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論文

Coulomb spike modelling of ion sputtering of amorphous water ice

Constantini, J.-M.*; 小川 達彦

Quantum Beam Science (Internet), 7(1), p.7_1 - 7_16, 2023/03

イオンなどを物体に照射し、物体の構成原子や分子を放出させるスパッタリングは、工学的に重要な技術として様々な分野で利用されている。このスパッタリングで放出される原子や分子の運動では、入射粒子の運動と真逆に放出される成分があることが実験的に知られていた。従来、照射効果の予測に標準的に用いられてきたサーマルスパイクモデルでは、伝導により平衡に達した熱統計集団が蒸発して粒子を放出する。ただし、この放出は等方的であり、指向性のある成分は説明が付かない。本研究では、イオン照射で発生する電離が飛跡に沿って直線状に配置され、それらの間に働く電気的斥力がイオン照射方向に指向性を持つことに着想を得て、スパッタリングの角度分布をイオン照射で発生する静電気力により表現した。具体的な手法として、イオン照射によって発生する電離を飛跡構造解析コードRITRACKSを使用して計算し、その電離で発生する陽イオンの幾何的配置から、静電気力によるイオンの運動を計算した。その結果、1MeVの陽子や1MeV/uの炭素イオンを水に照射した場合、照射と逆方向 にイオンの噴出が確認できた他、スパッタリングの放出収量も先行研究の実験と矛盾ない結果が得られた。

論文

Benchmark shielding calculations for fusion and accelerator-driven sub-critical systems

岩元 洋介; 津田 修一; 小川 達彦

Frontiers in Energy Research (Internet), 11, p.1085264_1 - 1085264_11, 2023/01

本レビューでは、核融合,加速器駆動未臨界システム(ADS)等の先進的な原子炉システムにおける放射線遮へい設計の検証に有益な実験データの解説と、放射線輸送計算コードPHITSと核データライブラリJENDL-4.0/HEを用いた実験値の検証計算結果について報告する。関連する加速器施設の遮蔽に関する実験の多くは日本国内で実施されている。今回、(1)14MeV中性子を線源とした鉄遮蔽体内の中性子スペクトル、(2)14MeV中性子を線源とした様々な材料の球状パイルからの漏洩中性子スペクトル、(3)数十MeV中性子源による鉄及びコンクリート遮蔽体透過後の中性子スペクトル、(4)高エネルギー重イオン入射によるターゲットからの生成中性子スペクトル、及び(5)重イオン核反応生成粒子を線源としたコンクリート中の誘導放射能量について検討した結果、全体を通して実験値と計算値は概ね良く一致することがわかった。これらの実験データは、先進的な原子炉システムの遮蔽設計に用いられる他の放射線輸送計算コードや核データライブラリの検証に活用される。

論文

放射線の挙動を原子サイズで計算できるPHITSの新機能

小川 達彦; 平田 悠歩; 松谷 悠佑; 甲斐 健師

Isotope News, (784), p.13 - 16, 2022/12

入射荷電粒子が二次電子を生じる過程を原子サイズで明示的に計算する飛跡構造解析計算は、放射線生物影響,材料照射効果,放射線検出などの研究にとって重要な技術であり、近年主著者らの研究で新しい飛跡構造解析計算コードが開発された。従来の飛跡構造解析計算は標的物質の誘電関数を基に断面積を計算するため、誘電関数が良く測定されている水以外に、適用できるモデルは限られていた。本研究では誘電関数を使うことなく、二次電子エネルギー分布の系統式と阻止能を基に飛跡構造解析計算を行う手法により、誘電関数の測定値の有無にかかわらず、任意の物質で飛跡構造解析計算を実行することを可能とした。こうして開発したモデルで、陽子による水中の動径線量分布や二次電子生成量を計算したところ、従来のコードや実験値とよく一致した。このモデルは原子力機構の放射線輸送計算コードであるPHITS Ver3.25以降に実装され、任意物質に適用できる世界初の汎用飛跡構造解析コードとしてユーザーに提供されている。

論文

Implementation of the electron track-structure mode for silicon into PHITS for investigating the radiation effects in semiconductor devices

平田 悠歩; 甲斐 健師; 小川 達彦; 松谷 悠佑; 佐藤 達彦

Japanese Journal of Applied Physics, 61(10), p.106004_1 - 106004_6, 2022/10

 被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Applied)

