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論文

Estimate of economic impact of atmospheric radiation storm associated with solar energetic particle events on aircraft operations

斎藤 享*; Wickramasinghe, N. K.*; 佐藤 達彦; 塩田 大幸*

Earth, Planets and Space (Internet), 73(1), p.57_1 - 57_10, 2021/12

 被引用回数:1 パーセンタイル:74.81(Geosciences, Multidisciplinary)

巨大な太陽フレアが発生した際、太陽放射線による被ばく線量を低減するために航路変更を余儀なくされる場合がある。本研究では、太陽放射線被ばく警報システムWASAVIESを用いて計算した実効線量率マップに基づいて、ニューヨークから東京に飛行する航空機が、実効線量率が一定値以下になるように航路を固定して高度のみ下げた場合、及び航路及び高度の両方を調整した場合について、その増加コストを推定した。その結果、航路と高度の両方で調整した方が、全体のコスト増加は抑えられることが分かった。ただし、本推定では、線量率は時間と共に変化しないと仮定しており、将来的には、太陽放射線被ばく線量率の時間変化を考慮したより高度な航路調整アルゴリズムを開発する必要がある。

論文

Space weather benchmarks on Japanese society

石井 守*; 塩田 大幸*; 垰 千尋*; 海老原 祐輔*; 藤原 均*; 石井 貴子*; 一本 潔*; 片岡 龍峰*; 古賀 清一*; 久保 勇樹*; et al.

Earth, Planets and Space (Internet), 73(1), p.108_1 - 108_20, 2021/12

 被引用回数:1 パーセンタイル:74.81(Geosciences, Multidisciplinary)

科研費新学術領域研究・太陽地球圏環境予測(PSTEP)の一環として、日本における宇宙天気災害の発生規模と頻度の関係を包括的に調査した。調査した情報は、国内における宇宙天気ユーザーが理解できる形で公開した。本論文では、その包括的調査の結果をまとめるとともに、宇宙天気災害が電力や航空業界に与える経済的損失に関して定量評価した結果も紹介する。

論文

Medical application of Particle and Heavy Ion Transport code System PHITS

古田 琢哉; 佐藤 達彦

Radiological Physics and Technology, 14(3), p.215 - 225, 2021/09

PHITSユーザー数は、集計を開始した2010年以降に順調な増加傾向を示している。その中で、近年は医学物理分野における新規ユーザー数の増加が顕著となっている。そのため、PHITSを利用した数多くの研究が発表されており、その内容も放射線治療応用、施設の遮蔽計算、放射線生物学応用、医療機器研究開発等、多岐に渡っている。本稿では、これら応用研究の具体例を示しつつレビューを行うとともに、医学物理応用研究で有益なPHITSの機能を紹介する。

論文

Probabilistic risk assessment of solar particle events considering the cost of countermeasures to reduce the aviation radiation dose

藤田 萌*; 佐藤 達彦; 斎藤 享*; 山敷 庸亮*

Scientific Reports (Internet), 11, p.17091_1 - 17091_9, 2021/09

太陽高エネルギー粒子(SEP)による航空機乗務員被ばくは、放射線防護研究において重要なトピックである。そこで、我々は、5つの太陽フレアに対して太陽放射線被ばく警報システムWASAVIESで計算した4次元線量分布マップを元に8つの航路に対する被ばく線量及び線量率を計算した。そして、過去の太陽フレア発生頻度からその被ばく線量がしきい値を超える確率を計算し、その被ばく低減対策(高度低下及びフライトキャンセル)に掛かるコストを推定した。その結果、被ばく低減対策が必要となる太陽フレアの発生頻度は、線量及び線量率で規制した場合はそれぞれ47年及び17年に1回程度で、その発生確率とコストを乗じて推定した年間被ばく低減対策リスクは1航路1年間辺り最大で約1500米ドルであった。

