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坂下 哲哉*; 佐藤 達彦; 浜田 信行*
PLOS ONE (Internet), 14(8), p.e0221579_1 - e0221579_20, 2019/08
被引用回数:8 パーセンタイル:46.27(Multidisciplinary Sciences)放射線被ばくに起因する白内障発症をより確実に防ぐため、国際放射線防護委員会は眼の水晶体線量限度値の引き下げを提案している。しかしながら、白内障発症のメカニズムや線量応答は明らかになっていない。そこで本研究では、個々の細胞動態に基づいて白内障発症率を計算する数理モデルを開発し、そのモデルで使用するパラメータを白内障自然発症に対する疫学データから決定した。そして、決定したパラメータを用いて、放射線被ばくに起因する白内障発症率の線量応答関数を推定した。本モデルは、今後、白内障に対する放射線防護指針を改訂する際、極めて有用となる。
篠原 彩花*; 花岡 宏史*; 坂下 哲哉*; 佐藤 達彦; 山口 藍子*; 石岡 典子*; 対馬 義人*
Annals of Nuclear Medicine, 32(2), p.114 - 122, 2018/02
被引用回数:8 パーセンタイル:43.21(Radiology, Nuclear Medicine & Medical Imaging)オージェ放出核種を用いた放射線治療は、高い治療効果と低い正常組織反応を期待できる。本研究では、オージェ放出核種Iと線放出核種Iを2次元と3次元の培養細胞に取り込ませて、その細胞致死率を測定した。また、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを用いて、各条件に対する細胞の吸収線量分布を精度よく計算し、細胞生存率と吸収線量の関係について評価した。その結果、I治療はI治療と比較して、2次元培養細胞の場合はほぼ同程度の効果が得られるが、3次元培養細胞の場合は治療効果が低いことが分かった。これは、クロスファイア効果と呼ばれる一本の線が複数の細胞をヒットする効果と、薬剤が培養細胞内に均一に分布しない効果に起因すると考えられる。
横田 裕一郎; 舟山 知夫; 池田 裕子; 坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 小林 泰彦
JAEA-Review 2015-022, JAEA Takasaki Annual Report 2014, P. 67, 2016/02
本研究ではバイスタンダー効果における一酸化窒素(NO)の役割を調べた。ヒト正常線維芽細胞に線(LETは0.2keV/m)あるいは炭素イオンビーム(108keV/m)を照射した後、非照射細胞と共培養した。24時間の共培養後に非照射細胞の生存率と培養液に含まれるNOの酸化物である亜硝酸イオンの濃度を測定した。非照射細胞の生存率低下は照射細胞に曝露する線量に依存したが線質には依存しなかった。非照射細胞の生存率と亜硝酸イオン濃度には負の相関関係が認められた。一方で、NO発生剤であるNOC12を培養液に加えるだけでは、細胞の生存率は低下しなかった。以上の結果から、細胞内で生成されるNOの量がバイスタンダー効果の決定因子の一つであるが、細胞間情報伝達因子ではない可能性が示された。
渡辺 和代*; 秋月 岳*; 志村 幸子*; Gusev, O.*; Cornette, R.*; 黄川田 隆洋*; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 奥田 隆*
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 87, 2015/03
ネムリユスリカは極めて高い乾燥耐性と放射線耐性を示す。我々は、ネムリユスリカ由来の培養細胞Pv11を確立し、培養細胞においても乾燥耐性を示すことを明らかにした。本報告では、このネムリユスリカ由来の培養細胞Pv11を用いてイオンビーム照射の影響を明らかにすることを目的とする。高崎量子応用研究所TIARAでのヘリウムイオン照射実験の結果、480Gyのヘリウムイオン照射後も、再水和後の培養細胞に増殖能力が残されていることを確認した。
鈴木 芳代; 服部 佑哉; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 池田 裕子; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 88, 2015/03
The nematode is a good model system to examine radiation effects on vital functions such as locomotion, feeding, learning and memory. Using , we recently investigated the radiation effects on locomotion (snake-like crawling motion) and found that whole-body irradiation significantly reduced locomotion. Furthermore, we focused on the pharyngeal pumping motion (chewing and swallowing), which is a rapid periodic motion, and found that the proportion of pumping-motion arrest increased after whole-body irradiation. As the next step, we started to examine whether or not the effects observed after whole-body irradiation could be induced by microbeam irradiation to a very limited region. In this report, we summarize the results of microbeam irradiation experiments we carried out in the past few years. Main findings in this study are the following: (1) Effects of the region-specific microbeam irradiation differ depending on types of motion, and (2) effects of whole-body irradiation tend to be more effective than those of the region-specific microbeam irradiation at the same irradiation dose. Further studies on the mechanisms underlying the radiation-induced changes of movements are required.
