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論文

ポジション・ステートメント改革を踏まえた高レベル放射性廃棄物の地層処分に関するポジション・ステートメント(PS003)の改訂について

坂本 義昭; 端 邦樹

日本原子力学会誌ATOMO$$Sigma$$, 67(12), P. 719, 2025/12

日本原子力学会においては、学会活動の一環としてポジション・ステートメント(PS)の発信を行っているが、近年、停滞気味であったPS活動の改革を行ったところである。一方、原子力学会バックエンド部会では約14年前に「高レベル放射性廃棄物の地層処分に関するポジション・ステートメント」(PS003)を発信して以来、改訂をしていなかったことから、学会でのPS改革を契機に同PSの改訂を行い、PS改革後の第1号として2025年3月に改訂された「高レベル放射性廃棄物の地層処分に関するポジション・ステートメント」(PS003)の公開を行った。本報は、学会内へのPSの重要性について周知を図るため、学会でのPS改革の取り組みとそれを踏まえたバックエンド部会でのPS改訂案の検討経緯として、PS改革後の第1号の公開までに至る課題や運用上の工夫等について解説したものである。

報告書

沸騰水型軽水炉炉内構造物用低炭素含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接熱影響部を対象とした中性子照射データの調査(受託研究)

笠原 茂樹; 端 邦樹; 岩田 景子; 知見 康弘

JAEA-Review 2025-024, 243 Pages, 2025/11

JAEA-Review-2025-024.pdf:27.13MB
JAEA-Review-2025-024(errata).pdf:0.15MB

2000年代初頭以降、国内の発電用沸騰水型軽水炉の一次系冷却材環境において非鋭敏化低炭素ステンレス鋼の溶接部近傍に粒界型応力腐食割れによる損傷が顕在化したことを受け、メカニズム解明研究と対策技術開発が進められている。これまでの調査、検討では、低炭素ステンレス鋼の溶接部近傍は、溶接入熱による膨張と収縮によって局所ひずみが蓄積して硬さが上昇したことが粒界型応力腐食割れの材料因子となっていると考えられており、硬さ上昇と粒界型応力腐食割れの因果関係の解明が急務となっている。上記に加えて、沸騰水型軽水炉の炉内構造物の健全性評価に当たっては、溶接熱影響部の中性子照射による硬さの上昇(照射硬化)の重畳を考慮した粒界型応力腐食割れの評価が求められ、溶接熱影響硬化部に対する照射影響評価に資する多角的、系統的なデータの拡充と公開が望まれる。本調査では、これまで未公開だったデータを中心に、原子力安全基盤機構が実施した「低炭素ステンレス鋼応力腐食割れ進展への中性子照射影響実証」事業で取得された低炭素ステンレス鋼溶接熱影響部の機械的性質や高温水環境中亀裂進展速度等に係る照射データを調査、収集した。

論文

Applicability of fracture evaluation method based on local approach to an irradiated low-alloy steel

下平 昌樹; 河 侑成; 山口 義仁; 端 邦樹; 勝山 仁哉

Proceedings of the ASME 2025 Pressure Vessels & Piping Conference (PVP2025) (Internet), 8 Pages, 2025/07

原子炉圧力容器(RPV)の構造健全性評価では、RPV中に想定した仮想欠陥を想定した場合の応力拡大係数と、破壊靭性試験片等により求められた破壊靭性値とを比較する。RPV中の仮想欠陥はその大きさが板厚に比べて小さく、塑性拘束が弱い。このような塑性拘束が弱い仮想欠陥から求めた応力拡大係数を、塑性拘束が強い破壊靭性試験片で得られた破壊靭性値と比較することは、過度に保守的な評価結果をもたらす可能性がある。近年、より合理的にRPVの構造健全性を行うための手法としてローカルアプローチに基づく破壊評価手法が提案されている。ローカルアプローチは、塑性拘束状態に依存しないワイブル応力を指標とすることによって、破壊靭性分布を評価可能な手法である。この評価手法を今後RPVに適用していくためには、中性子照射を受けた低合金鋼に対して適切なワイブル応力及び破壊靭性分布が得られることを確認する必要がある。本研究では、ワイブル応力の算出に必要なワイブル形状母数m及びワイブル応力から破壊確率を求めるために必要な尺度母数$$sigma$$$$_{u}$$に着目した。中性子照射前後の低合金鋼に対して破壊靭性試験及び有限要素解析を実施することにより、上述のパラメータに対する中性子照射の影響を調べた。その結果、ワイブル応力のばらつきの大きさに相当するm値は、照射の影響をほとんど受けないことがわかった。一方、照射材の破壊靭性分布を精度よく予測するためには、照射後の引張特性の変化を考慮して$$sigma$$$$_{u}$$を最適化する必要があることがわかった。

