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小嵐 淳; 竹内 絵里奈; 國分 陽子; 安藤 麻里子
Radiocarbon, 67(2), p.307 - 317, 2025/04
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Geochemistry & Geophysics)加速器質量分析による土壌試料の放射性炭素(C)年代測定は、陸域炭素循環の解明において極めて有用である。しかし、土壌試料の前処理においてふたつの困難がある。現代炭素の混入による試料の汚染と、硫黄不純物によるグラファイト生成の阻害である。そこで本研究では、3つの異なる前処理法について、
Cを含まない試料と硫黄含有量が大きい土壌試料に対する
C分析を行うことで、それらの前処理法の有効性を評価した。その結果、これらの前処理法は、少なくとも硫黄含有量が6.9%以下の土壌試料に対して適用可能であることが明らかになった。また、現代炭素による汚染の程度は前処理法によって異なるものの、いずれの方法でも、
C年代が12,000年前未満の試料に対して、陸域炭素循環研究に利用する上で十分な精度をもって
C年代を推定することができることを明らかにした。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 永野 博彦*; Sugiharto, U.*; Saengkorakot, C.*; 鈴木 崇史; 國分 陽子; 藤田 奈津子; 木下 尚喜; 永井 晴康; et al.
JAEA-Technology 2020-012, 53 Pages, 2020/10
近年急速に進行する温暖化をはじめとした地球環境の変化は、陸域生態系(とりわけ森林生態系)における炭素循環に変化をもたらし、その結果、温暖化や環境変化の進行に拍車をかける悪循環が懸念されている。しかしながら、その影響の予測には大きな不確実性が伴っており、その主たる要因は、土壌に貯留する有機炭素の動態とその環境変化に対する応答についての定量的な理解の不足にある。放射性炭素(C)や安定炭素(
C)同位体の陸域生態系における動きを追跡することは、土壌有機炭素の動態を解明するうえで有力な研究手段となりうる。本ガイドは、同位体を利用した土壌炭素循環に関する研究を、特にアジア地域において促進させることを目的としたものである。本ガイドは、土壌の採取、土壌試料の処理、土壌有機炭素の分画、
Cの同位体比質量分析法による測定及びその試料調製、ならびに
Cの加速器質量分析法による測定及びその試料調製に関する実践的手法を網羅している。本ガイドでは、炭素循環研究において広く用いられる
C分析結果の報告方法についても簡単に紹介する。さらに、同位体を利用した研究手法の実際的応用として、日本の森林生態系において実施した事例研究の結果についても報告する。本ガイドによって、同位体を利用した炭素循環研究に興味を持って参画する研究者が増加し、地球環境の変化の仕組みについての理解が大きく進展することを期待する。
Wijesinghe, J. N.*; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 國分 陽子; 山口 紀子*; 佐瀬 隆*; 細野 衛*; 井上 弦*; 森 裕樹*; 平舘 俊太郎*
Geoderma, 374, p.114417_1 - 114417_10, 2020/09
被引用回数:12 パーセンタイル:43.91(Soil Science)Volcanic ash soils store a large amount of carbon as soil organic carbon (SOC) for a long term. However, the mechanisms of SOC accumulation in such soils remain unexplained. In the present study, we focused on SOC in a buried humic horizon of a volcanic ash soil, which formed between 5400 and 6800 yr BP. SOC was fractionated using a chemical fractionation method and the separated SOC fractions were characterized by C age, stable isotopic ratios of carbon and nitrogen, and chemical structure. Results showed that the SOC fractions differ in the degrees of biological transformation and mobility. However, generally the low mobility of all of the SOC fractions suggests that successive up-building accumulation of SOC contributes to the formation of thick humic horizon in the soil.
