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報告書

TEF-T統括制御システムプロトタイプ機の開発

酒井 健二; 大林 寛生; 斎藤 滋; 佐々 敏信; 菅原 隆徳; 渡邊 聡彦*

JAEA-Technology 2019-009, 18 Pages, 2019/07

JAEA-Technology-2019-009.pdf:2.34MB

大強度陽子加速器施設(J-PARC)では、加速器駆動システム(ADS)による 核変換技術に関する基礎的な研究を行う核変換実験施設(TEF)の建設を計画している。その中のADSターゲット試験施設(TEF-T)では、鉛・ビスマス共晶(LBE)ターゲットに陽子ビームを照射することで、ADS独自の構成要素に関するシステム技術を研究開発する。TEF-Tでは、施設全体の安全かつ円滑な運転を実現するために全体制御システム(GCS)を構築する。GCSは、その役割に応じて、ネットワーク系(LAN), 統括制御系(ICS), インターロック系(ILS), タイミング配信系(TDS)など幾つかのサブシステムで構成される。特にICSは施設全体の包括的な運転制御から運転データの収集・蓄積・配信までGCSの中心的な役割を担う。我々はICSのプロトタイプ機を開発して、通信速度・容量、運転操作性・安定動作などの性能を具体的に評価し、ICSの実機設計に反映させることにした。本報ではICSプロトタイプ機の製作と、そのLBEターゲット技術開発装置への応用について報告する。

論文

Flow-accelerated corrosion of type 316L stainless steel caused by turbulent lead-bismuth eutectic flow

Wan, T.; 斎藤 滋

Metals, 8(8), p.627_1 - 627_22, 2018/08

 パーセンタイル:100(Materials Science, Multidisciplinary)

In this study, an LBE loop referred to as JLBL-1 was used to experimentally study the behavior of 316L SS when subjected to FAC for 3000 h under non-isothermal conditions. An orifice tube specimen, consisting of a straight tube that abruptly narrows and widens at each end, was installed in the loop. The specimen temperature was 450 centigrade, and a temperature difference between the hottest and coldest legs of the loop was 100 centigrade. The oxygen concentration in the LBE was less than 10$$^{-8}$$ wt.%. The Reynolds number in the test specimen was approximately 5.3$$times$$10$$^{4}$$. The effects of various hydrodynamic parameters on FAC behavior were studied with the assistance of computational fluid dynamics (CFD) analyses, and then a mass transfer study was performed by integrating a corrosion model into the CFD analyses. The results show that the local turbulence level affects the mass concentration distribution in the near-wall region and therefore the mass transfer coefficient across the solid/liquid interface. The corrosion depth was predicted on the basis of the mass transfer coefficient obtained in the numerical simulation and was compared with that obtained in the loop; the two results agreed well.

論文

Design of LBE spallation target for ADS Target Test Facility (TEF-T) in J-PARC

斎藤 滋; 大林 寛生; Wan, T.; 大久保 成彰; 菅原 隆徳; 遠藤 慎也; 佐々 敏信

Proceedings of 13th International Topical Meeting on Nuclear Applications of Accelerators (AccApp '17) (Internet), p.448 - 457, 2018/05

原子力機構は、加速器駆動システム(ADS: accelerator-driven systems)の設計に必要なデータを得るために、J-PARC計画の中でADSターゲット実験施設(TEF-T: Target Test Facility)の建設を計画している。TEF-Tでは、鉛ビスマス共晶合金(LBE: Lead-Bismuth Eutectic)の核破砕ターゲットに250kWの陽子ビームを入射し、ADSの構造材候補材についてLBE流動下での照射試験を実施する。TEF-Tを実現するために、様々な研究開発が行われている。LBEターゲットとターゲット台車の設計検討は大きく進捗した。ターゲットループの保守と照射試料の照射後試験を行うホットセルについては概念設計を終えた。要素技術開発として、TEF-TターゲットのモックアップループとLBE流動下での材料腐食データを得るためのループが製作され、本格運転へ向け準備中である。LBEループのための酸素濃度制御システムも開発された。遠隔操作によるターゲット交換試験も実施中である。その他、TEF-Tの実現に向けた現在の研究開発状況についても報告する。

論文

Electronic structure and magnetic properties of the half-metallic ferrimagnet Mn$$_{2}$$VAl probed by soft X-ray spectroscopies

永井 浩大*; 藤原 秀紀*; 荒谷 秀和*; 藤岡 修平*; 右衛門佐 寛*; 中谷 泰博*; 木須 孝幸*; 関山 明*; 黒田 文彬*; 藤井 将*; et al.

