

半導体検出器の設計を最適化するには、半導体物質内において放射線がキャリア(励起電子)に変換されるまでの過程を理論的に解析する必要がある。本研究では、任意の半導体物質に対し、放射線により生じる二次電子の挙動を極低エネルギー(数eV)まで追跡し、励起電子が生成される過程を模擬できる機能(ETSART)を開発し、PHITSに実装した。具体的には、ETSARTを用いて計算した電子の飛程はICRU37で推奨されたデータ別の計算結果と一致することを確認した。さらに、半導体検出器の特性を表す重要な指標である、一つの励起電子の生成に必要な平均エネルギー($$varepsilon$$値)について検討し、これまで$$varepsilon$$値とバンドギャップエネルギーの関係は単純な直線モデルで考えられていたが、その関係は非線形関数であることを明らかにした。ETSARTは半導体検出器の最適化設計や応答解析に留まらず、新しい半導体物質の特性評価への応用も期待できる。

論文

Improvement of the hybrid approach between Monte Carlo simulation and analytical function for calculating microdosimetric probability densities in macroscopic matter

佐藤 達彦; 松谷 悠佑*; 小川 達彦; 甲斐 健師; 平田 悠歩; 津田 修一; Parisi, A.*

Physics in Medicine & Biology, 68(15), p.155005_1 - 155005_15, 2023/07

 被引用回数:9 パーセンタイル:86.74(Engineering, Biomedical)

PHITSには、マイクロドジメトリ機能と呼ばれるモンテカルロ法と解析関数を組み合わせて巨視的な空間内における微視的な領域の線量分布を計算する機能が備わっている。本論文では、そのマイクロドジメトリ機能を同じくPHITSに組み込まれた最新の飛跡構造解析モードを使って改良した結果について報告する。

論文

Virtual photon approach of cathodoluminescence and ion-beam induced luminescence of solids

Constantini, J.-M.*; 小川 達彦; Gourier, D.*

Journal of Physics; Condensed Matter, 35(28), p.285701_1 - 285701_12, 2023/04

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Physics, Condensed Matter)

従来、物質への放射線照射で発生するルミネッセンスはエネルギー付与に基づいて推定されるが、入射粒子がもたらす仮想光子のスペクトルに基づいて計算する方法を本研究で新たに開発し、その妥当性を実験に基づいて検証した。入射荷電粒子(電子,陽子,$$alpha$$粒子)が仮想光子を周囲に放出し、標的物質である$$alpha$$-アルミナの欠陥や不純物準位にある電子を励起すると仮定して、仮想光子スペクトルと準位の光子吸収スペクトルを理論計算し、その畳み込み積分によって励起遷移強度を算出した。この計算にPHITSの飛跡構造解析計算コードITSARTを利用することによって、荷電入射粒子が二次電子を散乱し、その二次電子が試料中の電子を励起する二次的な効果も考慮した。この励起遷移強度を荷電粒子飛跡上で積分し、実験的に得られたルミネッセンス強度と比較したところ、実験値の傾向を再現することができた。

論文

Coulomb spike modelling of ion sputtering of amorphous water ice

Constantini, J.-M.*; 小川 達彦

Quantum Beam Science (Internet), 7(1), p.7_1 - 7_16, 2023/03

イオンなどを物体に照射し、物体の構成原子や分子を放出させるスパッタリングは、工学的に重要な技術として様々な分野で利用されている。このスパッタリングで放出される原子や分子の運動では、入射粒子の運動と真逆に放出される成分があることが実験的に知られていた。従来、照射効果の予測に標準的に用いられてきたサーマルスパイクモデルでは、伝導により平衡に達した熱統計集団が蒸発して粒子を放出する。ただし、この放出は等方的であり、指向性のある成分は説明が付かない。本研究では、イオン照射で発生する電離が飛跡に沿って直線状に配置され、それらの間に働く電気的斥力がイオン照射方向に指向性を持つことに着想を得て、スパッタリングの角度分布をイオン照射で発生する静電気力により表現した。具体的な手法として、イオン照射によって発生する電離を飛跡構造解析コードRITRACKSを使用して計算し、その電離で発生する陽イオンの幾何的配置から、静電気力によるイオンの運動を計算した。その結果、1MeVの陽子や1MeV/uの炭素イオンを水に照射した場合、照射と逆方向 にイオンの噴出が確認できた他、スパッタリングの放出収量も先行研究の実験と矛盾ない結果が得られた。

論文

Benchmark shielding calculations for fusion and accelerator-driven sub-critical systems

