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Sweet, M.*; Mishima, Kenji*; 原田 正英; 栗田 圭輔; 飯倉 寛; 田崎 誠司*; 菊池 伯夫*
Quantum Beam Science (Internet), 9(2), p.11_1 - 11_17, 2025/04
中性子ビームは電気的に中性で透過性が高いため、植物、種子、微生物などの生物種への照射に独自の利点がある。われわれは、核破砕、原子炉、小型中性子源のJ-PARC BL10、JRR-3 TNRF、KUANSのシミュレーションを使用して、遺伝子変異を誘発する中性子照射の可能性を包括的に調査した。
武田 遼真; 柴田 裕司; 武内 伴照; 中野 寛子; 関 美沙紀; 井手 広史
JAEA-Testing 2024-007, 33 Pages, 2025/03
日本原子力研究開発機構及び日本原子力研究所では過去30年以上、自己出力型の中性子検出器(Self-Powered Neutron Detector: SPND)やガンマ線検出器(Self-Powered Gamma Detector: SPGD)の開発・照射試験が行われており、複数の研究成果が報告されている。本稿では、これらの試験結果に対して、JAEA報告書『自己出力型放射線検出器の出力電流値計算コードの作成(JAEA-Data/Code 2021-018)』において作成した計算コードによる理論的な出力結果との比較・検証を行った。比較対象はコバルト60ガンマ線照射施設SPGDの照射試験結果とした。その結果、ガンマ線によるコンプトン散乱電子の飛程に対して比較的にエミッタ径が細い場合には計算結果は試験結果を良く再現することが分かった。一方、比較的にエミッタ径が太い場合には計算結果と比較して試験結果における出力電流値は半分程度にとどまった。エミッタ径の違いによる差異が生じた要因としてエミッタによる自己遮蔽効果が考えられ、エミッタ径が太い場合や線場が等方的でない条件に由来する自己遮蔽による影響を、計算コードにおける電子の平均飛程や平均最小エネルギーの変化として採り入れる等の新たな定式化が必要であると思われる。
明午 伸一郎
加速器, 21(4), p.333 - 344, 2025/01
加速器駆動核変換システム(ADS)のビーム照射環境下における材料損傷の研究のため、日本原子力研究開発機構(JAEA)は、J-PARCリニアック400MeV陽子ビームとLBE核破砕ターゲットを用いた核変換実験施設ターゲット施設(TEF-T)の建設を計画していた。文部科学省の分離変換技術評価タスクフォースでは、リニアックを利用するメリットを最大限に生かし、ユーザーの多様なニーズに応える施設として検討するよう提言していた。TEF-Tの後継となる陽子線照射施設は、1)材料照射試験、2)核破砕中性子を用いた半導体ソフトエラー試験、3)医療用RI製造、4)宇宙用陽子線利用を目的として建設が計画されている。より魅力的な施設としてユーザーの意見を取り入れるため、2022年にユーザーコミュニティが設立された。本論文では、施設の現在の設計状況について述べる。
矢野 康英; 宮澤 健; 丹野 敬嗣; 赤坂 尚昭; 吉武 庸光; 皆藤 威二; 大塚 智史
Journal of Nuclear Science and Technology, 8 Pages, 2025/00
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)照射された改良SUS316鋼(PNC316)被覆管の引張特性に及ぼすひずみ速度の影響を評価した。PNC316被覆管は高速実験炉「常陽」のCRT402制御棒集合として400Cで25dpaまで照射された。照射後稟議引張試験は、350
Cの試験温度で、3.3
10
, 3.3
10
and 3.3
10
s