中西 貴宏; 安藤 麻里子; 小嵐 淳; 國分 陽子; 平井 敬三*
Journal of Environmental Radioactivity, 128, p.27 - 32, 2014/02
被引用回数:9 パーセンタイル:24.10(Environmental Sciences)森林土壌における溶存態有機炭素(DOC)の動態に関してさまざまな研究がなされてきたが、主要な供給源である土壌有機物と落葉落枝の寄与程度については評価が定まっていない。われわれは、日本の冷帯林土壌におけるDOC供給源の季節変化について、水抽出有機炭素(WEOC)の炭素同位体(C・
C)から推定した。融雪期は、落葉落枝からのDOC供給の影響が大きかった。一方、梅雨期には、微生物活動の促進による土壌有機物起源WEOCの増加が示された。夏から秋にかけても土壌有機物を起源とするWEOCが支配的であった。これらの結果から、DOCの供給源と動態に対して季節や環境の変化が強い支配因子であることが明らかになった。
中西 貴宏; 安藤 麻里子; 小嵐 淳; 國分 陽子; 平井 敬三*
European Journal of Soil Science, 63(4), p.495 - 500, 2012/08
被引用回数:28 パーセンタイル:63.10(Soil Science)森林土壌における水抽出有機炭素(WEOC)の起源と動態を解明するために、非イオン系網状アクリル系樹脂DAX-8によって化学分画したWEOCのCと
Cを測定した。深さとともに高くなるWEOCの
Cは、疎水性酸画分に対する親水性画分の割合増加を反映していた。また、WEOCの
Cから、WEOCの主要な起源は鉱質土壌層に存在する古い有機物であることを示した。これらの結果は、これまで提案されてきた、疎水性酸画分の選択的吸着と鉱質土壌層からの潜在的溶存有機物の浸出というプロセスを強く支持するものであった。このような土壌有機物に強く関係したWEOCの動態は、土壌における炭素の輸送・蓄積過程に対して重要な役割を担っているといえる。
國分 陽子; 安田 健一郎; 間柄 正明; 宮本 ユタカ; 桜井 聡; 臼田 重和; 山崎 秀夫*; 吉川 周作*; 長岡 信治*; 三田村 宗樹*; et al.
Journal of Environmental Radioactivity, 99(1), p.211 - 217, 2008/01
被引用回数:22 パーセンタイル:42.01(Environmental Sciences)長崎西山貯水池堆積物中のPu/
Pu比及び
Pu,
Cs濃度の深度分布を調べ、
Pu/
Pu比からプルトニウムの起源を推定し、長崎原爆爆発直後に堆積したプルトニウム及び
Csを含む堆積物を特定した。またその堆積物の下層から長崎原爆に起因するフォールアウトの蓄積の証拠となる微粒炭も検出した。本報告は長崎原爆直後から現在に至るまで西山貯水池堆積物に蓄積した長崎原爆由来のプルトニウム及び
Csの全容を核実験由来の成分と区別して初めて明らかにしたものであり、今後のプルトニウムの長期環境挙動解析の指標となる。
藤田 博喜; 國分 祐司; 小嵐 淳
Journal of Nuclear Science and Technology, 44(11), p.1474 - 1480, 2007/11
被引用回数:16 パーセンタイル:70.75(Nuclear Science & Technology)1990年から2004年の東海再処理施設周辺の大気中,葉菜中及び土壌中トリチウム濃度のモニタリング結果をまとめた。大気中HTO及びHTの年間平均濃度は、それぞれ12-40mBqm, 14-51mBqm
であり、大気中HTO濃度は、季節変化を示した。再処理施設からの距離とともにその濃度が減少する傾向を示し、5km地点ではほぼバックグラウンド濃度となった。これらの観測結果は、再処理施設からのトリチウムの放出量と実気象データをもとにシミュレーションした結果とほぼ一致するものであった。葉菜中及び土壌中のトリチウム濃度は、大気中HTO濃度とほぼ同じレベルであり、大気-土壌-葉菜間ではトリチウム濃度が比較的早く平衡に達することが示唆された。
田中 良和*; 稲見 俊哉; Lovesey, S. W.*; Knight, K. S.*; Yakhou, F.*; Mannix, D.*; 國分 淳*; 金澤 雅行*; 石田 興太郎*; 七尾 進*; et al.
