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光原 昌寿*; 栗野 晃一*; 矢野 康英; 大塚 智史; 外山 健*; 大沼 正人*; 中島 英治*
鉄と鋼, 109(3), p.189 - 200, 2023/03
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Metallurgy & Metallurgical Engineering)本研究では、高速炉通常運転時におけるODS鋼被覆管の使用環境に近い700または750Cのクリープ試験と、事故時を模擬した900から1350Cでの時効処理または高温引張試験での酸化物の成長挙動を確認した。9Cr-ODS鋼のクリープ試験後の組織では、初期状態と比較し、酸化物の成長や数密度の低下が無く、酸化物の分散強化がクリープ変形中に有効に機能していることが分かった。12Cr-ODS鋼のクリープ試験後の組織においては、亜粒界のような転位下部構造の発達はほとんど観察されず、粒内に可動転位が均一に観察された。転位密度は応力の増加とともに増える傾向であった。9Cr-ODS鋼の引張延性は、900から1100Cまで温度上昇とともに低下したが、1200Cで上昇し、1250Cで劇的に低下し、1300Cで再び増加する傾向を示した。12Cr-ODS鋼では、温度の上昇とともに減少する傾向を示した。9Cr-ODS鋼の1200から1300Cにおける複雑な引張特性の変化にはデルタフェライト相の形成が影響していると推察される。なお、本研究は、文部科学省原子力システム研究開発事業JPMXD0219214482の助成を受けたものである。
岡 弘*; 丹野 敬嗣; 矢野 康英; 大塚 智史; 皆藤 威二; 橋本 直幸*
Journal of Nuclear Materials, 572, p.154032_1 - 154032_8, 2022/12
被引用回数:3 パーセンタイル:63.91(Materials Science, Multidisciplinary)窒素濃度(0.0034-0.029wt%)の異なる9Cr-ODS鋼について700Cのクリープ特性とクリプ前後の組織変化について調査を行った。クリープ強度は、窒素濃度の増加に伴い顕著な低下が確認された。高窒素濃度材において変態フェライト領域と残留フェライト領域の境界にそってYリッチな粗大粒子が確認された。と相では窒素の固溶度が異なることから、オーステナイト変態プロセスが生じる際に、窒素が相に拡散・濃化し、逆変態時に残留フェライト相に吐き出され、両境界付近で窒素の濃化生じる。その結果として、熱力学的不安定を解消するために分散粒子の粗大化が生じると考えられる。窒素濃度が高いほど多数のクリープボイドが観察されたことから、粗大化した分散粒子を起点にクリープボイドが発達したことにより、早期破断が生じたと考えられる。
矢野 康英; 橋立 竜太; 丹野 敬嗣; 今川 裕也; 加藤 章一; 鬼澤 高志; 伊藤 主税; 上羽 智之; 大塚 智史; 皆藤 威二
JAEA-Data/Code 2021-015, 64 Pages, 2022/01
安全性・経済性に優れ、放射性廃棄物の減容化・有害度の低減に貢献する高速増殖炉サイクルシステムの実用化の観点から、燃料の高燃焼度化が求められており、これに対応した被覆管材料の開発が必要不可欠である。この高燃焼度達成のための被覆管材料には、耐照射スエリング性能及び高温強度特性に優れた酸化物分散強化(Oxide Dispersion Strengthened; ODS)フェライト鋼の研究開発を実施している。ODSフェライト鋼を燃料被覆管として適用するためには、材料強度基準整備が重要であり、そのためのクリープ強度データ等の各種強度データ取得を実施している。本研究では、材料強度基準整備に資することを目的に、これまで得られた知見・検討結果に基づき、9Cr-ODS鋼被覆管の引張強度とクリープ強度特性について評価を行った。9Cr-ODS鋼は相変態温度を持つことから、母相の相状態が変化しない850C以下と事故時を想定したそれ以上の温度域に分けて評価を行った。
矢野 康英; 丹野 敬嗣; 大塚 智史; 皆藤 威二; 鵜飼 重治*
Materials Transactions, 62(8), p.1239 - 1246, 2021/08