の歪速度で実施した。ひずみ速度が最も遅い3.3
10
s
においてわずかな全伸びの低下がみられたが、明確なひずみ速度依存性は確認されなかった。加えて、被覆管の内面側の破断部近傍において粒界剥離が全てのひずみ速度で確認されたが、ひずみ速度が最も遅い場合でのみ一部の破壊様式が粒界破壊を示した。破壊様式と被覆会内面近傍に高密度に存在するヘリウムが密接に関係していることが示唆された。
藤村 由希; 石川 法人; 近藤 啓悦
JAEA-Technology 2024-012, 26 Pages, 2024/10
高い高温強度・耐腐食性を有するセラミックス材料は化学的に安定であり、その中でも特に酸化アルミニウム(AlO
)は、耐照射性にも優れた材料であることが分かっている。一方で、耐照射性が高いということは照射損傷の度合いが小さいということを意味しており、ごくわずかな照射影響について検知し、適切に評価するのは非常に困難である。本研究ではこの「微小な照射損傷」を捉えるため、金属などを主体とする他の構造材料における照射影響解析の場面で利用されている電子後方散乱回折(EBSD)パターンを用いた格子ひずみ(弾性ひずみ)の解析をセラミックス材料に適用した。照射損傷の影響を抽出するために、酸化アルミニウム(Al
O
)を原料とした単結晶サファイアを対象にし、いくつかの異なる照射量でイオン照射試験を行い、EBSD測定と格子ひずみ解析を実施したところ、これまでに分かっていた照射面と垂直方向の照射影響(格子膨張)に加えて、新たに水平方向の照射影響(格子収縮)を捉えることに成功した。さらに、照射量が増加するとともに照射損傷の程度も大きくなる傾向が見られた。以上のことから、EBSDは照射損傷によるセラミックス中の格子ひずみの照射量依存性を検知・評価できる有力な手法であることを明らかにした。
外山 健*; 丹野 敬嗣; 矢野 康英; 井上 耕治*; 永井 康介*; 大塚 智史; 宮澤 健; 光原 昌寿*; 中島 英治*; 大沼 正人*; et al.
Journal of Nuclear Materials, 599, p.155252_1 - 155252_14, 2024/10
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Materials Science, Multidisciplinary)高速実験炉「常陽」で中性子照射した14Cr-ODS鋼(MA957)中の酸化物の安定性について3D-APとTEMを用いて評価を行った。中性子照射は、(502C, 130dpa)、(589
C, 154dpa)及び(709
C, 158dpa)の3条件で実施した。709
C照射では僅かな数密度の減少が認められたが、酸化物は高い数密度を有しており、相対的に照射前後で顕著な変化は確認されず安定に存在していた。これらのことから、ODS鋼は、700
C照射で約160dpaまで照射されたとしても強度は維持されることが示唆された。本研究成果の一部は、文部科学省の原子力システム研究開発事業による委託業務(JPMXD0219214482)として実施した。
高見澤 悠; Lu, K.*; Li, Y.
International Journal of Pressure Vessels and Piping, 210, p.105219_1 - 105219_7, 2024/08