報告書

Analysis methodology of the calculation code, WRAC-JAEA, for determining major indexes of corrosive circumstance in light water reactors

内田 俊介; 端 邦樹; 塙 悟史

JAEA-Data/Code 2024-003, 119 Pages, 2025/01

JAEA-Data-Code-2024-003.pdf:11.29MB
JAEA-Data-Code-2024-003-appendix(CD-ROM).zip:0.28MB

軽水炉腐食環境評価解析コードWRAC-JAEAは、沸騰水型原子炉(BWR)冷却水を対象に開発された水の放射線分解(ラジオリシス)解析コードをベースに、加圧水型原子炉(PWR)にも適用できる様に開発された。すなわち、(1)高温pH算出機能、(2)ラジオリシス計算に及ぼす高温pHの影響解析機能、(3)混成理論に基づく腐食電位(ECP)解析機能、そして(4)ラジオリシスとECPの結合解析機能を付加した。軽水炉1次冷却系の腐食環境緩和は、系統を構成する機器、特に経年化原子炉の主要機器の信頼性確保のための有効な手段の一つである。しかし、BWRとPWRでは、冷却システムの差異のため腐食環境緩和のための水化学制御手法は大きく異なる。BWRでは、ステンレス鋼の粒界型応力腐食割れ(IGSCC)の抑制が、機器、配管の信頼性確保のカギを握っているが、直接サイクルを採用するため、pH制御が難しく、水素添加量が制約される中で、ラジオリシス解析コードとECP解析を組合せた緻密な腐食環境の解析と測定を併用しつつ、腐食環境の緩和および構造材の健全性確保が図られてきた。一方、PWRでは、高pHに維持し、十分な量の水素を添加することにより、水の放射線分解によって生成する酸素、過酸化水素などの腐食性生成種の濃度を、余裕をもって低く抑え、腐食環境を緩和することが可能であった。しかし、ニッケル基合金の1次冷却水応力腐食割れ(PWSCC)の発生と進展が水素によって加速される可能性が指摘され、水素添加量とECPの相関を定量化する必要性が高まってきた。BWR用に開発されたラジオリシス解析コードは中性水対象であり、高pH条件にはそのままでは対応が難しい。ECP解析も高pHでは異なる。このため、BWRでの経験を最大限に生かしつつ、PWR1次冷却系にも適用可能な腐食環境解析手法の確立が急務となっている。WRAC-JAEAは、BWRとPWRそれぞれの腐食環境評価に資するのみでなく、本コードによる評価を介して、両炉型での主要構造材の知見を相互評価し、構造材に生ずる腐食損傷に係る諸課題への対応に、それぞれの経験、知見を反映する重要な手段を提供することが期待できる。

論文

Optimization of dissolved hydrogen concentration for mitigating corrosive conditions of Pressurized Water Reactor primary coolant under irradiation, 1; Evaluation of water radiolysis

端 邦樹; 塙 悟史; 知見 康弘; 内田 俊介

Journal of Nuclear Science and Technology, 61(4), p.448 - 458, 2024/04

 被引用回数:2 パーセンタイル:27.37(Nuclear Science & Technology)

