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門脇 正尚; 永井 晴康; 吉田 敏哉*; 寺田 宏明; 都築 克紀; 澤 宏樹*
Journal of Nuclear Science and Technology, 60(10), p.1194 - 1207, 2023/10
被引用回数:2 パーセンタイル:72.91(Nuclear Science & Technology)大気拡散シミュレーションにより原子力事故の緊急対応を支援する場合、予測結果と合わせて結果の不確実性を提供する必要がある。本研究では、予測結果のプルームの拡散方向の不確実性をベイズ機械学習に基づいて推定する手法を開発する。機械学習用のトレーニングデータおよびテストデータは、原子力施設からのセシウム137の仮想放出を考慮したシミュレーションを2015年から2020年の期間で毎日実行することで作成された。不確実性推定に対する本手法の有効性を調べたところ、36時間後の予測においても不確実性の予測可能性は50%を超えたことから、本手法の有効性が確認された。また、不確実性が大きいと判定されたプルームの拡散方向も、本手法によって極めて良好に予測された(予測期間において不確実性を妥当に判定しなかった割合は0.9%-7.9%)。一方で、本手法により不確実性が過大に予測された割合は最大で31.2%となったが、これは許容できると考えられる。これらの結果は、本研究で開発されたベイズ機械学習による不確実性推定の手法が、大気拡散シミュレーションによって予測されたプルームの方向の不確実性を効果的に推定していることを示している。
目時 直人; 柴田 薫; 松浦 直人*; 北澤 英明*; 鈴木 博之*; 山内 宏樹; 萩原 雅人; Frontzek, M. D.*; 松田 雅昌*
Journal of the Physical Society of Japan, 91(5), p.054710_1 - 054710_6, 2022/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Multidisciplinary)NdPdAlにおけるNdの超微細相互作用分裂を高分解能の中性子非弾性散乱によって研究した。Nd核の核スピン(=7/2)と、の軌道が主成分の基底状態を示す4電子との間の超微細相互作用によって、磁気秩序相において生じた超微細相互作用分裂に起因する中性子非弾性散乱ピークを、 = 3eVのエネルギーに観察した。低温では、Nd核スピンの低エネルギー状態の占拠確率が増加することによりNd核スピンが偏極し、反強磁性散乱ピーク強度に寄与するが、その際、中性子の非スピン反転過程の寄与が最も大きい。この現象の応用として反強磁性散乱ピーク強度の温度変化から、NdPdGeのNd磁気モーメント及び超微細相互作用分裂の大きさを見積もることに成功した。
吉田 敏哉; 永井 晴康; 寺田 宏明; 都築 克紀; 澤 宏樹*
Journal of Nuclear Science and Technology, 59(1), p.55 - 66, 2022/01
被引用回数:3 パーセンタイル:45.99(Nuclear Science & Technology)本研究では、気象予報の不確実性が及ぼす大気拡散予報計算への影響を定量的に評価した。そのために、大気拡散モデルを用いて原子力施設からの放出を想定した過去1年間(2018年)の拡散計算を行った。気象入力条件に解析値を用いた計算と予報値を用いた計算を行い、解析値計算に対する予報値計算の誤差を不確実性とした。不確実性の定量的な大きさは、両者の地表濃度分布の代表的な拡散方向のずれを角度で表すことで算出した。気象庁が配信している気象入力値を使用した場合、その角度は平均的には10/日で増加した。一方、前後の時刻の不確実性とは関係なく、突発的に4、5倍に増加することも分かった。また、角度の時系列は日変化や季節変化を有していたため、拡散方向の不確実性は気象入力値だけでなく気象条件や地理的条件の影響を受けることが示唆された。さらに、不確実性の主な要因は、解析値と予報値との100kmスケール以上もしくは100kmスケール以下の風向のずれであることを示した。
竹澤 宏樹*; Tuya, D.; 小原 徹*
Nuclear Science and Engineering, 195(11), p.1236 - 1246, 2021/11
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)本研究では、モンテカルロ法による中性子輸送計算を用いて、遅発中性子による核分裂反応を多領域積分型動特性コード(MIK)に導入するための新しい方法を紹介する。第一に、遅延中性子を含む積分型動特性モデル(IKM)を前進オイラー離散化法によって解くことが時間ステップ数の観点から可能であることを確認した。これは、離散化したIKMにおいて遅発中性子の放出の遅れを反映させるために放射性崩壊の法則を用いて行うことが可能である。第二に、即発中性子と遅発中性子による二次核分裂の累積分布関数を計算するために、モンテカルロ法に基づく新しい手法を導入した。これらの関数は離散化IKMに必要である。Godiva炉を用いた予備検証の結果、新しいモンテカルロ法に基づいた方法の適用性を確認した。
目時 直人; Aczel, A. A.*; 青木 大*; Chi, S.*; Fernandez-Baca, J. A.*; Griveau, J.-C.*; 萩原 雅人*; Hong, T.*; 芳賀 芳範; 池内 和彦*; et al.
