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池之上 翼; 谷 享*; 川村 英之; 佐藤 雄飛*
Environmental Science & Technology, 7 Pages, 2025/09
被引用回数:02023年以降、福島第一原子力発電所(1F)事故由来のトリチウムを含むALPS処理水が海洋放出されている。福島沿岸で採取された海産物のモニタリングの結果はトリチウム濃度の増加はごくわずかであることが示した。しかし、このモニタリングには、データ公開の遅れやサンプル数の制限といった制約がある。したがって、海産物に高濃度のトリチウムが蓄積する可能性を正確に評価するためには、予測による推定が必要である。本研究では、数値シミュレーションを用いて福島沿岸におけるヒラメ中トリチウム濃度を推定した。この推定では、トリチウム水(HTO)の海洋拡散モデルと海洋生物へのトリチウム移行モデルを組み合わせた。ヒラメへのトリチウムの蓄積は、生物中に長期間留まるトリチウムの化学形態である有機結合型トリチウム(OBT)として評価された。まず、海洋拡散モデルの再現性を福島沿岸の実測データを用いて検証し、計算結果と実測データとがよく一致することを確認した。次に、1Fからのトリチウム放出量を仮想的に最大と設定した場合のヒラメ中OBT濃度を推定した。その結果、1Fから100km以内の距離の場所であっても、OBTの最大濃度は環境水中のトリチウムの自然レベルと同程度であることが示された。また、本研究で推定されたヒラメ中OBT濃度の最大値に基づくと、ヒラメの摂取による内部被ばく量は無視できるレベルであった。
太田 雅和; Kwamena, N.-O. A.*; Mihok, S.*; Korolevych, V.*
Journal of Environmental Radioactivity, 178-179, p.212 - 231, 2017/11
被引用回数:19 パーセンタイル:46.28(Environmental Sciences)環境中トリチウム移行モデルは有機結合型トリチウム(OBT)が組織自由水中トリチウム(TFWT)から直接形成されると仮定している。一方、植生中OBT/TFWT比は一定でないことが観測されている。本研究では2つのトリチウム移行モデル(CTEM-CLASS-TT及びSOLVEG-II)の計算値及びトリチウム放出施設近傍での野外実験の観測値の比較を行った。野外実験では3つの異なる灌漑(灌漑なし、低トリチウム水による灌漑及び高トリチウム水による灌漑)が施され、得られたトリチウム移行の差異は土壌から葉へのトリチウム輸送が葉内OBT/TFWT比に及ぼす影響に関する知見を与えるものであった。灌漑なし及び低トリチウム水による灌漑では、葉のTFWT及びOBT濃度の計算値は施設起因のトリチウムプルームの通過に対応した経時変化を示した。高トリチウム水による灌漑下では、土壌中の高濃度トリチウムの影響により、葉のTFWT濃度が高く維持され、OBT濃度はこのTFWT濃度と平衡となり、プルームの通過に関係なく高い値が保たれた。以上より、土壌中トリチウム濃度が高い状況では、土壌から葉へのトリチウム輸送の効果により、大気中トリチウム濃度に関係なく葉のOBT/TFWT比が決まることが明らかとなった。このことはトリチウムの経口摂取による被ばくを正確に評価するためには、トリチウム移行モデルは土壌から葉へのトリチウム輸送を厳密に考慮する必要があることを示している。
P.A.Davis*; W.J.G.Workman*; B.D.Amiro*; F.S.Spencer*; 野口 宏; 天野 光; 一政 祐輔*; 一政 満子*
Fusion Technology, 28, p.840 - 845, 1995/10
1994年7月27日から8月8日までの12日間、カナダチョークリバー研究所においてトリチウムガス(HT)の野外連続放出実験を行った。本報告では、実験概要を述べるとともに、主にカナダと日本が測定した空気、土壌、植物中のトリチウム濃度の結果をまとめた。空気中へHTを12日間ほぼ一定濃度で放出した結果、土壌表面層でトリチウム水(HTO)が生成されること、土壌、植物及び空気中のHTO濃度は時間とともに増加したが、放出期間の終り頃(約10日目以降)にはほぼ定常状態に到達したこと、植物中の有機結合型トリチウムは定常状態には到達せず、増加を続けたこと等が明らかとなった。
藤原 健壮; 桑田 遥*; 御園生 敏治; 飯島 和毅
no journal, ,
環境中のトリチウムの影響評価に際しては、被ばく上より重要な有機結合型トリチウム(OBT)の濃度評価が必要である。しかし、従来のOBT分析法では前処理に時間がかかることから、原子力機構福島環境安全センターでは、時間短縮のため、凍結乾燥と加温乾燥を組み合わせた手法を確立した。本発表では、更なる迅速化・精度向上等を目的として、魚種, サンプル処理量等の影響と、それに基づく簡素化の有効性の確認結果を報告する。