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浜田 信行*; 坂下 哲哉; 原 孝光*; 藤通 有希*
放射線生物研究, 49(3), p.318 - 331, 2014/09
コロニー形成法は、半世紀以上にわたり、細胞の放射線感受性評価に最も頻用されている。我々は、ヒト初代正常二倍体線維芽細胞のコロニー形成実験を行い、50個未満の細胞から構成される増殖不全コロニーと50個以上の細胞から構成される生存コロニーの大きさと構成細胞数を解析することで、生存コロニーが巨細胞や多核化細胞などを含む不均一な集団であること、増殖不全コロニーの構成細胞数が遅延的に生じる細胞増殖死の短期的・長期的な変化を反映していることを明らかにするとともに、ヒト初代正常二倍体水晶体上皮細胞のコロニー形成実験から、照射細胞に由来するコロニーが高線量ほど巨大化するという新たな現象を見いだした。本稿では、これらの知見について総説する。
坂下 哲哉; 浜田 信行*; 川口 勇生*; 原 孝光*; 小林 泰彦; 斎藤 公明
Journal of Radiation Research, 55(3), p.423 - 431, 2014/02
被引用回数:3 パーセンタイル:16.46(Biology)コロニー形成試験において、従来、50個以上の細胞からなるコロニーを、増殖可能な細胞からなるコロニーとして生存率を評価してきた。最近、我々は、コバルト60線を照射した正常線維芽細胞について、従来無視されてきた50個に満たない細胞からなるコロニーのサイズ分布が対数-対数グラフで直線にプロットできることを示し、また、分岐プロセスモデルを導入することにより照射後数回の分裂にわたる遅延的細胞増殖死の確率を推定した。さらに、モデルの拡張により生存率曲線の再現にも成功した。本論文では、この一連の解析方法を、炭素線照射を実施した正常線維芽細胞に適用し、増殖不全コロニーのサイズ分布、生存率曲線の解析に加えて、生物学的効果比の評価及び2次コロニーの評価を実施した。本論文により、我々の提案手法が、(1)異なる線質に対しても適用可能であること、(2)2次、3次コロニーとの組み合わせなどの応用が可能であることが示された。遅延的な放射線の効果を明らかできる本研究の手法を、今後の放射線生物研究の進展に役立てることが期待される。
坂下 哲哉; 浜田 信行*; 川口 勇生*; 大内 則幸; 原 孝光*; 小林 泰彦; 斎藤 公明
PLOS ONE (Internet), 8(7), p.e70291_1 - e70291_10, 2013/07
被引用回数:8 パーセンタイル:35.01(Multidisciplinary Sciences)コロニー形成能の測定は、放射線照射後の細胞の重要な情報を与える。通常、50個以上の細胞からなるコロニーを、増殖可能な細胞からなるコロニーとして生存率を評価してきた。しかし、従来無視されてきた50個に満たない細胞からなるコロニーに関して詳細に調べたところ、サイズ分布が対数-対数グラフで直線にプロットできることがわかった。本研究では、この直線関係について分岐プロセスモデルを導入し、世界で初めて照射後の数世代にわたる細胞増殖死の確率を推定できることを発見した。また、従来、増殖可能なコロニーとして評価されたてきた生存コロニーに、このモデルを拡張応用することにより、生存率曲線を再現することに成功した。この一連の解析により、放射線照射後の細胞の継世代的な影響には、比較的短い数世代に及ぶ増殖死が高まる影響と、それよりも長い世代にわたって継続する増殖死の機構が存在することを明らかにした。本研究による、半世紀以上見過ごされてきたコロニーアッセイの隠れた重要性の指摘と、コロニーアッセイによる継世代影響解析方法の提案は、今後の放射線生物研究の進展に重要な貢献を果たすものと期待される。
浜田 信行*; 原 孝光*; 大村 素子*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 楚良 桜; 横田 裕一郎; 中野 隆史*; 小林 泰彦
Radiotherapy and Oncology, 89(2), p.231 - 236, 2008/11
被引用回数:25 パーセンタイル:59.14(Oncology)Overexpression of Bcl-2 is frequent in human cancers and has been associated with the radioresistance. Here we investigated the potential impact of heavy ions on Bcl-2 overexpressing tumors. Bcl-2 cells (Bcl-2 overexpressing HeLa cells) and Neo cells (neomycin resistant gene-expressing HeLa cells) exposed to -rays or heavy ions were assessed for the clonogenic survival, apoptosis and cell cycle distribution. Whereas Bcl-2 cells were more resistant to
-rays and helium ions (16.2 keV/
m) than Neo cells, heavy ions (76.3-1610 keV/
m) gave the comparable survival regardless of Bcl-2 overexpression. Carbon ions (108 keV/
m) decreased the difference in the apoptotic incidence between Bcl-2 and Neo cells, and prolonged G
/M arrest that occurred more extensively in Bcl-2 cells than in Neo cells. High-LET heavy ions overcome tumor radioresistance caused by Bcl-2 overexpression, which may be explained at least in part by the enhanced apoptotic response and prolonged G
/M arrest. Thus, heavy-ion therapy may be a promising modality for Bcl-2 overexpressing radioresistant tumors.