被引用回数:5 パーセンタイル:38.97(Materials Science, Multidisciplinary)FeCrAl-ODS鋼被覆管を製作し、その被覆管の熱時効の影響を調査するために、450C,5000時間と15000時間の熱時効後に、硬さ試験,リング引張試験,TEM観察を実施した。全てのFeCrAl鋼被覆管で熱時効硬化が確認され、延性低下を伴う顕著な強度上昇も生じた。熱時効硬化挙動は(Ti, Al)リッチ相('相)析出とAl7wt%未満の場合は'相析出も起因していると考えられる。同様の組成をもつFeCrAl-ODS鋼を比較した場合、再結晶材と未再結晶材で熱時効硬化は生じるが、後者は延性低下を伴わないことが明らかになった。この挙動の差は、結晶粒界,転位密度,試験片作製方向の影響が起因していると考えられる。本研究は、文部科学省の原子力システム研究開発事業による委託業務として、北海道大学が実施した平成2528年度「事故時高温条件での燃料健全性確保のためのODSフェライト鋼燃料被覆管の研究開発」の中で北海道大学からの委託により原子力機構が実施した研究成果である。
鵜飼 重治*; 矢野 康英; 井上 利彦; 曽和 貴志*
Materials Science & Engineering A, 812, p.141076_1 - 141076_11, 2021/04
被引用回数:12 パーセンタイル:70.69(Nanoscience & Nanotechnology)FeCrAl-ODS鋼は、軽水炉の事故耐性燃料に対する有望な材料として期待されている。この合金に対してAlとCrは鍵となる元素であり、Crはアルミナ形成を促進し、Alは脆性相となるCrリッチ相(')の形成を抑制する重要な相乗効果を有している。今回の研究では、Cr(9-16at.%)とAl(10-17 at.%)の添加量を系統的に変化させ、室温, 300, 700度の引張試験を実施し、CrとAlの両添加に及ぼす固溶強化に関する調査を行った。その結果、軽水炉の運転温度である300度において、CrとAlの1at.%当りの固溶強化量は、それぞれ20, 5MPaと直線的に増加することが分かった。この固溶強化量は、一般的なFleischer-Friedel理論やLabusch理論では説明できず、鈴木の変形はラセン転位の2重キンク機構により説明可能であることを明らかにした。本研究成果は、文部科学省の原子力システム研究開発事業による委託業務として、北海道大学が実施した平成25-28年度「事故時高温条件での燃料健全性確保のためのODSフェライト鋼燃料被覆管」の研究成果である。
丹野 敬嗣; 竹内 正行; 大塚 智史; 皆藤 威二
Journal of Nuclear Materials, 494, p.219 - 226, 2017/10
被引用回数:17 パーセンタイル:84.83(Materials Science, Multidisciplinary)高速炉用に酸化物分散強化型(ODS)鋼燃料被覆管の開発が進められている。原子力機構では9および11Cr-ODS焼戻しマルテンサイト鋼をその候補材料としている。被覆管からの腐食生成物が再処理工程に及ぼす影響を見積もるためには、その腐食挙動を評価しておく必要がある。本研究では95Cの硝酸溶液中で基礎的な浸漬試験および電気化学試験を系統的に実施した。腐食速度は有効Cr濃度(Cr)および硝酸濃度の増加に対して、指数関数的に低下した。酸化性イオンの添加も腐食速度を低下させた。取得した分極曲線や浸漬後の表面観察結果より、低Crと希硝酸の組み合わせでは浸漬初期に活性溶解が発生し、腐食速度が大きくなることが分かった。一方、高Crと比較的高濃度の硝酸、あるいは酸化性イオンの添加の組み合わせは不働態化を促進し、腐食速度を低下させることが分かった。
丹野 敬嗣; 矢野 康英; 岡 弘; 大塚 智史; 上羽 智之; 皆藤 威二
Nuclear Materials and Energy (Internet), 9, p.353 - 359, 2016/12
被引用回数:9 パーセンタイル:64.05(Nuclear Science & Technology)核融合炉のブランケットおよび高速炉の燃料被覆管といった炉内機器の材料は、高熱流束と中性子重照射にさらされるため、高温強度と耐照射性に優れている必要がある。その候補材料として酸化物分散強化型(ODS)鋼の開発が進められている。原子力機構(JAEA)では先進高速炉の燃料被覆管用に9Crおよび11Cr-ODS鋼の開発を進めている。本研究ではJAEA-11Cr-ODS鋼を圧延し、その異方性を評価するため、圧延方向と横断方向について引張試験とクリープ試験を700Cで実施した。その結果、引張強さでは異方性を示さなかったが、クリープ強度では明瞭な異方性を示した。各種観察と元素分析の結果、クリープ強度異方性はTi析出物を内包した旧粉末境界が原因であると分かった。