岩元 洋介; 津田 修一; 小川 達彦

Frontiers in Energy Research (Internet), 11, p.1085264_1 - 1085264_11, 2023/01

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Energy & Fuels)

本レビューでは、核融合,加速器駆動未臨界システム(ADS)等の先進的な原子炉システムにおける放射線遮へい設計の検証に有益な実験データの解説と、放射線輸送計算コードPHITSと核データライブラリJENDL-4.0/HEを用いた実験値の検証計算結果について報告する。関連する加速器施設の遮蔽に関する実験の多くは日本国内で実施されている。今回、(1)14MeV中性子を線源とした鉄遮蔽体内の中性子スペクトル、(2)14MeV中性子を線源とした様々な材料の球状パイルからの漏洩中性子スペクトル、(3)数十MeV中性子源による鉄及びコンクリート遮蔽体透過後の中性子スペクトル、(4)高エネルギー重イオン入射によるターゲットからの生成中性子スペクトル、及び(5)重イオン核反応生成粒子を線源としたコンクリート中の誘導放射能量について検討した結果、全体を通して実験値と計算値は概ね良く一致することがわかった。これらの実験データは、先進的な原子炉システムの遮蔽設計に用いられる他の放射線輸送計算コードや核データライブラリの検証に活用される。

論文

放射線の挙動を原子サイズで計算できるPHITSの新機能

小川 達彦; 平田 悠歩; 松谷 悠佑; 甲斐 健師

Isotope News, (784), p.13 - 16, 2022/12

入射荷電粒子が二次電子を生じる過程を原子サイズで明示的に計算する飛跡構造解析計算は、放射線生物影響,材料照射効果,放射線検出などの研究にとって重要な技術であり、近年主著者らの研究で新しい飛跡構造解析計算コードが開発された。従来の飛跡構造解析計算は標的物質の誘電関数を基に断面積を計算するため、誘電関数が良く測定されている水以外に、適用できるモデルは限られていた。本研究では誘電関数を使うことなく、二次電子エネルギー分布の系統式と阻止能を基に飛跡構造解析計算を行う手法により、誘電関数の測定値の有無にかかわらず、任意の物質で飛跡構造解析計算を実行することを可能とした。こうして開発したモデルで、陽子による水中の動径線量分布や二次電子生成量を計算したところ、従来のコードや実験値とよく一致した。このモデルは原子力機構の放射線輸送計算コードであるPHITS Ver3.25以降に実装され、任意物質に適用できる世界初の汎用飛跡構造解析コードとしてユーザーに提供されている。

論文

Implementation of the electron track-structure mode for silicon into PHITS for investigating the radiation effects in semiconductor devices

平田 悠歩; 甲斐 健師; 小川 達彦; 松谷 悠佑; 佐藤 達彦

Japanese Journal of Applied Physics, 61(10), p.106004_1 - 106004_6, 2022/10

 被引用回数:6 パーセンタイル:50.12(Physics, Applied)

検出器や半導体メモリなどのSiデバイスにおいて、パルス波高欠損やソフトエラーなどの放射線影響が問題となっている。このような放射線影響のメカニズムを解明するためには、放射線による精密なエネルギー付与情報が必要である。そこで、Siにおける電子線のエネルギー付与をナノスケールで計算できる電子線飛跡構造解析機能を開発しPHITSに実装した。開発した機能の検証として電子の飛程や付与エネルギー分布を計算したところ、既報のモデルと一致することを確認した。また、一つのキャリア生成に必要なエネルギー($$varepsilon$$値)について、実験値を再現する二次電子生成のエネルギー閾値は2.75eVであることを見出すとともに、このエネルギー閾値は解析的に計算された結果および実験値と一致することがわかった。本研究で開発した電子線飛跡構造解析機能はSiデバイスに対する放射線影響の調査に応用することが期待される。

論文

Post fission time evolution calculation by FIFRELIN coupled with PHITS and DCHAIN

小川 達彦; Litaize, O.*; Mancusi, D.*; Chebboubi, A.*; Serot, O.*

European Physical Journal A, 58(8), p.153_1 - 153_9, 2022/08

 被引用回数:1 パーセンタイル:18.70(Physics, Nuclear)

