津軽海峡の流量変動; 2000-2002年のADCP観測による見積もり

Temporal variation of volume transport in the Tsugaru strait; An Estimation from the ADCP observation between 2000 and 2002

伊藤 集通 ; 川村 英之  ; 中山 智治*; 島 茂樹*; 大西 光代*; 磯田 豊*

Ito, Toshimichi; Kawamura, Hideyuki; Nakayama, Tomoharu*; Shima, Shigeki*; Onishi, Mitsuyo*; Isoda, Yutaka*

原子力機構では、1999年11月以降、津軽海峡でADCPを用いた海峡通過流の連続観測を行っており、今回は、2000年4月から2002年6月までの流量変動について解析した。通過流量は、0.6-1.5Sv(=10ms)の範囲で変動しており、その平均値として、1.10.3Svを得た。これは、過去に報告されている平均値1.4-1.5Svに比べやや低い値となっている。変動の様子では、流量は、晩冬から早春に最小となり、夏と晩秋から初冬に極大となる、季節変動を示すと同時に、20-30日周期の比較的大きな振幅を持つ変動が観測された。また、流量の変動と水位差を調べた結果、海峡縦断方向,横断方向の両水位差に対して、全期間で相関が見られ、特に、冬季の相関が高くなる傾向が見られた。これは冬季には海峡内の密度成層が非常に弱くなり、傾圧流の影響が小さくなるためと考えられる。このほか、津軽海峡と対馬海峡での流量変動にも0-4か月程度の時間差を含む相関が見られた。また、流入量に対する津軽海峡の流出量の寄与分は、37-51%と見積もられた。

The volume transport through the Tsugaru Strait, which was estimated from ADCP observation data, in the period between Apr. 2000 and Jun. 2002 was examined. Through the analysis, following features were elucidated: (1) The range of volume transport with mean value, (2) The prevailing periods in the variation, (3) the correlation with the sea level differences (along and across direction of the Strait) and its seasonal dependency, and (4) relationships with the Tsushima Warm Current.