Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
廣木 章博; 山下 真一*; 木村 敦; 長澤 尚胤; 田口 光正
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 365(Part B), p.583 - 586, 2015/12
放射線架橋ヒドロキシプロピルセルロースゲルと2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどのメタクリル酸エステルモノマーから調製したポリマーゲル線量計に150MeV/uヘリウム線、290MeV/u炭素線、500MeV/u鉄線を照射すると、透明だったゲル線量計は白くなった。照射したポリマーゲル線量計の吸光度は、10Gyまでの線量増加に伴い増加した。また、吸光度は、線量率増加に伴い低下した。線量率一定で照射サンプルの吸光度を比較すると、ヘリウム線,炭素線,鉄線の順で低下した。これは、線エネルギー付与(LET)の変化と一致した。LETの増加にともない、重合の開始剤となるOHラジカルや水和電子の濃度が低下し、白濁因子となるポリマーの生成が抑制されたためと考えられる。このように、ポリマーゲル線量計は、線量,線量率やLETに依存した白濁化を示すことが分かった。
廣木 章博
Cellulose Communications, 22(3), p.143 - 145, 2015/09
これまでに報告されているポリマーゲル線量計の多くは、母材とモノマーに再溶解しやすいゼラチンゲルと劇物のアクリルアミドをそれぞれ用いている。そこで著者らは、熱安定性がよく、かつ低毒性の素材から成るポリマーゲル線量計の研究開発に取り組み、放射線架橋ヒドロキシプロピルセルロースゲルとメタクリル酸エステルを用いたポリマーゲル線量計を提案・作製した。本稿では、作製したポリマーゲル線量計が放射線治療線量に相当する2Gy程度で白濁すること、その白濁度合いが線量の増加に伴い増加すること、さらにモノマー組成や脱酸素剤の濃度調節により放射線感度が制御できることなどを紹介した。
廣木 章博; 山下 真一*; 田口 光正
Journal of Physics; Conference Series, 573(1), p.012028_1 - 012028_4, 2015/01
被引用回数:4 パーセンタイル:78.28(Engineering, Biomedical)放射線橋かけヒドロキシプロピルセルロース(HPC)ゲルを母材とするポリマーゲル線量計の放射線感度向上を目的に研究を行った。電子線照射により作製したHPCゲルを放射線検出液(2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(9G)、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリド(THPC)を含む水溶液)に浸漬後、真空パックすることでポリマーゲル線量計を作製した。線照射による白濁度合いは観測波長660nmの吸光度から評価した。ポリマーゲル線量計は、1Gyで白濁し、10Gyまでの線量に対して吸光度増加を示した。単位線量あたりの吸光度増分である放射線感度は、THPC濃度に依存し、HEMA 2wt%, 9G 3wt%, THPC 0.40wt%で約0.06Abs.Gyに達することが分かった。
中川 清子*; 田口 光正; 木村 敦; 長澤 尚胤; 廣木 章博
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 334, p.64 - 68, 2014/09
被引用回数:2 パーセンタイル:18.54(Instruments & Instrumentation)重粒子線治療に利用可能な3次元ポリマーゲル線量計の開発の一環として、マレイミド-スチレン溶液で膨潤した、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)ゲルへの重イオン照射によるLET効果について調べた。TIARA施設において、透明なHPCゲル試料に20MeV Hイオン(LET=2.2eV/nm)、107MeV Heイオン(7.1eV/nm)、50MeV Heイオン(13eV/nm)、320MeV Cイオン(75eV/nm)を照射したところ、白濁化が観測された。この白濁化の感度(単位線量当りの吸光度の増加率)はLET値の増加に伴い減少した。白濁成分についてGPC(ゲル浸透クロマトグラフ)分析したところ、数平均分子量40,000から45,000の高分子の生成が確認され、分子量は照射イオンのLET値にはほとんど影響を受けなかった。以上の結果から、白濁化のLET依存性は、LETの増加に伴い照射初期に生成した活性種の密度が高くなり、ラジカル再結合により消滅したことが原因と考えられる。また、再結合反応を逃れた活性種は一定回数重合し、白濁成分を生成すると考えられる。
山下 真一*; 廣木 章博; 田口 光正
Radiation Physics and Chemistry, 101, p.53 - 58, 2014/08
