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高田 毅士
日本地震工学会誌, (44), p.6 - 11, 2021/10
本報告は、2007年以前の我国の原子力地震安全確保の状況紹介に続き、日本地震工学会と日本原子力学会が連携した三つの調査委員会の活動の背景と主な成果、そして最後にこれらの活動の末辿り着いたところとして筆者が重要と考えるポイントをまとめたものである。
崔 炳賢; 西田 明美; 村松 健*; 高田 毅士*
日本地震工学会論文集(インターネット), 20(2), p.2_1 - 2_16, 2020/02
本研究では、原子力施設の確率論的地震リスク評価の信頼性向上に資するため、原子炉建屋の地震応答解析結果におけるモデル化手法の違いによる影響を評価し、フラジリティ評価における認識論的不確実さを定量化することを目的としている。入力地震動として、偶然的不確実さを考慮するため、ハザード適合地震波を用いた。現実的な応答を得るため、原子炉建屋の3次元詳細モデルによる地震応答解析を実施し、建屋の壁および床の最大加速度について、中央値と対数標準偏差により統計的評価を行った。本研究により、建屋の上層部や床の開口部周辺において面外変形などの3次元効果が現れることが分かった。
市橋 正生
地震, 64(2), p.23 - 32, 2011/08
原子力機構高崎観測所は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の検証のための放射性核種監視観測所の一つである。日本付近で、M5以上の地震が発生した日(ただし、余震と考えられるものを除く)を「地震日」と定義し、地震日と高崎観測所にて観測されたベリリウムー7(Be-7)の大気中濃度について統計分析を行った。Be-7濃度の31日移動平均からの残差について、t検定の結果、地震日と地震なし日に有意な差があり、地震日のBe-7濃度が地震なし日のBe-7濃度より、31日移動平均値を基準として、より負の方向に有意に変動していることが確認された。この結果は、地震日にBe-7濃度が減少している可能性を示し、地震と大気環境の間に物理的関係がある可能性を示している。また、従来、降雨と陸域の浅い地震との相関が報告されているが、本研究では、深い震源の地震日にBe-7濃度が減少している可能性が示された。
成宮 祥介*; 大橋 弘忠*; 宮田 浩一*; 渡邉 憲夫
第13回日本地震工学シンポジウム論文集(DVD-ROM), p.1159 - 1166, 2010/11
我が国では近年、幾つかの原子力発電所で設計想定を超える大きな地震動がもたらされたが、地震による被害は軽微なものであり、原子力発電所の安全は確保された。それにもかかわらず、国民の間では設計想定を少しでも超える地震動が発生すると原子力発電所の多くの設備が損傷するのではないかという懸念が拡がり、地震に対する原子力発電所の安全性を改めて見える形にしていくことが求められている。これを受けて日本原子力学会原子力発電所地震安全特別専門委員会では、安全分科会において、地震に対する安全確保の基準,考え方,評価の方法など多方面からの再検討を行い、地震安全の論理を取りまとめた。本シンポジウムでは、この地震安全の論理についてその概要を紹介する。
田力 正好; 池田 安隆*; 野原 壯
地震, 62(1), p.1 - 11, 2009/08
河成段丘の比高を用いて、2008年6月14日に発生した、岩手・宮城内陸地震の震源域周辺における過去10数万年間の隆起速度分布を求めた。この地震の震源域では、明瞭かつ大規模な断層変位地形が存在せず、これまで活断層は記載されていなかった。今回の地震の震源域には隆起速度の変化帯が存在し、この変化帯は今回の地震の震源断層の活動に関連していることが示された。また、震源断層を挟んだ両側の隆起速度の差から、今回の地震の震源断層の垂直変位速度は0.4-0.5mm/yrと推定された。明瞭な断層変位地形を持たない地域においても、河成段丘の比高を用いて隆起速度分布を明らかにすることにより、活断層の存在を推定することが可能であると考えられる。
岡村 茂樹
日本地震工学会誌, (3), p.47 - 48, 2006/01