論文

1945年の日本人体型を精緻に再現し原爆被爆者の臓器線量を再評価

佐藤 達彦

Isotope News, (776), p.26 - 28, 2021/08

広島・長崎の原爆被爆者の健康影響に対する疫学調査には、被爆時の状況に合わせた詳細な臓器線量の情報が不可欠となる。本研究では、これまでの線量推定方式をさらに発展させるべく、最新のCT画像などに基づいて1945年における日本人の標準的体型を精緻に再現した成人・小児・妊婦に対する人体模型を開発し、それらと原子力機構が中心となって開発した最新の放射線挙動解析コードPHITSなどを組み合わせることで、原爆からの直接線による被爆者の臓器線量をより精度よく推定する手法を構築した。その手法を用いて再評価した代表的な被爆条件に対する臓器線量は、概ね現システムの評価結果と一致したが、計算手法が変更された一部の臓器に対しては、最大で$$pm$$15%程度の差があった。また、本計算手法を将来の原爆線量推定システム改訂に利用できるように、様々な照射条件に対する膨大な臓器線量データセットを整備した。本稿では、これら研究の概要を解説する。

論文

Oxygen enhancement ratios of cancer cells after exposure to intensity modulated X-ray fields; DNA damage and cell survival

松谷 悠佑; McMahon, S. J.*; Butterworth, K. T.*; 内城 信吾*; 奈良 一志*; 谷内 淑恵*; 嵯峨 涼*; 石川 正純*; 佐藤 達彦; 伊達 広行*; et al.

Physics in Medicine & Biology, 66(7), p.075014_1 - 075014_11, 2021/04

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Engineering, Biomedical)

腫瘍内の低酸素細胞は放射線抵抗性を示し、分割放射線療法の悪性進行を引き起こす。不均質な酸素条件下に存在する腫瘍に線量を付与させる場合、照射野内と照射野外の細胞間で伝達される細胞間シグナリングにより、両者の放射線感受性が変化することが知られている。しかしながら、強度変調照射下において低酸素症が放射線感受性へ与える影響については不明である。本研究では、2種類のがん細胞株(DU145とH1299)を使用して、低酸素症が、照射野内外の細胞に対する放射線感受性(DNA損傷と細胞死)へもたらす影響を研究した。細胞実験の結果から、低酸素症は照射野外の放射線感受性へ明らかに影響を与える一方、その低酸素症の影響の程度(酸素増感効果比)は照射野内細胞よりも小さいことがわかった。DNA損傷ならびに細胞死の両評価対象に対して、照射野外で低減される放射線感受性について一貫した傾向が示された。これらの成果は、強度変調放射線を活用して低酸素下の腫瘍を照射する際の治療計画時において、放射線誘発の細胞間シグナリングを考慮する重要性を示すものである。

論文

Verification of KURBUC-based ion track structure mode for proton and carbon ions in the PHITS code

松谷 悠佑; 甲斐 健師; 佐藤 達彦; Liamsuwan, T.*; 佐々木 恒平*; Nikjoo, H.*

Physics in Medicine & Biology, 66(6), p.06NT02_1 - 06NT02_11, 2021/03

 被引用回数:1 パーセンタイル:77.24(Engineering, Biomedical)

汎用放射線輸送計算コードPHITSは、広範なエネルギーの様々な粒子の物質中における挙動を模擬できる計算コードである。最新版PHITS version 3.20では、世界的に最もよく検証された飛跡構造計算コードの一つであるKURBUCのアルゴリズムに基づいて、一次イオン(陽子・炭素イオン)の挙動、二次粒子生成(1meV$$sim$$1MeVのエネルギーを有する電子)の計算を可能とするイオン飛跡構造計算モード(PHITS-KURBUCモード)を開発、実装した。本研究では、陽子及び炭素イオンの挙動に関して、PHITS-KURBUCモードで得られる飛程,動径線量,微視的エネルギー付与分布について、文献で報告される推奨値や実測値と比較することで検証した。この検証から、KURBUCコードのPHITSへの組み込みに成功したことを確認した。さらに、従来からPHITSで対象としていたより巨視的な空間領域の計算機能とPHITS-KURBUCによる微視的計算モードの相乗効果により、拡大ブラッグピークを用いた陽子線治療などの複雑な放射線場下における微視的エネルギー付与分布の詳細な計算が可能となった。本研究の成果は、放射線物理,放射線防護,医学物理,放射線生物学をはじめとした次世代の放射線研究手法の発展に貢献するものである。