被引用回数:10 パーセンタイル:59.32(Chemistry, Physical)It was aimed to develop a novel polymer gel dosimeter to overcome weakness of earlier ones. A cellulose derivative, hydroxypropyl cellulose (HPC), was chosen as a polymer composing gel matrices and processed with a radiation-crosslinking technique in advance to manufacture of a gel dosimeter. Two methacrylate-type monomers, 2-hydroxyethyl methacrylate (HEMA) and poly(ethylene glycol) dimethacrylate (9G), were selected as vinyl-type monomers polymerizing with irradiations. Visual change with irradiation of Co -rays was observed, and haze and UV-vis absorption analyses were conducted to quantify visual changes of irradiated dosimeters. Radiation-induced white turbidity was easily observable directly by our eyes even with Co -irradiation of 1 or 2 Gy. Sensitivity, which was evaluated by haze, toward -ray dose was dependent on the composition of the vinyl-type monomers. UV-vis spectroscopy indicated that there are at least two different mechanisms leading to white turbidity. It was shown that dose rate effect can be less significant by optimizing composition of the vinyl-type monomers.
廣木 章博
放射線と産業, (135), p.15 - 18, 2013/12
放射線橋かけ技術を用いた多糖類ゲルの創生に関する原子力機構のこれまでの取り組みや実用化した製品(創傷被覆材やランプシェード)を紹介するとともに、最近注目されている2つのトピックスについて、紹介した。(1)金属材種判定ゲルの開発。金属スクラップ材のリサイクル促進のため、オンサイトでの簡便な金属材種判定法が求められている。放射線橋かけ技術により作製したポリビニルアルコールやヒドロキシプロピルセルロース(HPC)のゲル中に発色試薬: 1,10-フェナントロリンを含む酸性水溶液を吸収保持させることで、銅合金中の鉄の有無を5分で判定、さらに含有量を定量できる材種判定ゲルを作製した。(2)ポリマーゲル線量計の開発。放射線治療における線量分布評価ツールとなるポリマーゲル線量計を放射線橋かけ技術を用いて作製した。透明性の高いHPCゲルと低毒性のメタクリル酸エステルから成るポリマーゲル線量計は、放射線治療線量に相当する2Gy程度で白濁した。白濁度合いの尺度である吸光度と線量のプロット(検量線)に基づき、照射した線量の見積もりが可能となっている。
廣木 章博; 佐藤 裕一*; 長澤 尚胤; 太田 朗生*; 清藤 一; 山林 尚道*; 山本 幸佳*; 田口 光正; 玉田 正男; 小嶋 拓治
Physics in Medicine & Biology, 58(20), p.7131 - 7141, 2013/10
被引用回数:20 パーセンタイル:59.19(Engineering, Biomedical)New polymer gel dosimeters consisting of 2-hydroxyethyl methacrylate (HEMA), triethylene glycol monoethyl ether monomethacrylate (TGMEMA), polyethylene glycol 400 dimethacrylate (9G), tetrakis (hydroxymethyl) phosphonium chloride as an antioxidant, and gellan gum as a gel matrix were prepared. They were optically analyzed by measuring absorbance to evaluate a dose response. The absorbance of the polymer gel dosimeters that were exposed to Co-rays increased with increasing dose. The dosimeters comprising HEMA and 9G showed a linear increase in absorbance in the dose range from 0 to 10 Gy. The dose response depended on the 9G concentration. For others comprising HEMA, 9G, and TGMEMA, the absorbance of the polymer gel dosimeters drastically increased above a certain dose, and then leveled off up to 10 Gy. The optical variations in these polymer gel dosimeters were also induced by X-irradiation from Cyberknife radiotherapy equipment. Furthermore, the exposed region of the latter polymer gel dosimeter exhibited a thermo-responsive behavior.