湯澤 翔*; 薮内 聖皓*; 木村 晃彦*; 坂本 寛*; 平井 睦*; 山下 真一郎
no journal, ,
高温水や蒸気中における耐食性および酸化特性を向上させた燃料被覆管は、事故時の被覆管と冷却水の反応速度を低下させ、水素発生を抑制するため、事故耐性燃料しての使用が期待されており、候補材として高Cr-高Al-ODS鋼が提案されている。一方、このFeCrAl-ODS鋼の溶接技術については十分な知見が少なく、これまでの研究からAlを添加することで溶接性が顕著に劣化することが知られており、溶接方法の検討が必要である。そこで本研究では、FeCrAl-ODS鋼管と端栓とをEB溶接あるいはTIG溶接し、その接合強度および接合部の損傷評価を行った。
岡 弘; 丹野 敬嗣; 矢野 康英; 舘 義昭; 大塚 智史; 皆藤 威二
no journal, ,
原子力機構で開発を進める9Cr-ODS鋼について、短期間で高い照射量を実現可能なイオン照射試験を用いて、高速炉燃料被覆管の実機条件に近い700C、約240dpaまで照射した。その後、9Cr-ODS鋼の優れた高温強度の主要因子であるナノサイズ分散粒子について、微細組織観察によりその分散状態を評価した。その結果、約240dpaにおいても、5nmほどのナノ粒子が高密度に均一に分散している様子が観察された。また、照射によるボイド形成は観察されなかった。以上から、700Cでの実用レベルの高照射量環境下において、9Cr-ODS鋼のナノ粒子は安定に存在することがわかった。
丹野 敬嗣; 矢野 康英; 岡 弘*
no journal, ,
原子力機構が開発した9Cr-ODS鋼に3次元アトムプローブを適用し、ナノサイズの酸化物分散粒子の分散状態の評価を試みた。結果、微細な針状試験片内の分散状態の取得に成功した。3次元アトムプローブマッピングは、分散粒子がY-Ti-O複合酸化物であることを示すとともに、粒子内に化学組成の分布があることを示唆している。
矢野 康英; 外山 健*; 丹野 敬嗣; 大塚 智史; 光原 昌寿*; 中島 英治*; 大沼 正人*; 皆藤 威二
no journal, ,
酸化物分散強化型(ODS)鋼をナトリウム冷却高速炉(SFR)の燃料被覆管に適用することで、事故時を含む高温から超高温環境までの燃料破損や冷却材の流路閉塞等のリスクを低減し、プラントの安全性向上をもたらすことが期待される。ODS鋼被覆管を実用化する上では、中性子照射環境下における強度特性を評価することが重要となるが、100dpaを超えるようなデータの取得はできていない。そこで、ODS鋼の主たる強化因子は酸化物の分散強化であるが、海外材では酸化物が照射により溶解(反跳溶解)するという報告例があることに着目し、組織評価用に照射された14Cr-ODS鋼(MA957)の分散粒子の安定性(反跳溶解の有無を含む)を、透過型電子顕微鏡(TEM)、3次元アトムプローブ(3D-AP)による微細構造解析により評価を実施した。本研究は、文部科学省原子力システム研究開発事業JPMXD0219214482の助成を受けたものである。
矢野 康英
no journal, ,
カーボンニュートラルに向けた高速炉開発の意義とその研究開発課題である炉心材料・構造材料の開発状況の進捗について、発表を行う。
栗野 晃一*; 光原 昌寿*; 中島 英治*; 矢野 康英; 大塚 智史; 大沼 正人*; 外山 健*
no journal, ,
酸化物分散強化型(ODS)フェライト鋼は、非常に優れたクリープ強度を有し、ナトリウム冷却高速炉の燃料被覆管の候補材料としての実用が期待されている。本鋼は、BCC鉄の母相中に、高い熱的安定性を持つナノサイズのイットリウム系酸化物が緻密に分散されていることを主たる強化因子としている。本研究では、走査電子顕微鏡(SEM)と走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、酸化物の分散状態を評価し、クリープ変形中の転位組織と酸化物の相互作用について考察を行った。
井上 利彦; 関尾 佳弘; 大塚 智史; 矢野 康英; 丹野 敬嗣; 岡 弘; 古川 智弘; 皆藤 威二; 鳥丸 忠彦*; 林 重成*; et al.