Physical Review B, 97(3), p.035143_1 - 035143_8, 2018/01

 被引用回数:1 パーセンタイル:59.26(Materials Science, Multidisciplinary)

フェリ磁性体Mn$$_{2}$$VAl単結晶の電子構造を軟X線吸収磁気円二色性(XMCD)、軟X線共鳴非弾性散乱(RIX)によって調べた。全ての構成元素のXMCD信号を観測した。Mn L$$_{2,3}$$ XMCDの結果は、密度汎関数理論を基にしたスペクトル計算により再現でき、Mn 3$$d$$状態の遍歴的性質が明らかとなった。V L$$_{2,3}$$XMCDの結果はイオンモデル計算によって定性的に説明され、V 3$$d$$電子はかなり局在的である。この描像は、V L$$_{3}$$ RIXSで明らかとなった局所的な$$dd$$遷移と矛盾しない。

論文

Design of 250kW LBE spallation target for the Japan Proton Accelerator Research Complex (J-PARC)

佐々 敏信; 斎藤 滋; 大林 寛生; 菅原 隆徳; Wan, T.; 山口 和司*; 吉元 秀光

NEA/CSNI/R(2017)2 (Internet), p.111 - 116, 2017/06

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、加速器駆動システム(ADS)を用いた高レベル放射性廃棄物に起因する環境負荷の低減を提案している。ADSを実現するため、J-PARC計画の一環として、核変換実験施設(TEF)の計画している。JAEAが提案するADSは鉛ビスマス共晶合金(LBE)を未臨界炉心の冷却材及び核破砕ターゲットとして採用している。J-PARCのTEFを活用し、ADSの設計に必要なデータを収集し、LBE利用の技術課題の解決を図る。250kWのLBE核破砕ターゲットをTEFに設置し、材料照射データベースを構築する。TEFを建設するために必須な様々な技術開発として、酸素濃度制御技術、計測機器開発、遠隔操作によるターゲット保守技術とともにターゲットの詳細設計を実施している。250kW核破砕ターゲット最適化の最新の状況を報告する。

論文

Status of LBE corrosion test loop "OLLOCHI" and experiments at JAEA

斎藤 滋; 大久保 成彰; 大林 寛生; 佐々 敏信

NEA/CSNI/R(2017)2 (Internet), p.195 - 200, 2017/06

原子力機構において研究が進められている加速器駆動システム(ADS: Accelerator Driven System)では、核破砕ターゲット及び炉心冷却材として鉛ビスマス共晶合金(LBE; Lead-Bismuth Eutectic)が採用される。将来のADSやJ-PARCに建設が計画されている、ADSターゲット実験施設(TEF-T)の実現には、LBEに関する多くの解決すべき課題がある。特に、T91(改良9Cr-1Mo鋼)やSUS316Lなどの鋼材に関して、400-550$$^{circ}$$Cの温度範囲で酸素濃度制御下かつLBE流動下の腐食データは不可欠である。原子力機構では高温での腐食データを得るために、"OLLOCHI (Oxygen-controlled LBE LOop Corrosion tests in HIgh-temperature)"と名付けられた新しい腐食試験ループを設計・製作した。高温部配管はT91製で、加熱器や膨張タンク容器は2.25Cr-1Mo鋼製である。これら高温部の最高温度は550$$^{circ}$$Cである。低温部は配管、機器類ともにSUS316L製で、これら低温部の最高温度は450$$^{circ}$$Cである。2016年春までにOLLOCHIは、加熱器や試験片交換ボックスなどの改造と、LBE無しでの調整運転を終えた。酸素センサーと酸素濃度制御システムは間もなく導入され、その後LBE有りでの調整運転と酸素濃度制御試験を開始する予定である。さらに来春までに分岐した試験部それぞれにも流量計が付加される予定である。これらの試験や改造と平行して、試験片ホルダー内の流れの分布を明らかにするため、試験部の流動解析を行う予定である。

