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辻 卓也; 松村 大樹; 小林 徹
SPring-8/SACLA利用研究成果集(インターネット), 11(4), p.214 - 217, 2023/08
天然に存在する粘土鉱物は様々な層構造をもち、セシウムイオン等の陽イオン収着サイトは複数存在すると考えられており、層間サイト、表面サイトや端面サイト等が存在すると考えられている。福島第一原子力発電所事故後に放射性セシウムにより汚染された土壌中での詳細な収着構造解明のため、本研究ではセシウムを飽和収着させた粘土鉱物試料に対しCs 吸収端X線吸収分光(X-ray absorption fine structure, XAFS)測定を行い、セシウム収着様式の比較を行った。その結果、各種粘土鉱物においてスペクトルの詳細構造に差がみられ、四面体シートや八面体シートへの収着等、収着構造の違いに起因するセシウム収着様式の違いが明らかになった。
Yuan, X.*; Hu, Q.*; Lin, X.*; Zhao, C.*; Wang, Q.*; 舘 幸男; 深津 勇太; 濱本 昌一郎*; Siitari-Kauppi, M.*; Li, X.*
Journal of Hydrology, 618, p.129172_1 - 129172_15, 2023/03
被引用回数:2 パーセンタイル:26.10(Engineering, Civil)Mass transport in geomedia as influenced by the pore structure is an important phenomenon. Six rocks (granodiorite, limestone, two chalks, mudstone, and dolostone) with different extents of heterogeneity at six different particle sizes were studied to describe the effects of pore connectivity on mass transport. The multiple methods applied were porosity measurement, gas diffusion test, and batch sorption test of multiple ions. Porosity measurement results reveal that with decreasing particle sizes, the effective porosities for the "heterogenous" group (granodiorite and limestone) increase, whereas the porosities of "homogeneous" group (chalks, mudstone, and dolostone) roughly remain constant. Gas diffusion results show that the intraparticle gas diffusion coefficient among these two groups, varying in the magnitude of 10 to 10 m/s. The batch sorption work displays a different affinity of these rocks for tracers, which are related to their mineral components. For granodiorite, mudstone, and dolostone, the adsorption capacity increases as the particle size decreases, due to higher specific surface area in smaller particle-size. In general, this integrated research of grain size distribution, rock porosity, intraparticle diffusivity, and ionic sorption capacity gives insights into the pore connectivity effect on both gas diffusion and chemical transport behaviors for different lithologies and/or different particle sizes.
大窪 貴洋*; 武井 滉洋*; 舘 幸男; 深津 勇太; 出口 健三*; 大木 忍*; 清水 禎*
Journal of Physical Chemistry A, 127(4), p.973 - 986, 2023/02