JPS Conference Proceedings (Internet), 30, p.011123_1 - 011123_6, 2020/03
希土類(4)やアクチノイド(5)は、電子数の増加とともに複雑さを増し、様々な相互作用が競合して多様な状態が出現する。多体電子系の結晶場分裂はバンド幅より狭いため、(1)高分解能の実験が必要で、(2)遍歴的なCeやU化合物は本質的に明瞭なスペクトルを示さない。また、(3)国際規制物質NpやPuなど超アクチノイド元素の取り扱いは厳しく規制されている。そこで比較的局在性の強い物質や希土類関連物質の、中性子散乱実験による磁気励起の研究が有益である。本稿では重い電子系化合物NpPdAlと関連物質の電子状態について述べる。
目時 直人; 山内 宏樹; 鈴木 博之*; 北澤 英明*; 萩原 雅人*; 益田 隆嗣*; Aczel, A. A.*; Chi, S.*; Hong, T.*; 松田 雅昌*; et al.
Journal of the Physical Society of Japan, 87(9), p.094704_1 - 094704_8, 2018/09
被引用回数:6 パーセンタイル:46.54(Physics, Multidisciplinary)中性子非弾性散乱実験によりPrPdAlの電子状態を明らかにした。この物質のユニークな結晶構造に起因する2次元的な結晶場ポテンシャルにより、大きなを伴う平べったい軌道が安定化し、イジング型の磁気異方性が生じることがわかった。この2次元的な結晶場ポテンシャルは同じ結晶構造を持つ希土類化合物RPdAlに共通に存在し、重い電子系超伝導体NpPdAlにおけるXY型磁気異方性への変化を系統的に説明することができる。それは、電子の局所的な性質がこの物質系の物性発現機構において非常に重要であり、NpPdAlにおける重い電子系超伝導にも関与している。
目時 直人; 山内 宏樹; 鈴木 博之*; 北澤 英明*; 蒲沢 和也*; 池内 和彦*; 梶本 亮一; 中村 充孝; 稲村 泰弘
Journal of the Physical Society of Japan, 87(8), p.084708_1 - 084708_7, 2018/08
被引用回数:6 パーセンタイル:46.54(Physics, Multidisciplinary)電子化合物NdPdAlの中性子散乱による研究を行った。0K, 35.4K, 88.3K, 101.5K, and 198.8Kの結晶場レベルを励起スペクトルから明らかにした。基底状態は主としての軌道によって構成され、これが大きな負のKと一軸異方性を生じる。結晶場から計算された磁気モーメント, 帯磁率, 磁化曲線, 比熱は実験をよく説明する。CePdAlやPrPdAlと共通した電荷分布の存在は同じ構造を持つアクチノイド化合物においても局在的な性質が重要で、UPdAlの局在5電子状態やNpPdAlの重い電子系超伝導にその価数の不安定性が重要な役割をすることを示している。
山内 宏樹; 目時 直人; 綿貫 竜太*; 鈴木 和也*; 深澤 裕; Chi, S.*; Fernandez-Baca, J. A.*
Journal of the Physical Society of Japan, 86(4), p.044705_1 - 044705_9, 2017/04
被引用回数:13 パーセンタイル:64.28(Physics, Multidisciplinary)K、K、and Kで相転移を示すNdBの中間秩序相の磁気構造、および、秩序変数を決定するために、中性子回折実験を行った。II相()で観測された回折パターンは、正方晶面内の静的磁気モーメントによる秩序構造を仮定することでよく説明できた。また、II相の磁気構造が二つのノンコリニアな反強磁性構造("all-in/all-out"型と"vortex"型)の線形結合で一意的に説明できることを見出した。この特異な磁気構造が実現する主要素として、我々は、「(1)磁気相互作用の優位性を抑制する幾何学的フラストレーションの効果、(2)ノンコリニアな磁気構造と四極子秩序を安定化させる四極子相互作用の重要性」の二つを提唱した。
目時 直人; 山内 宏樹; 北澤 英明*; 鈴木 博之*; 萩原 雅人*; Frontzek, M. D.*; 松田 雅昌*; Fernandez-Baca, J. A.*
Journal of the Physical Society of Japan, 86(3), p.034710_1 - 034710_5, 2017/03