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Engineering, Multidisciplinary)確率論的破壊力学(PFM)に基づく原子炉圧力容器(RPV)の構造健全性評価では、RPVの中性子照射脆化について、脆化予測の平均値と不確かさの両方を考慮することが極めて重要である。通常、脆化予測の不確かさは正規分布で与えられ、その標準偏差は脆化予測手法の開発に使用されたすべてのデータの測定値と予測値の残差から決定される。したがって、中性子照射量、周辺のデータの数やばらつきにかかわらず、同一の標準偏差が仮定される。日本原子力研究開発機構では、機械学習とベイズ統計に基づくノンパラメトリックベイズ(BNP)法を用いた脆化評価手法を開発し、PFM解析コードに導入した。BNP法は、実測データのばらつきが大きく、データ数が少ない場合に有意な不確かさを推定するため、データの希少性に応じた確率分布を予測することができ、より合理的な不確かさを与えることができる。本研究では、高経年化した日本の加圧水型軽水炉におけるRPVを対象としたPFM解析を実施し、異なる脆化評価手法や不確かさがRPVの破損頻度に及ぼす影響について調べた。その結果、BNP法に基づく脆化評価手法を用いた場合に、破損頻度が高くなるものの、その差はわずかであることから、既存の脆化評価手法の妥当性を示した。
西條 友章; 水田 直紀; 長谷川 俊成; 菅沼 拓朗; 島崎 洋祐; 石原 正博; 飯垣 和彦
JAEA-Technology 2024-002, 96 Pages, 2024/06
HTTR(高温工学試験研究炉)の炉心には、耐熱性に優れた原子炉級黒鉛材料が使用されている。この黒鉛材料は、温度や中性子照射により物性値が変化するとともに、照射変形やクリープ変形など複雑な挙動を示すため、黒鉛用の応力解析コードを開発してきた。これを用いて、中性子照射とともに蓄積する残留ひずみによる炉停止時応力などを評価してきたが、温度や中性子照射によるヤング率、熱膨張係数等の物性値の変化が炉停止時応力等に与える影響については、十分に把握されていない。そこで、物性値の変化や複雑な変形が及ぼす運転時及び原子炉停止時に発生する応力への影響を明らかにし、黒鉛構造物の長寿命化開発等に資することを目的として、簡易はりモデルを基にした評価モデルを開発した。本報告書では、本モデルを用いて、600Cから800
Cの温度域にある黒鉛構造物について、物性値の照射変化による運転時応力及び炉停止時応力への影響を明らかにした。
矢野 康英; 上羽 智之; 丹野 敬嗣; 吉武 庸光; 大塚 智史; 皆藤 威二
Journal of Nuclear Science and Technology, 61(4), p.521 - 529, 2024/04
被引用回数:3 パーセンタイル:59.85(Nuclear Science & Technology)高速実験炉「常陽」で中性子照射したPNC316の引張特性に及ぼす中性子の影響を評価した。PNC316被覆管とラッパ管は、照射温度400ら735Cで照射量21から125dpaで照射された。照射後の引張試験は室温と照射温度で実施された。照射材の著しい硬化と軟化は確認されたが、照射後の引張延性は工学的なレベルを維持できていた。また、400から500
Cの範囲で110dpa照射されたPNC316ラッパ管の最大スエリング量は2.5%であり、10%以上のスエリングが生じたPNC316や15Cr-20Ni鋼のような日本の20%冷間加工材は、塑性不安定は小さかったけれども、十分な延性と加工硬化性能を維持していることが分かった。
佐藤 智徳; 端 邦樹; 加藤 千明; 五十嵐 誉廣
材料と環境, 73(4), p.102 - 109, 2024/04
放射線照射下でのSCCき裂水質における溶存酸素濃度の寄与と深さ方向の水質分布を評価するため、隙間付与ステンレス鋼のガンマ線照射下試験およびラジオリシス解析を実施した。その結果、溶存酸素濃度によらず隙間内全域にFeO
が形成されることを確認した。また、照射下では、き裂内でラジオリシスにより直接生成された酸化剤種は被膜成長で消費され、放射線環境下でもき裂内ではアニオン濃縮が発生することが推定された。
佐野 成人; 山下 直輝; 渡邊 勝哉; 塚田 学*; 星野 一豊*; 平井 功希; 池上 雄太*; 田代 信介; 吉田 涼一朗; 畠山 祐一; et al.