論文

Individual dosimetry system for targeted alpha therapy based on PHITS coupled with microdosimetric kinetic model

佐藤 達彦; 古田 琢哉; Liu, Y.*; 仲 定宏*; 永森 收志*; 金井 好克*; 渡部 直史*

EJNMMI Physics (Internet), 8, p.4_1 - 4_16, 2021/01

 被引用回数:2 パーセンタイル:91.54(Radiology, Nuclear Medicine & Medical Imaging)

標的$$alpha$$核医学治療は、高い治療効果と低い副作用を兼ね備えた新しいがん治療方法として注目を集めているが、その治療計画に患者の個性(体格や薬剤集積性など)は反映されていなかった。そこで本研究では、患者個人のPET-CT画像から自動で体内の積算放射能分布を推定し、PHITSを用いて吸収線量分布を計算するシステムを構築した。$$alpha$$線の高い細胞殺傷効果や腫瘍内における薬剤不均一性を考慮し、同じ効果を与えるX線治療の線量(等効果線量)を推定する新しいモデルを確立した。構築したシステムは、PET用核種をラベルした新しいプローブ(NKO-035)を健常者に投与した臨床試験結果を用いて検証した。その結果、重要臓器の吸収線量は、従来手法と比べて最大で20%程度の差があることが分かった

論文

Recent progress in space weather research for cosmic radiation dosimetry

佐藤 達彦

Annals of the ICRP, 49(1_suppl.), p.185 - 192, 2020/12

宇宙空間には様々な放射線が飛び交っている。それらの中で宇宙放射線防護上重要となるのは、銀河宇宙線,捕捉陽子,太陽高エネルギー粒子である。銀河宇宙線は、太陽系外から飛来する高エネルギー宇宙線で、その強度は約11年周期を持つ。捕捉陽子は、地球磁場に捕捉された陽子で、地球軌道ミッションの線量評価のみで重要となる。太陽高エネルギー粒子は、突発的な太陽フレア事象により太陽から放出される粒子で、場合によっては宇宙飛行士に大きな線量をもたらす。会議では、これら3種類の宇宙線について解説するととも、宇宙放射線防護に関連する宇宙天気研究の最新の動向について紹介する。

論文

$$^{rm 208,207,206,nat}$$Pb(p,x)$$^{207}$$Bi and $$^{209}$$Bi(p,x)$$^{207}$$Bi excitation functions in the energy range of 0.04 - 2.6 GeV

Titarenko, Yu. E.*; Batyaev, V. F.*; Pavlov, K. V.*; Titarenko, A. Yu.*; Malinovskiy, S. V.*; Rogov, V. I.*; Zhivun, V. M.*; Kulevoy, T. V.*; Chauzova, M. V.*; Lushin, S. V.*; et al.

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 984, p.164635_1 - 164635_8, 2020/12

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Instruments & Instrumentation)

0.04から2.6GeVの陽子入射による$$^{rm 208,207,206,nat}$$Pb及び天然Biからの$$^{207}$$Bi生成断面積を直接$$gamma$$線スペクトロメトリの手法を用いて測定した。測定した結果は、モンテカルロ計算コードMCNP6.1, PHITS, Geant4及び核データライブラリTENDL-2019と比較した。その結果、一部の反応に対して計算と実験に不一致があることが分かり、その点について議論した。

論文

Modernization of the DCHAIN-PHITS activation code with new features and updated data libraries

Ratliff, H.; 松田 規宏; 安部 晋一郎; 三浦 孝充*; 古田 琢哉; 岩元 洋介; 佐藤 達彦

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 484, p.29 - 41, 2020/12

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Instruments & Instrumentation)

This paper details the recent improvements made to the DCHAIN-PHITS code, the activation, buildup, burnup, and decay code coupled to and distributed with PHITS. The recent improvements include the addition of numerous new decay and cross section nuclear data libraries, statistical uncertainty propagation implementation, support for 3-D grid mesh and tetrahedral geometries, reaction tracking, performance improvements, and more. The paper covers the DCHAIN's history, theory, usage, and improvements made to it and also includes example calculations showcasing these improvements. This is the first publication covering DCHAIN since the PHITS group obtained the code and will become the new reference journal paper for DCHAIN-PHITS. (The current reference document for DCHAIN is a JAERI document in Japanese only from 2001.)