検出器や半導体メモリなどのSiデバイスにおいて、パルス波高欠損やソフトエラーなどの放射線影響が問題となっている。このような放射線影響のメカニズムを解明するためには、放射線による精密なエネルギー付与情報が必要である。そこで、Siにおける電子線のエネルギー付与をナノスケールで計算できる電子線飛跡構造解析機能を開発しPHITSに実装した。開発した機能の検証として電子の飛程や付与エネルギー分布を計算したところ、既報のモデルと一致することを確認した。また、一つのキャリア生成に必要なエネルギー($$varepsilon$$値)について、実験値を再現する二次電子生成のエネルギー閾値は2.75eVであることを見出すとともに、このエネルギー閾値は解析的に計算された結果および実験値と一致することがわかった。本研究で開発した電子線飛跡構造解析機能はSiデバイスに対する放射線影響の調査に応用することが期待される。

論文

Post fission time evolution calculation by FIFRELIN coupled with PHITS and DCHAIN

小川 達彦; Litaize, O.*; Mancusi, D.*; Chebboubi, A.*; Serot, O.*

European Physical Journal A, 58(8), p.153_1 - 153_9, 2022/08

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Physics, Nuclear)

CEAが開発を進めるFIFRELINは、核分裂における観測量を計算する目的で開発された核分裂計算コードである。同コードは、実験値やデータベースを活用することで、核分裂の観測量である残留核分布や中性子収量などを高精度に予測することができ、核データ評価や核分裂実験の計画などに使われてきた。しかしながら、FIFRELINは残留核のベータ崩壊を扱うことができず、残留線量や崩壊熱の計算ができないという問題があった。また、中性子やガンマ線などの即発二次粒子についても、エネルギースペクトルを計算することはできるものの、その後の輸送計算で巨大な外部ファイルを生成する方法しかなく、即発二次粒子の検出などのシミュレーションの障害になっていた。そこで、これらの課題を解決するため、放射線輸送計算コードPHITSとFIFRELINの接続を行った。PHITSのうち燃焼計算コードであるDCHAINをFIFRELINと接続することにより、FIFRELINが計算した残留核分布に基づいて燃焼計算が可能になった。その計算法を適用して$$^{235}$$U(n$$_{th}$$,fission)反応後の崩壊熱を計算したところ、最新バージョンのFIFRELINとDCHAINを使うことで精度よく先行研究の文献値を再現できることが確認できた。また、FIFRELINで計算した即発二次粒子のエネルギースペクトルをPHITSの粒子輸送機能に読ませることで、即発二次粒子の輸送や反応のシミュレーションが可能になった。

論文

Theoretical and experimental estimation of the relative optically stimulated luminescence efficiency of an optical-fiber-based BaFBr:Eu detector for swift ions

平田 悠歩; 佐藤 達彦; 渡辺 賢一*; 小川 達彦; Parisi, A.*; 瓜谷 章*

Journal of Nuclear Science and Technology, 59(7), p.915 - 924, 2022/07

 被引用回数:3 パーセンタイル:94.4(Nuclear Science & Technology)

放射線測定において、検出器の線量応答を高い信頼性を持って評価することは、放射線治療,放射線防護,高エネルギー物理学など、多様な分野で共通した課題となる。しかし、多くの蛍光現象を利用する放射線検出器では、高い線エネルギー付与(LET)を持つ放射線に対して消光効果と呼ばれる検出効率の低下を示すことが知られている。また、この消光現象は、異なる種類の粒子線による微小領域へのエネルギー付与分布の変化にも依存する。先行研究では、PHITSコードのマイクロドジメトリ計算により消光現象を予測する手法が開発されていた。本研究では、この成果を活用して、PHITSのマイクロドジメトリ計算により、BaFBr:Eu検出器の光刺激蛍光(OSL)効率を予測した。また、$$^{4}$$He, $$^{12}$$C, $$^{20}$$Neのイオンビーム照射実験を行い、BaFBr:Eu検出器の発光効率変化を測定し、計算による予測値を検証した。本検証では、PHITSのマイクロドジメトリ計算でターゲット球の直径を30-50nmと設定することで、発光効率の予測値が実験値を再現した。また、計算によりBaFBr:Euの発光効率の粒子線種に対する依存性を明らかにし、PHITSのマイクロドジメトリ計算がBaFBr:EuのOSL測定結果を正確に予測できることを示した。

論文

Transport model comparison studies of intermediate-energy heavy-ion collisions

Walter, H.*; Colonna, M.*; Cozma, D.*; Danielewicz, P.*; Ko, C. M.*; Kumar, R.*; 小野 章*; Tsang, M. Y. B*; Xu, J.*; Zhang, Y.-X.*; et al.

