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論文

New insights into the Cs adsorption on montmorillonite clay from $$^{133}$$Cs solid-state NMR and density functional theory calculations

大窪 貴洋*; 岡本 拓也*; 河村 雄行*; Gu$'e$gan, R.*; 出口 健三*; 大木 忍*; 清水 禎*; 舘 幸男; 岩舘 泰彦*

Journal of Physical Chemistry A, 122(48), p.9326 - 9337, 2018/12

 パーセンタイル:100(Chemistry, Physical)

モンモリロナイトに吸着したCsの吸着構造を核磁気共鳴法(NMR)によって調査した。Cs置換率や含水率の異なるCs型モンモリロナイトのNMRスペクトルを測定するとともに、Cs吸着構造とNMRパラメータの関係を明らかにするために、第一原理計算に基づいてNMRパラメータを評価した。NMR実験と第一原理計算との比較の結果、Cs置換率が低いモンモリロナイトでのCs吸着形態は4面体シートでAl置換されたサイトの近傍に吸着したCsであること、Cs置換率と含水率が高い条件においてもCsの一部は脱水和状態で吸着していることを明らかにした。

論文

数値シミュレーションによるアルミニウムの水素昇温脱離曲線の解釈

海老原 健一; 山口 正剛; 都留 智仁; 板倉 充洋

軽金属, 68(11), p.596 - 602, 2018/11

水素脆化は応力腐食割れの原因の1つとして考えられている。鉄鋼材料と同様に高強度アルミニウム合金の開発では水素脆化は重大な問題となっている。アルミニウム合金における水素脆化の研究は鉄鋼材料における水素脆化機構の解明に示唆を与えると考えられる。水素脆性を理解するためには、合金中の水素トラップ状態を知ることは避けられず、それは水素の熱脱離分析法を用いて同定することができる。本研究では、円筒状試料および板状試料について報告されたアルミニウム中の水素の熱脱離スペクトルを数値シミュレーションし、それらに含まれる脱離ピークをトラップサイト濃度およびトラップエネルギーに基づいて解釈した。その結果、最低温度側の脱離ピークは粒界から生じることが明らかとなり、他の脱離ピークは報告された解釈が合理的であることが確認された。さらに、試料を加熱する過程で転位や空孔のトラップサイト濃度が変化する可能性を示す結果を得た。この結果は、鉄鋼材料において昇温脱離曲線から水素トラップ状態を解釈する上で有意な示唆を与えるものである。

論文

Radiocesium interaction with clay minerals; Theory and simulation advances Post-Fukushima

奥村 雅彦; Kerisit, S.*; Bourg, I. C.*; Lammers, L. N.*; 池田 隆司*; Sassi, M.*; Rosso, K. M.*; 町田 昌彦

Journal of Environmental Radioactivity, 189, p.135 - 145, 2018/09

 被引用回数:3 パーセンタイル:25.55(Environmental Sciences)

東京電力福島第一原子力発電所事故により、環境中に放出された放射性セシウムは土壌中の粘土鉱物に強く吸着されていることがわかっているが、その吸着メカニズムは今も解明されていない。本論文は、これまで蓄積された粘土鉱物による放射性セシウム吸着現象に関する実験結果と、最新のシミュレーション研究の進展をまとめたものである。論文では、実験結果についてまとめられ、それらの結果を基にした最新のシミュレーション研究によって明らかにされた、次のような研究結果について説明されている:(1)粘土鉱物表面におけるセシウム吸着のエネルギースケール、(2)実験では観測が難しい粘土鉱物エッジの原子レベル構造についての理解の進展、(3)粘土鉱物の水和した層間におけるセシウム吸着現象の詳細、(4)ほつれたエッジにおけるイオン半径と層間距離の関係と吸着の選択性、(5)層間におけるセシウムの深部への移動、(6)放射性セシウムの核崩壊の影響。さらに、これらの知見に基づいた除染による廃棄土壌の減容技術開発の可能性についても述べられている。

論文

Atomistic simulation of phosphorus segregation to $$Sigma$$3(111) symmetrical tilt grain boundary in $$alpha$$-iron