論文

J-PARC transmutation experimental facility programme

佐々 敏信; 武井 早憲; 斎藤 滋; 大林 寛生; 西原 健司; 菅原 隆徳; 岩元 大樹; 山口 和司; 辻本 和文; 大井川 宏之

NEA/CSNI/R(2015)2 (Internet), p.85 - 91, 2015/06

福島第一原子力発電所の事故以降、核変換技術が放射性廃棄物処理に有効な技術として注目されている。日本原子力研究開発機構(JAEA)では、マイナーアクチノイド(MA)の核変換を行うための、鉛ビスマス(Pb-Bi)を核破砕ターゲット及び冷却材に使用する加速器駆動システム(ADS)を提案している。ADSの設計に不可欠なデータを取得するため、原子力機構ではJ-PARC計画の中で核変換実験施設(TEF)の建設を検討している。TEFは400MeV-250kWのPb-Bi核破砕ターゲットを持つADSターゲット試験施設(TEF-T)及び低出力の陽子ビームでMA燃料を装荷した炉心を駆動する核変換物理実験施設(TEF-P)から構成する。TEF-Tでの主な研究項目として、ADS構造材候補の照射試験、Pb-Biターゲットの運転試験及び陽子ビーム窓の寿命を決めるための実験を実施する。ターゲットが定格出力で運転される際には、ターゲット周辺に高速中性子場が形成されるため、これを多目的に利用することも検討している。基礎物理研究や核データ測定などの実験が提案されており、実験ホールの配置概念の検討を進めている。報告では、ADS核変換を実現するためのロードマップとともに、TEF建設のための設計研究活動を報告する。

論文

Probing strongly correlated 4$$f$$-orbital symmetry of the ground state in Yb compounds by linear dichroism in core-level photoemission

森 健雄*; 北山 賢*; 金井 惟奈*; 内免 翔*; 藤原 秀紀*; 東谷 篤志*; 玉作 賢治*; 田中 新*; 寺嶋 健成*; 今田 真*; et al.

Journal of the Physical Society of Japan, 83(12), p.123702_1 - 123702_5, 2014/12

 被引用回数:11 パーセンタイル:28.13(Physics, Multidisciplinary)

正方晶YbRh$$_{2}$$Si$$_{2}$$及びYbCu$$_{2}$$Si$$_{2}$$に対して、角度分解内殻光電子分光における直線偏光線二色性を発見し、それにより、基底状態の強相関4$$f$$軌道の対称性を明らかにした。理論計算から、この線二色性は結晶場効果に由来する異方的な電荷分布を反映することが示された。結晶場の第一励起エネルギーよりもはるかに低温での測定により、両物質の基底状態の4$$f$$波動関数の決定に成功した。更に、温度依存性測定により、励起状態の対称性についても調べた。

論文

Bend-fatigue properties of JPCA and Alloy800H specimens irradiated in a spallation environment

斎藤 滋; 菊地 賢司*; 濱口 大; 遠藤 慎也; 桜庭 直敏; 宮井 博充; 川合 將義*; Dai, Y.*

Journal of Nuclear Materials, 450(1-3), p.27 - 31, 2014/07

 パーセンタイル:100(Materials Science, Multidisciplinary)

核破砕中性子源やADSのビーム入射窓及び構造材料など核破砕条件における材料の照射損傷特性を明らかにするために、スイスのPSIを中心として核破砕ターゲット材料照射プログラム(STIP: SINQ Target Irradiation Program)が進行中である。本プログラムではPSIの加速器で各種材料を580MeVの陽子で照射し、参加国がPIEを分担して行っている。原子力機構も照射試料の一部を輸送し、照射後試験を行った。本発表ではSTIP-II試料の中からJPCAとAlloy800Hの曲げ疲労試験の結果を報告する。これらの試料の照射条件は照射温度が120-350$$^{circ}$$C、はじき出し損傷量が7.0-19.3dpaであった。JPCA鋼の曲げ疲労試験の結果、STIP-I試料と同様、照射前後で疲労寿命はほとんど変化はなく、疲労寿命の照射量依存性も見られなかった。試験後の破面観察の結果、粒界破面は見られなかった。この約19dpa照射されたJPCA鋼には約1600appmのHeが生成し、それらの多くが材料中に残留していると推定される。TEM観察でも、Heバブルが組織中にほぼ一様に分布しており、特に粒界析出が見られなかったことと一致する結果と考えられる。一方、Alloy800Hの破面には一部に粒界破面が観察された。