本報告書は、平成17年8月8日(月)12日(金)までの5日間、北京(中国)にて開催された第18回原子炉構造力学国際会議(18th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology: SMiRT18)の会議参加報告書である。本会議は、原子力の工学系の国際会議としては、総合的で大規模な会議であり、原子炉構造力学等に関して、PSA, PRA, 構造解析,構造制御,構造設計,免震技術などの構造にかかわる全般の技術を扱っている。当該研究に携わる研究者・技術者にとって、連日、各国、各技術の現状について、最新かつ充実した内容の報告があった。
新里 忠史; 重野 聖之*; 高清水 康博*
歴史地震, (21), p.121 - 136, 2006/00
北海道とその周辺海域における地震の地域性を把握するために、アイヌ文化期における地震に関するアイヌの口碑伝説と歴史記録の文献調査を行うとともに、それら史料が過去に地震に襲われた可能性を示すものかどうかの検討を行った。その結果、28の口碑伝説と歴史記録を収集できた。個々の史料を検討した結果、24の史料が地震に関するものと解釈された。アイヌ文化期とそれ以前の時期において地震に襲われたことが推定される地域は、おもに北海道の太平洋沿岸に分布する。それら地域は、北海道とその周辺において地震活動が活発な地域に隣接する。過去から現在までの地震の分布傾向に基づくと、将来の地震の分布は、アイヌ文化期とほぼ同期間の将来において、現在の地震分布とほぼ同一であると推測できるであろう。
安江 健一; 金田 平太郎*; 近藤 久雄*
日本地震学会ニュースレター, 16(6), p.15 - 17, 2005/00
2005年1月18日22日、淡路島北淡町の震災記念公園セミナーハウスを会場として「北淡国際活断層シンポジウム2005」が開催された。5年前にも同様のシンポジウムが同地で開催されており、2 回目となる今回のテーマは「地震災害軽減のための活断層研究」である。登録参加者は157名(うち国内参加者107名)の研究者が集まって45件の口頭発表、約80件のポスター発表が行われ、連日活発な議論が交わされた。巡検も含めシンポジウム全体について報告する。
武田 信和; 中平 昌隆; 多田 栄介; 藤田 聡*; 藤田 隆史*
日本地震工学会論文集(インターネット), 4(3), p.298 - 304, 2004/04
ITERはトカマク型の国際核融合実験装置であり、主要機器は、超伝導コイル,真空容器等で、運転温度は4Kから200Cまでと幅広い。このため、主要機器の支持構造はトーラス構造の半径方向に柔軟,鉛直方向に剛となるよう、多層板バネ構造を採用している。この結果トカマク装置の水平方向固有振動数は4Hzと低く、さらに地震に対しては国際標準のIAEAに照らし、地表加速度0.2gで標準設計しており、これを超える地震を想定する場合は免震が必要となる。これらの特殊事情により、ITERの動的特性を把握するための解析,実験を日本で実施している。動解析では、日本のサイト及び免震を考慮した地震動により装置の健全性を確認した。この裏付けデータ取得のため、縮小モデルの振動試験体の製作を開始した。最初の試験として、コイル単体及び支持脚単体の固有振動数及び剛性データを取得した。本論文では、ITER主要機器の動特性を把握する日本の解析及び実験の現状と計画を述べる。
森下 正樹; 井上 和彦*; 藤田 隆史*
日本地震工学会論文集(インターネット), 4(3), p.305 - 310, 2004/00
FBRシステム実用化戦略調査研究の一環として実施している3次元免震開発プロジェクトの概要について述べる。
横山 由紀子; 熊澤 峰夫; 國友 孝洋; 中島 崇裕
東京大学地震研究所彙報, 75(3/4), p.375 - 392, 2001/03
電磁アクロスでは位相を精密に制御した信号を用いて電気探査を行う。本論文では、そのための送信信号の設計方法を提案する。信号はディジタルとし、狭い周波数帯域と急峻な遮断特性を与える。またスペクトルと振幅を予備的に測定した伝達係数とノイズにあわせて与える。この方法によりエラーの小さい測定と解析が可能となる。
横山 由紀子; 熊澤 峰夫; 中島 崇裕
東京大学地震研究所彙報, 75(3/4), p.393 - 411, 2001/03
電磁アクロスでのデータ処理方法について示す。データ処理の為のモデルとしてまず、電磁場の伝達関数を射線で表し、さらに自己回帰型のモデルで近似する。このモデルのパラメータを推定することにより、伝達関数を射線に関わる単位に分離し、位相遅延、振巾減衰及び周波数依存性を抽出する。