海老原 健一; 鈴土 知明

Modelling and Simulation in Materials Science and Engineering, 26(6), p.065005_1 - 065005_10, 2018/09

 パーセンタイル:100(Materials Science, Multidisciplinary)

照射誘起粒界リン偏析の見積もりは原子炉圧力容器鋼の脆化を評価する上で重要な要素であるが、粒界へのリン移動の物理的過程は依然として不明である。このことから、分子動力学を用いて$$Sigma$$3(111)対称傾角粒界へのリン移動を分子動力学シミュレーションによって評価した。結果として、粒界近傍$$sim$$1nmの範囲で、自己格子間原子が粒界に押し出されることで、鉄-リン混合ダンベルのリン原子と八面体格子間リン原子が置換型原子になることを見出した。空孔-リン複合体も解離し、空孔はリン原子を引きずることなく粒界に吸収された。この結果は、従来考えられている偏析プロセスとは異なることから、それについて新しい視点が必要であると示唆している。

論文

First-principles study of solvent-solute mixed dumbbells in body-centered-cubic tungsten crystals

鈴土 知明; 都留 智仁; 長谷川 晃*

Journal of Nuclear Materials, 505, p.15 - 21, 2018/07

 被引用回数:1 パーセンタイル:38.14(Materials Science, Multidisciplinary)

タングステン(W)は、将来の核融合炉のプラズマ対向材料として有望視されており、W合金の耐放射線性を向上させその機械的特性を改善するための最適な合金成分を選択することが重要な課題である。本研究では、W結晶中の溶媒と溶質の混合ダンベルを第一原理計算によって調査した。その結果、チタン, バナジウム, クロムはW材の延性を低下させる原因となる照射誘起析出を起こさずに、空孔と格子間原子の再結合を促進させるため、照射効果という観点からではW材の合金元素として望ましいことがわかった。

論文

Localization of cesium on montmorillonite surface investigated by frequency modulation atomic force microscopy

荒木 優希*; 佐藤 久夫*; 奥村 雅彦; 大西 洋*

Surface Science, 665, p.32 - 36, 2017/11

 被引用回数:2 パーセンタイル:66.35(Chemistry, Physical)

粘土鉱物表面におけるイオン交換反応は、通常その交換量だけに着目し、ミクロスコピックな研究はまだあまりなされていない。本研究では、反応が多く起こると考えられている粘土鉱物表面に着目し、周波数変調方式原子間力顕微鏡を用いてイオン分布を調べた。粘土鉱物はモンモリロナイト、イオンはセシウムイオンを対象として、研究を行った。その結果、セシウムが線状に分布し、その構造がしばらく保たれるという現象を発見した。第一原理シミュレーションにより、粘土鉱物内部の構造を評価したが、内部の電荷が直線構造を取る可能性は低いことが示された。これらの結果は、この直線構造の起源は粘土鉱物表面-イオン-水の三者による未解明吸着プロセスが存在することが示唆していると考えられる。

論文

Transmutation effects on long-term Cs retention in phyllosilicate minerals from first principles

Sassi, M.*; 奥村 雅彦; 町田 昌彦; Rosso, K. M.*

Physical Chemistry Chemical Physics, 19(39), p.27007 - 27014, 2017/10

 被引用回数:3 パーセンタイル:56.16(Chemistry, Physical)

福島第一原子力発電所事故によって放出された放射性セシウムなどの環境中の放射性セシウムは、粘土鉱物に吸着されて長期間保持されると考えられているが、これまで、放射性セシウムが崩壊した際の効果は評価されてこなかった。本研究は、金雲母(粘土鉱物の一種)に吸着された放射性セシウムが崩壊してバリウムへの核変換が起こると、1価のから2価のイオンへ変化することに着目し、第一原理計算によってその効果を調べた。その結果、金雲母を電荷中性に保つためにセシウムやカリウムを放出する可能性があることがわかった。

論文

Origin of 6-fold coordinated aluminum at (010)-type pyrophyllite edges

奥村 雅彦; Sassi, M.*; Rosso, K. M.*; 町田 昌彦

AIP Advances (Internet), 7(5), p.055211_1 - 055211_9, 2017/05

 被引用回数:4 パーセンタイル:43.58(Nanoscience & Nanotechnology)