PWR一次冷却水中の腐食環境評価の1つの主要な目的は、主な構造材への悪影響を抑えつつ、PWSCCを抑制するための最適水素濃度を決定することにある。この目的に資するため、本研究ではラジオリシス解析と腐食電位(ECP)解析を併用したECP評価手法を提案した。この手法は元々BWRを対象に整備したものであるが、若干のプログラムやパラメータの修正を加えつつ、BWRとは異なる水化学パラメータ(pH、温度、線質)を考慮することにより、PWR用に拡張した。修正箇所には、$$alpha$$線の影響やLi$$^{+}$$とH$$^{+}$$のアノード分極曲線への影響等を考慮した点が含まれる。本報告は、このうちPWR条件下(高pH、$$alpha$$線存在下)のラジオリシス解析結果について議論するものである。特にH$$_{2}$$O$$_{2}$$に着目し、水素添加量に対する挙動を計算した。解析の結果、ラジオリシス由来の水和電子が高pH環境下でH$$_{2}$$O$$_{2}$$の抑制に寄与することがわかった。ここで得られた解析結果を後続のECP評価に活用し、次報にてPWR環境下のECP評価を行う。

論文

ガンマ線照射下にある高温水中でのステンレス鋼隙間内腐食挙動における溶存酸素の影響

佐藤 智徳; 端 邦樹; 加藤 千明; 五十嵐 誉廣

材料と環境, 73(4), p.102 - 109, 2024/04

放射線照射下でのSCCき裂水質における溶存酸素濃度の寄与と深さ方向の水質分布を評価するため、隙間付与ステンレス鋼のガンマ線照射下試験およびラジオリシス解析を実施した。その結果、溶存酸素濃度によらず隙間内全域にFe$$_{2}$$O$$_{3}$$が形成されることを確認した。また、照射下では、き裂内でラジオリシスにより直接生成された酸化剤種は被膜成長で消費され、放射線環境下でもき裂内ではアニオン濃縮が発生することが推定された。

論文

Optimization of dissolved hydrogen concentration for mitigating corrosive conditions of pressurised water reactor primary coolant under irradiation, 2; Evaluation of electrochemical corrosion potential

端 邦樹; 塙 悟史; 知見 康弘; 内田 俊介; Lister, D. H.*

Journal of Nuclear Science and Technology, 60(8), p.867 - 880, 2023/08

 被引用回数:2 パーセンタイル:19.94(Nuclear Science & Technology)

PWR一次冷却水中の腐食環境評価の1つの主要な目的は、主な構造材への悪影響を抑えつつ、PWRにおける一次冷却材応力腐食割れ(PWSCC)を抑制するための最適水素濃度を決定することにある。この目的に資するため、本研究ではラジオリシス解析と腐食電位(ECP)解析を併用したECP評価手法を提案した。前報では、ラジオリシス解析結果について報告した。この結果を踏まえて本報ではECP解析結果を報告する。ECP解析は混成電位モデルと酸化物層成長モデルを組み合わせたものであり、元々BWR用に開発したものである。本研究ではこれにLi$$^{+}$$とH$$^{+}$$のアノード分極曲線への影響を取り入れ、PWR用に拡張した。解析結果を過去のINCAインパイルループでの実験結果やその他の実験結果と比較し、本解析により$$pm$$100mVの誤差でECPを再現可能であることを示した。

論文

A Coupled analyses of water radiolysis and ECP for evaluation of the corrosive conditions in BWRs and PWRs

端 邦樹; 内田 俊介; 塙 悟史; 知見 康弘; 佐藤 智徳

Proceedings of 21st International Conference on Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems - Water Reactors (Internet), 14 Pages, 2023/08

The coupled code of water radiolysis and electrochemical corrosion potential (ECP) calculations (WRAC-JAEA) has been proposed for evaluating ECP both for boiling water reactor (BWR) and pressurized water reactor (PWR) systems. In the present study, some updates, such as pH control based on boron (B) and lithium (Li) concentration, were carried out. The calculated ECP were compared with the measured results in the INCA in-pile loop in the Studsvik R2 reactor for validation of the code. It was confirmed that the calculated ECP agreed with the measured ones in the INCA loop. The suitable rate constant set for water radiolysis calculation is also discussed. In particular, the rate constants for the chemical reaction of hydroxyl radical and molecular hydrogen and its backward reactions were carefully examined to evaluate the effects of pH and hydrogen concentration on hydrogen peroxide concentration. Moreover, the polarization curves were calculated, and the effects of Li$$^{+}$$ and the other species on ECP were estimated. In order to apply the code for both type of reactor systems, verification and validation (V&V) procedures of the code are proposed.