JAEA-Technology 2023-029, 36 Pages, 2024/03
廃棄物安全試験施設(WASTEF)においては、令和元年度に原子力科学研究所内の第4研究棟よりガンマ線照射装置「ガンマセル220」を移設し、ガンマ線照射利用が開始された。当初は本装置の所有者である安全研究センター燃料サイクル安全研究ディビジョン サイクル安全研究グループがメインユーザーとして試験を実施していたが、令和4年度以降、日本原子力研究開発機構外部も含む他のユーザーの利用も開始された。ガンマ線照射装置「ガンマセル220」は、カナダNordion International Inc.製であり、平成元年度に購入してから、内蔵されるCo線源の線源更新を1回実施し、核燃料サイクル等に係る安全研究の目的で、今日まで利用されている。本報告書は、ガンマ線照射装置「ガンマセル220」設備概要、WASTEFにおける許認可、利用状況、保守点検及び今後の展望についてまとめたものである。
斎藤 滋; 明午 伸一郎; 牧村 俊助*; 平野 幸則*; 堤 和昌*; 前川 藤夫
JAEA-Technology 2023-025, 48 Pages, 2024/03
日本原子力研究開発機構(JAEA)は、原子力発電に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減のため、加速器を使った核変換の研究開発として加速器駆動システム(ADS; Accelerator-Driven Systems)の開発を進めている。ADSの設計に必要な材料照射データベースを作成し、鉛ビスマス共晶合金(LBE; Lead-Bismuth Eutectic)中での照射効果について研究するため、J-PARCに陽子照射施設の検討を進めている。この陽子照射施設では、LBEの核破砕ターゲットに250kWの陽子ビームを入射し、ADSの構造材候補材についてLBE流動下での照射試験を実施する他、半導体ソフトエラー試験、医療用RI製造、陽子ビーム利用などを行う計画である。これらのうち照射済み試料の照射後試験(PIE; Post Irradiation Examination)とRIの分離精製は、陽子照射施設に付属して建設されるPIE施設において実施される。本PIE施設では、J-PARCの他の施設において照射された機器や試料のPIEも実施される予定である。本報告書は、この照射後試験施設の概念構築に必要な照射後試験項目、試験フロー、設備、試験装置等の検討を行い、施設内の配置案をまとめたものである。
中野 寛子; 藤波 希有子; 山浦 高幸; 川上 淳; 花川 裕規
JAEA-Review 2023-036, 33 Pages, 2024/03
材料試験炉部では、発電用原子炉の導入を検討しているアジア諸国をはじめとした海外の原子力人材育成及び将来の照射利用拡大、並びに国内の原子力人材の育成及び確保を目的とし、国内外の若手研究者・技術者を対象に、JMTR等の研究基盤施設を活用した実践型の実務研修を実施している。本研修は、国立研究開発法人科学技術振興機構の国際青少年サイエンス交流事業「さくらサイエンスプラン」に採択され、2021年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、オンラインでの開催とした。アジア地域の6か国から53名の若手研究者・技術者が参加した。また、2022年度は海外から日本国への入国規制が緩和されたことにより、アジア地域の4か国から7名の若手研究者・技術者が参加し、オンサイト研修を実施した。開催した研修の共通したカリキュラムとして、原子力エネルギー、照射試験、原子炉の管理、JMTRの廃止措置計画等に関する講義を行った。2021年度におけるオンラインでの研修では各国のエネルギー事情に関する情報交換を実施し、2022年度におけるオンサイト研修ではシミュレータを用いた運転、環境モニタリング等の実習やJMTR等の施設見学を行った。本報告書は、2021年度及び2022年度に実施した研修についてまとめたものである。
小河 浩晃; 石川 法人
2023年度大学研究助成技術研究報告書, p.123 - 134, 2024/03
高圧水素環境を想定したステンレス鋼の品質管理及び次世代の鉄鋼材料の開発では、腐食と水素脆性の評価が重要となる。水素脆性を引き起こす鉄鋼材料中の水素を分析するためには、二次イオン質量分析法(SIMS)などが使用される。従来の水素分析用標準試料の濃度は、1wt-ppmと微量であることが、水素分析を行う上で課題となっている。本研究では、水素インプラント法を用いて、鉄鋼材料中に水素をインプラントすることにより、局所的ではあるが、従来よりも高い水素濃度を持つ試料の作成を試みた。水素濃度分析は、タンデム加速器を用いた核共鳴核反応(NRA)法で評価した。水素分布は表面付近と局所的ではあるものの、従来よりも高濃度である、1,900wt-ppm程度の高い水素濃度を持つ試料の作成に成功した。
石川 法人; 福田 将眞; 中嶋 徹; 小河 浩晃; 藤村 由希; 田口 富嗣*
Materials, 17(3), p.547_1 - 547_21, 2024/02
被引用回数:2 パーセンタイル:57.76(Chemistry, Physical)340-MeV Auイオンビームを照射した天然ジルコニアにおいて形成されたイオントラックとナノヒロックを透過型電子顕微鏡で微細観察した。ナノヒロックの寸法が10nm程度であり、局所溶融した領域の寸法と同程度であることが分かった。したがって、一旦溶融した結果としてイオントラックとナノヒロックが形成されたことが分かる。次に、イオントラックを観察すると長方形の断面形状をしており、かつ結晶構造が大きく溶融前と変化していないことが分かった。したがって、他のセラミックスと異なり、ジルコニアにおいては、局所溶融後に、結晶構造を反映した異方的な再結晶化が起きていることが強く示唆される。一方で、イオントラックの中心部には、飛跡に沿った低密度のコア領域が形成されており、イオンビームが入射した表面への物質移動により物質欠損が形成されていることも判明した。物質欠損を伴う条件では再結晶化が不十分となり、飛跡のごく近くでは低密度コア領域が形成されていると説明できる。
雨倉 宏*; Chettah, A.*; 鳴海 一雅*; 千葉 敦也*; 平野 貴美*; 山田 圭介*; 山本 春也*; Leino, A. A.*; Djurabekova, F.*; Nordlund, K.*; et al.