被引用回数:2 パーセンタイル:45.51(Chemistry, Physical)粘土鉱物へのCsの吸着サイトの特定は、環境化学の分野で研究されてきた。核磁気共鳴(NMR)実験によって、吸着されたCsの局所構造を直接観察することが可能である。固体NMR実験から得られたCsのNMRパラメータは、吸着されたCsの局所的な構造に敏感である。しかしながら、NMRデータだけからCsの吸着位置を決定することは困難であった。本研究では、機械学習と実験的に観察されたケミカルシフトを組み合わせることにより、粘土鉱物に吸着されたCsの吸着位置を特定するためのアプローチについて提示する。原子配置の記述子とNMRによるケミカルシフトの第一原理計算結果を関連付けて評価する機械学習の線形リッジ回帰モデルを構築した。これにより、原子配置の構造データからCsのケミカルシフトを高速で計算することが可能となった。機械学習モデルによって、実験的に観察された化学シフトから逆解析を行うことにより、Cs吸着位置を導き出すことが可能になる。
辻 卓也; 松村 大樹; 小林 徹; 矢板 毅
SPring-8/SACLA利用研究成果集(インターネット), 11(1), p.15 - 18, 2023/02
風化黒雲母の様な層状粘土鉱物では様々な収着サイトが存在すると考えられており、その中でもCsイオンは層間に取り込まれると考えられている。一方でカオリナイトのような粘土鉱物においては、層間に陽イオンを持たないことから、表面・端面サイトにのみ収着すると考えられている。本研究では福島第一原子力発電所事故後に放射性Csにより汚染された実土壌に近い濃度のCs収着粘土鉱物試料を調製しCs K吸収端におけるX-ray Absorption Fine Structure (XAFS)測定を行い、風化黒雲母とカオリナイトにおけるCs周りの局所構造の違いを観測した。結果、層間サイトに収着していると思われる風化黒雲母と表面・端面サイトに収着していると思われるカオリナイトとでは、特に低濃度領域においてCs周りの局所構造が大きく異なることが判明し、Cs収着様式によってCsイオンの収着安定性が大きく異なることが示唆された。
杉浦 佑樹; 陶山 忠宏*; 舘 幸男
JAEA-Data/Code 2019-022, 40 Pages, 2020/03
放射性廃棄物地層処分の性能評価において、放射性核種の緩衝材, 岩石及びセメント系材料中での収着現象は、その移行遅延を支配する重要な現象の一つである。今回、性能評価における収着分配係数(K)設定のための統合的手法の構築の基礎として、収着データベース(JAEA-SDB)のデータ拡充を行った。本報告ではK設定や収着モデル開発の最近の取り組みにおいて課題として抽出された以下に示す3つの系(粘土, 堆積岩及びセメント系材料)に着目して実施した、Kデータと信頼度情報の拡充について報告する。今回の更新において、60の文献から6,702件のKデータとその信頼度情報が追加され、JAEA-SDBに含まれるKデータは69,679件となり、全データのうちの約72%のデータに対して信頼度情報が付与されたこととなる。今回更新されたJAEA-SDBによって、今後の性能評価における収着パラメータ設定に向けて、有効な基盤情報を提供するものと期待される。
笹本 広; 佐藤 久夫*; Arthur, R. C.*
Journal of Geochemical Exploration, 188, p.318 - 325, 2018/05
被引用回数:3 パーセンタイル:15.22(Geochemistry & Geophysics)アンモニウムイオンは、還元条件下における深部地下水において重要な成分である。地層中でのセシウムの収着による遅延は、高レベル放射性廃棄物の長期安全性を確保する上で重要な役割を果たす。しかしながら、セシウムの収着は、地下水中に溶存するアンモニウムイオンの様な陽イオンによる収着競合の影響を受ける可能性がある。本研究では、日本における地下水の一例として、幌延で得られた地下水データを対象に、深部地下水におけるアンモニウムイオンの濃度を支配する反応を推定した。鉱物学的調査、地下水データを用いた熱力学的評価および電子線マイクロアナライザを用いた鉱物表面での窒素(N)分布調査により、地下水中のアンモニウムイオンは、カリウム(K)を含む粘土鉱物であるスメクタイト,イライト,イライト/スメクタイト混合層のカリウムと地下水中のアンモニウムイオンのイオン交換反応により濃度が支配されている可能性が示唆された。また、日本における地下水データセットからスクリーニングされた信頼性の高いデータと比較すると、幌延の地下水中のアンモニウムイオン濃度は、ガス田や油田地域の地下水に類似していることも明らかになった。
平尾 法恵; 下山 巖; 馬場 祐治; 和泉 寿範; 岡本 芳浩; 矢板 毅; 鈴木 伸一
分析化学, 65(5), p.259 - 266, 2016/05
被引用回数:4 パーセンタイル:13.50(Chemistry, Analytical)福島原子力発電所事故後の放射能汚染の主な原因であるCsは土壌中の粘土鉱物に強く固定されており、土壌除染のため様々なCs除去法が開発されている。本手法は、乾式法によるCs除去法として、乾式法における処理温度の低減を目的とし、真空溶融塩処理法を提案する。非放射性Csを飽和収着させたバーミキュライトを真空加熱し、X線光電子分光法を用いて加熱前後のCs含有量変化を分析した。バーミキュライトのみを用いた場合は、800C 3分間の加熱で約4割のCsが除去された。NaCl/CaCl混合塩をバーミキュライトに添加した場合は、450C 3分間の加熱で約7割のCsが除去されることを見いだした。これらの結果から真空溶融塩処理法による大幅な処理温度の低下と除去効率の向上が期待できる。
