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綿貫 徹; 川名 大地*; 町田 晃彦; Tsai, A. P.*
放射光, 25(3), p.176 - 183, 2012/05
高圧力を利用して中間価数状態のYb系準結晶を創り出した。これは準周期格子の各格子点上に電荷自由度を持つという新しいタイプの準周期系である。われわれは、Yb系準結晶を加圧しながら放射光X線吸収分光実験を行うことにより、準周期配列するYbが常圧の2価状態から高圧下では2価・3価の中間価数状態に変化することを実証した。Cd-Yb正20面体型準結晶においては、31.7GPaまでの加圧によりYb価数は2.33価まで増加し、そこでは準周期系の価数揺動状態が実現した。また、Yb系では価数増加が電子相関を強くすることに対応するため、さらなる価数の増加を目指してCd-Mg-Yb正20面体型準結晶を57.6GPaまで加圧したところ、Yb価数は2.71価に到達し、強相関電子系領域の価数値を示す準周期系を実現させることに成功した。
綿貫 徹; 川名 大地*; 町田 晃彦; Tsai, A. P.*
Physical Review B, 84(5), p.054207_1 - 054207_6, 2011/08
被引用回数:14 パーセンタイル:50.49(Materials Science, Multidisciplinary)Cd-Mg-Yb正20面体型準結晶を加圧することにより、中間価数準周期系を作製した。Yb-吸収端近傍のX線吸収実験で高圧下のYb価数評価を行ったところ、Yb価数は圧力とともに増加し、常圧で2価のYbが57.6GPaでは2.71価をとることが明らかとなった。周期Yb系では2.7価付近以上で電子質量が異常に増大を見せる強相関領域であり、準結晶でも同領域に到達した系ができているものと考えられる。
綿貫 徹; 川名 大地*; 町田 晃彦; Tsai, A. P.*
Journal of the Physical Society of Japan, 80(Suppl.A), p.SA087_1 - SA087_3, 2011/07
被引用回数:6 パーセンタイル:42.62(Physics, Multidisciplinary)Yb合金系準結晶を加圧することにより、中間価数イオンが準周期配列した系が生成できることを示した。Cd-Yb準結晶及びCd-Mg-Yb準結晶のYbは常圧において2価をとるが、加圧とともにYb価数が増加し、2価と3価の中間価数状態をとることをYb吸収端近傍のX線吸収実験により明らかにした。これらの中間価数準周期系は各準周期格子点上に価数の自由度を持つという新しい系である。また、その平均価数値は圧力で制御することが可能である。
川名 大地*; 綿貫 徹; 町田 晃彦; 菖蒲 敬久; 青木 勝敏; Tsai, A. P.*
Physical Review B, 81(22), p.220202_1 - 220202_4, 2010/06
被引用回数:17 パーセンタイル:57.55(Materials Science, Multidisciplinary)Cd-Yb系準結晶を加圧することにより、準結晶の中間価数物質を実現した。この系は、各Ybサイトの価数が変動し得るという意味で、電荷自由度を持つ準周期系と言える。高圧下の価数測定は、DACを用いてYb-端近傍のX線吸収実験(XANES)により行った。Yb価数は常圧の2価から、圧力に対してほぼ線型に増加し、最高圧の32GPaでは2.33価となった。Yb系の価数状態は、おおよそその価数値で決定される。現在の場合、価数値は最高圧においても3価からは離れており、実験の圧力範囲では価数揺動状態をとっていると考えられる。
綿貫 徹; 佐藤 卓*; Tsai, A. P.*
Journal of Physics; Conference Series, 215, p.012019_1 - 012019_4, 2010/03
被引用回数:4 パーセンタイル:80.83(Instruments & Instrumentation)Cd-Yb準結晶とその近似結晶、及び同型構造を持つCd-Eu合金について高圧下における構造安定性を調べた。放射光による回折実験をヘリウム圧力媒体を用いた静水圧条件下で40GPaまで行った結果、それらの正二十面体格子あるいはbcc格子が高圧でも安定であることが明らかとなった。周期,準周期によらず安定であったことは、それらを構成する原子クラスターの性質による、特に、その中心対称充填構造が低対称変形を阻害し、格子変形も生じなかったものと考えられる。
Tazhibayeva, I. L.*; Kulsartov, T.*; Kenzhin, E. A.*; Maksimkin, O. P.*; Doronina, T. A.*; Silnyagina, N. S.*; Turubarova, L. G.*; Tsai, K. V.*; Zheltov, D. A.*; Kashirskiy, V. V.*; et al.