Nature Communications (Internet), 15, p.1786_1 - 1786_10, 2024/02
被引用回数:2 パーセンタイル:57.35(Multidisciplinary Sciences)高い電子的阻止能領域の照射条件で高エネルギー重イオンを固体に照射すると、イオンの飛跡に沿って潜在イオントラックと呼ばれる柱状の損傷領域が形成される。イオントラックは、多くの物質中で形成されていることが知られているが、ダイヤモンドにおいて観察された例は皆無であった。高エネルギー(GeV)のウランイオンにおいてさえ、観察された例はない。本研究では、2-9MeV Cフラーレンイオンを照射したダイヤモンドにおいて、初めてイオントラックが観察された。高分解能電子顕微鏡による観察により、イオントラックの内部がアモルファス化していることが示唆され、さらに、電子エネルギー損失分光法による分析によって、グラファイト由来の
-結合の信号が検知された。分子動力学法に基づく計算シミュレーションで、上記の実験結果を再現することに成功した。
直江 崇; 涌井 隆; 木下 秀孝; 粉川 広行; 勅使河原 誠; 羽賀 勝洋
JAEA-Technology 2023-022, 81 Pages, 2024/01
大強度陽子加速器研究施設(Japan Proton Accelerator Research Complex, J-PARC)の物質・生命科学実験施設に設置されている核破砕パルス中性子源水銀ターゲットでは、高エネルギーのパルス陽子ビーム入射時に、核破砕反応による中性子の発生と同時に水銀の急激な熱膨張によって、圧力波が発生する。この圧力波は、水銀中を伝ぱする過程で負圧によるキャビテーションを誘発する。水銀を充填するステンレス鋼製の水銀ターゲット容器の内壁近傍でキャビテーションが崩壊することによって、内壁表面には激しい壊食損傷が形成される。水銀ターゲット容器は、陽子ビームが入射することによって先端部分の内部発熱に起因する熱応力を低減するために、先端部を厚さ3mmの薄肉構造としている。陽子ビーム強度の増加に伴って、キャビテーションによる攻撃性は増加するため、壊食損傷がターゲット容器の疲労破壊や水銀の漏洩につながる。したがって、設計出力である1MWでの長期的な安定運転を実現するために損傷の低減化が求められている。キャビテーションによる容器壁面の壊食損傷を低減することを目的として、圧力波を低減するための水銀中への微小気泡注入や、ターゲット容器先端部の2重壁構造化などの対策を施している。損傷低減化策の効果の確認や、ビーム出力と壊食痕による損傷深さの相関を評価し、今後の運転条件を検討するために、使用済みのターゲット容器の先端部から試験片を切出し、損傷の観察を実施している。これまでに、内壁に形成されたキャビテーションによる損傷形態の観察と壊食痕による損傷の深さを測定することで、運転条件との相関について検討を実施し、気泡注入によって著しい損傷低減効果が発現されること、2重壁構造によって、先端部分の損傷形成がビーム出力に依存せず抑制できることを確認した。これらの成果によって、施設の設計目標である1MWの安定運転を実施可能な見通しを得た。本報では、これまでに開発、適用した実機水銀ターゲット容器内壁の損傷観察の手法、測定結果及び運転条件との相関についてこれまでに得られた成果をまとめる。
平野 耕一郎; 福田 誠*; 江里 幸一郎*; 徳永 和俊*
Proceedings of 20th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.415 - 419, 2023/11