Physical Review B, 69(2), p.024417_1 - 024417_11, 2004/01
被引用回数:36 パーセンタイル:78.88(Materials Science, Multidisciplinary)Dy L吸収端における電気四重極遷移による共鳴X線回折を用いて、DyB
C
の4
四重極及び十六重極秩序の直接観測を行った。回折データは24.7KにおけるDyの点群の4/
から2/
への対称性の低下と時間に偶でA
対称性を持ったDy多重極の秩序に伴う構造変化を示した。この温度以下では結晶構造は空間群
4
/
で記述され、Dyイオンは4
サイトを占める。この温度ではBとCからなる格子の変形が起こり、これは2/
の2回軸に垂直なBC面のバックリングに等しい。Dyの低エネルギー状態のモデルを示し、比熱,われわれのX線回折データ,中性子回折による磁気秩序との関係を論じる。
國分 陽子; 安田 健一郎; 間柄 正明; 宮本 ユタカ; 桜井 聡; 臼田 重和; 村上 晶子*; 井上 淳*; 吉川 周作*; 山崎 秀夫*; et al.
no journal, ,
長崎原爆投下後60年以上が経過し、陸上の原爆の痕跡は風化・消失してきているが、貯水池などの閉鎖小水域の泥質堆積物は、水域に入り込んだものを閉じこめながら堆積しているため、黒い雨を保存している可能性を持つ。われわれはこれまで3m前後の堆積物コアを貯水池から2本採取し、微粒炭分析,放射能測定及びPu同位体比測定等を行い、黒い雨を含む層を特定することを試みてきた。しかし、両コアとも最深部でCsが検出され、採取したコアが1945年の層準、つまり黒い雨を含む層準まで到達していない可能性があった。そのため本研究は前回より長い約6.2mのコアを採取し、Pu及び微粒炭の分析から黒い雨の層準を特定することを試みた。Pu濃度は、深度350cm付近から増加し、440cm付近で最も高く、約450cm以深ではほとんど検出されなかった。また
Pu/
Pu比は0.028
0.041であり、これは堆積するPuが原爆由来であることを示す。一方、火災・植物燃焼の痕跡である微粒炭は、深度442cmでピークを示した。この分布は、Pu濃度の分布と一致し、深度440cm付近の層準が、原爆の黒い雨を含むと考えられる。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 石塚 成宏*; 平舘 俊太郎*; 國分 陽子
no journal, ,
土壌有機炭素の微生物による分解は地球炭素循環の重要な構成要素であり、地球温暖化によって引き起こされる土壌有機炭素分解のわずかな変化が大気中CO濃度に重大な影響を及ぼし、ひいては地球炭素循環に影響を及ぼす。土壌有機炭素分解が温暖化に対してどのように応答するかを正しく予測するためには、土壌有機炭素の多様な分解性を定量的に解明することが不可欠である。速く代謝回転する有機炭素は土壌からの炭素放出の主体を担うが、長期の温暖化応答はよりゆっくりと代謝回転する有機炭素の貯留量や分解性に規定されうる。我々は、このゆっくりと代謝回転する有機炭素プールの実態を解明することに着眼した。日本の森林土壌に対して、放射性炭素を利用する方法により、土壌有機炭素の滞留時間別炭素貯留量を明らかにした。その結果を用いたモデルシミュレーションにより、ゆっくりと代謝回転する土壌有機炭素が来世紀にわたる地球温暖化の加速的進行において重要な役割を果たすことを示した。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 高木 健太郎*; 近藤 俊明*; 寺本 宗正*; 永野 博彦; 國分 陽子; 高木 正博*; 石田 祐宣*; 平舘 俊太郎*; et al.