Progress in Particle and Nuclear Physics, 125, p.103962_1 - 103962_90, 2022/07

 被引用回数:17 パーセンタイル:97.47(Physics, Nuclear)

原子核-原子核衝突や原子核の状態方程式の研究において、反応計算モデルは重要なツールとなり、世界中で開発が進んでいる。本論文は、原子力機構のJQMD-2.0を含め、現在開発中の複数のコード開発者の協力により、これらコードを同じ条件で比較することで共通点や差異を明らかにしたプロジェクトTransport Model Evaluation Project (TMEP)を総括したものである。参加したコードはBoltzmann-Uehling-Uhlenbeck(BUU)法に基づく13のコードと、Quantum Molecular Dynamics (QMD)法に基づく12のコードであった。プロジェクトでは、Au原子核同士を衝突させてその終状態を観測する現実的な計算や、一辺が640nmの箱に核子を詰めて時間発展させる仮想的な計算を行った。その結果、BUU法コードとQMD法コードは計算原理が異なるため、計算の設定に関係なく系統的な差異が生じることが明らかになった。その一方で、同じ方法を採用するコード間の比較では、時間発展を細かく計算することでコード間の差は埋まっていき、一定の収束値を持つことが示された。この結果は今後開発される同分野のコードのベンチマークデータとして有用なものであるだけでなく、原子核基礎物理学の実験や理論研究の標準的な指針としても役に立つことが期待される。

論文

Mesospheric ionization during substorm growth phase

村瀬 清華*; 片岡 龍峰*; 西山 尚典*; 西村 耕司*; 橋本 大志*; 田中 良昌*; 門倉 昭*; 冨川 喜弘*; 堤 雅基*; 小川 泰信*; et al.

Journal of Space Weather and Space Climate (Internet), 12, p.18_1 - 18_16, 2022/06

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Astronomy & Astrophysics)

巨大な太陽フレアによってもたらされる太陽風により磁気圏内にエネルギーが溜まり、そのエネルギーが一気に解放されるサブストームが発生する。そのサブストームが発生する際、高エネルギー電子が大量に中間圏まで降り注ぐ事象(EEP)がしばしば観測されるが、その詳細な発生メカニズムは解明されていない。本研究では、あらせ衛星により観測された2つのEEPに対して、3次元グローバル電磁流体力学的(MHD)シミュレーションや放射線挙動解析コードPHITSを使った解析によりその発生メカニズムを検討した。その結果、カレントシート散乱とwave-particle散乱がEEPの初期及びサブストーム発生後に重要な役割を果たしていることが示唆された。

論文

Track-structure modes in Particle and Heavy Ion Transport code System (PHITS); Application to radiobiological research

松谷 悠佑; 甲斐 健師; 佐藤 達彦; 小川 達彦; 平田 悠歩; 吉井 勇治*; Parisi, A.*; Liamsuwan, T.*

International Journal of Radiation Biology, 98(2), p.148 - 157, 2022/02

 被引用回数:6 パーセンタイル:74.47(Biology)

放射線による生物学的効果の研究を計算手法で進める場合、細胞内およびDNAスケールにおいて生体と等価物質である液体水中の各原子相互作用を明示的に考慮して、飛跡構造を解析することが重要となる。粒子・重イオン輸送計算コードPHITSは、独自の電子線飛跡構造解析モード(etsmode)ならびに、陽子・炭素イオンを模擬可能な世界的に有名なKURBUCアルゴリズムを使用することで、飛跡構造を詳細に計算できる。本研究では、電子線,陽子線,炭素線に関するPHITSの飛跡構造解析モードについて、物理的な特性(飛程・動径線量・微視的エネルギー付与)を評価し、文献の実験データや他のシミュレーションの文献値と一致することを検証した。また、電子線を対象に、早期の生物影響であるDNA一本鎖切断やDNA二本鎖切断、さらには複雑なDNA損傷であるクラスター損傷の発生数を推定し、電子線の入射エネルギー依存性を評価した。その結果、DNA損傷タイプはナノメートルスケールの電離励起の空間パターンに深く関与し、約500eVの電子線で複雑なDNA損傷の収量が大きくなることを明らかにした。PHITS飛跡構造解析モードの開発や検証並びに放射線生物研究へ応用した本成果は、放射線による生物学的効果の発生メカニズムの解明へ向けた研究を発展させるものである。