横田 裕一郎; 舟山 知夫; 池田 裕子; 坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 75, 2015/03
本研究では、異なる線量の線あるいは炭素イオンビームによって誘発されるバイスタンダー効果の線量及び線質依存性と、一酸化窒素(NO)ラジカルの役割について調べた。ヒト正常繊維芽細胞を実験に用い、線あるいは炭素イオンを照射した細胞と非照射細胞を多孔性メンブレンの上側と下側で24時間培養した。培養後、非照射細胞の生存率は照射細胞に曝露した線量の増加とともに低下し、0.5Gy以上では下げ止まった。このことから、バイスタンダー効果は照射細胞に曝露した放射線の線量に依存するが、線質には依存しないことが明らかになった。さらに、NOラジカルの特異的消去剤であるc-PTIOをあらかじめ培養液に加えておくと、非照射細胞の生存率の低下が抑制された。以上の結果から、線や重イオンビームによって誘発されるバイスタンダー効果にNOラジカルが重要な役割を果たすことが示された。
坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 服部 佑哉; 池田 裕子; 武藤 泰子*; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 浜田 信行*; 白井 花菜*; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 74, 2015/03
昆虫・哺乳動物等を用いた実験から、放射線被ばくにより学習障害等の神経系への影響がもたらされることが示唆されている。我々は、神経系を研究するためのモデル生物として知られる線虫を用いて、化学走性学習が、特定の条件下においてのみコバルト60線照射の影響を受けることを明らかにした。しかし、線虫のどの部位における放射線応答が、化学走性学習行動の変化を誘導するかは明らかでない。そこで、我々は、炭素イオンマイクロビームを用いて、線虫の化学走性学習に対する直接的な放射線の影響部位を明らかにすることを目的とした。マイクロビーム照射技術は、細胞あるいは組織レベルでの直接的な放射線の影響を調べるための有効なツールとして知られている。本報告では、2つの線虫変異体(, )に対して、マイクロビームの局部照射を行った結果について報告する。
冨田 雅典*; 松本 英樹*; 大塚 健介*; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 鈴木 芳代; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 77, 2015/03
低粒子数の重イオン線による生物影響を解明する上で、DNA初期損傷量に依存しない「非標的効果」が注目されている。特に、放射線に直接曝露された細胞の近傍に存在する全く放射線に曝露されていない細胞において観察される「放射線誘発バイスタンダー応答」は、最も特徴的な非標的効果であり、その解明は放射線生物学のみならず、粒子線がん治療、宇宙放射線の生体影響評価においても重要である。本研究は、これまでの2次元での培養細胞を用いた研究から、組織レベルでの生体応答研究への展開を図るため、分化誘導させたヒト3次元培養皮膚モデルを用い、原子力機構の細胞局部照射装置を利用し、放射線誘発バイスタンダー応答によって生じるシグナル伝達経路の変化を明らかにすることを目的とした。2015年度は、ヒト3次元培養皮膚モデルへの重イオンマイクロビーム照射条件の検討を行い、照射した試料のMTT法による生細胞率測定を実施し、試料全体を重イオンビームで照射したものと比較した。その結果、全体照射した試料では生存率の低下が認められた一方、本条件でマイクロビーム照射した試料では生存率の低下が認められなかった。
舟山 知夫; 横田 裕一郎; 鈴木 芳代; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 73, 2015/03
原子力機構・マイクロビーム細胞照射研究グループでは、集束式重イオンマイクロビームを用いた、従来のコリメーション式重イオンマイクロビームを用いた照射より高速でかつ正確な細胞照準照射技術の開発を進めている。これまでに集束式重イオンマイクロビームを用いた細胞の照準照射のための要素技術の開発を行ってきた。そこで、2013年度は、これまでに確立したそれらの要素技術を用いて、実際の細胞への高速で正確な照準照射技術の確立を目指す実験を実施した。実験では、ヒト子宮頸がん細胞由来細胞株HeLaを用い、顕微鏡下で細胞試料へのスキャンビームを用いた照準照射を行った。その結果、CR-39上で検出したイオンヒット位置と、細胞核内に検出された H2AXフォーカスの位置が一致したことから、細胞への高速な照準照射を実現することができたことが確かめられた。