論文

HCM12A Cr-rich oxide layer investigation using 3D atom probe

菊地 賢司*; 岡田 徳行*; 加藤 幹雄*; 内田 博*; 斎藤 滋

Journal of Nuclear Materials, 450(1-3), p.237 - 243, 2014/07

 被引用回数:3 パーセンタイル:61.51(Materials Science, Multidisciplinary)

加速器駆動未臨界炉(ADS)のビーム入射窓及び構造材料候補材の一つである12Crのフェライト・マルテンサイト鋼(HCM12A)について、3次元アトムプローブ(3DAP)を用いて鉛ビスマス中でHCM12A鋼の表面に形成した酸化物層の構造を調べた。試験材は、三井造船の材料腐食ループにおいて450-500$$^{circ}$$Cの鉛ビスマス中で5,500時間使用された試験片ホルダー部から採取したものである。酸化物層は外側にマグネタイト(Fe$$_{3}$$O$$_{4}$$)層、内側に鉄-クロムのスピネル層((FeCr)$$_{3}$$O$$_{4}$$)の2重構造で、全体の厚さは約18$$mu$$mであった。3DAP用試料はこれらの層の境界から500-700nm離れたスピネル層から製作した。3DAP分析の結果、クロムと酸素濃度が高く、鉄濃度が低い約10nm程度の領域が観測された。クロム高濃度領域の周囲ではシリコンも高濃度であった。スピネル層中の鉛及びビスマス濃度は検出限界以下であった。

論文

Direct $$kappa$$-space mapping of the electronic structure in an oxide-oxide interface

Berner, G.*; Sing, M.*; 藤原 秀紀*; 保井 晃*; 斎藤 祐児; 山崎 篤志*; 西谷 嘉人*; 関山 明*; Pavlenko, N.*; Kopp, T.*; et al.

Physical Review Letters, 110(24), p.247601_1 - 247601_5, 2013/06

 被引用回数:89 パーセンタイル:2.63(Physics, Multidisciplinary)

LaAlO$$_{3}$$とSrTiO$$_{3}$$はともに絶縁体であるが、その界面には2次元的に遍歴する電子が生成される。この界面で見いだされている超伝導と共存する強磁性は、電子の局在性に由来すると考えられている。そして、これまでの実験から、Tiの3$$d$$電子がこの界面に閉じ込められていることが明らかとなっている。今回、軟X線角度分解光電子分光により、運動量空間での界面電子状態を調べ、バンド構造及びフェルミ面の決定に成功し、局在性及び遍歴性の両面を持つことを明らかにした。この界面では動き回るTiの3$$d$$電子に加えて、界面付近のSrTiO$$_{3}$$の酸素欠損につかまって局在したTiの3$$d$$電子も存在するために、後者がこれまでに界面で見つかっている超伝導や強磁性に寄与するという結論が得られた。

論文

Progress review of research and development on accelerator driven system in JAEA

大井川 宏之; 辻本 和文; 佐々 敏信; 倉田 有司; 武井 早憲; 斎藤 滋; 西原 健司; 大林 寛生; 菅原 隆徳; 岩元 大樹

KURRI-KR(CD)-40 (CD-ROM), p.16 - 30, 2013/00

原子力機構では、高レベル放射性廃棄物に含まれるマイナーアクチノイド(MA)の核変換を目的とした加速器駆動核変換システム(ADS)の研究開発を進めている。熱出力800MWのADSが1基で、電気出力1GWの軽水炉10基で生じるMAを核変換できる。原子力機構では、超伝導陽子加速器、核破砕ターゲットとビーム窓、未臨界炉心の核設計と安全性評価等に関するさまざまな研究開発を進めている。さらに、核変換技術に関する基礎的な実験を行うため、J-PARCの第2期計画として核変換実験施設の建設を検討している。