浜田 信行*; 片岡 啓子*; 楚良 桜*; 原 孝光*; 大村 素子*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 中野 隆史*; 小林 泰彦
Radiotherapy and Oncology, 89(2), p.227 - 230, 2008/11
被引用回数:11 パーセンタイル:35.33(Oncology)This is the first study to demonstrate that the small-molecule Bcl-2 inhibitor HA14-1 renders human cervical cancer cells and their Bcl-2 over expressing radioresistant counterparts, but not normal fibroblasts, more susceptible to heavy ions. Thus, Bcl-2 may be an attractive target for improving the efficacy of heavy-ion therapy.
楚良 桜*; 浜田 信行*; 原 孝光*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 横田 裕一郎; 中野 隆史*; 小林 泰彦
宇宙生物科学, 22(2), p.54 - 58, 2008/10
Here we investigated the potential impact of energetic heavy ions on fibroblast differentiation. The differentiation pattern was morphologically determined at days 3 and 5 after exposure to graded dose of -rays (0.2 keV/
m) or carbon ions (18.3 MeV/u, 108 keV/
m). The cells irradiated with higher doses progressed toward later differentiation stages as time goes postirradiation, but underwent fewer cell divisions. Thus, radiation exposure accelerated morphological differentiation, for which carbon ions were more effective than
-rays. The relative biological effectiveness of carbon ions for differentiation was higher than that for the clonogenic survival, and this was the most case for terminally differentiated cells that may not divide any more. The results are suggestive of the distinct mechanism underlying inactivation of clonogenic potential between radiation qualities, such that the contribution of the differentiation to heavy ion-induced reductions in the survival is greater than to those induced by photons. Such accelerated differentiation could be a protective mechanism that minimizes further expansion of aberrant cells.
浜田 信行*; 原 孝光*; 大村 素子*; Ni, M.*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 楚良 桜*; 中野 隆史*; 小林 泰彦
宇宙生物科学, 22(2), p.46 - 53, 2008/10
Significant evidence indicates that ionizing radiation causes biological effects in nonirradiated bystander cells having received signals from directly irradiated cells. There is little information available hitherto as to the bystander effect of energetic heavy ions; however, our previous work has shown that in confluent cultures of normal human fibroblast AG01522 cells, targeted exposure of 0.0003% of cells to microbeams of 18.3 MeV/u C (103 keV/
m) and 13.0 MeV/u
Ne (375 keV/
m) ions can similarly cause almost 10% decreases in the clonogenic survival, and twofold increments in the incidence of apoptosis whose temporal kinetics varies between irradiated and bystander cells. Using this experimental system, here we further report that bystander responses of AG01522 cells to 17.5 MeV/u 20Ne ions (294 keV/
m) are consistent with those to 18.3 MeV/u
C and 13.0 MeV/u
Ne ions. We also demonstrate that such bystander-induced reductions in the survival are less pronounced and occur independently of Bcl-2 overexpression in human cervical cancer HeLa cells.
浜田 信行*; 原 孝光*; 大村 素子*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 楚良 桜*; 中野 隆史*; 小林 泰彦
Cancer Letters, 268(1), p.76 - 81, 2008/09
被引用回数:10 パーセンタイル:22.85(Oncology)Here, we investigated the cell killing effectiveness of heavy-ion radiation in Bcl-2 overexpressing radioresistant tumor cells. First, irradiated cells underwent primary colony formation. Radioresistance decreased with increasing linear energy transfer (LET), indicating that heavy ions may be a promising therapeutic modality for Bcl-2 overexpressing tumors. Second, cells in primary colonies were reseeded for secondary colony formation. The incidence of delayed reproductive death increased with LET irrespective of Bcl-2 overexpression, suggesting that Bcl-2 overexpression may not facilitate heavy ion induced genomic instability.