廣木 章博; 山下 真一; 佐藤 裕一*; 長澤 尚胤; 田口 光正
Journal of Physics; Conference Series, 444, p.012028_1 - 012028_4, 2013/06
被引用回数:10 パーセンタイル:91.47(Physics, Multidisciplinary)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)ゲルと2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とポリエチレングリコールジメタクリレート(9G)のような低毒性メタクリル酸系モノマーから成るポリマーゲル線量計を作製した。本研究では、作製したポリマーゲル線量計の線量応答性に及ぼすモノマー組成の影響について検討した。まず、20%HPC水溶液への電子線照射によりポリマーゲル線量計のマトリクスであるHPCゲルを作製した。洗浄・乾燥後のHPCゲルをモノマー溶液に浸漬後、膨潤したゲルを真空パックしてポリマーゲル線量計を作製した。得られたポリマーゲル線量計に線を照射すると白濁した。その白濁度合いは、10Gyまでの徐々に増加した。同じ線量で比較すると、9G濃度の高いほど白濁度合いが増加し、線量応答性はHEMAと9Gの組成比に依存することがわかった。
藤淵 俊王*; 川村 拓*; 山梨 宏一*; 廣木 章博; 山下 真一*; 田口 光正; 佐藤 裕一*; 三村 功一*; 牛場 洋明*; 沖原 徹*
Journal of Physics; Conference Series, 444(1), p.012089_1 - 012089_4, 2013/06
被引用回数:4 パーセンタイル:77.37(Physics, Multidisciplinary)Measurement methods that accurately measure radiation dose distribution in a three dimensional manner in order to allow comparisons of treatment plans are needed for quality assurance. One such measurement method involves the use of a polymer gel dosimeter to measure the dose distribution in three dimensions. During irradiation, a polymerization reaction makes new chemical bonds and induces changes of the chemical structure of the gel of the gel dosimeter. In the present study, dose-response measurement of an environment-friendly material used in the gel dosimeter was performed by imaging with computed tomography (CT) and R1, R2, and fluid-attenuated inversion-recovery (FLAIR) magnetic resonance imaging (MRI) under various imaging conditions. Dose-response characteristics in the gel dosimeter used in the experiment were observed at doses of 5-20 Gy administered by X-ray CT and MRI. Although the FLAIR signal was a relative value, the dose-response values with FLAIR were excellent compared to those with R1, R2, and CT. Determination of more appropriate imaging conditions could help expand the dose-response parameters of each measurement method.
廣木 章博; Hong, P. T. T.*; 長澤 尚胤; 玉田 正男