論文

Development and validation of proton track-structure model applicable to arbitrary materials

小川 達彦; 平田 悠歩; 松谷 悠佑; 甲斐 健師

Scientific Reports (Internet), 11(1), p.24401_1 - 24401_10, 2021/12

 被引用回数:5 パーセンタイル:69.76(Multidisciplinary Sciences)

入射荷電粒子が二次電子を生じる過程を明示的に計算する飛跡構造解析計算は、放射線生物影響,材料照射効果,放射線検出などの研究にとって重要な技術であり、これまで多くの研究に応用されてきた。しかし、従来の飛跡構造解析計算は標的物質の誘電関数を基に行われており、水以外の誘電関数はあまりよく知られていない。そこで本研究では誘電関数を使うことなく、二次電子エネルギー分布の系統式と阻止能を基に飛跡構造解析計算を行う手法を考案した。これにより、誘電関数の測定値の有無にかかわらず、任意の物質で飛跡構造解析計算を実行することを可能とした。まずこの手法で、標準的な検証データである陽子の水中の飛程や、エネルギー付与の動径方向分布を計算したところ、従来のコードや実験値とよく一致した。そこで、従来のコードが扱えなかった生体等価ガスを例にとり、同ガス中でのlineal energyを本研究で開発した手法により計算したところ、これも実験値の分布をよく再現し、水として近似した場合とは明確な差がみられた。このモデルは原子力機構の放射線輸送計算コードであるPHITS Ver3.25以降に実装され、任意物質に適用できる世界初の汎用飛跡構造解析コードとしてユーザーに提供される予定である。

論文

電子線,陽子線,炭素線のPHITS飛跡構造解析モード

松谷 悠佑; 甲斐 健師; 小川 達彦; 平田 悠歩; 佐藤 達彦

放射線化学(インターネット), (112), p.15 - 20, 2021/11

Particle and Heavy Ion Transport code System (PHITS)は、放射線挙動を模擬する汎用モンテカルロコードであり、原子力分野のみならず工学,医学,理学などの多様な分野で広く利用されている。PHITSは2010年に公開されて以降、機能拡張や利便性向上のために改良が進められてきた。今日までに、電子線,陽電子線,陽子線,炭素線の4種類の荷電粒子を対象として、液相水中における個々の原子との反応を模擬できる飛跡構造解析モードの開発を進めてきた。本モードの開発により、DNAスケールまで分解した微視的な線量付与の計算が可能となった。加えて、飛跡構造解析モードの高精度化へ向けて、任意物質中において多様な粒子タイプに適用可能な汎用的飛跡構造解析モードの開発も進められている。本稿で解説するPHITS飛跡構造解析モードに関するこれまでの開発経緯と将来展望により、PHITSコードの原子物理学,放射線化学,量子生命科学分野への応用がより一層期待される。

論文

Optimization of a 9 MeV electron accelerator bremsstrahlung flux for photofission-based assay techniques using PHITS and MCNP6 Monte Carlo codes

Meleshenkovskii, I.*; 小川 達彦; Sari, A.*; Carrel, F.*; Boudergui, K.*

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 483, p.5 - 14, 2020/11

 被引用回数:1 パーセンタイル:18.5(Instruments & Instrumentation)

