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本多 真紀
Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan, 70(4), p.282 - 283, 2022/12
加速器質量分析(AMS)における計測技術と化学分離技術の発展によって、AMSでPu (半減期8.110年)、Fe (半減期2.6210年)、Sr (半減期28.9年)の高感度分析が可能になった。これによって、例えば海底堆積物の一種である鉄・マンガンクラスト中のPuを分析した研究では、これまでは核実験由来のPuに埋もれていた、太陽系外から飛来したPuの定量に成功した。更に、Puは中性子星合体などで生成されることを明らかにする等、重元素の起源となる天体サイト(生成場)の解明に繋がる研究成果を得た。本トピックスではPu,Fe,Srについて、AMSを活用した研究の最前線を紹介する。
松原 章浩; 藤田 奈津子; 西澤 章光*; 三宅 正恭*
no journal, ,
加速器質量分析(Accelerator Mass Spectrometry: AMS)では、測定目的である核種と等しい比電荷を持つ核種(主として同重体)は電磁界フィルターでは分別されず、目的核種と同様にガスカウンターに入射する。このため、双方のエネルギースペクトルの差を利用して両者を分別している。本研究では分別性能の向上を目指し、そのスペクトルの基になるパルストレースに及ぼす同重体入射の影響を実験的に調べた。観測の結果、ガスセルのガス圧を下げ、入射エネルギーを増加させるとパルストレースのベースラインが著しく揺らぐことが分かった。その揺らぎは、Bの多重入射によってガスカウンター内に正電荷が蓄積するが、その損失過程に介在するある不安定性によって発生すると考えられる。不安定性として蓄積した電荷に閾値を持つ緩和振動に着目している。
松原 章浩; 藤田 奈津子; 西澤 章光*; 三宅 正恭*
no journal, ,
加速器質量分析ではBe, Cl等、希少核種をE電離箱で計数する。それらの安定同重体(Beに対してB, Clに対してS)の比電荷は希少核種のそれに等しくなるため、電磁界フィルターでは分別されず、希少核種と同様にE電離箱に入射する。この入射率は希少核種のそれに比べ著しく高いため、希少核種のパルス信号に同重体の信号が干渉し、希少核種の測定が妨害される。本研究では、希少核種と同重体の分別の向上を目指し、パルス信号に及ぼす同重体干渉の影響を調べた。その結果、同重体の入射エネルギーを増加させるとパルス高の変動幅が大きくなるとともにパルス高の平均値が計算値に比べ低くなることが分かった。この原因は、同重体の多重入射のため蓄積された正電荷により、電子ドリフトのための電界が遮蔽されたことにあると考えられる。
松原 章浩; 藤田 奈津子; 三宅 正恭*; 西澤 章光*
no journal, ,
加速器質量分析(Accelerator Mass Spectrometry: AMS)では、希少核種とほぼ同じ質量電荷比を持ちうる妨害核種は、多くの場合、希少核種と同様に電離箱に入射させ、阻止能の違いで分別する。しかし、ある核種を対象としたAMSでは、妨害核種の入射率が電離箱の時間分解能を大きく超える場合(以後、超高入射率時という)がある。この場合、電離箱を用いた双方の分別は不可能とされる。われわれは、妨害核種の超高入射率時では、時間分解能の不足により出力信号が鈍るため、妨害核種の信号強度が減衰し、この現象が希少核種の測定をできる糸口になる可能性に着目した。本研究では、希少核種の計数に及ぼす、超高入射率の効果を明らかにするため、電離箱への入射率を変化させ、信号パルスの変化を実験的に調べた。その結果、入射率を1MHz以上にすると揺らぎは弱くなり、希少核種のパルスの判別がある程度容易となることが分かった。これは、超高入射率により妨害核種の均された信号の上に希少核種のパルスが重畳したことを示唆する。
松原 章浩; 藤田 奈津子; 木村 健二
no journal, ,
イオンチャネリング(以下、チャネリング)を応用した加速器質量分析の妨害粒子の分別に関する二つの技術開発の現状を報告する。固体表面のチャネリングにより同重分子を解離する技術では、解離効率を左右するイオン-表面相互作用の強さを数値シミュレーションにより評価した。その結果、本技術が十分な解離機能を持つことが示された。コヒーレント共鳴励起(Resonant Coherent Excitation: RCE)を利用した同重体分別技術では、基盤整備として行ったAMS装置におけるRCEの観測に成功した。
松原 章浩; 藤田 奈津子; 木村 健二
no journal, ,
コヒーレント共鳴励起(Resonant Coherent Excitation: RCE)という現象を利用した加速器質量分析(以下、AMS)の同重体分別の技術開発の基盤整備として、AMS装置でRCEの観測を試みた。実験では、シリコンの単結晶薄膜をチャネリング状態で透過するホウ素-10の速度を変化させ、+4価の存在比[4価/(4価+5価)]を測定した。その結果、存在比はイオン速度がRCEの共鳴速度に近いところで著しく低下した。これは、RCEを明瞭に示すものであるとともに、同重体の荷電分布を大きく変化させ得ることを示唆する。
本多 真紀; Martschini, M.*; Lachner, J.*; Wieser, A.*; Marchhart, O.*; Steier, P.*; Golser, R.*; 坂口 綾*
no journal, ,
近年AMSに加速したイオンとレーザー(光子)の相互作用を利用する同重体の効果的な除去手法を導入することによって、測定可能核種が拡大している。本発表では、本手法を導入したAMSによって世界に先駆けて測定に成功した研究例として、IAEA等から取得したサンプル中のSrとCsの測定について、その分析技術の概要、測定結果、残された課題を発表する。また本手法の地球化学分野における適用可能性(水圏におけるSr分布調査等のニーズや適用可能な環境試料の範囲)についても言及する。
Martschini, M.*; 本多 真紀; Merchel, S.*; Winkler, S.*; Golser, R.*
no journal, ,
純線放出核種であるためにSrの定量分析は煩雑で時間がかかる。従来の加速器質量分析(AMS)法によるSrの検出限界は、同重体Zrの干渉が主な原因で、線検出法の一般的な検出限界3mBqと同程度であった。ウィーン大学のAMS施設で実施している、世界的にユニークなイオンレーザー相互作用質量分析法(ILIAMS)はZrをイオンレーザーとリアクションガスで効果的に除去するため、このイオンレーザー相互作用による同重体除去システムを装備していない従来のAMSシステムよりもSrの検出限界は優れている(0.1mBq)。本研究では極限条件(例えばBq/gの低濃度、グラムオーダーの試料量)の環境試料であるサンゴ等のSr分析を試みた。検出限界0.1mBqを下げるために、大気圏内核実験由来のSr汚染がほとんど無い古い年代のサンゴからSrを精製し(Sr担体)、環境試料の化学分離を実施し、AMSでSrを測定した。分析の結果、検出限界0.03mBq(Sr/Sr510、線検出法の1/100)を達成した。本研究で達成した検出限界は、1mgのSrターゲットに含まれるSr量2agに相当する。本発表では少量の一般環境試料中Srの高感度分析に成功した最新の成果を主に報告する。