論文

Development of a new microdosimetric biological weighting function for the RBE$$_{10}$$ assessment in case of the V79 cell line exposed to ions from $$^{1}$$H to $$^{238}$$U

Parisi, A.*; 佐藤 達彦; 松谷 悠佑; 加瀬 優紀*; Magrin, G.*; Verona, C.*; Tran, L.*; Rosenfeld, A.*; Bianchi, A.*; Olko, P.*; et al.

Physics in Medicine & Biology, 65(23), p.235010_1 - 235010_20, 2020/12

 被引用回数:6 パーセンタイル:87.62(Engineering, Biomedical)

ミクロ線量分布からV79細胞の10%生存率をエンドポイントとした生物学的効果比(RBE)加重線量を推定する新たな生物学的加重関数を開発した。その開発には、$$^{1}$$Hから$$^{238}$$Uまでの様々なイオン照射に対するV79細胞生存率を格納したデータベースと、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSのマイクロドジメトリ機能を用いて計算したミクロ線量分布が活用された。開発した生物学的加重関数の信頼性は、他のモデルによる計算結果や種々のイオンに関する実験データとの比較により検証した。本成果により、実験により評価したミクロ線量分布からRBE加重線量を誰でも容易に推定可能となり、粒子線治療場におけるマイクロドジメトリ測定の有用性が高まった。

論文

Evaluation of RBE-weighted doses for various radiotherapy beams based on a microdosimetric function implemented in PHITS

高田 健太*; 佐藤 達彦; 熊田 博明*; 櫻井 英幸*; 榮 武二*

Journal of Physics; Conference Series, 1662, p.012004_1 - 012004_6, 2020/10

筑波大学では、PHITSを計算エンジンとしたBNCT用の治療計画システム開発を進めている。そのシステムは、BNCTに加えてX線、陽子線及び炭素線ビームの治療への適用も計画されており、PHITSのマイクロドジメトリ機能を用いて、物理的なエネルギー付与を表現する吸収線量に加えて、放射線の種類による生物学的効果を考慮した線量(RBE加重線量)を計算することができる。本研究では、開発中のシステムを使ってX線,陽子線,炭素線の照射、BNCTに対してRBE加重線量、線エネルギー付与の確率分布をそれぞれ計算し、相互比較した。発表では、それらの計算結果を説明すると共に、実験値との比較結果についても紹介する。

論文

Real-time ${{it in vivo}}$ dosimetry system based on an optical fiber-coupled microsized photostimulable phosphor for stereotactic body radiation therapy

矢田 隆一*; 前中 一介*; 宮本 修治*; 岡田 豪*; 笹倉 亜規*; 芦田 基*; 足立 真士*; 佐藤 達彦; Wang, T.*; 赤坂 浩亮*; et al.

Medical Physics, 47(10), p.5235 - 5249, 2020/10

 被引用回数:4 パーセンタイル:78.11(Radiology, Nuclear Medicine & Medical Imaging)

光ファイバーとマイクロサイズ光刺激蛍光体を組み合わせた定位放射線治療のためのリアルタイム体内線量評価システムを開発した。開発したシステムの線量応答の線形性,線量率依存性,温度依存性などを医療用Linacを用いて検証した。また、測定値と粒子・重イオン輸送計算コードPHITSによる計算値を比較し、その妥当性を確認した。これらの結果より、開発したシステムが定位放射線治療のリアルタイム体内線量評価システムとして十分な性能を有することを確認した。

論文

Dosimetric impact of a new computational voxel phantom series for the Japanese atomic bomb survivors; Methodological improvements and organ dose response functions

佐藤 達彦; 船本 幸代*; Paulbeck, C.*; Griffin, K.*; Lee, C.*; Cullings, H.*; Egbert, S. D.*; 遠藤 章; Hertel, N.*; Bolch, W. E.*