核分裂性物質の検知を目的として、制動放射線を検知対象に照射して光核分裂反応を発生させ、放出される中性子線を観測する技術が注目されている。この技術で制動放射線を発生させるための電子加速器は、同等の性能を発揮する中性子源と比べて放射化や即発線量が低く、装置の小型化が容易という利点がある。一方、光核分裂反応は中性子誘導核分裂反応より断面積が低いため、電子線ターゲットや制動放射線の取り出し口、照射野などを最適化することが検知効率の向上に必要となる。本研究では、汎用モンテカルロ放射線輸送計算コードMCNPとPHITSを用いて、最適化に必要な要素を明らかにした。その結果、ターゲットでの制動放射線の生成は原子番号の高い元素の方が有利であるが、発生した光子がターゲット周辺で($$gamma$$,n)二次反応を起こし、中性子を生成するため、光子によって起こる早い光核分裂反応と、中性子による遅い核分裂が混在し、最終的な検出対象である核分裂の発生時間が広がる問題が明らかとなった。また、中性子を生じる二次反応は電子線ターゲットだけではなく、ターゲット周辺の遮蔽材でも発生するため、中性子放出スレッショルドが高い元素を遮蔽材として選択するなどの工夫が必要であることが明らかになった。

論文

Cathodoluminescence of cerium dioxide; Combined effects of the electron beam energy and sample temperature

Constantini, J.-M.*; Seo, P.*; 安田 和弘*; Bhuian, AKM S. I.*; 小川 達彦; Gourier, D.*

Journal of Luminescence, 226, p.117379_1 - 117379_10, 2020/10

 被引用回数:4 パーセンタイル:45.67(Optics)

カソードルミネッセンスは結晶中の格子欠陥の検知に利用されているが、その強度の入射電子線エネルギーに対する依存性が試料温度によって異なることが示唆されており、測定結果の定量的な解釈の妨げとなっていた。本研究では、77Kと300KのCeO$$_{2}$$試料へ400-1250keVの電子線を照射して酸素原子欠陥を作り、光ファイバープローブとCCDを組み合わせた検出器でルミネッセンスに由来する発光を観測し、さらにPHITSなどによる計算結果との比較により、発光強度変化の原因を解析した。その結果、300Kの試料での発光強度は電子線のエネルギーが600keV付近で最大となり、その前後で低下することが確認できた。その理由として、電子のエネルギー上昇に伴って欠陥生成効率が上昇する一方、電子のエネルギーが高すぎると電子が試料を貫通して、ルミネッセンスに寄与する電子が不足することが判明した。一方、77Kの試料では、発光強度は電子線のエネルギー上昇に対して一貫して増加することが明らかになった。これは、常温ではイオン化している不純物が低温環境では電子と結合し、入射電子エネルギー増加に従って強度が増すルミネッセンスに寄与するためと判明した。以上のように、カソードルミネッセンスを用いた欠陥の検知において、試料の温度等を考慮する必要があることを明らかにした。

論文

観測量などの評価

小川 達彦; 岩元 洋介

放射線遮蔽ハンドブック; 応用編, p.68 - 74, 2020/03

日本原子力学会では放射線遮蔽に携わる国内の研究者・技術者に対する指針として、「放射線遮蔽ハンドブック-応用編-」を取りまとめた。本稿はその中の「観測量などの評価」について論じる。遮蔽計算においては、線源から生じる多数の放射線が評価点にもたらす線量や発熱など、多数の放射線による平均の量が重要とされている。しかし、放射線の挙動を表す量は、基本的に平均と分散の両方を定義することができ、放射線検出器の応答、中性子照射による材料損傷評価などでは、分散を示す量が重要な役割を果たす。核反応断面積データライブラリは、放射線輸送計算において分散の情報を必ずしも持たない。そのため、放射線挙動解析のうち分散を示す量が必要とされる場合、放射線輸送計算コードPHITSのイベントジェネレータモードのように、分散の情報を復元するアルゴリズムが必要になる。本稿では、放射線挙動に関する分散の意義、イベントジェネレータモードが分散を計算する原理やその計算例を示し、分散が観測量等の評価に与える影響を解説する。

論文

A Novel asymmetrical peak broadening feature for a CdZnTe detector response function modeling using PHITS particle and heavy ion transport simulation code

Meleshenkovskii, I.*; 小川 達彦; Pauly, N.*; Labeau, P.-E.*

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 467, p.108 - 113, 2020/03

 被引用回数:1 パーセンタイル:0.02(Instruments & Instrumentation)

