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廣内 淳; 鯨岡 郁雄; 高原 省五; 高田 モモ*; Schneider, T.*; 甲斐 倫明*
Journal of Radiological Protection, 44(2), p.021510_1 - 021510_10, 2024/06
リスクに基づく放射線防護基準の根拠を検討する際には、統計的なベンチマークデータが必要である。これまでは、英国王立協会のリスク評価研究がベンチマーク統計として用いられてきたものの、1983年のデータであり、最近の医療インフラや生活水準に関するデータが反映されていない。そこで本研究では、ベンチマークデータとしてベースラインがん罹患率と死亡率に着目し、33か国のデータを比較した。ここでは、各国のがん罹患率と死亡率のデータを用いて計算した生涯死亡リスクと生涯罹患リスク、障害調整生存年(DALYs)を算出し、各国でそれらの値を比較した。結果の一つとして、すべての固形がんの生涯死亡・罹患リスクとDALYsは、国によって男性で2-4倍、女性で2-3倍の差が見られた。また、これらの値は発展途上国ほど低いことが示された。本研究では、ベースラインのがん死亡・罹患率に基づく健康リスクを、放射線によるがんリスクと比較する際の基準とすべきであると提案した。
廣内 淳; 鯨岡 郁雄; 高原 省五; 高田 モモ*; 甲斐 倫明*; Schneider, T.*; Lecomte, J.-F.*
no journal, ,
算出されたリスクに基づく放射線防護基準の根拠を検討する際には、統計的なベンチマークデータが必要である。これまでは、英国王立協会のリスク評価研究がベンチマーク統計として用いられてきた。本研究では、ベースラインとなるがんの罹患率と死亡率に着目し、放射線に関連するがんリスクと比較する。ここでは、各国のがん罹患率と死亡率のデータを用いて計算した生涯死亡リスクと罹患リスク、障害調整生存年(DALYs)を発表する。結果の一つとして、各指標は国間によって異なり、生涯死亡リスクは0.120.30、生涯罹患リスクは0.220.54、DALYsは0.0100.044yの値を取り、放射線に関連するがんリスクと比較する際に有用なデータを提供した。
廣内 淳; 鯨岡 郁雄; 高原 省五; 高田 モモ*; 甲斐 倫明*; Schneider, T.*; Lecomte, J.-F.*
no journal, ,
ICRPでは、放射線被ばくによる健康への有害な影響を定量化するために"デトリメント"という概念を利用している。デトリメントは、致死的ながんの致死割合、非致死的ながんに罹患していることによるQOLの低下、害が発生した場合の余命損失が考慮されている。デトリメントは、放射線被ばくの分野でのみ使用されている指標であり、化学分野や環境分野などで使用されている他のリスクと比較することはできない。そこで本研究では、他の分野でも利用されているリスク指標DALY(病的状態や障害、早死により失われた年数を表す)に着目し、放射線被ばく時のDALYを37か国で求めた。DALYは被ばくで生じたがんによる死亡で短くなった損失余命と、がんの症状の重さと罹患から死亡までの長さに応じて失われた健康年数の和で求めた。ここで被ばく条件は、被ばく時年齢1865歳(職業被ばく想定)、被ばく線量20mSv/y(生涯約1Sv相当)とした。その結果、DALYは0.0030.007y/人となり、諸外国の死亡率の上位である虚血性心疾患と脳卒中(0.010.1y/人程度)よりも低い値であった。