Radiation Research, 194(4), p.390 - 402, 2020/10

 被引用回数:1 パーセンタイル:0.01(Biology)

原爆生存者に対する被ばく線量評価は、幾何学形状人体ファントムと逆解きモンテカルロ放射線挙動解析計算コードを組み合わせて実施されており、その結果はDS02レポートにまとめられている。しかし、幾何学形状ファントムは、人体の詳細な解剖学的特性を表現しておらず、また、逆解きモンテカルロ計算手法はPHITSなど最新のモンテカルロ放射線挙動解析手法と比べて精度が良くない問題点が指摘されていた。そこで、1945年の日本人体形を詳細に模擬したボクセル形状ファントムを開発し、最新版PHITSを用いてそのファントム内の臓器線量を評価した。また、その計算手法を用いて様々な照射条件に対する臓器線量の応答関数を作成し、DS02に格納された原爆生存者各人の被ばくシナリオに対して瞬時に臓器線量を推定する手法を構築した。構築した手法は、将来のDS02の改訂に利用することができる。

論文

Investigation of using a long-life electronic personal dosimeter for monitoring aviation doses of frequent flyers

保田 浩志*; 矢島 千秋*; 佐藤 達彦

Radiation Measurements, 134, p.106309_1 - 106309_4, 2020/06

 被引用回数:1 パーセンタイル:42.23(Nuclear Science & Technology)

長寿命電子個人線量計D-Shuttleの航空機被ばく線量評価への適応可能性を検証するため、航空機内の複数箇所にD-Shuttleを設置してその性能を調査した。その結果、D-Shuttleによる測定値は、原子力機構が開発したPARMAモデルに基づく航路線量計算プログラムJISCARD EXによる計算値の25$$sim$$30%の値を示すことが分かった。また、場所依存性に関しては、搭乗者の胸やシートの下に置いた場合はほぼ変化しないが、スーツケースの中に入れた場合は、測定値がさらに小さくなることが分かった。測定値が計算値を過小評価する原因は、D-Shuttleが航空機高度における被ばく線量の主要因である中性子に対してほとんど感度を持たないことに起因する。今後、様々な検討を行うことにより、D-Shuttleを用いた航空機搭乗者の個人線量推定方法を確立していく。

論文

A Theoretical cell-killing model to evaluate oxygen enhancement ratios at DNA damage and cell survival endpoints in radiation therapy

松谷 悠佑; 佐藤 達彦; 中村 瑠委*; 内城 信吾*; 伊達 広行*

Physics in Medicine & Biology, 65(9), p.095006_1 - 095006_12, 2020/05

 被引用回数:1 パーセンタイル:35.6(Engineering, Biomedical)

低酸素圧下で誘導される放射線抵抗性は、分割放射線療法の悪性進行において重要な役割を果たすことが知られている。低酸素圧下における細胞殺傷を予測する一般的なアプローチとして、細胞殺害モデル(例、線形二次モデルなど)を正常酸素圧下と低酸素圧下の両方の生存率データの実測値に適合させ、放射線抵抗性の程度を表現する酸素増感比(Oxygen enhancement ratio: OER)を取得する方法がある。しかしながら、そのような方法では、各酸素分圧条件に対応したモデルパラーメータが必要となり、放射線治療計画の立案で非効率となる。そこで本研究では、DNA二本鎖切断(double-strand break: DSB)をエンドポイントとしたOERと細胞周期を考慮した効率的なモデル(integrated microdosimetric-kinetic (IMK) model)を開発した。開発したモデルと実測の細胞周期データを用いることで、急性的ならびに慢性的に作り出される低酸素分圧条件に対する生存率の実測値の再現に成功した。また、細胞生存率の計算に使用されるOER$$_{DSB}$$は、実験で報告されるDSB比とよく一致することも確認した。本研究は、不確実性を考慮した様々な酸素条件下に対する生物学的有効量(biological effective dose: BED)を提供し、多分割放射線治療計画の立案に貢献することができる。腫瘍内の酸素濃度を医療画像によって定量化することで、開発したモデルにより、より現実的な生体環境における低酸素圧下での細胞殺傷およびBEDの推定を可能とする。

論文

Impact of hydrided and non-hydrided materials near transistors on neutron-induced single event upsets

安部 晋一郎; 佐藤 達彦; 黒田 順也*; 真鍋 征也*; 渡辺 幸信*; Liao, W.*; 伊東 功次郎*; 橋本 昌宜*; 原田 正英; 及川 健一; et al.