論文

Corrosion-erosion test of SS316L grain boundary engineering materials (GBEM) in lead bismuth flowing loop

斎藤 滋; 菊地 賢司*; 濱口 大; 手塚 正雄*; 宮城 雅徳*; 粉川 博之*; 渡辺 精一*

Journal of Nuclear Materials, 431(1-3), p.91 - 96, 2012/12

 被引用回数:8 パーセンタイル:32.85(Materials Science, Multidisciplinary)

鉛ビスマス材料試験ループ1号(JLBL-1)の第5期3600時間試験運転において、配管内部に取り付けられた試験片の腐食評価を行った。ループの運転温度は高温部が450$$^{circ}$$C、低温部が350$$^{circ}$$Cで温度差は100$$^{circ}$$Cである。試験片取り付け部の流量は約1L/min.である。試験片取り付け部は内径9mmのSS316L配管に溝を切り、10mm$$times$$10mm$$times$$1mmtの試験片を4枚取り付けた。試験片の材質はSS316L母材及びSS316L粒界制御(GBE)材である。運転終了後の試験片の光学顕微鏡による断面観察の結果、大きな減肉が観察された。SS316L母材,GBE材の減肉量は、それぞれ片面約390$$mu$$m及び190-270$$mu$$mであり、いずれも一様に減肉しつつも、局所的には平坦でなかった。SEM観察,EDX分析の結果、鉛ビスマスによる結晶粒界浸食は、母材,GBE材ともに断面のSEM観察上は数$$mu$$m程度であったが、鉛ビスマスの拡散領域深さは母材が20$$mu$$m程度、GBE材が10$$mu$$m以下で明らかな違いが見られた。これは、粒内への拡散深さは同じでも、GBE材では粒界の連続性を遮断する効果により粒界拡散を抑えた効果によると考えられる。いずれの試料でも酸化物層は観察されなかった。

論文

Tensile mechanical properties of a stainless steel irradiated up to 19 dpa in the Swiss spallation neutron source

斎藤 滋; 菊地 賢司*; 濱口 大; 宇佐美 浩二; 遠藤 慎也; 小野 勝人; 松井 寛樹; 川合 將義*; Dai, Y.*

Journal of Nuclear Materials, 431(1-3), p.44 - 51, 2012/12

 被引用回数:2 パーセンタイル:74.11(Materials Science, Multidisciplinary)

核破砕中性子源やADSのビーム入射窓及び構造材料は、高エネルギー陽子及び核破砕中性子の照射により、損傷を受ける。核破砕条件における材料の照射損傷特性を明らかにするために、スイスのPSIを中心として核破砕ターゲット材料照射プログラム(STIP: SINQ Target Irradiation Program)が進行中である。本プログラムは1996年に始まり、PSIの加速器で各種材料を580MeVの陽子で照射し、参加国がPIEを分担して行っている。原子力機構も照射試料の一部を輸送し、照射後試験を行った。本論文ではSTIP-II試料の中からJPCA鋼の引張り試験の結果を報告する。引張り試験の結果、JPCA鋼は照射後大きく硬化するが、耐力の増加は11dpa付近で飽和した。伸びも大きく低下したが、全伸びは19.5dpa照射後も約15%保っていた。試験後の破面観察の結果、粒界破面や割れなどは見られなかった。このJPCA鋼には約1600appmのHeが生成していると見積もられ、表面からの反跳分を除いた多くが材料中に残留していると推定される。TEM観察でも、Heバブルが組織中にほぼ一様に分布しており、特に粒界析出が見られなかったことと一致する結果と考えられる。

論文

HCM12A oxide layer investigation using scanning probe microscope

菊地 賢司*; Rivai, A. K.*; 斎藤 滋; Bolind, A. M.*; 小暮 亮雅*

Journal of Nuclear Materials, 431(1-3), p.120 - 124, 2012/12

 被引用回数:6 パーセンタイル:42.4(Materials Science, Multidisciplinary)