蛯沢 勝三; 久野 哲也; 柴田 勝之; 大井 昌弘*; 堀内 茂木*; 阿部 一郎*; 都筑 和久*
リアルタイム地震情報伝達システム; 今後の産官学連携のために, P. 18, 2000/00
研究は、初動対応や被害推定に必要な震源・断層パラメータ及び地震動パラメータ推定手法や地震情報緊急伝達システムの開発を目的としている。システム開発は、地震情報を一方向で提供する基本システムと多様なユーザのニーズを考慮し情報の双方向伝達が可能な応用システムに分けて行っている。基本システムは、次の6つのサブシステムからなる。(1)地震計ネットワーク・地震動伝送サブシステム,(2)地震動収集サブシステム,(3)震源・断層パラメータ推定サブシステム,(4)地震動パラメータ推定サブシステム,(5)地震情報発信サブシステム,(6)地震情報利用サブシステム。これらのサブシステムのうち、地震動パラメータ推定サブシステムの開発は、次の概念に基づき行った。(1)ユーザの地震情報に対する種々の要求項目・要求時間・要求精度に対応するため、推定地震動パラメータと推定時間・精度とのトレードオフを考慮し、各種手法を任意に選択できるようにする。(2)対象地域での詳細な地盤情報(表層地盤の非線形特性や基盤の不整形性等)や地震動の事前予測分布等の関連情報を事前に準備し、推定精度を向上させる。システムの検証のために原研東海研周辺30km地域を選び、試験用リアルタイム地震計ネットワーク、周辺地域で発生した地震の地震動データ等を整備し検証した。応用システムの開発では、関連システム間の連携や平常時/緊急時両用システムの確立が重要性と考え、亀田等が開発した平常時/緊急時両用機能や情報の時空間・自律分散管理機能を有する「多次元地理情報システム(DiMSIS: Disaster Management Spatial Information System)」の利用が可能なシステムの概念を提案した。この概念に基づきプロトタイプシステムを開発するとともに、茨城県東海村に適用し機能を確認した。
中平 昌隆; 武田 信和; 多田 栄介
地震工学ニュース, (169), p.23 - 27, 1999/11
ITERはトカマク型核融合装置であり、その中心部分は超伝導コイル、真空容器及び真空容器内機器等から構成されている。これらの機器は、運転温度が異なるため熱収縮を考慮し柔軟な支持系で支持されており、標準設計としてIAEAのSL-2(0.2gの地震加速度)に基づいて耐震設計が成されている。また、これ以上の強地震動については、建屋免震によりトカマク機器の健全性を確保することが設計に盛り込まれている。本報告では、核融合実験炉(ITER)の構造設計の特徴及び免震設計の要件について概要するとともに、我が国への建設に向けた国内活動として実施している免震用積層ゴムの特性試験及びトカマク機器の振動応答試験について紹介する。
蛯沢 勝三; 安藤 和博*; 柴田 勝之; 穂高 志郎*; 長屋 雅文*; 伊東 守*; 亀岡 裕行*; 加治木 茂明*
第24回地震工学研究発表会講演論文集, 1, p.309 - 312, 1997/07
著者等は、確率論的手法に基づく機器免震の有効性評価手法及び評価コードを開発した。安全上重要な碍管付き起動変圧器の免震設計を行い、免震化の有効性を評価した結果、免震度が非常に大きいことが分かった。更に、実際の性能を確認するため、鹿島灘に面した原研大洗研究所敷地内で自然地震動を利用した機器免震確証試験を平成8年度から開始している。鹿島灘は、我が国有数の有感地震動の発生地域であるとともに、周波数特性の異なる地震動の震源域でもある。試験では、水平用免震装置を取り付けた試験体と、水平・鉛直両用免震装置を取り付けた試験体をテストベットに設置し、両者の振動挙動を比較する。そして、ロッキング及びねじれ振動に伴う免震装置の3次元振動挙動や水平及び鉛直それぞれの免震効果を確認する。
蛯沢 勝三; 馬場 治; 鈴木 偉之; 中村 晋*; 田居 優*; 香川 敬生*
第23回地震工学研究発表会講演概要集, 0, p.53 - 56, 1995/00