放射性セシウムを比較的強く吸着すると予想されている粘土鉱物のエッジは、実験的に調べることが困難であり、未だに構造がわかっておらず、数値シミュレーションによる研究が有効である。これまでに、最も単純な2:1珪酸塩鉱物であるパイロフィライトについて、密度汎関数法等を用いた研究が進められており、エッジ部分のアルミニウムは5つの酸素と共有結合し、さらに、水分子を配位子とした6配位構造が安定であることが知られていた。しかし、電荷の中性条件からは水分子が配位する必要はなく、なぜ6配位が最安定構造なのかは明らかになっていなかった。そこで、我々は、密度汎関数法を用いて詳細に調べた。その結果、アルミニウムが水分子の酸素原子を引きつけ、さらに、水分子の水素とエッジを構成するヒドロキシル基が水素結合のネットワークを構成し、6配位構造が安定化することがわかった。

論文

Modeling of Phosphorus Transport by Interstitial Dumbbell in $$alpha$$-Iron Using First-Principles-Based Kinetic Monte Carlo

海老原 健一; 鈴土 知明; 山口 正剛

Materials Transactions, 58(1), p.26 - 32, 2017/01

 被引用回数:2 パーセンタイル:60.17(Materials Science, Multidisciplinary)

原子炉圧力容器鋼における照射による粒界リン偏析を数値シミュレーションによって評価することを目指し、原子レベルの計算に基づく拡散レート方程式の開発を行っている。本研究では、第一原理計算で評価した格子間原子対の移動モデルおよび移動障壁エネルギーを用いたキネティックモンテカルロシミュレーションによって、鉄原子とリン原子の混合格子間原子対の拡散係数を評価した。評価した混合格子間原子対の拡散係数は、八面体格子間サイトを移動するリン原子の拡散係数とほぼ同じであり、空孔によるリン輸送の拡散係数よりかなり大きい値であった。さらに、八面体格子間サイトのリン原子を取り入れるように修正した拡散レート方程式に評価した拡散係数を組み入れ、照射誘起粒界リン偏析の数値シミュレーションをしたところ、八面体格子間サイトのリン原子に対する粒界における従来の境界条件が不適切であることが明らかとなった。今後、適切な境界条件を取り入れる必要がある。

論文

Simulation of He embrittlement at grain boundaries of bcc transition metals

鈴土 知明; 山口 正剛

Journal of Nuclear Materials, 465, p.695 - 701, 2015/10

 被引用回数:7 パーセンタイル:22.72(Materials Science, Multidisciplinary)

体心立法晶の遷移金属の粒界におけるHe脆化がどのような原子論的性質に支配されているかを研究した。我々は密度汎関数法を使った第一原理計算手法とHe偏析のための速度論を組み合わせた計算モデルを構築し、将来建設が予定されている核融合DEMO炉の第一壁の条件でHe脆化の予測計算を様々な金属を対象に行った。その結果、He脆化は中性子照射によるHe発生率だけでなく、粒界でのHe偏析エネルギーに大きく依存することがわかった。また、各元素のHe偏析エネルギーが周期律表において系統的な傾向を示すことが第一原理計算より明らかになった。

論文

First-principles calculation studies on cesium in environmental situations; Hydration structures and adsorption on clay minerals

町田 昌彦; 奥村 雅彦; 中村 博樹; 櫻本 和弘*

Proceedings of Joint International Conference on Mathematics and Computation, Supercomputing in Nuclear Applications and the Monte Carlo Method (M&C + SNA + MC 2015) (CD-ROM), 12 Pages, 2015/04

福島第一原子力発電所から放出された放射性セシウムの環境中での物理化学的性質を明らかにするため、本発表では二つの課題について第一原理計算手法によって研究した成果を発表する。課題の一つ目は、セシウムイオンの水和構造であり、二つ目は、セシウムイオンの粘土鉱物に対する吸着形態である。一つ目の課題については、第一原理計算手法の中でもボルンオッペンハイマー第一原理分子動力学法と呼ばれる計算手法を用い、他のアルカリ元素イオンの水和構造と異なり、第二水和殻がほとんどないことを明らかにし、二つ目の課題については、ほつれたエッジと呼ばれている粘土層間が開いたモデルを構築し、それに対してイオン交換エネルギーを計算した結果を示すことで、セシウムが選択的にそのエッジに吸着されることを明かにする。