450$$^{circ}$$C-500$$^{circ}$$C, 5,500時間の鉛ビスマス中で形成されたフェライト・マルテンサイト鋼HCM12Aの酸化物層を走査プローブ顕微鏡(SPM)により観察した。EDX観察の後、走査プローブ顕微鏡を用いて、酸化物層と母材部を表面電位モードと位相遅れ測定により解析した。従来、酸化物層の形成機構は、高温の鉛ビスマスに対して耐食性を持つことが期待される酸化物の安定性を理解するため、元の母材表面位置、酸素の移動経路及び鉄の拡散といった観点から研究されてきた。本研究における新しい発見は、微細構造観察モードでは見えない(FeCr)$$_{3}$$O$$_{4}$$とFe$$_{3}$$O$$_{4}$$の境界が表面電位モードでは検出できたことである。スピネル層は低表面電位として母材領域と区別できるが、スピネル層とマグネタイト層の境界付近では、表面電位は境界線に相当する細い経路を除き、連続であるように見える。また、微細構造観察モードでは見えなかった、スピネル層とマグネタイト層を貫通している帯状構造が見つかった。

論文

Effect of cold working on the corrosion resistance of JPCA stainless steel in flowing PB-Bi at 450$$^{circ}$$C

Rivai, A. K.*; 斎藤 滋; 手塚 正雄*; 加藤 千明; 菊地 賢司*

Journal of Nuclear Materials, 431(1-3), p.97 - 104, 2012/12

 被引用回数:9 パーセンタイル:29.05(Materials Science, Multidisciplinary)

鉛ビスマスを核破砕ターゲット及び冷却材として用いる加速器駆動核変換システム(ADS)の開発において、高性能な陽子ビーム窓材料の開発は重要な課題の一つである。本研究では、オーステナイトステンレス鋼(JPCA)に20%の冷間加工を加え、腐食挙動の観点から研究を行った。20%冷間加工JPCAの腐食試験は、材料試験ループ1号(JLBL-1)で行った。最高温度,温度差及び試験時間はそれぞれ450$$^{circ}$$C, 100$$^{circ}$$C, 約1L/min.及び1,000時間である。比較のため、冷間加工されていないJPCAの腐食試験も同じ条件で行った。結果は、JPCAの冷間加工の有無により腐食挙動に違いがあることを示した。冷間加工なしのJPCAでは、母材の構成元素が鉛ビスマス中に溶解することで形成されるフェライト層を通って鉛ビスマスが母材へ進入した。20%冷間加工JPCAでは、腐食は部分的で、局所的なピッティング腐食が形成された。腐食挙動の違いは、冷間加工が$$gamma$$-オーステナイト相から$$alpha$$'-マルテンサイト相への相変態を誘発するためであり、これがJPCAの流動鉛ビスマス中での耐食性に影響を与えることがわかった。

論文

Present status for research and development on accelerator driven system in JAEA

辻本 和文; 大井川 宏之; 倉田 有司; 西原 健司; 菅原 隆徳; 武井 早憲; 斎藤 滋; 大林 寛生; 岩元 大樹

Proceedings of International Conference on Toward and Over the Fukushima Daiichi Accident (GLOBAL 2011) (CD-ROM), 8 Pages, 2011/12

原子力エネルギーを持続的に利用していくための最も重要な課題の一つは高レベル放射性廃棄物(HLW)の取り扱いである。分離変換技術は、HLWの潜在的有害度やHLWの地層処分に関する管理負担を低減有効であると考えられ、原子力機構ではHLW中の長寿命核種の核変換システムの一つとして加速器駆動核変換システム(ADS)の研究開発を行ってきている。原子力機構が提案しているADSは、熱出力800MWの液体鉛ビスマス冷却システムである。ADSの実現には解決すべき課題が幾つかあるが、大きく以下の3つの分野に分けることができる;(1)ADS用超伝導加速器の開発,(2)液体鉛ビスマス関連技術開発,(3)未臨界炉の炉心設計。これらの技術開発課題に関して、原子力機構ではさまざまな研究開発を実施しており、本発表では現在の研究開発の状況及び将来計画について報告する。

論文

Role of ADS in the back-end of the fuel cycle strategies and associated design activities; The Case of Japan