論文

低酸素の気相におけるラジオリシスが液相中の腐食環境に及ぼす影響

端 邦樹; 木村 敦*; 田口 光正*; 佐藤 智徳; 加藤 千明; 渡邉 豊*

材料と環境, 72(4), p.126 - 130, 2023/04

気液共存試料中の鉄鋼材料の照射下腐食環境における気相のラジオリシスの影響について調べるため、気液比や気相中の酸素濃度を変化させた条件の気液二相系試料へのガンマ線照射実験を行い、照射後の放射線分解生成物等の生成量の測定を行った。照射後の試料溶液には過酸化水素や硝酸イオン,亜硝酸イオンの生成が見られた。硝酸イオン,亜硝酸イオンの生成量は気相の比率が大きい気液比条件で酸素濃度が高い場合に多くなり、気相における酸素と窒素が関与する反応が硝酸生成の主要因であると考えられた。試料の一部を鉛で遮蔽することで液相の吸収線量を気相の吸収線量の1/100倍に抑え、気相のラジオリシス影響を相対的に大きくした状態で、液相のラジオリシス現象を観察した。液相のラジオリシスが気相を考慮しない通常の水のラジオリシスと同様の傾向を示したことから、気相の放射線影響を100倍に高めた今回の体系において、気相ラジオリシス由来の硝酸イオン,亜硝酸イオンが液相のラジオリシスに与える影響は限定的であることが示された。

論文

放射線環境下での腐食データベースの整備

端 邦樹; 佐藤 智徳

放射線化学(インターネット), (114), p.33 - 38, 2022/10

福島第一原子力発電所(1F)の格納容器内の汚染水中における腐食環境の評価に資することを目的に、放射線環境下での鉄鋼材料の腐食データ及び関連するラジオリシスデータをまとめた腐食データベースを整備した。今回のデータ整理によって、1F汚染水中の不純物が腐食因子である過酸化水素の生成挙動等に与える影響の解析的評価を可能とするとともに、放射線環境下で生成する酸化剤濃度と腐食速度や腐食電位との関係を示すことができるようになった。

論文

放射線環境下での腐食データベース

佐藤 智徳; 端 邦樹; 加治 芳行; 田口 光正*; 清藤 一*; 井上 博之*; 多田 英司*; 阿部 博志*; 秋山 英二*; 鈴木 俊一*

Isotope News, (782), p.40 - 44, 2022/08

福島第一原子力発電所(以下、1Fとする)の原子炉建屋内部の滞留水は、燃料デブリや飛散したセシウム等放射性物質による強い放射線場にある。この水は運転中の冷却水で使用される純度の高い水とは異なり、緊急冷却時に注入された海水の成分、鋼材から溶出したFe$$^{2+}$$等多くの不純物の影響を受けていると考えられた。また、現在はN$$_{2}$$ガスでパージされているが、今後の廃炉作業に伴い開放される可能性もあり、滞留水の位置や状況により、様々な溶存酸素濃度となることが推測される。そこで、1Fの廃炉工程の円滑化に資することを目的として、放射線環境下での腐食トラブルの発生可能性、対策等を議論するうえで有用な情報である、水の放射線分解(ラジオリシス)および放射線照射下での腐食試験データ、1F廃炉工程における潜在的腐食影響の検討結果を「放射線環境下での腐食データベース」としてまとめたのでここで紹介する。