Questions of Atomic Science and Technology; Series the Thermonuclear Fusion, 1, p.3 - 11, 2008/00
本論文は、WWR-K炉で照射した核融合炉用セラミックトリチウム増殖材(5%TiO添加Li
TiO
)の材料研究の結果と解析について記述されている。WWR-K炉におけるこのセラミックスの照射時間は5,350時間であり、中性子照射により生成するトリチウムの特性を制御した照射条件にて調べた。密度,結晶構造,化学的構造,強度及び微小硬さの変化が研究され、リチウム燃焼度や残留トリチウム量が決定された。また、セラミック試料の構造や特性に関する照射や熱が重大な影響を及ぼすことが観測された。すなわち、照射温度によるセラミックス試料の軟化や照射による試料の化学的特性変化を明らかにした。
de Boissieu, M.*; Francoual, S.*; Minalkovi, M.*; 柴田 薫; Baron, A. Q. R.*; Sidis, Y.*; 石政 勉*; Wu, D.*; Lograsso, T.*; Regnault, L.-P.*; et al.
Nature Materials, 6(12), p.977 - 984, 2007/12
被引用回数:44 パーセンタイル:81.54(Chemistry, Physical)局所構造及び(周期性又は準周期性)長距離秩序のそれぞれが格子振動に及ぼす影響を研究する目的でZn-Mg-Sc正20面体準結晶及びZn-Sc周期性1/1近似結晶の単結晶を用いた非弾性中性子,X-ray散乱実験を実施した。全体的な格子振動の相似性や横波分散関係に擬ギャップが共通して存在する等の定性的な相似性を別にすると、準結晶中と近似結晶中の格子振動には定量的な違いが観測された。例えば近似結晶中の格子振動の方が擬ギャップが大きくはっきりしている点である。またこれらの実験結果は精密原子構造モデルと振動型ペアポテンシャルをもとにしたシミュレーションと比較が行われよく再現されることが明らかになった。
綿貫 徹; 町田 晃彦; 池田 智宏*; 大村 彩子*; 金子 洋; 青木 勝敏; 佐藤 卓*; Tsai, A. P.*
Philosophical Magazine, 87(18-21), p.2905 - 2911, 2007/06
被引用回数:47 パーセンタイル:86.82(Materials Science, Multidisciplinary)われわれは、静水圧的高圧下での構造研究を低温領域でも可能とするため、単結晶振動写真法による低温高圧下X線回折装置を構築した。静水圧技術は微弱な変化,複雑な変化を対象としたときに効果的だが、本装置では、超格子反射や散漫散乱の観測を通じて、5-300K,常圧-50GPaの温度圧力領域で、そのような構造変化を捉えることができる。われわれは、本装置を用いて、準結晶物質群の低温高圧下における構造的性質を調べている。その結果、Cd-Yb合金の近似結晶(準結晶物質と局所構造が同一である結晶物質)において、物質内部に配列するカドミウム原子団が、圧力温度に応じて敏感に向きを変え、5種類ものパターンに及ぶ配向秩序構造を示すという著しい現象を発見した。
綿貫 徹; 町田 晃彦; 池田 智宏*; 青木 勝敏; 金子 洋; 菖蒲 敬久; 佐藤 卓*; Tsai, A. P.*
Physical Review Letters, 96(10), p.105702_1 - 105702_4, 2006/03
被引用回数:31 パーセンタイル:77.08(Physics, Multidisciplinary)Cd-Yb合金近似結晶の温度圧力平面上での相転移研究は周期系と準周期系との比較研究をするうえで重要な位置を占める。合金は原子クラスターの集合体として構成されているが、クラスター最内部のカドミウム4面体が温度圧力に応じて多様な配向秩序を見せることが明らかとなった。圧力5.2万気圧まで、温度10-300Kの間に5種類もの配向秩序相が出現した。秩序の伝播方向は、加圧すると約1万気圧で[110]方向から[111]方向へと変わり、さらに加圧し4万気圧程度で再び[110]に戻ることもわかった。一方、約1万気圧以上の圧力領域では冷却により2段階の相転移を起こすことも明らかとなった。常圧ではカドミウム4面体間に短距離的な相互作用しか働かないのに対して、1万気圧以上の高圧領域ではより遠くのカドミウム4面体間同士でも働く長距離的な相互作用が出現することによってこのような複雑な相転移が起こることが明らかとなった。
川名 大地; 綿貫 徹; 町田 晃彦; 青木 勝敏; Tsai, A. P.*
no journal, ,