no journal, ,
温暖化により土壌有機物の分解が促進され、土壌からの炭素放出量が増大することで、温暖化がさらに加速する可能性がある。本研究では、長期にわたって温暖化操作実験を行っている日本の5つの森林において、土壌有機物の量と質(炭素及び窒素含有量や安定・放射性炭素同位体組成等)を温暖化処理区と非処理区で比較することで、温暖化が土壌有機物に与える影響を調査した。結果として、10年以上温暖化操作を行っている森林においても、温暖化処理区と非処理区の間に土壌有機物の量及び質の大きな違いは見られなかった。日本の土壌において報告されている温暖化効果の長期持続の一因が、その豊富な有機物蓄積量にあることが示唆された。
安藤 麻里子; 小嵐 淳; 高木 健太郎*; 近藤 俊明*; 寺本 宗正*; 永野 博彦; 國分 陽子; 高木 正博*; 石田 祐宣*; Liang, N.*
no journal, ,
森林の土壌有機物に含まれる炭素及び窒素の安定同位体比は深度とともに上昇することが知られている。安定同位体比の分布には様々な要因が関与するものの、その変動は有機物の生成・分解における同位体効果によって起きることから、安定同位体比の鉛直分布の違いは土壌有機物の蓄積・分解状況の違いを反映していると考えられる。本研究では、温暖化操作実験を実施している北海道から九州の5つの森林を対象として、深度別に土壌を採取して比重分画を行い、炭素・窒素濃度及び安定同位体比を測定することで、気候や植生の異なる森林間及び温暖化と対照区間での土壌有機物の蓄積状況の違いを調査した。結果より、九州サイトの土壌が比較的若く分解の進んだ有機物で構成されているのに対し、北海道の泥炭土壌サイトでは分解の進んでいない有機物が表層に長期間堆積していることが示され、サイト間での特徴を明らかにすることができた。また、温暖化区と対照区で同位体分布に大きな変化はなく、日本の森林の豊富な有機物蓄積により、10年程度の温暖化操作では土壌有機物の質の変化は見られないことが明らかになった。
Wijesinghe, J.*; 小嵐 淳; 安藤 麻里子; 國分 陽子; 山口 紀子*; 佐瀬 隆*; 細野 衛*; 井上 弦*; 森 裕樹*; 平舘 俊太郎*
no journal, ,
The movement of soil organic carbon is important for understanding the formation and distribution of carbon in deeper soil layers. In the present study, we estimate the rate of vertical translocation of humin, humic acid, and four fulvic acid fractions and their relationship with chemical structure determined by CPMAS C NMR analysis. The average rates of vertical translocation of humin and humic acid were 4 and 5 mm per century, while those of fulvic acid were generally around 10 mm per century.
C age of humic asid and humin in all layers was similar to the soil formation age, indicating that they have poorly translocated downwards. The young
C age of some fulvic acid fractions in some layers indicates the translocation of young carbon from upper layers.
安藤 麻里子; 小嵐 淳; 高木 健太郎*; 近藤 俊明*; 寺本 宗正*; 永野 博彦; 國分 陽子; 高木 正博*; 石田 祐宣*; Liang, N.*
no journal, ,
森林の土壌有機物に含まれる炭素及び窒素の安定同位体比は深度とともに上昇することが数多く報告されている。安定同位体比の分布には様々な要因が関与するものの、その変動は有機物の生成・分解における同位体効果によって起きることから、異なる森林における安定同位体比の鉛直分布の違いは土壌有機物の蓄積・分解状況の違いを反映していると考えられる。本研究では、北海道から九州の気候や植生の異なる5つの森林を対象として、深度別に土壌を採取して比重分画を行い、炭素・窒素濃度及び安定同位体比を測定するとともに、放射性炭素を測定することで、各森林における土壌有機物の同位体比分布を調査した。土壌有機物の炭素及び窒素安定同位体比は、北海道の泥炭土壌サイト以外では全て深度とともに上昇したが、その変化量は平均気温及び放射性炭素で評価した有機炭素の滞留時間と関連を示した。泥炭土壌サイトでは、土壌層内で安定同位体比の明確な変化はなく、分解の進んでいない有機物が表層に長期間堆積していることが示された。炭素及び窒素の量と同位体測定を組み合わせることで、土壌有機物の蓄積状況の地域特性を示すことができた。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 高木 健太郎*; 近藤 俊明*; 寺本 宗正*; 永野 博彦; 國分 陽子; 高木 正博*; 石田 祐宣*; 平舘 俊太郎*; et al.