論文

NOx production in gas-liquid two-phase radiolysis, 1; Experimental setup

端 邦樹; 木村 敦*; 佐藤 智徳; 加藤 千明; 田口 光正*

QST-M-33; QST Takasaki Annual Report 2020, P. 54, 2022/03

長期に及ぶ東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業を安全に進めるに当たり、構造物の腐食の程度を予測するためには、腐食因子の分析が必要である。建屋内特有の腐食因子として、水の放射線分解(ラジオリシス)により生成する酸化剤が挙げられるが、一方で、建屋内の大部分は気相であることから、気相のラジオリシスに由来する腐食因子の発生も懸念される。建屋内の腐食対策として窒素パージ(酸素の除去)が実施されているが、窒素と水蒸気の共存下のラジオリシスでは酸化力の強い硝酸が生成することが知られており、照射下での窒素パージによる腐食抑制効果の確認が必要である。本研究では、窒素,水蒸気,酸素を含む気相成分のラジオリシスによる硝酸等の酸化剤の生成量を見積もるため、高崎量子応用研究所においてガンマ線照射実験を計画している。2020年度は実験の準備として、気相のラジオリシスを選択的に発生させるための照射方法を検討するとともに、照射により発生する窒素酸化物を分析するためにイオンクロマトグラフィのシステムを整備し、分析手法の有効性を確認した。

論文

Development of an analysis method for electrochemical corrosion potential in PWR primary coolant under irradiation

端 邦樹; 内田 俊介; 塙 悟史; 知見 康弘

Proceedings of International Symposium on Contribution of Materials Investigations and Operating Experience to LWRs' Safety, Performance and Reliability (Fontevraud 10) (Internet), 11 Pages, 2022/00

Stress Corrosion Cracking (SCC) is one of the key phenomena to determine material degradation in nuclear power plants, and the electrochemical potential (ECP) is known as an environmental factor of SCC initiation and propagation. In the PWR primary coolant, the low ECP level is maintained due to H$$_{2}$$ injection. On the other hand, material degradation attributed to H$$_{2}$$ attack was also reported. Thus, the optimization of H$$_{2}$$ concentration has been still discussed. In JAEA, an ECP analysis method has been developed. This method was originally prepared for BWR primary coolant, but it is improved to apply to PWR primary coolant. In the recent study, this ECP analysis method was modified by introducing pH adjustment based on boron-lithium combined control, and ECP calculation for stainless steels and Ni-based alloys were carried out. ECP calculation assuming a reactor core region and a steam generator region was also tried and the optimal hydrogen concentration without any serious adverse effect was discussed.

論文

The Role of silicon on solute clustering and embrittlement in highly neutron-irradiated pressurized water reactor surveillance test specimens

高見澤 悠; 端 邦樹; 西山 裕孝; 外山 健*; 永井 康介*

Journal of Nuclear Materials, 556, p.153203_1 - 153203_10, 2021/12

 被引用回数:9 パーセンタイル:62.18(Materials Science, Multidisciplinary)

原子炉圧力容器鋼における中性子照射脆化に及ぼすシリコンの影響を明らかにするため、三次元アトムプローブにより、高照射量領域まで中性子照射された監視試験片中の溶質原子クラスタを分析した。高Cu含有材では、Ni, Mn, Siがクラスタ中心のCu原子を囲むように凝集し、コアシェル構造を形成するのに対して、低Cu含有材ではNi, Mn, Siがクラスタ中を均一に分布していた。クラスタ内のCu原子の数はCu含有量の減少と共に減少したが、それを補うようにSi原子数が増加した。材料中の公称のSi含有量の増加とともに、クラスタのギニエ半径は減少し、数密度が増加した。結果として、クラスタの体積率は一定であった。延性脆性遷移温度移行量とクラスタの体積率とギニエ半径の積の平方根が良い相関関係を示すことから、脆化の主要因は、溶質原子クラスタを転位が切断するメカニズムによる硬化であることが示された。また、Si含有量の増加により、クラスタの体積率は一定のままギニエ半径が減少することで脆化の程度を減少させることが示された。