Cd-Yb合金系準結晶の1/1近似結晶CdYbは、準結晶と共通の正二十面体対称のクラスター構造を持つ体心立方格子結晶である。この近似結晶についてX線吸収端微細構造(XANES)測定を行い、室温高圧下でのYbの平均価数の圧力依存性を調べた。既に行った準結晶での測定結果と同様に、常圧での2価から圧力を加えるに従って増大し、30GPaでは約2.3価に達する。準結晶と近似結晶とで圧力が近いスペクトル同士で比較すると、ピーク部分の構造はよく一致しており、両物質でのYb価数の圧力に対する変化の振る舞いがよく似ていることを示している。このことから、構造の対称性によるサイトの種類より、原子サイズの効果がYb価数状態を特徴づける主要なパラメータであると考えられる。
綿貫 徹; 町田 晃彦; 大村 彩子; 青木 勝敏; 大和田 謙二; 佐藤 卓*; Tsai, A. P.*
no journal, ,
準周期格子と周期格子の違いを調べるために、Cd-Yb準結晶及びその近似結晶について、低温高圧下における構造変化を調べ、その両者の比較を行った。測定は、われわれが大型放射光施設SPring-8のビームラインに整備した低温高圧下単結晶X線回折装置を用いて行った。本装置ではわずかな構造変化でも捉えることができ、また、静水圧性の高い実験が低温においても可能であるため、測定試料の質を低下させずに物質本来の性質を観測することができる。その結果、周期格子構造である近似結晶では、圧力温度に敏感にその構造が変化するが、準周期格子構造である準結晶では、室温付近の温度において、圧力15GPa以上の高圧領域では、準周期格子の完全性が失われるような構造変形を連続的に起こすということが明らかとなった。
綿貫 徹; 川名 大地; 町田 晃彦; Tsai, A. P.*
no journal, ,
Cd-Yb準結晶に圧力をかけると、Yb価数が変化し価数揺動状態になることを最近われわれは見いだした。この状態が構造にどのように反映されるかを調べるため、この準結晶の近似結晶であるCd6Yb合金について圧力下での構造観察を行った。放射光を用いたX線回折実験を圧力33GPaにいたるまで行った結果、無秩序相から22倍周期相,3
2倍周期相、さらには、4
2倍周期相へと系統的な変化を示すことが明らかとなった。また、一連の相転移はYb価数が連続的に変化することにより系統的に起こっていると考えられる。
綿貫 徹; 町田 晃彦; 大村 彩子; 青木 勝敏; 大和田 謙二; 佐藤 卓*; Tsai, A. P.*
no journal, ,
準結晶の性質を知るうえで、準周期系と周期系との相転移現象の対比的研究は重要である。この対比を、温度などの一変数のみならず温度圧力平面上で行うことは、相転移現象の全体像をつかむうえで有効、かつ、強力な手段となる。われわれは最近、静水圧的高圧下及び低温における高精度構造研究のための放射光単結晶X線回折計システムをSPring-8に構築した。本装置は、微細な構造変化しか起こさない相転移でもそれを捉えること、また、相転移に影響を及ぼしやすい非静水圧的ストレスがない環境で物質本来の性質を観測するのを得意とする装置である。よって、われわれは、本装置を用いて前述の対比研究を行いつつある。その端緒として行ったCd-Yb近似結晶の低温高圧X線回折で、この物質中の4面体型Cd原子団が圧力温度に応じて敏感にその向きを変え、多様なパターンの配列秩序構造を示すという著しい現象を発見した。
綿貫 徹; 町田 晃彦; 大村 彩子; 青木 勝敏; 大和田 謙二; 佐藤 卓*; Tsai, A. P.*
no journal, ,
準結晶物質の高圧相がどのようなものであるかは未だに解明されていない。そこで、われわれは、Cd-Yb正二十面体型準結晶の構造を低温高圧下で調べた。実験は単準結晶を用いたX線回折実験をSPring-8 BL22XUにおいて放射光を用いて行った。この実験には圧力の静水圧性を高めることが必須であるので、圧力媒体にヘリウムガスを用いた。その結果、圧力16GPaの250K以下の低温領域で、正二十面体型格子が扁平するように変形する変化を捉えた。これは、準結晶の高圧相が現れたものと考えられる。
川名 大地; 綿貫 徹; 町田 晃彦; 青木 勝敏; Tsai, A. P.*
no journal, ,
Cd-Yb合金系準結晶は圧力を加えることでYbの価数が増大し中間価数状態となる。この中間価数状態は、価数の変化のふるまいから準周期系で初めての価数揺動の可能性を強く示唆している。一方でこの準周期系価数揺動をより詳細に調べるためには、同じ圧力でもより大きな価数の変化が得られる物質系の探索が必須である。今回、Cd-サイトの一部を、より圧縮率の大きいMgで置換したCd-Mg-Yb三元準結晶について、価数の圧力依存性を調べた。その結果、価数は常圧の2価から29GPaで2.47価に達することがわかった。この価数の増大率はCd-Yb系のそれより5割ほど大きくなっており、圧縮率の大きい元素へ置換することで、価数の圧力に対する変化がより大きくなることを実験的に明らかにした。