浜田 信行*; 原 孝光*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
Mutation Research; Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis, 637(1-2), p.190 - 196, 2008/01
被引用回数:22 パーセンタイル:48.49(Biotechnology & Applied Microbiology)重粒子線を照射したヒト正常線維芽細胞の生存子孫細胞において、最初に与えられた線量とそのLET値(線エネルギー付与)に依存してコロニー形成能が遅延的に低下することを、これまでにわれわれは明らかにしてきた。今回、照射によって線量・線質依存的に引き起こされた分化の進行の結果、分裂能が低下した細胞が生存子孫細胞の中に誘発されることが、このような放射線誘発遺伝的不安定性の機序である可能性を示した。
柿崎 竹彦; 浜田 信行*; 坂下 哲哉; 和田 成一*; 原 孝光*; 舟山 知夫; 宝達 勉*; 夏堀 雅宏*; 佐野 忠士*; 小林 泰彦; et al.
Journal of Veterinary Medical Science, 69(6), p.605 - 609, 2007/06
被引用回数:1 パーセンタイル:13.42(Veterinary Sciences)重イオンの優れた生物学的・物理学的特性から獣医領域での応用が期待されるが、これまでに伴侶動物細胞に対する感受性は明らかにされていない。そこで、本研究では、ネコ由来Tリンパ球に対する感受性を解析し、重イオンの線量と線エネルギー付与に依存して細胞死が誘発されることを明らかにした。
浜田 信行*; 松本 英樹*; 原 孝光*; 小林 泰彦
Journal of Radiation Research, 48(2), p.87 - 95, 2007/03
被引用回数:181 パーセンタイル:94.32(Biology)放射線の生物効果は、直接照射された細胞から、その周囲の非照射細胞に伝達されることが近年の研究から明らかになり、この現象はバイスタンダー効果と呼ばれている。本総説では、バイスタンダー効果の分子機序とがん治療への応用の可能性に関して概説する。
小林 泰彦; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 古澤 佳也*; 和田 成一*; 横田 裕一郎; 柿崎 竹彦; 浜田 信行*; 原 孝光*; 深本 花菜; et al.
JAEA-Conf 2007-002, p.28 - 35, 2007/02
放射線の生物作用は、生体分子に対する局所的なエネルギー付与、すなわち空間的にも時間的にも離散的な物理的相互作用の過程から始まる。そのため低線量(低フルエンス)被曝においては、照射された細胞と非照射の細胞が試料中に混在することになる。したがって、照射細胞における直接の放射線障害だけでなく、照射細胞と非照射細胞が互いに影響を及ぼし合う過程を定量的に解析することが、放射線適応応答やホルミシス効果など低線量域放射線に特有の生体応答を解明する鍵となる。そこでわれわれは、TIARA(高崎研イオン照射研究施設)の重イオンマイクロビームを用いて個別の細胞を狙って正確な個数の重イオンを照射し、その影響を長時間追跡観察するシステムを開発した。重イオンマイクロビームを用いて照射細胞と非照射細胞を明確に区別して個々の細胞の放射線応答を解析することが可能な本照射実験システムの概要を紹介するとともに、バイスタンダー効果の分子機構に関する最近の研究成果を報告する。
和田 成一*; 松本 義久*; 大戸 貴代*; 浜田 信行*; 原 孝光*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 深本 花菜; 柿崎 竹彦; 鈴木 芳代; et al.
no journal, ,
高LET重イオン照射による細胞致死効果は低LET放射線照射よりも高いことが広く知られている。この高い細胞致死効果の原因の一つは高LET重イオン照射による修復困難な、又は修復不可能なDNA損傷によると考えられている。しかし、この損傷の修復反応や修復過程のどの段階で修復が阻害されるかなど未だ詳細には解明されていない。哺乳動物細胞のDNA2本鎖切断修復はおもに非相同性末端結合であり、この修復機構ではKu70/80がDNA損傷を認識することによって修復が開始すると考えられている。そこで、Ku80の高LET重イオンによるDNA損傷に対する反応を解析することにより、高LET重イオンによるDNA損傷に対する修復過程を調べた。照射細胞にはKu80の変異したxrs5細胞を形質転換し、GFPを融合したKu80を発現する細胞(8xrs5-GFP-Ku80)とGFPのみを発現する細胞(xrs5-GFP)を用いた。Arイオン(LET=1610keV/m)を照射した各細胞の生存曲線はほぼ同程度の感受性を示し、Arイオン照射によって生じたDNA損傷はKu80によって修復困難であることが示唆された。照射10分後では
H2AXとKuのGFPシグナルの共局在が観察されたが、照射20分後にはGFPシグナルが不明瞭になった。すなわちKuは高LET重イオン照射によるDNA損傷を認識するが、修復できずに損傷部位から解離すると推察された。
浜田 信行*; 原 孝光*; 片岡 啓子*; 小林 泰彦
no journal, ,
重粒子線は、光子に比べ、殺細胞効果が高く、線量集中性にも優れていることから、がん治療に利用されている。さらに、重粒子線は、血管新生や転移を抑制すること、そして、低酸素細胞やp53変異がんといった放射線抵抗性細胞も高効率に殺傷することが報告されている。がん遺伝子であるBcl-2は、半数近くのがんに高発現している。同じ組織型であっても、Bcl-2を高発現するがんは放射線抵抗性を示すことが知られているが、重粒子線の照射効果はこれまでに明らかにされていない。本シンポジウムでは、Bcl-2を過剰発現させたがん細胞の重粒子線による放射線抵抗性の消失とその機序について発表する。
浜田 信行*; 原 孝光*; 坂下 哲哉; Ni, M.; 和田 成一*; 柿崎 竹彦; 舟山 知夫; 深本 花菜; 鈴木 芳代; 横田 裕一郎; et al.