論文

福島第一原子力発電所の廃止措置を安全に進めるうえで考慮すべきラジオリシスの影響

端 邦樹

材料と環境, 70(12), p.468 - 473, 2021/12

東京電力福島第一原子力発電所の汚染水中の腐食環境の評価においては、建屋内が放射線環境下にあるため、水の放射線分解(ラジオリシス)により生成する過酸化水素(H$$_{2}$$O$$_{2}$$)等の酸化剤の影響を考慮する必要がある。ラジオリシス過程及びそれにより発生する酸化剤の生成量は水質や放射線の線質などに依って変化する。そのため、この10年間、水の放射線分解に寄与しうる様々な要因(海水成分、酸化物の表面の作用、$$alpha$$核種等)を対象に研究が進められてきた。本稿では、汚染水中の腐食環境のより深い理解に繋げるため、これらの要因のラジオリシス影響について解説する。

論文

Evaluation of brittle crack arrest toughness for highly-irradiated reactor pressure vessel steels

岩田 景子; 端 邦樹; 飛田 徹; 廣田 貴俊*; 高見澤 悠; 知見 康弘; 西山 裕孝

Proceedings of ASME 2021 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2021) (Internet), 7 Pages, 2021/07

The crack arrest fracture toughness, K$$_{Ia}$$, values for highly-irradiated reactor pressure vessel (RPV) steels are estimated according to a linear relationship between crack arrest toughness reference temperature, T$$_{KIa}$$, and the temperature corresponding to a fixed arrest load, equal to 4 kN, T$$_{Fa4kN}$$, obtained by instrumented Charpy impact test. The relationship between T$$_{KIa}$$ derived from the instrumented Chrapy impact test and fracture toughness reference temperature, T$$_{o}$$, was expressed as an equation proposed in a previous report. The coefficients in the equation could be fine-tuned to obtain a better fitting curve using the present experimental data and previous K$$_{Ia}$$ data. The K$$_{Ia}$$ curve for RPV;A533B class1 steels irradiated up to 1.3$$times$$10$$^{20}$$ n/cm$$^{2}$$ (E $$>$$ 1 MeV) was compared with a K$$_{IR}$$ curve defined in JEAC4206-2016. It was shown that the K$$_{IR}$$ curve was always lower than the 1%ile curve of K$$_{Ia}$$ for these irradiated RPV steels. This result indicates that the conservativeness of the method defined in JEAC4206-2016 to evaluate K$$_{Ia}$$ using K$$_{IR}$$ curve is confirmed for highly-irradiated RPV steels.

報告書

放射線環境下での腐食データベース(受託研究)

佐藤 智徳; 端 邦樹; 加治 芳行; 上野 文義; 井上 博之*; 田口 光正*; 清藤 一*; 多田 英司*; 阿部 博志*; 秋山 英二*; et al.

JAEA-Review 2021-001, 123 Pages, 2021/06

JAEA-Review-2021-001.pdf:10.33MB

福島第一原子力発電所(以下、1Fという)の廃止措置の着実な推進を考えた場合、様々な課題が存在するが、とりわけ40年にわたり廃止措置を安全かつ継続的に進めるためには、経年的に劣化が進む構造材料の腐食を抑制することが重要である。しかしながら、腐食反応を律速する環境要因に関しては、現状十分にデータが得られている訳ではなく、また、作業の進展に伴い時々刻々と変化し得る。そこで、本研究では、放射線環境下での腐食トラブルの発生可能性、対策等を議論するうえで有用な情報である、ラジオリシスおよび放射線照射下での腐食試験データを、データベースとしてまとめた。さらに、公開されているラジオリシスデータおよび、腐食データに含まれない、1Fの廃止措置で必要となることが想定されるラジオリシスデータと構造材料の腐食データを取得した。

論文

Grain-boundary phosphorus segregation in highly neutron-irradiated reactor pressure vessel steels and its effect on irradiation embrittlement