CdZnTe(CZT)半導体検出器は室温で動作する特徴を有する一方、正孔の移動道が低く、負極で完全に収集されないため、負極から遠い位置で電離が生じた場合の検出信号が弱くなる。ガンマ線の検出において、電離の発生場所はランダムである。そのため、波高スペクトルは全吸収ピークから低エネルギー側に尾を引き、測定ごとに異なる形状となる。一方、Melechenkovskiらが提案した関数形により、CZT検出器の波高分布スペクトルを再現できることが示唆されていた。そこで、本研究ではPHITSのエネルギー付与スペクトルの計算機能を関数計の活用により拡張し、波高分布を付与エネルギーの関数として確率的に計算することを可能とした。計算結果は、$$^{241}$$Amの59keVから$$^{60}$$Coの1332keVまで、実験で取得した500mm$$^{3}$$のCZT検出器の波高分布データと比較した。その結果、ピーク付近のガウス関数型形状から、低エネルギー側の指数関数的減衰に至る過程を再現できることを確認した。この研究で開発、検証した機能は、検出器の現実的な動作を考慮した実験計画の立案や、検出器システムのデザインなどに有効となる。

論文

Depth profiles of energy deposition near incident surface irradiated with swift heavy ions

小川 達彦; 石川 法人; 甲斐 健師

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 461, p.272 - 275, 2019/12

 被引用回数:5 パーセンタイル:58.93(Instruments & Instrumentation)

物質中に局所的にエネルギーを付与する重イオン照射は、新しい材料改質方法の開発や放射線損傷原理の解明などを目的として広く用いられている。ここで、重イオンによって弾かれた電子($$delta$$線)と、それがさらに散乱する二次電子のエネルギー付与について、イオンの進行と垂直方向に対する分布は研究されてきた。一方、重イオンの進行方向に対するエネルギー付与分布は一定と仮定されてきたが、電子は重イオンの進行方向に押されるため、表面付近はエネルギー付与が少ないと推定される。そこで、本研究では、飛跡構造解析コードRITRACKSを用いて、重イオン照射を受けた物質内での二次電子のエネルギー付与の空間分布を詳細に求めた。その結果、水中では表面2nmまでの領域はエネルギー付与が少なく、それ以降は一定にエネルギーが付与されることを明らかにした。この結果を電子密度でスケーリングすることで水以外にも適用可能と期待され、核分裂生成物により損傷を受ける原子炉の燃料被覆管や、重イオンビーム照射で改質を受ける材料物質において、表面1-2nmでは放射線の影響が深部より少なくなり得ることを示唆している。

論文

飛跡構造計算に基づく無機シンチレータ発光強度の予測

小川 達彦; 佐藤 達彦; 八巻 徹也*

放射線化学(インターネット), (108), p.11 - 17, 2019/11

電子線, $$alpha$$線,陽子,重イオンなどの多様な種類の放射線を検知するシンチレータは、付与されたエネルギー量に応じた光を発する。ここで、エネルギー付与密度の高い重イオンのような粒子に対してはクエンチング現象が起こり、エネルギー付与量と比して発光が少なくなることが知られている。さらに、励起した蛍光分子が他の蛍光分子にエネルギーを受け渡すメカニズム(F$"{o}$rster効果やDexter効果)によって、クエンチング現象を説明できることが有機シンチレータに関する過去の研究で示されている。そこで、本研究では、CsI(Tl), NaI(Tl), BGOの3種類のシンチレータにおいて、様々なエネルギー・線種の放射線の照射を受けた際のエネルギー付与を飛跡構造計算コードRITRACKSにより計算し、発光準位に励起する励起子の空間配置や量を予測した。また、各励起子が相互作用によりエネルギーを受け渡す確率を計算し、発光に寄与しない励起子を除いた数を計算した。その結果、相互作用の伝播距離を適切に選択することにより、MeV-GeV範囲の光子・陽子・重イオンによる発光の実験値を正確に再現することができた。特に光子による発光におけるエネルギーに対する非線形性や、低速で原子番号の大きい重イオンの入射の場合に、発光がとりわけ抑制されることなど、重要な特性を再現できたことで、本手法の有効性が示された。

論文

Comparison of heavy-ion transport simulations; Collision integral with pions and $$Delta$$ resonances in a box

小野 章*; Xu, J.*; Colonna, M.*; Danielewicz, P.*; Ko, C. M.*; Tsang, M. B.*; Wang, Y,-J.*; Wolter, H.*; Zhang, Y.-X.*; Chen, L.-W.*; et al.