被引用回数:9 パーセンタイル:56.98(Physics, Multidisciplinary)中性子回折実験によりNdPdAlの磁気構造を研究した。=(1/2 0 0)の変調ベクトルで説明できる顕著な反強磁性ピークを磁気転移温度=1.2K以下で観察した。c軸に平行なNdの磁気モーメントは0.3Kで2.9(1)の大きさであり、a面内で強磁性的に整列した層がa軸方向に++--と4枚周期で配列する。各Nd層の面間隔はa/2である。この構造は=(0.23 0.23 0)であるCePdAlによく似ていて、面内成分のみの変調構造は、これらの物質の2次元的なフェルミ面によって生じていると理解できる。その2次元性は、これらの物質の縦長のとてもユニークな形のユニットセルと、2枚PdとAl層によって隔てられたNdの原子間距離がc軸方向に7以上ととても大きいことに起因している。
名内 泰志*; 竹澤 宏樹*; 外池 幸太郎
日本原子力学会誌ATOMO, 58(4), p.247 - 252, 2016/04
臨界安全国際会議ICNC2015が2015年9月に米国で開催された。冒頭の全体会合では、臨界安全を確実に実施しつつ進歩させるために、人材育成や知識継承が目下の課題であることが強調された。本報告では、解析コード・核データ、臨界安全管理実務、標準・評価手法整備、使用済燃料の臨界安全、不確かさ・感度解析、臨界実験、臨界事故評価、専門家育成、及び核分裂性物質の保管・輸送・処分の9つの口頭発表セッションの概要を述べる。ポスター発表も加えて発表件数は170件を超え、参加者数は米,英,仏,日等から200人余であった。
関根 由莉奈; 小林 理気*; Chi, S.*; Fernandez-Baca, J. A.*; 鈴谷 賢太郎; 藤崎 布美佳*; 池田 一貴*; 大友 季哉*; 深澤 倫子*; 山内 宏樹; et al.
JPS Conference Proceedings (Internet), 8, p.033009_1 - 033009_6, 2015/09
ハイドロゲル中の水の構造や特性を調べるため、100-300Kにおける低含水率のポリN,N,-ジメチルアクリルアミドハイドロ(PDMAA)ゲルの中性子回折パターンを測定した。低温下で観察されたブロードな回折パターンは昇温過程において変化し、220Kにおいて鋭いピークが観察された。これらの回折パターンを解析することにより、低含水率のゲル中には低温下でアモルファス氷が存在し、それらは昇温と共に立方晶氷, 六方晶氷に変化することを明らかにした。
関根 由莉奈; 深澤 倫子*; 相澤 守*; 小林 理気*; Chi, S.*; Fernandez-Baca, J. A.*; 山内 宏樹; 深澤 裕
Journal of Physical Chemistry B, 118(47), p.13453 - 13457, 2014/08
被引用回数:2 パーセンタイル:3.74(Chemistry, Physical)ハイドロゲル中に存在する水の構造や性質を明らかにすることを目的として、10-300Kにおける重水を含むポリ,,-ジメチルアクリルアミドハイドロ(PDMAA)ゲルの中性子回折パターンを測定した。250K以下において観察された回折ピークは、ゲル中に氷が存在することを示した。これらのピーク位置は、通常の六方晶の氷(Ice Ih)よりも低い角度であった。このピーク位置のシフトはゲル中の氷の構造における軸, 軸の格子が通常のIce Ihよりも各々0.29, 0.3%大きいことを示す。この結果は、PDMAAゲル中に低密度の氷が存在することを示す。このような氷構造の歪みは、ゲル中における水分子と高分子鎖の相互作用によるものと考えられる。
中尾 靖宏*; 小澤 清*; 藤井 宏樹*; 茂筑 高士*; 岩井 秀夫*; 土屋 佳則*; 井川 直樹
Transactions of the Materials Research Society of Japan, 38(2), p.229 - 233, 2013/12
リチウムイオン電池用正極材LiMnO(空間群;2/)を共沈法によって作製し、2.0-4.6, 2.0-4.8及び2.0-5.0V領域における充放電サイクル特性を解析した。すべての測定領域において、充放電サイクルを重ねることで電気化学キャパシティは徐々に増加するが、その増加傾向は電圧域に依存した。すなわち、2.0-4.6Vの電圧域では、放電能は1サイクルでの12.5mAhから99サイクルでの22.5mAh程度の増加に対し、2.0-5.0Vの電圧域では、20.0から110.2mAhへと大幅に増加した。中性子回折実験の結果、2.0-5.0Vの電圧域における放電能の大幅な増加は、充放電サイクルを重ねるにしたがって、斜方面体相が発生するためであることを見いだした。