no journal, ,
高密度に接触阻害させた培養ヒト正常線維芽細胞にLETが異なる重イオンマイクロビームを照射し、誘発されたバイスタンダー細胞死を解析した。約100万個の細胞のうち数個の細胞に重イオンを照射すると、コロニー形成能を基準とした生存率が約10%低下すること、また、TdT-mediated dUTP nick end labeling(TUNEL)陽性率は照射後24時間で最大に達することがわかった。一方、10%生存線量のブロードビームの照射によって、TUNEL陽性率は、照射後72時間までは増加した。そして、その照射後72時間における陽性率は、バイスタンダー細胞における照射後24時間での陽性率と同程度であることがわかった。以上の結果から、照射細胞とバイスタンダー細胞では細胞死の機序と時間動態が異なる可能性が示唆された。
深本 花菜; 佐方 敏之*; 白井 孝治*; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 和田 成一*; 浜田 信行*; 柿崎 竹彦; 原 孝光*; 鈴木 芳代; et al.
no journal, ,
カイコは、発生及び細胞分化を研究するためのよい実験材料である。カイコのコブ突然変異は幼虫背面の斑紋が瘤状に突出するもので、その主な原因は真皮細胞が異常分裂して局所的に多層になるためと考えられるが、コブ形質にかかわる遺伝子の発現がいつどこで発揮されるのかなど、不明な点が多い。これまでにカイコ4齢幼虫のコブ形成領域を重イオンで局部照射してもこの形質の顕著な抑制は認められなかった。そこで、外見上コブがまだ形成されていない、孵化直後の幼虫への重粒子線局部照射を行い、コブ形質発現の抑制の有無を調べた。まず孵化幼虫の特定領域に限定して照射するため、孵化幼虫にあわせたサイズの穴を多数有するアルミ板の幼虫固定板を作成し、その穴に孵化幼虫を入れ、上下面に透明なプラスチックフィルムを貼って幼虫の動きを抑制した。孵化幼虫の、コブが将来形成される領域に炭素イオン局部照射(LET=128keV/
m,
180
m)を行ったところ、コブ形質発現の消失が認められる個体は全照射個体の7割以上であった。またコブ消失部位では真皮細胞の異常分裂が抑制され、正常カイコの真皮細胞層と同じ1層のままであった。これらの結果から、コブ形質を発現する細胞・領域の決定は孵化以前に既に完了していることが明らかになった。
柿崎 竹彦; 浜田 信行*; 和田 成一*; 坂下 哲哉; 原 孝光*; 宝達 勉*; 夏堀 雅宏*; 佐野 忠士*; 舟山 知夫; 深本 花菜; et al.