綿貫 徹; 町田 晃彦; 川名 大地; Tsai, A. P.*
no journal, ,
最近われわれは、Cd-Yb合金準結晶を加圧すると、準周期配列するYbイオンの価数を変化させることができることを見いだした。圧力下での2価と3価との中間価数状態の構造的性質を理解するために、まず、近似結晶について放射光X線回折実験により調べたところ、約12GPaで3倍周期構造が、約20GPaで4倍周期構造が現われるといった逐次相転移を示すことが明らかとなった。
綿貫 徹; 町田 晃彦; 青木 勝敏; 川名 大地; 佐藤 卓*; Tsai, A. P.*
no journal, ,
Cd-Yb正20面体型準結晶が低温高圧下で正二十面体型から歪むタイプの構造変化を起こすという観測結果を得てきた。しかし、変化が見られた温度圧力領域では、圧力媒体のヘリウムガスが固化しており、非静水圧の影響の検討が必要である。そこで、われわれは、静水圧条件が良くなるより低圧領域での観測を行った。単準結晶試料をDAC中にヘリウムガス圧力媒体とともに封入し、低温高圧下放射光X線回折により構造観測を行った。測定は、これまで、717GPaの圧力範囲で行っていたが、今回は4.5GPa及び常圧で、温度範囲30
300Kにおいて行った。その結果、4.5GPaにおいては、ヘリウム圧力媒体が固化する155K以下で、従来観測されていたような格子変形が見られた。このことは、これまで見られていた格子変形が、少なからず非静水圧の影響を受けていることを示すものである。ただし、変形方向が加圧軸と異なる固有な方向であること、また、より高圧領域では格子変形境界がヘリウム固化曲線と一致していないことを考慮すると、格子変形はわずかな非静水圧効果で誘発された可能性が考えられる。
綿貫 徹; 町田 晃彦; 川名 大地; Tsai, A. P.*
no journal, ,
最近、われわれは、Cd-Yb準結晶及び近似結晶を加圧するとYbイオンが2価と3価の中間価数状態をとることを明らかにした。価数揺動状態と考えられるこの結果は、高圧下では価数変化の自由度が新たに加わったことを示している。また、Cd4面体配向の自由度と合わせると、2つの異なるタイプの自由度が準周期及び周期系に埋め込まれた系が実現しているということができる。Ybイオンの平均価数は加圧とともに増大するが、それによってどのような構造変化を起こすかをX線回折実験により調べた。特に今回は、価数の不均一の有無を捉えやすいように、Ybイオンサイトがすべて結晶学的等価である1/1近似結晶に着目して実験を行った。その結果、無秩序相であるBCC相を加圧すると、約12GPaで3倍周期相が現れ、さらに加圧すると、約20GPaで4倍周期相が出現するといった逐次相転移が観測された。
綿貫 徹; 川名 大地; 町田 晃彦; Tsai, A. P.*
no journal, ,
最近、われわれは、Cd-Yb準結晶及び近似結晶を加圧するとYbイオンが2価と3価の中間価数状態をとることを明らかにした。価数揺動状態と考えられるこの結果は、高圧下では価数変化の自由度が新たに加わったことを示している。また、Cd4面体配向の自由度と合わせると、2つの異なるタイプの自由度が準周期及び周期系に埋め込まれた系が実現しているということができる。Ybイオンの平均価数は加圧とともに増大するが、それによってどのような構造変化を起こすかをX線回折実験により調べた。特に今回は、価数の不均一の有無を捉えやすいように、Ybイオンサイトがすべて結晶学的等価である1/1近似結晶に着目して実験を行った。その結果、無秩序相であるBCC相を加圧すると、約12GPaで3倍周期相が現れ、さらに加圧すると、約20GPaで4倍周期相が出現するといった逐次相転移が観測された。
綿貫 徹; 町田 晃彦; 川名 大地; Tsai, A. P.*
no journal, ,
最近、われわれは、Cd-Yb合金は準結晶中に準周期配列するYbイオンの価数を圧力によって変化させ、中間価数状態をとらせることができることを見いだした。中間価数状態でどのような現象が起こるかを調べるため、まず、変化が捉えやすいこの準結晶の近似結晶について、放射光を用いた単結晶X線回折実験によって、高圧下での構造観察を行った。その結果、約12GPaで3倍周期的な変調構造が現われ、さらに、20GPaでは4倍周期的な変調構造が現われるといった、逐次相転移を起こすことが明らかとなった。これは、電荷秩序化によって引起された可能性も大いに考慮されるべき結果である。