論文

粘土鉱物へのセシウム吸着機構解明,2;第一原理計算による原子・分子レベルの吸着挙動解析

奥村 雅彦; 中村 博樹; 町田 昌彦

日本原子力学会誌, 56(6), p.372 - 377, 2014/06

福島原子力発電所事故により放出された放射性セシウムを除去するため、大規模除染が行われたが、膨大な量の除去土壌が発生し、その効率的かつ経済的な処理法の研究開発が求められている。一方、表層土壌に吸着したセシウムは風雨により一部移動することが知られ、再汚染や海洋への流出が懸念されており、環境中でのセシウム挙動は重要な研究課題である。しかし、セシウムの土壌への吸脱着に関する科学的知見の不足により、上記の研究開発の進展は未だ不透明である。本稿では、前稿のセシウムの土壌吸脱着に関する実験・観測結果を受け、第一原理計算手法と呼ばれる高精度の計算科学手法により得られた新知見を紹介し、除去土壌の減容化法及び貯蔵法、そして、環境中セシウムの動態予測に対して、今後の研究開発の方向性を示す。

論文

The Effect of hydrogen atoms on the screw dislocation mobility in bcc iron; A First-principles study

板倉 充洋; 蕪木 英雄; 山口 正剛; 沖田 泰良*

Acta Materialia, 61(18), p.6857 - 6867, 2013/10

 被引用回数:37 パーセンタイル:5.72(Materials Science, Multidisciplinary)

原子力材料は長年の中性子照射によって硬化する。これは金属材料が折れることなく曲がる塑性変形が、照射による材料変化によって阻害される現象であるが、これを解明するには塑性のメカニズムを原子スケールで明らかにする必要がある。それには塑性変形を担う転位線と呼ばれる格子欠陥の動きがどのように照射損傷により阻害されるを知る必要があり、これは実験で直接観察できないので大規模な量子計算が必要になる。本発表では量子計算によって初めてこの転位の移動阻害メカニズムを明らかにしたので報告する。大規模な計算が必要という課題の解決にあたっては、新たに考案した多階層計算手法を用い少ない原子数で多数の原子での計算に相当する精度を出すことを可能にしたことが上げられる。これによって転位の運動阻害プロセスを定量的にモデル化することが可能となり、照射硬化をシミュレーションで定量評価するための道が開けたと言える。

論文

Defect layer in SiO$$_2$$-SiC interface proved by a slow positron beam

前川 雅樹; 河裾 厚男; 吉川 正人; 宮下 敦巳; 鈴木 良一*; 大平 俊行*

Physica B; Condensed Matter, 376-377, p.354 - 357, 2006/04

 被引用回数:2 パーセンタイル:85.21(Physics, Condensed Matter)

ドライ酸化SiO$$_2$$/4H-SiC界面には多くの欠陥が含まれていると言われているが、陽電子消滅法を用いて欠陥の構造評価を行った。ドップラー幅測定からは、SiO$$_2$$/4H-SiC界面にはSiO$$_2$$やSiCとは明白に区別される欠陥を多く含んだ界面層が存在することが明らかとなった。界面層での陽電子消滅寿命測定からは、構造がアモルファスSiO$$_2$$に類似した比較的空隙を持つ構造であることがわかった。界面層での電子運動量分布測定と第一原理計算による陽電子消滅特性のシミュレーションとの比較より、陽電子は空隙に存在する酸素価電子と対消滅していることが示唆された。酸化後の加熱焼鈍による酸素価電子との消滅確率の減少は、界面準位密度の減少と同じ温度領域で起こることから、界面準位の起源となる欠陥構造は陽電子を捕獲する欠陥構造と強く関連していることが示唆された。