ビームターゲットや核融合実験炉(ITER)のダイバータには、低放射化、高熱伝導率および高強度の特性を有する材料として、タングステンが使用されている。負水素イオンビームエネルギー3MeVの加速器を使用し、ITERの要求仕様を満たすタングステン材料に対して、加熱(3200C)及び冷却(160
C)の温度変化を5Hz周期で繰り返し与える多重照射試験を実施した。その結果、温度変化を繰り返すことによる膨張収縮により発生し、進展したと思われる突起や亀裂が試験片表面に観測された。本件では、加熱および冷却の温度変化を繰り返すような多重照射によるタングステンの熱疲労による損傷ついて調べたので、報告する。
山本 耀二郎*; 早川 頌*; 沖田 泰良*; 板倉 充洋
Computational Materials Science, 229, p.112389_1 - 112389_9, 2023/10
被引用回数:2 パーセンタイル:20.33(Materials Science, Multidisciplinary)ヘリウムバブルは、核融合炉条件下で生成する特有の微細構造である。これらのバブルは、自らの移動によって接近・融合し、微細構造や材料特性に大きな影響を与える。しかし複数の金属原子の移動が含まれるこれらのプロセスは、分子動力学(MD)では時間スケールの制約から扱うことができない。この研究では、自己発展原子論的キネティックモンテカルロ(SEAKMC)法により時間スケールを拡張し、Fe中のバブルの融合過程を再現した。He原子の微小な振動やFe原子の短距離変位など、活性化エネルギーが極めて低い些細なイベントを避けるため、SEAKMCに2つのアルゴリズムを導入した。He原子の微小な振動を回避するために二段階のサドルポイント検索を行い、Fe原子の短距離変位を避けるためにFe原子の変位距離に対する閾値を設定した。さらに、活性化エネルギーの上限を設定する別のアルゴリズムを追加することで、非現実的に高い活性化エネルギーを持つイベントの選択を防ぎ、MDの時間尺度よりも8桁長い秒までのシミュレーション時間において、ダンベルから楕円形への構造の変化を再現することに成功した。開発された手法は、軽元素を含む金属材料の微細構造を分析するのに効果的であり、実験と比較可能な時間スケールに到達できる唯一の手法である。
Quach, N. M.*; Ngo, M. C.*; Yang, Y.*; Nguyen, T. B.*; Nguyen, V. T.*; 藤田 善貴; Do, T. M. D.*; 中山 忠親*; 鈴木 達也*; 末松 久幸*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 332(10), p.4057 - 4064, 2023/10
被引用回数:4 パーセンタイル:71.02(Chemistry, Analytical)テクネチウム-99m(Tc)は世界で最も広く使用されている医療用ラジオアイソトープであり、モリブデン-99(
Mo)から生成される。核不拡散の観点から中性子放射化法による
Mo生成は核分裂由来の
Moの代替法として注目を集めているが、
Mo比放射能が極めて低いという欠点が存在する。本研究では、
Mo抽出による比放射能向上を目的に、照射ターゲットとしてポーラス
-MoO
ワイヤーを準備した。ポーラス
-MoO
ワイヤーは、2段階の加熱手順によって金属Moワイヤーから調製する。中性子照射後のポーラス
-MoO
ワイヤーおよび抽出に用いた水の放射能測定と同位体測定から
Moのホットアトム効果を確認した。また、ポーラス
-MoO
ワイヤーと市販の
-MoO
粉末での
Mo抽出率を比較した結果、同等の抽出率が得られた。