北海道周辺地域における歴史地震について; アイヌの口碑伝説と歴史記録に基づく検討

新里 忠史; 重野 聖之*; 高清水 康博*

no journal, , 

北海道とその周辺域における地震の地域性を把握するために、アイヌ文化期における地震に関するアイヌの口碑伝説と歴史記録の文献調査を行い、それら史料が過去に地震に襲われた可能性を示すものかどうかの検討を行った。その結果、28の口碑伝説と歴史記録を収集できた。個々の史料を検討した結果、24の史料が地震に関するものと解釈された。アイヌ文化期とそれ以前の時期において地震に襲われたことが推定される地域は、おもに北海道の太平洋沿岸に特に分布する。それら地域は、北海道とその周辺に置いて地震活動が活発な地域に隣接する。過去から現在までの地震の分布傾向に基づくと、将来の地震の分布は、アイヌ文化期とほぼ同期間の将来において、現在の地震分布とほぼ同一であると推測できるであろう。今後、ジャンル分けによる口碑伝説の史料性を詳細に検討するとともに、蝦夷三官寺の日鑑記(寺務日誌)の記録も含めて、北海道とその周辺域における地震発生域の検討を進める予定である。