Physical Review C, 100(4), p.044617_1 - 044617_35, 2019/10

AA2019-0025.pdf:2.76MB

 被引用回数:47 パーセンタイル:98.59(Physics, Nuclear)

2017年4月に開催された国際会議Transport2017において、重イオン核反応モデルの国際的な比較が議論された。重イオン加速器の安全評価や宇宙飛行士の被ばく評価等で重要な役割を果たすため、世界中で重イオン核反応の様々な理論モデルが開発されている。本研究では、辺の長さが20fmの直方体に320個の中性子と陽子をランダム配置し、それらが70fm/cの間に起こす散乱の回数やエネルギーを計算した。ここでは、特にパイオンやその前駆体であるデルタ共鳴の生成に注目して比較を行った。参加コードは、個々の粒子の時間発展を追うQMD型コードと、粒子の位置や運動量の確率分布を決めておき、散乱や崩壊が発生したときそれらを乱数サンプリングするBUU型コードがあり、発表者が用いたJQMDは前者に属する。本研究により、計算における時間刻みが各コードによる結果の差の主な原因であることが分かった。さらに、今後のJQMDの改良方針の策定に有益な知見を得ることができた。

論文

Effects of the nuclear structure of fission fragments on the high-energy prompt fission $$gamma$$-ray spectrum in $$^{235}$$U($$n_{rm th},f$$)

牧井 宏之; 西尾 勝久; 廣瀬 健太郎; Orlandi, R.; L$'e$guillon, R.; 小川 達彦; Soldner, T.*; K$"o$ster, U.*; Pollitt, A.*; Hambsch, F.-J.*; et al.

Physical Review C, 100(4), p.044610_1 - 044610_7, 2019/10

 被引用回数:10 パーセンタイル:78.79(Physics, Nuclear)

The prompt fission $$gamma$$-ray energy spectrum for cold-neutron induced fission of $$^{235}$$U was measured in the energy range $$E_{rm gamma}$$ = 0.8 - 20,MeV, by gaining a factor of about 10$$^{5}$$ in statistics compared to the measurements performed so far. The spectrum exhibits local bump structures at $$E_{rm gamma}approx$$4,MeV and $$approx$$6,MeV, and also a broad one at $$approx$$15,MeV. In order to understand the origins of these bumps, the $$gamma$$-ray spectra were calculated using a statistical Hauser-Feshbach model, taking into account the de-excitation of all the possible primary fission fragments. It is shown that the bump at $$approx$$4,MeV is created by the transitions between the discrete levels in the fragments around $$^{132}$$Sn, and the bump at $$approx$$6,MeV mostly comes from the complementary light fragments. It is also indicated that a limited number of nuclides, which have high-spin states at low excitation energies, can contribute to the bump structure around $$E_{rm gamma}approx$$15,MeV, induced by the transition feeding into the low-lying high-spin states.

論文

陽子入射反応における最前方方向の中性子生成二重微分断面積の測定

佐藤 大樹; 岩元 洋介; 小川 達彦

2017年度量子科学技術研究開発機構施設共用実施報告書(インターネット), 1 Pages, 2019/08

数10MeV以上のエネルギー領域での陽子入射反応における前方方向の中性子生成に関して、理論模型および核データともに実験データの不足から予測精度の検証が十分になされていない。本研究では、原子力機構が開発している汎用放射線輸送計算コードPHITSの精度向上に資するため、最前方方向(入射軸に対して0$$^{circ}$$方向)の中性子生成二重微分断面積の系統的な実験データ整備を進めている。平成28年度までに20, 34, 48, 63および78MeV陽子入射の測定を実施したが、絶対値に関する精度改善のため34MeV陽子入射に対しては、より薄い標的を採用して再測定した。実験では、量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所TIARAのAVFサイクロトロンから供給される陽子ビームをC, Al, FeおよびPb標的に入射し、生成中性子を最前方方向に開いたコリメータを通して測定室に導き、シンチレーション検出器で測定した。また、PHITSでは、核内カスケード模型に基づくINCLおよび評価済み核データライブラリJENDL-4.0/HEにより、中性子生成の計算を行った。実験値と計算値との比較から、INCLはすべての反応に対して実験値よりも大きな値を与え、JENDL-4.0/HEはFeの結果を良好に再現するが、Alに対しては過大評価し、Pbに対しては過小評価した。本実験により、数10MeV領域の系統的な実験データ整備が完了したため、今後は断面積の入射エネルギー依存性等を解析し、計算コードの高度化に貢献する。

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