和田 成一*; 安藤 達彦*; 渡辺 彩*; 柿崎 竹彦*; 夏堀 雅宏*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 横田 裕一郎; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 79, 2015/03
これまでのマイクロビームを用いた細胞の局部照射実験でバイスタンダー効果の誘導には細胞核の損傷応答だけでなく細胞膜応答も重要であり、細胞膜応答分子であるスフィンゴミエリナーゼがその応答に関与することが明らかになってきた。しかし、スフィンゴミエリナーゼがどのようにして細胞間情報伝達に関与しているかはまだ明らかになっていない。そこで本研究では、照射後に細胞外に分泌されるスフィンゴミエリナーゼが、細胞から放出され、細胞間情報伝達に関与する膜小胞であるエクソソーム内に含有されているかを解析した。照射したグリオーマ細胞をから細胞外に放出されたエクソソーム中にスフィンゴミエリナーゼが含まれるか解析するため、培養上清からExo Quickによるエクソソームの精製を行い、抗スフィンゴミエリナーゼ抗体を用いたウエスタンブロットを行った。その結果、照射によって細胞外に分泌されたスフィンゴミエリナーゼは主にエクソソームの形態で細胞外に分泌されることが明らかになった。この結果からバイスタンダー効果においてスフィンゴミエリナーゼ自身がバイスタンダー因子としてシグナル伝達に関与することが示唆された。
上田 大介*; 白井 孝司*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 横田 裕一郎; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 84, 2015/03
これまで産下2時間後のカイコ初期発生卵に10Gyの炭素イオンを照射すると短時間の発生停止の後に発生を再開するものの、傷害の修復は不完全であり、多くの卵が、産下12-13時間後に傷害核がアポトーシスにより排除されることで孵化することなく致死することを報告した。そこで、本研究では、カイコ初期発生卵における放射線に対する応答の詳細をさらに明らかにすべく、受精直前と受精後卵黄内核分裂期に照射を行うことでその影響を調査した。最初に、産下1.5時間の受精直前の卵に炭素イオン照射を行った。その結果、照射卵では受精直後に発生が停止し、非照射卵と比較すると平均して約2時間の発生遅延が認められた。この結果は、照射によって前核に生じたDNA損傷は受精を阻害しないことを意味する。次に、卵黄内核分裂期である産下6時間後の卵に炭素イオン照射を行い、その後の発生を調査した。その結果、非照射卵と比較して明らかな発生遅延が認められ、発生再開に要する時間は、産下1.5時間の卵の場合と較べ約2倍必要となることが明らかになった。
松本 英樹*; 冨田 雅典*; 大塚 健介*; 畑下 昌範*; 前田 宗利*; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 鈴木 芳代; 坂下 哲哉; 池田 裕子; et al.
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 76, 2015/03
低線量/低線量率放射線に対して生物が示す特異的な応答様式には、放射線適応応答、放射線誘発バイスタンダー応答、放射線超高感受性、遺伝的不安定性等がある。我々は、原子力機構において開発された細胞局部照射装置(HZ1)および深度制御種子照射装置(HY1)を用いて、放射線誘発バイスタンダー応答による放射線適応応答の誘導機構の解析を実施した。中央にスポットしたコロニーの細胞に520MeV Arをマイクロビーム照射し、4-6時間培養後に同Arをブロードビーム照射した結果、放射線適応応答の誘導が認められ、この誘導はNO特異的な捕捉剤であるcarboxy-PTIOの添加でほぼ完全に抑制された。このマイクロビーム照射による放射線適応応答の誘導が起きた細胞で、遺伝子の発現が特異的に発現誘導されていることが見いだされ、放射線適応応答の誘導にNOを介したバイスタンダー効果の誘導が関与していることが強く示唆された。
横田 渉; 佐藤 隆博; 神谷 富裕; 奥村 進; 倉島 俊; 宮脇 信正; 柏木 啓次; 吉田 健一; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; et al.