小澤 清*; 中尾 靖宏*; 茂筑 高士*; Cheng, Z.*; Wang, L.*; 岩井 秀夫*; 土屋 佳則*; 藤井 宏樹*; 井川 直樹
Journal of the Electrochemical Society, 159(3), p.A300 - A304, 2012/01
被引用回数:14 パーセンタイル:46.73(Electrochemistry)リチウムイオン2次電池正極材LiMnCoOを共沈法によって作製し、その電気化学的特性を解析した。中性子回折実験及びRietveld解析によって求めた本材料の結晶構造は、空間群2/のLiMnO型と同定できた。本材料の充放電サイクル特性は、電流密度が30mAhgの場合は、2.0-4.8Vの電圧域で最初からの11サイクルまでに放電能が46.3から196.5mAhgへと増加し、その後23から58サイクルでは175.5mAhgを保持していた。サイクリックボルタモグラム及びX線光電子分光実験の結果から、本材料では最初の10サイクル程度でMnの還元反応が活性化されていることが明らかとなった。
深澤 裕; 荒川 雅*; 鍵 裕之; 山内 宏樹; Chakoumakos, B. C.*; Fernandez-Baca, J. A.*
Physics and Chemistry of Ice 2010, p.421 - 428, 2011/03
宇宙に存在する氷が強誘電体として存在するか否かは、その強い電気的な引力が宇宙での物質進化や水素結合にとって重要な要素であることから、大きな関心が寄せられている。われわれは、中性子回折と中性子散乱の実験から、カリウム,ナトリウム,リチウムといった不純物を混入させて秩序化の触媒として機能させた試料を育成し、その構造と物性を研究した。時間分割の回折実験は、水素秩序配置を有する強誘電性の氷XIが核生成し、約5日間、時間の経過に伴って成長することを示した。不純物を含有させた氷のうち、一度XIに変化した経験のある試料がそうではない試料に比べてより強い強誘電性を有することを見いだした。高圧下で強誘電性氷が存在することや、加圧下のアモルファス氷から強誘電性氷が発生することも示した。
井川 直樹; 田口 富嗣; 深澤 裕; 山内 宏樹; 内海 渉
Journal of the American Ceramic Society, 93(8), p.2144 - 2146, 2010/08
被引用回数:17 パーセンタイル:66.1(Materials Science, Ceramics)LiCoNiMnOのLi伝導経路を解明するため粉末中性子回折実験を行い、リートベルト法及び最大エントロピー法解析を行って、その結晶構造と原子核密度分布を求めた。リートベルト法によって、その結晶構造は基本的にはLiCoOと同じであり、Liと酸素は各々3, 6を占有し、Co, Ni, Mnはランダムに3サイトを占めること、また、およそ4%のLiとNiがカチオン交換をしていることが明らかになった。最大エントロピー法解析の結果、Liは(001), (003), (00-3)面上の3-9-3サイトを介して拡散していることがわかった。
井川 直樹; 田口 富嗣; 星川 晃範*; 深澤 裕; 山内 宏樹; 内海 渉; 石井 慶信*
Journal of Physics and Chemistry of Solids, 71(6), p.899 - 905, 2010/06
被引用回数:10 パーセンタイル:43.49(Chemistry, Multidisciplinary)10Kから200Kの温度における炭酸ガスハイドレートの結晶構造を粉末中性子回折によって調べ、最大エントロピー法によって、ハイドレート中のCOに焦点を当てた中性子散乱長密度分布図を求めた。小ケージ中では、COの炭素はケージの中心に存在し、その周りを酸素が一様に自由回転していることが明らかになった。一方、大ケージ中では、炭素はケージの中心に存在し、酸素はケージの六員環に平行で炭素を含む面上において炭素を中心に回転していることがわかった。
青木 勇二*; 髭本 亘; 綱島 慶乃*; 米澤 祐樹*; 佐藤 宏樹*; 幸田 章宏*; 伊藤 孝; 大石 一城; Heffner, R. H.; 菊地 大輔*; et al.