Transactions of the Materials Research Society of Japan, 36(3), p.397 - 400, 2011/09
土壌改良材の開発を目指し、多糖類を原料とした高吸水性材料(ゲル)の生分解性制御に関する研究を行った。カルボキシメチルセルロース(CMC)とカルボキシメチルデンプン(CMS)と水をよく混練りすることで、40wt%のペースト状サンプルを調製した。ペースト状サンプルに所定線量の線照射を行いCMC/CMSブレンドゲルを得た。ブレンドゲルのゲル分率は、照射線量の増加に伴い増加し、わずか10kGyでほぼ一定となった。10kGyのブレンドゲルを比較すると、組成により膨潤度は30250の範囲となり、CMCのブレンド比が高いほど低下することがわかった。膨潤度がほぼ同じゲル(組成比が異なる5種類)を選択し、微生物酸化分解測定装置により土壌中でのゲルの生分解性を調べた結果、CMSの比率が高いブレンドゲルほど、分解に伴い生成する二酸化炭素の量が増加することがわかった。最も分解したゲルでは、30日で分解率10%に達した。したがって、CMCとCMSのブレンド比を調節することで、生分解性を制御した高吸水性ゲルを作製することができた。
Roth, O.*; 廣木 章博; LaVerne, J. A.*
Journal of Physical Chemistry C, 115(16), p.8144 - 8149, 2011/04
被引用回数:14 パーセンタイル:41.42(Chemistry, Physical)過酸化水素は、水の放射線分解に伴い生成する主要な安定酸化種であり、その生成メカニズム解明は、基礎科学の観点のみならず工学目的、とりわけ原子力発電産業内で重要である。本論文では、過酸化水素の生成量に及ぼすpHの影響、及び金属酸化物(ナノ微粒子)の添加効果を報告した。さまざまな量のAlOナノ微粒子を持つpH1-13の懸濁溶液中での過酸化水素収量を求めた結果、過酸化水素生成のG値は、脱気・曝気した懸濁液中、ほぼすべてのpHでAlOの添加により徐々に低下することがわかった。例えば、脱気中では、未添加で約0.7であったが、1g添加すると約0.5にまで低下した。過酸化水素生成のG値は、脱気中ではpHに関係なくほぼ一定であったが、曝気中ではpH7付近を境に増加することがわかった。また、OHラジカル捕捉剤であるメタノールを用いた捕捉剤能の研究から、AlO添加に伴う過酸化水素収量の減少は、10ナノ秒程度の比較的長い時間で起こることがわかった。これはOHラジカルと固体ナノ微粒子の反応のためと考えられた。
岩井 保則; 廣木 章博; 玉田 正男
Journal of Membrane Science, 369(1-2), p.397 - 403, 2011/03
被引用回数:20 パーセンタイル:52.35(Engineering, Chemical)ナフィオンN117CS膜内に放射線により架橋を形成させることに成功したことを引張試験,メタノール膨潤率測定,熱機械分析(TMA),F19 MAS NMRにより実証した。今までナフィオン膜の耐熱性は低く、H型ナフィオン膜側鎖の熱分解が523Kから始まることからナフィオンN117CS膜内に放射線により架橋を形成することは不可能であると考えられていた。まずナフィオン膜の耐熱性を向上させるため、照射前のナフィオン膜を塩化ナトリウム溶液に浸漬させ、ナフィオン膜をNa型とした。耐熱性が大幅に向上したNa型ナフィオン膜を室温から618Kの温度範囲でアルゴン雰囲気下にて線照射した。照射後膜はH型に再置換した。アルコールで膨潤させたナフィオン膜のF19 MAS NMR測定から放射線による架橋に起因するピークが生じていることを確認した。未照射膜に比べ、598Kで照射した膜の破壊時伸び率の向上やメタノール膨潤率の低下,TMAによる軟化点温度の低下などの観測もわれわれの新たな発見を裏付けている。
佐伯 誠一; 長澤 尚胤; 廣木 章博; 森下 憲雄; 玉田 正男; 工藤 久明*; 勝村 庸介*
Radiation Physics and Chemistry, 80(2), p.149 - 152, 2011/02