JAEA-Technology 2014-018, 103 Pages, 2014/09
日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設(TIARA)では、イオンビームを利用する主要な研究課題である生物細胞放射線影響評価研究と宇宙用半導体耐放射線性評価研究を推進するため、TIARAのサイクロトロンで加速した数百MeV重イオンビームを磁気レンズで集束させて直径1m以下のマイクロビームに形成する技術を世界で初めて実現した。更に、これを用いて1個のイオンをビーム径の空間精度で照準するシングルイオンヒットを可能にした。この過程で、TIARAの静電加速器で完成した数MeVイオンのマイクロビーム形成・シングルイオンヒット技術を活かしたビーム集束装置、ビーム照準・計測技術や、1mへの集束に必要なエネルギー幅の狭い数百MeV重イオンビームを加速するためのサイクロトロンに特有な技術を開発した。また、開発途中に利用研究の実験に試用することにより、本技術の適用性を適宜評価しその改良を行うことで、利用研究の試用実験を軌道に乗せることができた。本報告書は、およそ10年に亘るこれらの技術・装置開発の過程及び成果を、試用実験における評価とともにまとめたものである。
浜田 信行*; 坂下 哲哉; 原 孝光*; 藤通 有希*
放射線生物研究, 49(3), p.318 - 331, 2014/09
コロニー形成法は、半世紀以上にわたり、細胞の放射線感受性評価に最も頻用されている。我々は、ヒト初代正常二倍体線維芽細胞のコロニー形成実験を行い、50個未満の細胞から構成される増殖不全コロニーと50個以上の細胞から構成される生存コロニーの大きさと構成細胞数を解析することで、生存コロニーが巨細胞や多核化細胞などを含む不均一な集団であること、増殖不全コロニーの構成細胞数が遅延的に生じる細胞増殖死の短期的・長期的な変化を反映していることを明らかにするとともに、ヒト初代正常二倍体水晶体上皮細胞のコロニー形成実験から、照射細胞に由来するコロニーが高線量ほど巨大化するという新たな現象を見いだした。本稿では、これらの知見について総説する。
坂下 哲哉; 浜田 信行*; 川口 勇生*; 原 孝光*; 小林 泰彦; 斎藤 公明
Journal of Radiation Research, 55(3), p.423 - 431, 2014/02
被引用回数:3 パーセンタイル:17.44(Biology)コロニー形成試験において、従来、50個以上の細胞からなるコロニーを、増殖可能な細胞からなるコロニーとして生存率を評価してきた。最近、我々は、コバルト60線を照射した正常線維芽細胞について、従来無視されてきた50個に満たない細胞からなるコロニーのサイズ分布が対数-対数グラフで直線にプロットできることを示し、また、分岐プロセスモデルを導入することにより照射後数回の分裂にわたる遅延的細胞増殖死の確率を推定した。さらに、モデルの拡張により生存率曲線の再現にも成功した。本論文では、この一連の解析方法を、炭素線照射を実施した正常線維芽細胞に適用し、増殖不全コロニーのサイズ分布、生存率曲線の解析に加えて、生物学的効果比の評価及び2次コロニーの評価を実施した。本論文により、我々の提案手法が、(1)異なる線質に対しても適用可能であること、(2)2次、3次コロニーとの組み合わせなどの応用が可能であることが示された。遅延的な放射線の効果を明らかできる本研究の手法を、今後の放射線生物研究の進展に役立てることが期待される。
坂下 哲哉; 浜田 信行*; 川口 勇生*; 大内 則幸; 原 孝光*; 小林 泰彦; 斎藤 公明
PLOS ONE (Internet), 8(7), p.e70291_1 - e70291_10, 2013/07
被引用回数:7 パーセンタイル:33.37(Multidisciplinary Sciences)コロニー形成能の測定は、放射線照射後の細胞の重要な情報を与える。通常、50個以上の細胞からなるコロニーを、増殖可能な細胞からなるコロニーとして生存率を評価してきた。しかし、従来無視されてきた50個に満たない細胞からなるコロニーに関して詳細に調べたところ、サイズ分布が対数-対数グラフで直線にプロットできることがわかった。本研究では、この直線関係について分岐プロセスモデルを導入し、世界で初めて照射後の数世代にわたる細胞増殖死の確率を推定できることを発見した。また、従来、増殖可能なコロニーとして評価されたてきた生存コロニーに、このモデルを拡張応用することにより、生存率曲線を再現することに成功した。この一連の解析により、放射線照射後の細胞の継世代的な影響には、比較的短い数世代に及ぶ増殖死が高まる影響と、それよりも長い世代にわたって継続する増殖死の機構が存在することを明らかにした。本研究による、半世紀以上見過ごされてきたコロニーアッセイの隠れた重要性の指摘と、コロニーアッセイによる継世代影響解析方法の提案は、今後の放射線生物研究の進展に重要な貢献を果たすものと期待される。
坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 浜田 信行*; 下澤 容子; 深本 花菜*; 横田 裕一郎; 楚良 桜*; 柿崎 竹彦*; 和田 成一*; 舟山 知夫; et al.