Proceedings of IEEE International Reliability Physics Symposium (IRPS 2020) (Internet), 6 Pages, 2020/04

二次宇宙線中性子起因シングルイベントアップセット(SEU: Single Event Upset)は、地上において電子機器の深刻な問題を生じる可能性のある事象として知られている。これまでの研究で、水素化物と中性子との弾性散乱により、前方に水素イオンが放出されるため、メモリ前方にある水素化物がSEUの発生確率の指標となるSEU断面積に影響を与えることを明らかにした。本研究では、トランジスタ近傍の構造物がSEU断面積に及ぼす影響を調査した。その結果、数MeVの領域におけるSEU断面積の変化は構造物の厚さおよび位置によって決まることを明らかにした。また、シミュレーションにおいてトランジスタ近傍の構造物を考慮することにより、J-PARC BL10の測定値をより良く再現できるようになった。さらに、構造物を考慮した計算シミュレーションにより、トランジスタ近傍の構造物は地上環境におけるソフトエラー率に有意な影響を持つことを明らかにした。

論文

A Simplified Cluster Analysis of Electron Track Structure for Estimating Complex DNA Damage Yields

松谷 悠佑; 中野 敏彰*; 甲斐 健師; 鹿園 直哉*; 赤松 憲*; 吉井 勇治*; 佐藤 達彦

International Journal of Molecular Sciences (Internet), 21(5), p.1701_1 - 1701_13, 2020/03

 被引用回数:4 パーセンタイル:68.46(Biochemistry & Molecular Biology)

電離放射線被ばく後に誘発されるDNA損傷の中でも、10から20塩基内に2つ以上のDNA損傷が誘発されるクラスター損傷は人体にとって致命的な損傷として知られている。そのようなクラスター損傷の収率はシミュレーション技術によって評価されてきたが、その推定精度についての検証は未だ不十分である。クラスター損傷を検出する科学技術の進歩に伴い、実験と推定の両方によりクラスター損傷を評価することが近年ようやく可能となった。本研究では、PHITSコードで得られる非弾性散乱(電離・電子的励起)数の空間密度を解析することによりクラスター損傷を推定するシンプルなモデルを考案し、ゲル電気泳動や原子間力顕微鏡により測定されるクラスター損傷(例:塩基損傷を伴うDNA二本鎖切断や2つ以上の塩基損傷)の実験結果と比較した。塩基損傷と主鎖切断の収率比を1.3と仮定することで、シミュレーションによって、主鎖切断ならびに塩基損傷に対するクラスター損傷生成率の実測値の再現に成功した。また、塩基損傷を伴う複雑な二本鎖切断に対する推定値と対応する実測値との比較結果から、電離・電子的励起数の凝集度がDNA損傷の複雑さを反映することが示唆された。開発したモデルにより、X線(電子線)により誘発されるクラスター損傷の種類の定量化が可能となり、クラスター塩基損傷に対する実験的な検出効率の解釈に成功した。

論文

Track structure and microdosimetry of proton beams

佐藤 達彦

Proton Beam Radiotherapy; Physics and Biology, p.61 - 72, 2020/00

臓器や個体レベルのマクロな視点で見れば均一に見える放射線場でも、DNAや細胞核などミクロな視点で見ればその線量は大きくばらついている。この線量の不均一性の違いにより、同じ吸収線量でも放射線の種類やエネルギーが異なればその生物学的効果比(RBE)が異なる。本稿では、マイクロドジメトリで用いられる物理量(マイクロドジメトリ量)の定義について解説するとともに、それらを飛跡構造解析コードRITRACKSや放射線挙動解析コードPHITSで計算した結果をいくつか紹介する。また、陽子線治療を対象としてマイクロドジメトリの観点から行われた過去の研究成果を簡単にまとめる。

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