大井川 宏之; 辻本 和文; 西原 健司; 菅原 隆徳; 倉田 有司; 武井 早憲; 斎藤 滋; 佐々 敏信; 大林 寛生

Journal of Nuclear Materials, 415(3), p.229 - 236, 2011/08

 被引用回数:28 パーセンタイル:5.33(Materials Science, Multidisciplinary)

分離変換技術は高レベル放射性廃棄物(HLW)の放射性毒性の総量を大幅に削減するとともに、処分場の可処分容量を増加させる可能性を持つ。加速器駆動核変換システム(ADS)は、階層型核燃料サイクルにおいてHLW中のマイナーアクチノイド(MA)を効果的に核変換するための強力なツールであり、軽水炉から高速炉への移行期に柔軟に対応できるとともに、高速炉サイクルと共存することでサイクル全体の信頼性や安全性を補強することができる。原子力機構では鉛ビスマス冷却ADSの設計を進めており、特に未臨界炉と核破砕ターゲットの設計に注力している。日本では、原子力委員会が2008年から2009年にかけてチェックアンドレビューを行い、分離変換技術の導入効果,研究開発の現状及び今後の進め方が議論された。

論文

Evaluation of tritium trap effect produced by high energy proton irradiation in SS316

中村 博文; 小林 和容; 横山 須美*; 斎藤 滋; 山西 敏彦; 菊地 賢司*

Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.9, p.326 - 331, 2010/08

高エネルギー陽子照射されたステンレス316鋼(SS316)の等速昇温によるトリチウム放出挙動を測定し、照射に起因する材料中のトリチウムトラップサイトの評価を試みた。資料には、STIP-I(スイス,SI,SINQターゲット計画)において580MeVの陽子及び核破砕中性子で照射されたSS316を用い、窒素-水素混合ガス気流中で10K/minで1273Kまで昇温した。昇温に伴って、試料から放出されたトリチウムは、電離箱で連続監視するとともに、触媒で酸化させた後、バブラーで捕集し、定量した。試験の結果、トリチウム放出挙動は、照射時温度に依存せず、また、試料内に残存したトリチウムは、照射中に核破砕反応で生成した量の1/10以下であることが明らかになった。以上の結果をもとに、高エネルギー陽子及び核破砕中性子照射中及び等速昇温中のSS316中のトリチウム輸送解析を行った結果、試料中に残存しているトリチウムは、そのほとんどが照射欠陥に起因するトラップサイトに補足されたものであり、そのトラップエネルギーは、1.4eV以上であると評価された。

報告書

鉛ビスマス冷却加速器駆動システムを用いた核変換技術の成立性検討

辻本 和文; 西原 健司; 武井 早憲; 菅原 隆徳; 倉田 有司; 斎藤 滋; 大林 寛生; 佐々 敏信; 菊地 賢司*; 手塚 正雄; et al.

JAEA-Research 2010-012, 59 Pages, 2010/07

JAEA-Research-2010-012.pdf:2.0MB

加速器駆動システム(ADS)において核破砕ターゲット及び冷却材として用いられる鉛ビスマス共晶合金(LBE)に関する研究やビーム窓候補材料に対する照射試験等により新たに得られたデータや知見に基づき、ADS概念の再構築を行い、その成立性を検討した。炉心の核・熱設計では、燃料被覆管候補材である改良9Cr-1Mo鋼のLBE中での最高使用温度の目安値を550$$^{circ}$$Cと設定し、熱出力800MWを維持するのに必要なビーム電流を可能な限り低減する概念を構築した。この炉心概念について、1サイクル600日の運転期間中の燃料被覆管及びビーム窓の健全性評価を行った。その結果、温度及び腐食並びに未照射条件での構造強度について、高い成立性を有することを確認した。材料特性に対する照射影響に関しては、既存データからの類推等により実機ADSの使用条件下においては影響がそれほど大きくはないことを示したが、今後の実験データのさらなる拡充が必要であり、その結果によっては運転サイクルの短縮等の対処が必要となる。ADSの安全性に関する検討では、レベル1PSA(確率論的安全評価)及び基準外事象の過渡解析を行い、炉心損傷及び損傷に伴う再臨界の可能性が非常に低いことを明らかにした。

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