池田 隆司; 鈴木 伸一; 矢板 毅
Journal of Physical Chemistry A, 119(30), p.8369 - 8375, 2015/07
被引用回数:23 パーセンタイル:66.14(Chemistry, Physical)3種類の2:1型粘土鉱物におけるアルカリ金属イオンの吸着状態を第一原理に基づいたメタダイナミクスにより系統的に調べた。層間カチオンを記述するために集団変数として採用した配位数で張られた2次元空間での自由エネルギー曲面を求めたところ、2:1型3八面体粘土鉱物においてCsイオンの内圏錯体が選択的に形成されることがわかった。このCsイオンで見られた強い内圏錯体への親和性は4面体シートの同形置換により著しく増大したルイス塩基性をもつ底面酸素サイトでセシウムイオンが選択的に認識されることによることがわかった。
佐伯 和利*; 和田 信一郎*; 柴田 雅博
Soil Science, 169(2), p.125 - 132, 2004/02
被引用回数:11 パーセンタイル:26.88(Soil Science)Caを飽和させた3種類の粘土鉱物(カオリナイト、モンモリロナイト、イライト)に対する、Fe、Mnのイオン交換選択係数(KGT)を求めた。嫌気的な環境でのイオン交換挙動を理解するため、試験は低酸素(0.0001%以下)のアルゴン雰囲気で実施した。カオリナイトとモンモリロナイトに対しては、Ca-Fe、Ca-Mnのイオン交換反応のKGTは、いずれも1に近い。イライトについては、特にFeについて高い吸着性を示したが、これについては、イライト試料に含有されていた有機炭素が影響した可能性がある。本試験の結果からは、層状ケイ酸塩表面の、Fe、Mnの吸着の選択性は、アルカリ土類金属であるCaと同程度と考えることができる。
池田 隆司
no journal, ,
福島の環境回復に向け、県内の除染により発生した除去土壌等は、中間貯蔵を経て30年以内に県外で最終処分されることになっている。この最終処分の負荷低減等の観点から、放射性セシウムに汚染された除去土壌の減容技術の開発が求められている。本研究では、土壌から放射性セシウムをより効率的に分離回収するための技術開発に資することを目的に、第一原理分子動力学に基づいたシミュレーションにより福島の土壌に豊富に含まれる放射性セシウムが吸着しやすい粘土鉱物へのセシウムの吸脱着機構等を原子・分子レベルで調べている。本講演では、福島の土壌に多く含まれる風化黒雲母は鉄を多く含む3八面体型粘土鉱物であり、風化によりバーミキュライト化していることを考慮して、その膨潤層間におけるアルカリ金属イオンの吸着状態を第一原理分子動力学に基づいたメタダイナミクスにより調べた結果を報告する。
Hu, Q.*; Wang, Q.*; Zhao, C.*; 舘 幸男; 深津 勇太
no journal, ,
低透水粘土バリア材料中の低拡散性は、放射性廃棄物処分場の長期性能評価において、重要な安全機能と認識されている。間隙の連結性が低い低透水粘土材料は、特異な拡散特性を示し、このことが長期拡散挙動に影響を及ぼす可能性が報告されている。日本の幌延URLの稚内層の泥岩、スイスのモンテリURLのオパリナス粘土岩、さまざまな頁岩や粘土鉱物の関連研究において、間隙構造の評価手法(水銀圧入法や中性子小角散乱法など)と、レーザーアブレーションICP-MSによるマイクロスケールでの元素分布分析を組合せたトレーサー試験手法が適用された。これらの試験結果から、間隙の連続性と拡散挙動の特異性との関係が得られた。間隙のサイズは低い透水性や拡散性の主要な要因ではなく、特異な拡散挙動は間隙の連結性に起因していることを明らかにした。
Yin, X.; 駒 義和; 稲葉 優介*; 竹下 健二*
no journal, ,
The decontamination and volume reduction of Cs contaminated soil remains a great challenge after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident. In present study, the authors aim to develop the continuous hydrothermal treatment process to remove radioactive Cs rapidly from the clay soils by a column system.
池田 隆司
no journal, ,
Cs-137等の放射性同位元素を土壌から効率的に分離回収する技術の開発は福島の環境回復を進める上で喫緊の技術課題となっている。本研究では、土壌から放射性セシウムをより効率的に分離回収するための技術開発に資することを目的に、第一原理分子動力学に基づいたシミュレーションにより福島の土壌に豊富に含まれる放射性セシウムが吸着しやすい粘土鉱物へのセシウムイオンの吸脱着過程等を原子・分子レベルで調べている。今回は、バーミキュライト等が属す2:1型粘土鉱物の層間におけるアルカリ金属イオンの吸着状態を粘土層の組成を変えてメタダイナミクスにより系統的に調べた結果を報告する。