論文

Positron study of electron irradiation-induced vacancy defects in SiC

河裾 厚男; 吉川 正人; 伊藤 久義; Krause-Rehberg, R.*; Redmann, F.*; 樋口 高年*; 別役 潔*

Physica B; Condensed Matter, 376-377, p.350 - 353, 2006/04

 被引用回数:9 パーセンタイル:53.74(Physics, Condensed Matter)

電子線照射によって立方晶及び六方晶SiC中に生成する原子空孔を陽電子消滅による電子運動量分布測定と理論的解析を通じて同定した結果について報告する。立方晶SiCでは、孤立シリコン空孔が主たる陽電子捕獲サイトであり、格子緩和の効果で陽電子寿命が増加していること、及び局所的な四面体対称性によりその電子運動量分布が説明できることが明らかになった。一方、六方晶SiCでは孤立シリコン空孔が熱回復した後も残留する新たな空孔型欠陥が、c軸に沿って不対電子を有していること、及び炭素1s内殻電子軌道と陽電子の消滅頻度が増加することから、炭素空孔-アンチサイト炭素複合欠陥であることが明らかになった。

論文

First-principles molecular dynamics simulation of SiC devices; "Generation of amorphous SiO$$_{2}$$/SiC interface"

宮下 敦巳; 吉川 正人; 叶野 琢磨; 大沼 敏治*; 酒井 高行*; 岩沢 美佐子*; 曽根田 直樹*

Annual Report of the Earth Simulator Center April 2004 - March 2005, p.287 - 291, 2005/12

Siに比べ優れた物理特性を持つSiCを用いた半導体デバイスは、従来のSiやGaAs半導体デバイスでは動作が困難な、原子炉や宇宙環境等、極限環境下で用いられる素子として期待されている。半導体素子界面では原子レベルの欠陥の荷電状態が電気特性を支配しているため、この界面構造を計算機上で模擬し、界面欠陥構造がどのようにデバイス特性に影響するのか導出するため、地球シミュレータを用いた第一原理分子動力学計算で$$rm SiO_{2}/SiC$$界面構造を構築し電子構造を決定する。400原子程度の中規模モデルを用いてアモルファス$$rm SiO_{2}/SiC$$界面構造生成を行った。加熱温度は4000K、加熱時間は3ps、急冷速度は-1000K/ps、界面でのSiC可動層は4層とし、2200Kで$$rm SiO_{2}$$側終端固定層を開放し自由端とすることによって、$$rm SiO_{2}$$層でのアモルファス化を促進させた。生成された界面はダングリングボンドが消滅しており、清浄界面に近い状態が再現されたが、バンドギャップ中には欠陥準位が存在するのが観察された。欠陥準位は界面に存在する酸素から生じており、結合に寄与できない局在した電子分布が準位の原因となっていることがわかった。

論文

Response to comment on "Grain Boundary Decohesion by Impurity Segregation in a Nickel-Sulfur System"

山口 正剛; 志賀 基之; 蕪木 英雄

Science, 309(5741), P. 1677d, 2005/09

本報は著者らがScience vol.307(2005年)に投稿した論文に対し、「Ni粒界中の硫黄原子の偏析エネルギーは、平均値ではなく各原子ごとの増加分のエネルギーとするべき」、とのコメントがGengらによって寄せられたものの反論である。Gengらは著者らの論文を参考に同じ計算を行い、増加分のエネルギーをとれば、粒界結合力が1/10にまで低下する偏析(GB0 4/4, GB2 4/4)は実現する確率が1%程度になってしまい生じ得ないという。しかしながら、Gengらは硫黄原子が偏析していく順番には幾通りもあるということを見落としている。著者らの再計算によれば、ある順番においては増加分のエネルギーを使っても最低50%は偏析することがわかった。そのうえ、偏析の順番は数多くあるのですべてを調べ尽くすことは現在のところ困難であり、もっと偏析しやすくなる可能性もある。しかし、いずれにせよ単純なMcLeanモデルを使う限り偏析濃度の予測は定量的とはいい難いので、Gengらの主張はあまり意味がない。また、Gengらは別の原子配置の偏析(GB1 4/4, GB2 4/4)こそが起こり得ると主張しているが、著者らの再計算ではそうはならないので、Gengらの計算ミスではないかと思われる。さらにGengらは、脆化はS-S間反発に起因するのではなく、Ni-Sの結合方向の変化に起因するという新説を提案しているが、その根拠(電子密度図や粒界構造図)を示していないうえに、これも間違った計算に基づいて提案していると思われる。