Physica B; Condensed Matter, 404(5-7), p.757 - 760, 2009/04
被引用回数:4 パーセンタイル:21.33(Physics, Condensed Matter)充填スクッテルダイト構造を持つSmOsSbにおける磁場への応答の小さな重い電子状態と弱強磁性の研究のため零磁場及び横磁場中のミュオンスピン回転緩和測定(SR)を行った。零磁場中のSRでは大きな振幅の回転信号が低温で観測され、弱強磁性が系全体に見られることを確認した。解析から、弱強磁性モーメントは遍歴する重い準粒子により生じることが示唆される。
山内 宏樹; 石井 慶信*; 井川 直樹; 深澤 裕; 内海 渉
JAEA-Research 2008-077, 28 Pages, 2008/10
原子力機構の中性子粉末回折装置HRPDは、高分解能データを望むユーザーの要望を満たす一方で、検出器前のコリメータが6の固定式であるため、測定に応じた適切な分解能選択ができず、高強度測定には適さない。これは爆発的に増加している外部利用に対して大きな足枷である。そこで筆者らは非対称反射を応用したビームの空間的圧縮による線束強度向上を目指すモノクロメータの改良を行った。モノクロメータ結晶はホットプレスで20程度のモザイクを導入したGe単結晶を用いた。ビーム圧縮率と中性子吸収量の考察から回折面と切削表面が成す非対称角度を40とし、非対称Braggケースで3,3,1反射を取り出すようにした。粉末標準試料の中性子回折パターンを非対称及び対称反射型とで比較した結果、ピーク強度は約1.2倍と改善したものの分解能も向上したため、積分強度ではほぼ同等となり、事前の理論予測から期待された強度増強は得られなかった。これは、モザイク結晶での非対称反射において圧縮されたビーム強度を相殺する形で反射率の低下が起こることが原因と考えられる。
小松 一生*; 有馬 寛*; 鍵 裕之*; 奥地 拓生*; 佐々木 重雄*; 山内 宏樹; 深澤 裕; 井川 直樹; 内海 渉; 神山 崇*
高圧力の科学と技術, 18(2), p.170 - 172, 2008/05
現在東海村に建設中の大強度パルス中性子施設(J-PARC)や、集光デバイスの積極利用による中性子強度の増大は、「高圧」と「中性子」という2つのキーワードをつなぐ架け橋と期待される。高圧中性子科学分野で先行する英国ISISやフランスILLでは、パリエジンバラ(PE)セルを用いた10GPa程度までの圧力下での中性子粉末回折実験はルーチンワークとなっている。国内でも単結晶試料を用いた高圧下中性子回折実験は実績があり、PEセルを用いた中性子回折実験もわずかに例があるが、中性子強度の弱さから本格的な広がりを見せていない。日本独自の中性子回折用高圧セルの開発と平行して、PEセルの本格利用を検討することは有意義であるとの視点から、われわれはPEセルを原子力機構の研究用原子炉中性子施設JRR-3内にある高分解能粉末中性子回折装置HRPDに導入し、高圧下中性子粉末回折実験を行った。本短報では、その結果を簡単に報告する。