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池之上 翼; 中西 貴宏; 嶋寺 光*; 川村 英之; 近藤 明*
E3S Web of Conferences (Internet), 530, p.02005_1 - 02005_10, 2024/05
福島第一原子力発電所の事故は海底堆積物の放射能汚染を引き起こした。河川からのCsの供給は海底堆積物中のCsの長期的な挙動において重要なプロセスである可能性がある。本研究では、海洋拡散モデルと陸域および河川におけるCsの挙動予測モデルを組み合わせて、海底堆積物中のCsの10年間の挙動予測シミュレーションを実施した。原子力発電所の北側の海域では、海底堆積物中のCs濃度が事故初期には低く河川からのCsの供給量が多いため、河川からのCsの供給が沿岸における海底堆積物中のCs濃度に大きな影響を与えることがシミュレーション結果から示唆された。原子力発電所近傍及びその南側の海域では、事故初期における海水からの吸着が大きいため、沿岸における海底堆積物中のCs濃度の時間変化に与える河川からのCsの供給の影響は比較的小さいことがシミュレーション結果から示唆された。全体として、これらの結果は河川からのCsの供給が10年間の時間スケールで海底堆積物中のCs濃度の時空間分布に影響を与えており、その影響は原子力発電所の北側の海域で特に大きいことを示していた。
池之上 翼; 嶋寺 光*; 中西 貴宏; 近藤 明*
Water (Internet), 15(15), p.2734_1 - 2734_18, 2023/08
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故は沿岸海域における堆積物へのCsの蓄積を引き起こした。また、河川から海洋へのCsの供給は沿岸海域における堆積物中のCsの長期的な挙動に影響を与える可能性がある。福島沿岸の河川流域には大規模な除染地域や避難指示地域が含まれているため、除染作業や農業再開を考慮することはCsの供給量を予測する上で重要である。そこで本研究は、これらの人間活動の影響を考慮した分布型放射性セシウム予測モデルを用いて、福島沿岸河川から海洋へのCs供給量の30年間の予測を実施した。結果として、除染地域と避難指示地域のある河川流域では人間活動により、農地、市街地、森林から河川へのCsの流出量は5.0%、海洋へのCs供給量は6.0%それぞれ減少すると推定された。これらの結果は、人間活動がCsの流出と供給に与える影響は小さかったことを示している。事故の影響を受けた河川から海底堆積物へのCs供給量は、事故初期の沿岸海域における堆積物中のCsの存在量に対して11%から36%に相当すると推定された。したがって、沿岸海域における堆積物中のCsの長期的な挙動には河川から海洋へのCs供給が重要なプロセスであることが示唆された。
池之上 翼; 嶋寺 光*; 中西 貴宏; 近藤 明*
Science of the Total Environment, 876, p.162846_1 - 162846_12, 2023/06
被引用回数:2 パーセンタイル:64.43(Environmental Sciences)土地利用のCsの挙動特性を考慮し、阿武隈川流域におけるCsの30年間の環境動態シミュレーションを実施した。30年間で海洋へ輸送されたCsは阿武隈川流域の初期沈着量の4.6%に相当し、阿武隈川流域に沈着したCsの実効半減期はCsの半減期より3.7年(11.6%)短くなると推定された。これらの結果は事故によって沈着したCsが数十年残留し続ける可能性があることを示唆するものであった。土地利用におけるCsの挙動を分析した結果、2011年における市街地による海洋へのCsの輸送の寄与は、総輸送量の70%に相当すると推定された。一方で、2012年から2040年における農地による輸送の寄与は総輸送量の75%に相当すると推定された。事故後30年間、人間活動のある地域とない地域に残留するCsの放射性崩壊を除いた削減率は、それぞれ11.5%から17.7%、0.4%から1.4 %と推定された。これらの結果は、過去から将来にかけて人間活動が土地に残留するCsの減少を促進することを示唆するものであった。
池之上 翼; 嶋寺 光*; 近藤 明*
Journal of Environmental Radioactivity, 225, p.106452_1 - 106452_12, 2020/12
被引用回数:4 パーセンタイル:18.88(Environmental Sciences)土壌侵食モデルUniversal Soil Loss Equation (USLE)におけるパラメータの不確実性が、放射性セシウム輸送モデルによる阿武隈川流域におけるCsの動態予測結果に及ぼす影響を評価した。USLEは、降雨量(R)や地質特性(K), 地形的特徴(LS), 土地被覆や土壌侵食防止策(CとP)の5つの物理的に意味のある係数を持つ。土壌, Cs総流出量に対し、USLEの係数の中で最も高い感度を持っていたのはCとPであった。そのため、土地被覆や土壌侵食防止策が土壌,Csの流出に大きな影響を与えることが分かった。土地利用に着目すると、森林,耕作地,未攪乱の水田からのCs流出率が大きかった。この研究は、土地利用、特に森林,耕作地,未攪乱の水田がCsの環境動態に大きな影響を与えることを示した。
池之上 翼; 嶋寺 光*; 近藤 明*
no journal, ,
分布型放射性セシウム予測モデルを用いてシミュレーションを行い、阿武隈川流域における2011年から2040年のCsの環境動態について評価した。河口付近の地点である岩沼で、モデルはCsの浮遊砂中濃度と積算流出量の経年変化をよく再現した。福島第一原子力発電所事故から30年後には、岩沼におけるCsの浮遊砂中濃度は事故初期の濃度に対して1.9%に低下し、Csの積算流出量は阿武隈川流域における初期沈着量の4.6%に相当すると推定された。
池之上 翼; 嶋寺 光*; 近藤 明*
no journal, ,
土壌侵食モデルUniversal Soil Loss Equation (USLE)におけるパラメータの不確実性が、放射性セシウム輸送モデルによる阿武隈川流域におけるCsの動態予測結果に及ぼす影響を評価した。USLEでは、降雨量(R)や地質特性(K)、地形的特徴(LS)、土地被覆や土壌侵食防止策(CP)を表す係数の積によって土壌流亡量が計算される。土壌, Cs総流出量に対し、USLEの係数の中で最も高い感度を持っていたのはCPであった。そのため、土地被覆や土壌侵食防止策が土壌, Csの流出に大きな影響を与えることが分かった。
入戸野 瑛*; 池之上 翼; 嶋寺 光*; 松尾 智仁*; 近藤 明*
no journal, ,
福島第一原子力発電所の事故は広範囲にCsの放射能汚染を引き起こした。河川流域から海洋へのCsの流出量を予測するために、長期シミュレーションが実施されてきた。しかしながら、降雨、樹種、ダムがCsの流出量に与える影響については不確実性がある。本研究では、これら3つの要因が2011年から2040年までの福島県東部の河川流域におけるCs流出量にどの程度影響を与えるかに焦点を当てた。Cs流出量は降水量によって-10から+17%変化し、樹種によっては-16から+19%変化し、ダムにおける堆積によって21%減少した。