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松尾 龍人; Natali, F.*; Plazanet, M.*; Zaccai, G.*; 藤原 悟
Journal of the Physical Society of Japan, 82(Suppl.A), p.SA020_1 - SA020_5, 2013/01
被引用回数:3 パーセンタイル:27.11(Physics, Multidisciplinary)トロポニンと呼ばれる蛋白質は、心筋の収縮を細胞内カルシウム濃度依存的に調節する。また、トロポニン分子内に起こるさまざまな変異が、肥大型心筋症等の疾患に繋がることが知られている。変異によってトロポニン分子の機能に異常が起こり、疾患へと繋がる。蛋白質が機能するためには、それを構成する原子の熱揺らぎ(ダイナミクス)が必須であると考えられているため、変異によるトロポニンの機能変化がダイナミクスの違いに起因する可能性が考えられる。そこで、変異によるトロポニンのダイナミクス変化を検出するために、野生型及び変異型(K247R)ヒト心筋トロポニンの溶液試料を用いて中性子散乱実験を行った。実験はフランスILLのIN13分光器を用いて行い、280Kから292Kの温度範囲を3Kごとに変化させて弾性散乱強度を測定した。得られたデータから見かけのバネ定数(蛋白質の柔らかさの指標)を計算すると、0.077N/m(野生型), 0.046N/m(変異型)となった。この結果は、変異によりトロポニン分子全体の柔軟性が増大することを示している。分子全体が過度に柔軟になることで、トロポニンのカルシウムシグナル伝達機構が正常に機能しなくなると考えられる。
松尾 龍人; Natali, F.*; Zaccai, G.*; 藤原 悟
no journal, ,
トロポニンと呼ばれる蛋白質は、心筋の収縮を細胞内カルシウム濃度依存的に調節する。また、トロポニン分子内に起こるさまざまな変異が、肥大型心筋症等の疾患に繋がることが知られている。変異によってトロポニン分子の機能に異常が起こり、疾患へと繋がる。蛋白質が機能するためには、それを構成する原子の熱揺らぎ(ダイナミクス)が必須であると考えられているため、変異によるトロポニンの機能変化がダイナミクスの違いに起因する可能性が考えられる。そこで、変異によるトロポニンのダイナミクス変化を検出するために、野生型及び変異型(K247R)ヒト心筋トロポニンの溶液試料を用いて中性子散乱実験を行った。実験はフランスILLのIN13分光器を用いて行い、280Kから292Kの温度範囲を3Kごとに変化させて弾性散乱強度を測定した。得られたデータから見かけのバネ定数(蛋白質の柔らかさの指標)を計算すると、0.077N/m(野生型), 0.046N/m(変異型)となった。この結果は、変異によりトロポニン分子全体の柔軟性が増大することを示している。分子全体が過度に柔軟になることで、トロポニンのカルシウムシグナル伝達機構が正常に機能しなくなると考えられる。