no journal, ,
血球細胞は全身に分布しており、放射線被曝を完全に避けることはできず、照射された血球細胞は全身へ移行し、障害を受けた細胞の処理のために全身的に組織反応が生じる。したがって血球細胞への被曝線量は放射線治療において照射線量を限定する要因の一つであり、動物の血球細胞の粒子線に対する感受性を評価することは、今後粒子線治療を獣医療へ応用するときに照射線量を決定するために必須の情報となる。そこでネコTリンパ球株化細胞FeT-Jの放射線感受性を軟寒天包埋培養によるコロニー形成能を指標として評価する方法を確立し、Coの
線及びH, He、そしてエネルギーが異なる2種類の炭素イオンビームによる照射効果を調べた。各放射線の照射でLETの増加(2.8
114keV/
m)に伴い生存率は著明に減衰し、RBE並びに不活性化断面積は増加し、高LET炭素線の細胞致死効果が高いことが示された。一方、10%生存線量を照射した場合、アポトーシス誘発率にLETの違いによる有意な差は見られなかった。したがって、ネコTリンパ球では同率に致死効果を与える線量であれば、イオン種やLETの違いで細胞死に至る経緯に差が生じないことが明らかにされた。獣医領域での粒子線治療のための基礎データの一つが示され、また炭素線以外の粒子線でも獣医療に応用できる可能性が示された。
浜田 信行*; 原 孝光*; 坂下 哲哉; 和田 成一*; 柿崎 竹彦; 鈴木 芳代; 舟山 知夫; 小林 泰彦
no journal, ,
高LET放射線は、低LET放射線に比べて生物学的効果が高く物理学的特性にも優れていることから、がん治療に応用されている。しかし、腫瘍病巣の内部及び周囲には正常細胞が混在するため、正常組織への照射は不可避である。一方、放射線照射生存子孫細胞において遅延的に増殖死が引き起こされることが知られているが、そのLET依存性は解明されていない。そこで、本研究では、高密度接触阻害培養をしたヒト正常二倍体線維芽細胞AG01522にCo
線(0.2keV/
m)及び6種の重荷電粒子(16.2-1610keV/
m)を照射し、1次及び2次コロニーを形成させ、2次コロニー形成能の喪失を指標として、遅延的細胞増殖死のLET依存性を明らかにすることを目的とした。1次コロニーあるいは2次コロニーにおいて、
線に対する重荷電粒子のRBEは、ともに100keV/
m近傍で最大となったことから、遅延的増殖死にもLET依存性があることがわかった。その一方、1次コロニーでの10%生存線量における2次コロニーの生存率は、LETによらず一定であったことから、遅延的増殖死の起因は1次コロニー形成期間に固定される可能性が考えられる。
浜田 信行*; 原 孝光*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
no journal, ,
放射線の照射により生じるDNA損傷を修復した細胞は、一見正常に増殖するが、子孫細胞には細胞増殖死や染色体異常などが遅延的に誘発されることが知られており、この現象は、放射線誘発遺伝的不安定性と呼ばれている。本研究では、遺伝的不安定性誘発のLET依存性を明らかにするために、Co
線(LET=0.2keV/
m)あるいは6種の重粒子線(16.2
1610keV/
m)を照射したヒト正常二倍体線維芽細胞の子孫細胞に誘発される遅延的な効果を調べた。まず、遅延的細胞増殖死の指標として遅延的なコロニー形成能の喪失を解析したところ、1次コロニーと2次コロニーの生存率は、ともに炭素線(18.3MeV/amu, 108keV/
m)の照射によって最も低下することがわかった。そこで、線量とLETに依存してコロニー形成能が遅延的に低下する機序を明らかにするために、1次コロニーを構成する個々の細胞の形態変化を解析したところ、分化の進行により分裂能が低下した細胞は線量とLETに依存して高頻度に認められたが、巨細胞や多核化細胞の誘発頻度は、分化した細胞に比べ著しく低いことがわかった。
原 孝光*; 浜田 信行*; 大村 素子*; 坂下 哲哉; 和田 成一*; 柿崎 竹彦; 深本 花菜; 鈴木 芳代; 舟山 知夫; 小林 泰彦
no journal, ,
これまでの臨床研究から、アポトーシス抑制因子の一つであるBcl-2が固形腫瘍において高発現していること、そして、これらの腫瘍は同じ組織型であってもX線や線といった低LET放射線に難治性を示すことが知られている。しかし、Bcl-2の発現量の違いによりがん細胞の放射線致死感受性がどのように変化するかは実験的に証明されていない。そこで、本研究では、Bcl-2の過剰発現ががん細胞の放射線致死感受性に及ぼす効果を明らかにすることを目的とする。コロニー形成法による
Co
線に対する10%生存率は、親株のHaLa細胞では4.8Gyあったが、Bcl-2を過剰発現させたHeLa細胞では6.9Gyであったことから、Bcl-2の過剰発現により
線に抵抗性になることがわかった。今後、放射線治療による寛解性の向上を目的として、低LET放射線に比べ生物効果が高く物理学的特性にも優れていることからがん治療に臨床応用されている高LET放射線に着目し、重粒子線によるHeLa/bcl-2細胞の致死効果を解析する。