no journal, ,
高速炉用に開発された9-18-Cr-ODS鋼及び軽水炉でのシビアアクシデント特性に優れるAl添加ODS鋼を用いて、昇温速度0.1-10K/s、試験周応力50-200MPaでの急速加熱バースト試験を行い、熱過渡時の強度特性と変形を評価した。試験の結果、試験周応力と昇温速度が低下すると高い破裂温度を示した。また、Al添加ODS鋼は9Cr-ODS鋼と比較して破裂温度が低下していたが、AlとZrを添加すると急速加熱バースト特性が改善することを確認した。
丹野 敬嗣; 岡 弘*; 矢野 康英; 大塚 智史; 皆藤 威二
no journal, ,
原子力機構が開発を進める、ODS鋼を含めた高速炉燃料被覆管候補材料にFe+Heデュアルイオンビーム照射を実施し、耐スエリング性を評価した。オーステナイト鋼やODS鋼ではない焼戻しマルテンサイト鋼では粗大なボイドにより大きくスエリングしたのに対し、ODS鋼は約95dpa照射後もスエリングは極めて小さく、酸化物分散粒子の高いスエリング抑制効果が明らかとなった。
岡 弘; 丹野 敬嗣; 大塚 智史; 矢野 康英; 皆藤 威二; 大沼 正人*
no journal, ,
9Cr-ODS鋼被覆管の量産プロセス(熱間等方圧プレス(HIP)、熱間押出、熱間鍛造)の各加工熱処理段階でのナノ組織変化について評価した。加工熱処理により残留相の割合は減少し、ナノ粒子の数密度は低下した。残留相の形成はナノ粒子によるピン止め効果によると考えられている。したがって、加工熱処理がナノ粒子の数密度・サイズに影響し、残留相割合を減少させたものと考えられる。
矢野 康英; 丹野 敬嗣; 大塚 智史; 光原 昌寿*; 中島 英治*; 外山 健*; 大沼 正人*
no journal, ,
Na冷却高速炉用燃料被覆管の候補材料として研究開発されている9Cr-ODS鋼の1000Cを超えるような超高温における組織安定性について、結晶粒成長の違いに着目した光学顕微鏡観察を11Cr-耐熱鋼(PNC-FMS)と比較し、実施した。その光学顕微鏡写真を第73回金属組織写真賞作品に応募する。
岡 弘*; 橋本 直幸*; 丹野 敬嗣; 矢野 康英; 大塚 智史; 皆藤 威二
no journal, ,
フェライト/マルテンサイト組織を母相とする9Cr-ODS鋼において、含有窒素の濃度変動が微細組織及び高温クリープ強度に与える影響を調査した。その結果、窒素濃度増加とともに引張強さ及び高温クリープ強度が低下した微細組織解析の結果、窒素濃度増加によるY-Ti-O粒子の不均一分散化が高温クリープ強度低下の原因となった可能性がある。このY-Ti-O粒子の不均一分散化は、Ti窒化物の形成によるTiの消費により、Tiによる酸化物分散粒子の微細化効果が弱められた結果と推察される。
前田 誠一郎
no journal, ,
高レベル放射性廃棄物の減容、有害度の低減のため、高速炉燃料として、ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料にマイナーアクチニド(MA)を数%含有させたMA含有MOX燃料が適用される。MAを含有することによるMOX燃料の物性(融点、熱伝導度等)への影響が体系的に研究され、その影響が軽微であることが判明しつつある。MA含有MOX燃料の原子炉内の照射挙動を把握するため、既に高速実験炉「常陽」において最大5wt%のAmを含むMOX燃料の照射試験が進められ、ペレット組織変化等の貴重な知見が得られている。また、常陽の運転再開後にも様々な照射試験が計画され、これらから得られる照射試験データは燃料挙動解析コードに反映される。また、高速炉の使用済み燃料を起点としてMAリサイクルを実証するため、SmART (Small Amount of Reuse Fuel Test)サイクル計画が進められている。更に、1サイクル当たりのMA変換率向上に貢献するODS鋼を用いた長寿命被覆管材の開発が進んでいる。このように、廃棄物課題を解決する有力な手段して高速炉を用いるための研究開発が着実に進んでいる。
光原 昌寿*; 栗野 晃一*; 中島 英治*; 矢野 康英; 大塚 智史; 大沼 正人*; 外山 健*
no journal, ,
酸化物分散強化型(ODS)フェライト系耐熱鋼の強度機構となっている微細酸化物粒子の分散状態を走査電子顕微鏡(SEM)と走査透過電子顕微鏡(STEM)を組み合わせて広域で精度良く評価する手法の開発を検討した。本研究は文部科学省原子力システム研究開発事業JPMXD0219214482の助成を受けたものである。