被引用回数:20 パーセンタイル:80.53(Chemistry, Physical)多糖類誘導体であるカルボキシメチルセルロース(CMC)は、高濃度水溶液条件下における放射線照射によりゲル化することが知られている。従来、多糖類及びその誘導体は放射線分解型であり、放射線架橋反応は分解反応とは異なる反応機構をたどると考えられる。そこで、本研究ではCMC水溶液の放射線架橋反応機構を明らかとするため、高分子水溶液の放射線架橋反応の起因となるOHラジカルとの反応に焦点を当て、生成するCMCラジカルについてESR法により検討した。まず、過酸化水素の光分解をOHラジカル生成源としてCMCラジカルの生成及びESR測定を行い、スペクトル観測に成功した。超微細結合定数等のスペクトル解析により、同スペクトルはカルボキシメチル基炭素上ラジカルと同定された。次に、亜酸化窒素飽和下にあるCMC水溶液への電子線照射を行い、照射6分後においてESR測定を行ったところ、前述と同様のスペクトルが観測され、長寿命のカルボキシメチル基炭素上ラジカルの生成を見いだした。また、窒素飽和・酸素飽和下における測定においては、スペクトル強度が半減又は0となり、これらの長寿命ラジカルはOHラジカルとの反応により生成すると見いだされた。
岩井 保則; 佐藤 克美; 廣木 章博; 玉田 正男; 林 巧; 山西 敏彦
Fusion Engineering and Design, 85(7-9), p.1421 - 1425, 2010/12
被引用回数:3 パーセンタイル:23.49(Nuclear Science & Technology)固体高分子電解型高濃度トリチウム水電解システムに使用する高分子材につき耐酸性や耐放射線性を精査した。バイトン,アフラス,変性PPE樹脂,カプトンポリイミドを二年間にわたり高濃度硫酸に浸漬した結果、伸び率等の機械的特性に大きな変化が生じないことを明らかとした。また、1500kGyまで電子線で照射したナフィオン電解膜の室温水蒸気飽和条件におけるイオン伝導度では1000kGyを超える試料で若干の低下が見られた。Oリングシールに使用するゴム材のデュロメータ硬度の放射線影響については1500kGyまで照射したバイトン,アフラス等は若干硬度が上昇することを明らかとしたが、Oリングシールとして十分に使用可能な柔軟性は維持をしていた。放射線照射に伴う架橋や分解の進展により、一般に照射量の上昇とともに大きく増加するゴム材中のトリチウム水滞留量について、バイトンは1500kGyまでトリチウム水滞留量がほぼ一定値に安定することを見いだした。
瀧上 眞知子*; 長澤 尚胤; 廣木 章博; 笠井 昇; 吉井 文男; 玉田 正男; 瀧上 昭治*; 柴田 卓弥*; 明田川 康*; 尾崎 益雄*
Transactions of the Materials Research Society of Japan, 35(3), p.647 - 650, 2010/09
家畜尿汚水の二次処理水に含有する腐植様着色物質が含有する排水の処理方法及び処理システムを開発した。本技術は、ビニロン繊維にカチオン性モノマーであるN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを放射線グラフト重合させた繊維状の吸着材を設置した腐植様着色物質を吸着・除去させる排水処理方法であり、脱着による腐植様着色物質の回収並びに繊維状物の繰り返し利用を可能にしたシステムである。ビニロン繊維に線を60kGy照射し、窒素置換した20%のモノマー溶液中で2時間グラフト反応して、グラフト率が約100%から150%有する吸着材を作製した。グラフト率が100%以上有する吸着材は、腐植様着色物質を吸着し、二次処理水の色度を90%以上低下させた。本技術は、家畜汚水,河川,土壌廃水からの腐植酸用物質回収材料として、農業,工業,環境等の広範囲な分野への応用が期待される。
佐伯 誠一; 長澤 尚胤; 廣木 章博; 森下 憲雄; 玉田 正男; 室屋 裕佐*; 工藤 久明*; 勝村 庸介*
Radiation Physics and Chemistry, 79(3), p.276 - 278, 2010/03
被引用回数:12 パーセンタイル:61.37(Chemistry, Physical)水溶性の多糖類誘導体であるカルボキシメチルキトサン(CMCTS)は10%以上の濃厚水溶液で放射線照射により橋かけ反応を起こしゲルが形成される。しかし、放射線橋かけ反応機構の詳細については明らかではなく、放射線照射後に生成する多糖ラジカルの同定も詳細にはなされていない。そこで、水の放射線分解生成物であるOHラジカルとの反応により生成したCMCTSラジカルを高速流通法を用いた電子スピン共鳴(ESR)測定法により同定した。その結果、水溶液中におけるCMCTSラジカルを直接観測でき、生成する多糖ラジカルは、CMCTSのカルボキシメチル基の第2級炭素上にラジカルであると同定した。
岩井 保則; 廣木 章博; 玉田 正男; 磯部 兼嗣; 山西 敏彦
Radiation Physics and Chemistry, 79(1), p.46 - 51, 2010/01