Biological Sciences in Space, 26, p.21 - 25, 2012/10
神経系のモデル生物として知られる線虫を用いて、化学走性学習に対する低LET及び高LET放射線の影響について調べた。また、野生型及び変異体の結果を比較した。高LET炭素線(C, 18.3MeV/u, LET=113keV/m)及びCo 線照射実験を行った結果、学習後期よりも初期の影響が大きい傾向及び変異体で応答が消失する点は両放射線で同じであった。以上の結果から、化学走性学習に関して低LET及び高LET放射線の両放射線とも影響を与えること、及びその作用メカニズムには遺伝子が関与していることが示唆された。
木村 孝文*; 高浪 タカ子*; 坂下 哲哉; 和田 成一*; 小林 泰彦; 東谷 篤志*
Radiation Research, 178(4), p.313 - 320, 2012/10
被引用回数:8 パーセンタイル:41.71(Biology)緑膿菌が感染した際に線虫の腸内で働く自然免疫応答遺伝子が、放射線照射によっても誘導されることを発見した。また、放射線を線虫に事前に照射しておくと、緑膿菌に対する線虫の生存率が増加することがわかった。この放射線による遺伝子の誘導は、ELT-2転写因子やp38 MAPKに大きく依存していた。さらに、insulin/IGF-1シグナル伝達系がこの遺伝子のエンハンサーとして機能していることがわかった。以上のことから、本研究により、放射線応答と自然免疫応答とがクロストークしたシグナル伝達系を持つことが示唆された。
坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 浜田 信行*; 下澤 容子; 深本 花菜*; 横田 裕一郎; 楚良 桜*; 柿崎 竹彦*; 和田 成一*; 舟山 知夫; et al.
Biological Sciences in Space, 26, p.7 - 11, 2012/07
本論文では神経系のモデル生物として知られる線虫を用いて、運動と化学走性に対する高LET放射線耐性について調べた。また、放射線耐性の比較対象として孵化率を同時に観察した。高LET炭素線(C, 18.3MeV/u, LET=113keV/m)及びCo 線照射実験を行った結果、孵化率の生物学的効果比(Relative biological effectiveness: RBE)が4.5であるのに対して、運動と化学走性のRBEは、それぞれ1.4, 1.1であった。80%効果線量は、9.2Gy(孵化率), 272Gy(運動), 899Gy(化学走性)であった。以上の結果から、線虫の運動と化学走性は、孵化率と比較して顕著に高LET放射線に耐性であることが明らかになった。また、運動と化学走性に対する放射線照射効果の機序が、孵化率に対する機序とは異なることが予想された。
堀川 大樹*; 山口 理美*; 坂下 哲哉; 田中 大介*; 浜田 信行*; 行弘 文子*; 桑原 宏和*; 國枝 武和*; 渡邊 匡彦*; 中原 雄一*; et al.
Astrobiology, 12(4), p.283 - 289, 2012/04
被引用回数:23 パーセンタイル:68.44(Astronomy & Astrophysics)クマムシの乾燥休眠状態である卵の孵化率について、宇宙空間の特徴的な極限環境要因である放射線(Heイオン線),極低温,高真空に対する耐性を調べた。その結果、50%が孵化できない線量が約500Gy, -196度に曝されても70%以上が孵化し、610Paの高真空においた後でも孵化することができることがわかった。以上の結果から、宇宙空間であってもクマムシの耐性能力により、乾眠状態であるならば、存在できる可能性が示唆された。