茨城県大洗町の日本原子力研究所 大洗研究所敷地内で1987年から、加速度計(水平2成分、鉛直1成分)を鉛直方向に4箇所(地表面から約1m、30m、90m、170mの位置)設置した鉛直アレー観測を行っている。観測システムの特徴としては、敷地内の地盤を対象として、浅層反射法探査、ボーリングコアの室内土質・岩石試験、PS検層等を行い地盤を詳細に調べているので、地震動のサイト地盤局所特性を研究する上で有用であること、地震動データの特徴としては、周波数特性の異なる多数の地震動が期待されること等が挙げられる。これまでに周波数特性の異なる約120波の地震動が観測されている。これらの地震動データを用いて、断層モデルに基づく加速度フーリエスペクトルをパラメータとする地震動予測式の作成法の開発研究を行っている。また、水平動及び鉛直動の増幅特性に関する知見が得られた。
中村 晋*; 香川 敬生*; 蛯沢 勝三
第23回地震工学研究発表会講演概要集, 0, p.57 - 60, 1995/00
地震動の増幅特性を地震観測記録に基づいて算出する際、その特性は地震毎に異なることが良く知られている。その要因の一つとして、地盤物性の空間的揺らぎが考えられる。ここでは、地震水平成層構造に比較的近い地盤で実施されている鉛直アレー地震観測により得られた加速度記録を用い、地震毎に同定した地盤物性と地盤探査結果とを比較するとともに、地震動の増幅特性のばらつきと地盤物性の揺らぎの関係について検討を行った。地盤観測記録に基づいた地盤物性の同定は周波数領域および時間領域において行った。前者には確定論的手法(SLP法)、後者には確率論的手法(カルマンフィルター)を用いた。
蛯沢 勝三
第9回日本地震工学シンポジウム (1994)論文集,第1分冊, 0, p.1699 - 1704, 1994/00
各国で実施した地震PSAにおいて、炉心損傷の発生頻度に大きな影響を及ぼす機器の1つに継電器が挙げられている。その故障としては、地震動によって継電器の接点が開離すること(チャタリング)による誤信号の発生がある。我が国の耐震設計法で設計された継電器において、チャタリングが発生する地震動レベル(耐力)の程度を検討することの重要性等が指摘されている。そのため、チャタリング発生に関する我が国での振動台試験によるデータを用いて制御継電器の耐力を確率論的に表示した。また、原研東海サイトに改良標準型原子炉建屋が立地しており、この建屋に制御継電器を内蔵した各種電気計測制御盤が配置されていると仮定した上で、これらの制御継電器の故障確率を上述の制御継電器の耐力等を用いて求めた。
蛯沢 勝三; 亀岡 裕行*; 竹ノ内 勇*; 加治木 茂明*
第9回日本地震工学シンポジウム (1994)論文集,第1分冊, 0, p.1771 - 1776, 1994/00
著者はこれまでに、安全上重要で地震動抵抗力の小さく、耐震対策の難しい機器を免震構造化した場合の有効性を確率論的手法を用いて評価する手法を開発した。この手法では、各種免震装置を対象として機器免震の有効性を評価するが、使用すべき免震装置を選択する基準を定量的に示していない。免震装置の選択基準は機器免震の設計の考え方に依存するが、その考え方は確立に至っていない。そのため、機器免震の設計の考え方を示し、この考え方に沿って免震装置の限界負荷荷重に着目した選択基準を考案した。更に、この基準を用いて、各種免震装置の限界負荷荷重を求めた。その結果、免震装置を選択する場合には、負荷荷重の観点で検討することは重要であるが、機器免震の有効性、メンテナンス等の観点も考慮して総合的に判断する必要もあることが明らかになった。
竹ノ内 勇*; 加地 孝敏*; 蛯沢 勝三
第22回地震工学研究発表会論文集, p.823 - 826, 1993/00
免震技術の原子力機器への応用が検討されており、機器を免震構造化した場合の適用性と有効性を確率論的手法を用いて評価する手法の開発が行われている。この研究の一環として、免震構造化の1方式として建築建屋の床免震へ実用化されているベアリング支承コイルバネ粘性ダンパー免震装置を機器免震へ応用する場合の設計の考え方をまとめた。この考え方を275kV碍管付き起動変圧器に適用し、それの免震設計を行った。設計結果を用いて、碍管付き起動変圧器免震構造系の応答評価を行うと共に、免震構造系の機能喪失限界を評価する考え方をまとめた。その結果、機器免震設計においては、床免震設計では考慮外であったベアリング支承部での変圧器本体の浮き上がりという損傷モードを考慮する必要性があること等が分かった。