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丹羽 正和; 水落 幸広*; 棚瀬 充史*
Geofluids, 15(3), p.387 - 409, 2015/08
被引用回数:11 パーセンタイル:50.16(Geochemistry & Geophysics)断層破砕帯における水-岩石反応に伴う化学組成変化について明らかにするため、本研究では、中部日本の阿寺断層の破砕帯露頭を対象に、断層岩の化学組成分析を行った。粘土鉱物や炭酸塩鉱物の安定同位体組成分析からは、破砕帯の断層ガウジが地表付近で形成されたことを示し、変形構造解析に基づく破砕帯の発達過程と整合的である。全岩化学組成分析の結果、本研究では、粘土鉱物の形成に伴うSi, Na, Kや軽希土類元素の減少、断層活動によって混入してきた玄武岩岩片の変質に伴う炭酸塩鉱物の沈殿、その炭酸塩鉱物との錯体形成に伴う重希土類元素の濃集を確認することができた。
丹羽 正和; 水落 幸広*; 棚瀬 充史*
Island Arc, 18(4), p.577 - 598, 2009/12
被引用回数:13 パーセンタイル:10.10(Geosciences, Multidisciplinary)地下数km以浅における断層破砕帯の発達過程を明らかにするため、岐阜県の阿寺断層を事例対象として、破砕帯の詳細な記載を行った。調査地域では、花崗岩と溶結凝灰岩が阿寺断層を介して接し、断層粘土,断層角礫などからなる破砕帯が幅20m程度で発達する。脆性破壊で特徴付けられる岩石の変形構造などから、この破砕帯がおもに地下数100mから数kmで形成されたことがわかる。調査対象の破砕帯のうち、断層粘土が卓越する幅1m程度の区間にのみ、花崗岩と溶結凝灰岩の両方の破砕岩片が混在し、調査地域に近接して分布する約160万年前の火山岩(上野玄武岩)の破片が伴われる。またこの区間では、水-岩石反応に伴い玄武岩岩片の表面にできた炭酸塩の充填物が破片化して散在するなど、複数回の地震に伴う破壊の繰り返しを示す構造が見られる。以上のことから、幅20m程度の破砕帯の中で、近年の断層活動に伴う変位をまかなっていたのは、幅1m程度の区間に集中していたことが示される。
丹羽 正和; 水落 幸広*; 棚瀬 充史*
no journal, ,
断層が分岐して複数の断層が並行する地域での破砕帯の発達過程を明らかにするため、阿寺断層系の下呂断層と湯ヶ峰断層が並行する岐阜県下呂市乗政とその周辺に分布する破砕帯の特徴を記載した。本地域では、下呂断層や湯ヶ峰断層とほぼ平行なNW-SE走向と、それと大きく斜交するNE-SW走向において、断層角礫と断層ガウジからなる狭長なゾーン(破砕帯)がほぼ鉛直の傾斜で発達する。NE-SW走向の破砕帯は、下呂断層と湯ヶ峰断層の間に分布がほぼ限られることから、両断層の連動と関係があると考えられる。ただし、NW-SE走向の破砕帯がほとんどの場合NE-SW走向の破砕帯を切断し、NW-SE走向の破砕帯の方がスメクタイトや鉄水酸化物に富むことから、最近の活動は、NW-SE走向の断層活動のみである可能性がある。本研究においても、断層岩に含まれる鉱物の構造や化学組成等の特徴が断層の活動性を評価するための指標となり得ることが明らかとなった。
丹羽 正和; 水落 幸広*; 棚瀬 充史*
no journal, ,
断層破砕帯の発達は、将来の活断層の分布や、断層活動に伴う周辺岩盤への破断・変形の力学的影響範囲と密接に関係することから、深地層の長期安定性を考慮するうえで非常に重要である。本研究では、岐阜県東部の中津川市に分布する阿寺断層の破砕帯露頭を詳細に調査することにより、第四紀以降の阿寺断層破砕帯の発達過程について考察を行った。調査地域では、母岩の組織が著しく破砕されている破砕帯の幅は、約2025mである。このうち、断層粘土に富む幅約1.5mの区間(粘土帯)は、約1.6Maの放射年代を示す火山岩の岩片を含み、第四紀以降に発達したと言える。調査地域近傍の段丘堆積物の調査から求められた阿寺断層の平均変位速度と、断層粘土のXRD分析の結果により、粘土帯が地下数100m1km程度の深さで形成されたことがわかる。以上のように、現在露出している断層破砕帯を詳細に調査することにより、地下数100m1kmにおける断層破砕帯の発達過程を推察することが可能であると考えられる。
丹羽 正和; 黒澤 英樹; 水落 幸広*; 棚瀬 充史*
no journal, ,
断層破砕帯の発達は岩盤の透水構造を大きく変化させる場合が多いので、しばしば地下での物質移動において大きな役割を果たす地下水流動に影響を及ぼす。したがって、放射性廃棄物の地層処分における安全評価などでは、断層活動と物質移動との関係を明らかにすることが非常に重要である。本研究では、詳細な露頭記載のある岐阜県の阿寺断層の破砕帯を対象に、断層岩の化学分析を行い、特に希土類元素や、ウラン,トリウムに着目した破砕帯における物質移動について考察した。その結果、粘土鉱物を形成するような破砕に伴う水-岩石反応に加え、破砕帯に沿って苦鉄質岩の角礫が混入しているという母岩の不均質性が、希土類元素の表面錯体反応やウランの溶解-沈殿というイベントを通じて、断層活動に伴う物質移動に大きく影響していることがわかった。
丹羽 正和; 野原 壯; 水落 幸広*; 棚瀬 充史*; 小林 浩久*
no journal, ,
断層の活動履歴を明らかにするうえで、断層破砕帯中の鉱物分布の実体を把握しておく必要がある。本研究では、破砕帯中の鉱物分布の調査を行うため、岐阜県中津川市川上に分布する阿寺断層露頭において、破砕帯の詳細な記載を行った。調査露頭では、花崗岩(苗木-上松花崗岩)と濃飛流紋岩に属する溶結凝灰岩が接する破砕帯が幅数10mにわたって連続的に分布する。調査の結果、溶結凝灰岩起源の断層岩は、花崗岩起源の断層岩に比べ、断層粘土の割合が圧倒的に多く、原岩組織が消失している幅が広いなど、原岩の違いによって断層粘土及び割れ目の発達の程度が大きく異なることが明らかとなった。したがって、破砕帯中の鉱物分布は、原岩の違いと、断層粘土及び割れ目の発達の程度によって大きく変化する可能性がある。
丹羽 正和; 棚瀬 充史*; 水落 幸広*; 黒澤 英樹
no journal, ,
断層運動は断層自体の強度のみならず地殻応力場を含む広域的なテクトニクスによって支配される。そのため、地層処分のサイト選びに際して考慮すべき事象である、将来の活断層の伸展や破砕帯の拡大,地質断層の再活動の可能性を検討するためには、過去から現在までの地殻応力場がどのように変化してきたかを把握することが重要となる。火成岩の岩脈の伸長方向は、岩脈が貫入した時代の水平最大圧縮応力場を反映していることから、岩脈の走向・傾斜と貫入年代を調べることによって過去から現在までの地殻応力場の変遷を明らかにすることができる。本研究では岐阜県東部を事例として、岩脈の分布,産状,化学組成などを明らかにするとともに、K-Ar及びAr-Ar年代測定を行い、新生代の地殻応力場の変遷を明らかにした。また、地殻応力場と断層運動との関係についても併せて考察した。