no journal, ,
温暖化は、微生物による土壌有機炭素の分解を促進させ、土壌からの炭素放出量が増大することで、温暖化をさらに加速させる可能性が危惧されている。しかし、温暖化によって土壌炭素放出がどれだけ増加し、その増加がどのくらい持続するのかについては、土壌有機炭素の貯留・分解メカニズムに関する科学的知見が不足しており、不明のままである。本研究では、国立環境研究所が長期にわたって温暖化操作実験を展開し、土壌炭素放出の温暖化影響を評価している国内5つの森林サイトにおいて調査を実施した。各サイトの温暖化処理区と非処理区において、土壌有機炭素の貯留実態を、量, 質(土壌鉱物との結合形態、有機炭素の化学構造、滞留時間など), 分解の温度応答の3つの観点で分析評価し、比較した。本講演では、これらの結果に基づいて、長期にわたる温暖化が土壌に貯留する有機炭素にどのような変化をもたらし、また、温暖化によって土壌炭素放出の増大がいかに持続しうるかについて議論する。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 高木 健太郎*; 近藤 俊明*; 寺本 宗正*; 永野 博彦; 國分 陽子; 高木 正博*; 石田 祐宣*; 平舘 俊太郎*; et al.
no journal, ,
土壌は、陸域最大の炭素貯蔵庫として機能し、その巨大な炭素貯留能をもって、地球規模での炭素循環の安定化に大きく貢献している。近年急速に進行する地球温暖化は、土壌に貯留する有機炭素の微生物による分解を促進することで、土壌からの二酸化炭素放出量を増大させ、その結果、温暖化がさらに加速する可能性が危惧されている。このような現象とその影響の程度を正しく評価するためには、土壌における有機炭素の蓄積や動態、ならびにそれらの温暖化に対する応答についての定量的な理解が不可欠である。本研究では、長期にわたって温暖化操作実験を実施している国内5か所の森林サイトにおいて、表層土壌における有機炭素の蓄積・動態のサイト特性を、貯留量の深さプロファイル、土壌鉱物との結合形態、有機炭素の化学構造、代謝回転時間などの観点から分析評価し、サイト特性と土壌呼吸速度(土壌からの二酸化炭素放出速度)やその温度応答との関連性を調べた。本講演では、これらの結果に基づいて、土壌呼吸速度やその温度応答を規定する要因や温暖化による土壌炭素放出増大の持続性について議論する。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; 高木 健太郎*; 近藤 俊明*; 寺本 宗正*; 永野 博彦*; 國分 陽子; 高木 正博*; 石田 祐宣*; 市井 和仁*; et al.
no journal, ,
森林生態系における土壌有機炭素の微生物分解(微生物呼吸)は、地球上の炭素循環を駆動する主要なプロセスである。温暖化によって微生物呼吸が増大することで、大気中の二酸化炭素濃度が増加し、温暖化の進行がさらに加速するという悪循環が懸念されている。そのため、様々な地域における微生物呼吸量を正しく把握し、それらを規定する要因を明らかにすることが、今後の温暖化影響を定量的に評価・予測するために必要不可欠である。したがって、我々の究極の目標は、様々な地域や土壌に適用できる普遍的な微生物呼吸モデルを新たに構築することである。そこで、アジアモンスーン域の多様な森林生態系を網羅するチャンバー観測ネットワークサイトにおいて、土壌有機炭素の蓄積量,蓄積形態,放射性炭素(C)同位体比を指標とした代謝回転のタイムスケールなどの土壌有機炭素特性を分析評価した。それらの土壌有機炭素特性と、微生物呼吸量やその温暖化応答との関連性を解析し、サイト間の違いを説明できる特性の抽出を試みた。本発表では、
C同位体比が微生物呼吸を推定する上でのキーパラメーターとなりうるかという点に特に着眼したい。
安藤 麻里子; 小嵐 淳; 高木 健太郎*; 近藤 俊明*; 寺本 宗正*; 永野 博彦*; Sun, L.*; 平野 高司*; 石田 祐宣*; 高木 正博*; et al.