CEAが開発を進めるFIFRELINは、核分裂における観測量を計算する目的で開発された核分裂計算コードである。同コードは、実験値やデータベースを活用することで、核分裂の観測量である残留核分布や中性子収量などを高精度に予測することができ、核データ評価や核分裂実験の計画などに使われてきた。しかしながら、FIFRELINは残留核のベータ崩壊を扱うことができず、残留線量や崩壊熱の計算ができないという問題があった。また、中性子やガンマ線などの即発二次粒子についても、エネルギースペクトルを計算することはできるものの、その後の輸送計算で巨大な外部ファイルを生成する方法しかなく、即発二次粒子の検出などのシミュレーションの障害になっていた。そこで、これらの課題を解決するため、放射線輸送計算コードPHITSとFIFRELINの接続を行った。PHITSのうち燃焼計算コードであるDCHAINをFIFRELINと接続することにより、FIFRELINが計算した残留核分布に基づいて燃焼計算が可能になった。その計算法を適用して$$^{235}$$U(n$$_{th}$$,fission)反応後の崩壊熱を計算したところ、最新バージョンのFIFRELINとDCHAINを使うことで精度よく先行研究の文献値を再現できることが確認できた。また、FIFRELINで計算した即発二次粒子のエネルギースペクトルをPHITSの粒子輸送機能に読ませることで、即発二次粒子の輸送や反応のシミュレーションが可能になった。

論文

Theoretical and experimental estimation of the relative optically stimulated luminescence efficiency of an optical-fiber-based BaFBr:Eu detector for swift ions

平田 悠歩; 佐藤 達彦; 渡辺 賢一*; 小川 達彦; Parisi, A.*; 瓜谷 章*

Journal of Nuclear Science and Technology, 59(7), p.915 - 924, 2022/07

 被引用回数:12 パーセンタイル:89.90(Nuclear Science & Technology)

放射線測定において、検出器の線量応答を高い信頼性を持って評価することは、放射線治療,放射線防護,高エネルギー物理学など、多様な分野で共通した課題となる。しかし、多くの蛍光現象を利用する放射線検出器では、高い線エネルギー付与(LET)を持つ放射線に対して消光効果と呼ばれる検出効率の低下を示すことが知られている。また、この消光現象は、異なる種類の粒子線による微小領域へのエネルギー付与分布の変化にも依存する。先行研究では、PHITSコードのマイクロドジメトリ計算により消光現象を予測する手法が開発されていた。本研究では、この成果を活用して、PHITSのマイクロドジメトリ計算により、BaFBr:Eu検出器の光刺激蛍光(OSL)効率を予測した。また、$$^{4}$$He, $$^{12}$$C, $$^{20}$$Neのイオンビーム照射実験を行い、BaFBr:Eu検出器の発光効率変化を測定し、計算による予測値を検証した。本検証では、PHITSのマイクロドジメトリ計算でターゲット球の直径を30-50nmと設定することで、発光効率の予測値が実験値を再現した。また、計算によりBaFBr:Euの発光効率の粒子線種に対する依存性を明らかにし、PHITSのマイクロドジメトリ計算がBaFBr:EuのOSL測定結果を正確に予測できることを示した。

論文

Transport model comparison studies of intermediate-energy heavy-ion collisions

Walter, H.*; Colonna, M.*; Cozma, D.*; Danielewicz, P.*; Ko, C. M.*; Kumar, R.*; 小野 章*; Tsang, M. Y. B*; Xu, J.*; Zhang, Y.-X.*; et al.

Progress in Particle and Nuclear Physics, 125, p.103962_1 - 103962_90, 2022/07

 被引用回数:84 パーセンタイル:95.20(Physics, Nuclear)

原子核-原子核衝突や原子核の状態方程式の研究において、反応計算モデルは重要なツールとなり、世界中で開発が進んでいる。本論文は、原子力機構のJQMD-2.0を含め、現在開発中の複数のコード開発者の協力により、これらコードを同じ条件で比較することで共通点や差異を明らかにしたプロジェクトTransport Model Evaluation Project (TMEP)を総括したものである。参加したコードはBoltzmann-Uehling-Uhlenbeck(BUU)法に基づく13のコードと、Quantum Molecular Dynamics (QMD)法に基づく12のコードであった。プロジェクトでは、Au原子核同士を衝突させてその終状態を観測する現実的な計算や、一辺が640nmの箱に核子を詰めて時間発展させる仮想的な計算を行った。その結果、BUU法コードとQMD法コードは計算原理が異なるため、計算の設定に関係なく系統的な差異が生じることが明らかになった。その一方で、同じ方法を採用するコード間の比較では、時間発展を細かく計算することでコード間の差は埋まっていき、一定の収束値を持つことが示された。この結果は今後開発される同分野のコードのベンチマークデータとして有用なものであるだけでなく、原子核基礎物理学の実験や理論研究の標準的な指針としても役に立つことが期待される。

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