論文

Grain boundary decohesion by impurity segregation in a nickel-sulfur system

山口 正剛; 志賀 基之; 蕪木 英雄

Science, 307(5708), p.393 - 397, 2005/01

 被引用回数:186 パーセンタイル:1.87(Multidisciplinary Sciences)

硫黄が引き起こすニッケル粒界脆化のメカニズム、すなわち、なぜどのようにして硫黄はニッケルの粒界結合力を弱めるのか、ある臨界硫黄濃度を超えるとそれが発生するのはなぜか、については長い間謎に包まれていた。われわれは第一原理計算から次のような脆化メカニズムを明らかにした。まず、高密度に偏析して互いに隣り合うまでになった硫黄原子間に、硫黄原子の電子雲の重なりから生じる短距離反発力が働き、それによって大きな粒界膨張が生じる。そして、その膨張が粒界の引っ張り強度を1/10にまで劇的に低下させる、というものである。この粒界の強度低下が直接脆化を引き起こしていると考えられる。なぜなら、計算における粒界強度低下の臨界濃度と実験から算出された脆化の臨界濃度が一致したからである。

論文

Energetics of segregation and embrittling potency for non-transition elements in the Ni $$Sigma$$5 (012) symmetrical tilt grain boundary; A First-principles study

山口 正剛; 志賀 基之; 蕪木 英雄

Journal of Physics; Condensed Matter, 16(23), p.3933 - 3956, 2004/06

 被引用回数:49 パーセンタイル:11.65(Physics, Condensed Matter)

ニッケル金属の$$Sigma$$5(012)対称傾角粒界中の非遷移元素がもたらす脆化効果について、WIEN2kコードを用いた第一原理計算による研究を行った。まず溶質元素(非遷移元素)がある場合とない場合における粒界/表面構造について、力を最小にするように原子を動かし安定な構造を求めた。次に置換サイトと格子間サイトも含めて、粒界/表面/bulkサイトにおける溶質元素の結合エネルギーを、$$_1$$Hから$$_{86}$$Rn間にあるすべての非遷移元素について計算した。そして、粒界/表面偏析エネルギーは、粒界/表面サイトにおける結合エネルギーとバルク内部におけるそれとの差から求め、Rice-Wangモデルに基づく脆化能エネルギー(embrittling potency energy)は、偏析エネルギーの粒界と表面での差から求めた。計算の結果、ほとんどの非遷移元素は負の粒界/表面偏析エネルギーを示した。それは粒界/表面がバルク内部よりも非遷移元素にとって安定であることを意味する。また、脆化能エネルギーはほとんどの元素で正となった(脆化がもたらされる)が、Be, B, C, Siで大きな負の値となり、これらの一部の元素は粒界を強化する可能性があることが示された。さらに、計算結果はさまざまな実験事実と矛盾しないことが示された。

論文

強磁性規則合金中の非磁性元素におけるMCDスペクトルの第一原理計算

山口 正剛; 浅野 攝郎*

日本応用磁気学会誌, 25(4-Part2), p.659 - 662, 2001/04

Pd$$_{3}$$Fe中のPd,NiMnSb中のSb,CoS$$_{2}$$中のSなど、強磁性体中の非磁性元素について、そのわずかな磁化などの磁気的性質を調べるために、軌道放射光を用いて磁気円二色性(MCD=Magnetic Circlar Dichroism)スペクトルが測定されている。われわれはそのMCDスペクトルとX線吸収スペクトル(XAS)を、第一原理計算から計算することを試みた。計算されたスペクトルは、CoS$$_{2}$$以外では実験をよく再現した。特にPd$$_{3}$$FeのPd3PXASにおいて、今まで理解されていなかった大きなサテライトピークの起源を明らかにすることができた。

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