端 邦樹; 高見澤 悠; 北條 智博*; 海老原 健一; 西山 裕孝; 永井 康介*

Journal of Nuclear Materials, 543, p.152564_1 - 152564_10, 2021/01

 被引用回数:18 パーセンタイル:84.65(Materials Science, Multidisciplinary)

加圧水型軽水炉(PWR)または試験炉において0.3-1.2$$times$$10$$^{20}$$ n/cm$$^{2}$$ (E$$>$$1MeV)の範囲で中性子照射された原子炉圧力容器鋼(リン含有量: 0.007-0.012wt.%)について、粒界リン偏析量をオージェ電子分光分析により測定した。粒界リン偏析量は照射量に依存して増加した。速度論に基づくシミュレーションでも同様の粒界リン偏析量の増加を確認した。また、リン含有量が0.015wt.%(現在の国内原子炉圧力容器鋼の最大値相当)の材料では、1.0$$times$$10$$^{20}$$ n/cm$$^{2}$$まで照射した場合、粒界に偏析するリンの割合は10%程度増加することが予測された。PWR及び試験炉での照射材の結果を比較したところ、明確な照射速度効果は確認されなかった。文献データも含めたリン含有量0.026wt.%(海外炉のA533B鋼の中でも比較的高いリン含有量)までの材料に対して、粒界リン偏析量、照射硬化、延性脆性遷移温度(DBTT)シフトの各関係について調べたところ、照射硬化とDBTTシフトの間に直線関係が確認された。この直線関係は、このようなリン含有量の高い材料においてもDBTTの上昇は照射硬化で説明することができること、すなわち非硬化型脆化である粒界脆化の顕在化の可能性が低いことを示している。

論文

ガンマ線照射を模擬した湿度制御環境での腐食モニタリング

大森 惇志*; 秋山 英二*; 阿部 博志*; 端 邦樹; 佐藤 智徳; 加治 芳行; 井上 博之*; 田口 光正*; 清藤 一*; 多田 英司*; et al.

材料と環境, 69(4), p.107 - 111, 2020/04

ガンマ線照射による水のラジオリシスで生成する酸化剤が炭素鋼の気相中の腐食に及ぼす効果を評価するために、オゾンをモデル酸化剤として用いて50$$^{circ}$$Cの湿度制御下に導入し、ACMセンサを用いた腐食モニタリングを行った。ACM電流はオゾンの濃度に伴って高くなったことから、オゾンによる腐食促進の効果が示された。これはオゾンの還元反応あるいは水への溶解反応が早く、カソード反応を促進したためと考えられる。

論文

A Simulation of radiolysis of chloride solutions containing ferrous ion

端 邦樹; 井上 博之*

Journal of Nuclear Science and Technology, 56(9-10), p.842 - 850, 2019/09

 被引用回数:2 パーセンタイル:15.09(Nuclear Science & Technology)

希釈海水等の少量の塩分を含む水溶液中での鉄鋼材料の照射下腐食現象において、材料由来の成分がラジオリシスに及ぼす影響を評価するため、Cl$$^{-}$$イオンとFe$$^{2+}$$イオンが共存する系での水溶液の放射線分解シミュレーションを実施した。主要な水の放射線分解生成物であるH$$_{2}$$O$$_{2}$$, O$$_{2}$$, H$$_{2}$$はFe$$^{2+}$$イオンの存在により増加した。また、Cl$$^{-}$$イオンとFe$$^{2+}$$イオンが共存する系では、これら水分解生成物の発生量がさらに増加した。これは、Fe$$^{2+}$$イオンがOHラジカルにより酸化されて生じたFe$$^{3+}$$イオンが、水分子と反応して水酸化物となる際にプロトンを放出し、水溶液が酸性化するためであると考えられた。一方、鉄鋼材料の腐食に対しては、Fe$$^{2+}$$やCl$$^{-}$$の反応に由来するH$$_{2}$$O$$_{2}$$やO$$_{2}$$の効果より、FeOOHによる鉄の溶解等の別のプロセスが主に影響を与えているものと推察された。

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