no journal, ,
二酸化炭素とメタンは重要な温室効果ガスであり、大気中の濃度増加が懸念されている。森林土壌は、多量に蓄積する土壌有機物が微生物により分解されることで二酸化炭素を放出する(微生物呼吸)と同時に、微生物の酸化作用によりメタンの吸収源となることが知られている。温室効果ガスの収支の評価・推定のためには、森林土壌の微生物呼吸及びメタン吸収量を規定する要因を明らかにすることが必須である。本研究では、アジアモンスーン域の多様な森林を対象とした二酸化炭素及びメタンフラックスのチャンバー観測ネットワークサイトにおいて、森林土壌の土壌特性を測定し、微生物呼吸及びメタン吸収速度のサイト間の差異を説明することを目的とした。上記の観測サイトでは、大型自動開閉チャンバーシステムを用いて、地表面の二酸化炭素及びメタンフラックスの連続的な観測を実施している。同じサイトで土壌を採取し、密度や土壌鉱物(ピロリン酸抽出及びシュウ酸塩抽出Al, Fe)などの土壌特性や、有機炭素量・放射性及び安定炭素同位体比などの有機物特性を測定した。これらの結果と連続観測から求めた微生物呼吸及びメタン吸収速度の年平均値との関連を解析した。
小嵐 淳; 安藤 麻里子; Liang, N.*; 近藤 俊明*; 高木 健太郎*; 平野 高司*; 高木 正博*; 石田 祐宣*; 寺本 宗正*; 永野 博彦*; et al.
no journal, ,
近年急速に進行する地球温暖化をはじめとした気候変化や、自然的・人為的要因によって引き起こされる生態系の変化は、土壌の炭素貯留能に影響を及ぼし、その結果、炭素循環のバランスが崩れ、地球の気候システムに連鎖的かつ不可逆的な変化をもたらすことが懸念されている。したがって、将来起こりうる気候変化を正確に予測するためには、土壌における炭素の動態やそのメカニズムを明らかにすることに加え、それらが気候や生態系の変化に対してどのように応答するかについて予測可能な形で理解することが不可欠である。土壌有機炭素の放射性炭素(C)同位体比は、土壌有機炭素の動態を定量的に把握するための有用なツールとなりうる。本講演では、我々がこれまでに国内外の様々な地域で実施・展開してきた研究事例について紹介し、
C同位体比を利用した研究手法の有用性を共有することで、炭素循環や気候変化に対する科学的理解の深化に向けたさらなる応用の開拓につなげたい。
竹内 絵里奈; 小嵐 淳; 國分 陽子; 安藤 麻里子; 西尾 智博*; 大脇 好夫*; 松原 章浩
no journal, ,
加速器質量分析法(AMS)によるC測定では、試料精製中のCO
ガスに硫黄酸化物が含まれているとグラファイト化を阻害するため、銀シート、銀線、サルフィックス試薬等を用いてガス中の不純物を除去する。一方で、多量のサルフィックスを用いると
C値が減少する傾向がみられ、AMS測定値に影響を及ぼす例も報告されており、不純物除去法自体が現代炭素の汚染源になることが懸念される。こうした前処理法による汚染は、特に古い年代の試料や少量の試料で推定年代に大きく影響を与えるため、不純物除去法の汚染について評価する必要がある。本研究では、Dead Carbonである試料を用いて、3種類の不純物除去法について汚染の程度を比較した。精製後のCO
は、それぞれグラファイト化を行い、AMSを用いてpMC値(percent Modern Carbon:試料中の現代炭素の割合)を測定した。pMC値は銀シート
銀線、サルフィックス(15粒)だった。3つの不純物除法のうち最もpMC値が低いサルフィックスについて、使用量を3粒, 45粒に変化させて同様に比較した。結果、3粒(pMC値=0.19
0.05%)よりも15粒の方がpMC値も高くなる傾向がみられ、試薬自体が現代炭素による汚染源になっている可能性が示唆された。