被引用回数:17 パーセンタイル:73.15(Chemistry, Physical)電解液に浸漬させカチオン交換したナフィオンN117CS膜を室温から343Kの温度範囲で線・電子線にて1500kGyまで照射し、溶解イオンがナフィオンの機械的特性とイオン交換能の放射線劣化に与える影響を精査した。電解液に浸漬させたナフィオン膜を照射すると機械的特性の劣化が促進されることを見いだした。この劣化促進は電解液の照射により生じる酸素に起因することを明らかとした。また電解液の濃度がナフィオンの機械的特性の放射線劣化に強く影響した。このことは放射線環境下でナフィオン電解膜を使用する場合は金属イオン濃度を抑制することが肝要であることを示している。カチオンの種類差がナフィオンの機械的特性の放射線劣化に与える影響は小さかった。またアニオンの種類差はナフィオンの機械的特性及びイオン交換能の放射線劣化の両方にほとんど影響しなかった。ナフィオンの機械的特性の放射線劣化では線照射と電子線照射間で違いが見られたが、これは線量率の違いによるものであり、照射時に消費される酸素を補うために膜外の溶存酸素を膜内に取り込むための時間の有無に起因している。
廣木 章博; Tran, H. T.*; 長澤 尚胤; 八木 敏明*; 玉田 正男
Radiation Physics and Chemistry, 78(12), p.1076 - 1080, 2009/12
被引用回数:61 パーセンタイル:96.38(Chemistry, Physical)カルボキシメチルセルロース(CMC)とカルボキシメチルキトサン(CMCts)をさまざまな比率(CMC/CMCts:100/0, 75/25, 50/50, 25/75, 0/100)でブレンドし、水と混練りすることで、30wt%のペースト状サンプルを調製した。真空脱気後、線照射することでCMC/CMCtsブレンドゲルを合成した。得られたゲルのゲル分率は、照射線量が20-30kGyの間で急激に増加し、100kGyで約60%に達した。CMCtsに含まれる窒素に着目し、ゲル化前後のサンプルの元素分析を行った結果、サンプル中に含まれる窒素の割合は、ゲル化前後でほぼ一致していることがわかった。したがって、ゲル中のCMCとCMCtsの組成比は、照射前のブレンド比とほぼ同じであると考えられる。ブレンドゲルを金と鉛イオン水溶液に浸漬し、吸着された金属イオンの割合(金属イオン吸着率)をICP-質量分析装置により測定した。金属イオン吸着率は、CMCのみから成るゲルが最も低く、CMCtsの比率が増加するにしたがい増加することがわかった。鉛イオンの吸着率は、約55%から約80%に増加した。金イオンの場合、CMC/CMCts(100/0)ゲルでわずか10%であった吸着率が、CMC/CMCts(75/25)ゲルになると約60%に達し、その後CMCtsの増加に伴い徐々に増加し約90%に達した。したがって、ブレンドゲル中のCMCとCMCtsの組成を調整し、官能基の数を制御することで、金イオンの吸着性能を制御できることが明らかとなった。
廣木 章博
FBNews, (394), p.3 - 7, 2009/10
放射線が身近なところで活用されていることを紹介するため、二酸化炭素による地球温暖化や水質汚染が深刻なものとなってきている現状を踏まえ、環境問題の解決を目指した材料・技術の開発にも放射線が役立っている事例を紹介した。(1)放射線改質ポリ乳酸の開発。放射線橋かけ技術により、カーボンニュートラル材料である「ポリ乳酸」の耐熱性改善に成功し、食用品カップ,筐体、そして耐熱チューブを作製、さらに塩ビの代替品として期待される弾性ポリ乳酸の開発に繋がっている。(2)水質浄化用グラフト吸着材の開発。放射線グラフト技術により、ビル空調用冷温水設備における配管の腐食やスケール付着の要因となる循環水中の微量金属を吸着・除去する材料が作製され、連続処理装置が開発されている。(3)燃料電池用高分子電解質膜の開発。放射線橋かけ技術と放射線グラフト技術を組合せることで、市販膜に比べ伝導度を2倍に向上、メタノール透過を十分の一にまで抑制した高性能な電解質膜の開発に成功している。
瀧上 眞知子*; 廣木 章博; 長澤 尚胤; 笠原 崇光*; 瀧上 昭治*; 玉田 正男
Transactions of the Materials Research Society of Japan, 34(3), p.391 - 394, 2009/09
121Cでの酸加水分解により分子量の異なるカルボキシメチルセルロース(CMC)を調製し、クエン酸と混合、所定温度で保管することで、CMC-酸ゲルを得た。保管している間にカルボキシメチル基末端がNa型からH型に変わることで水素結合形成とCMC分子鎖の絡み合いにより弾性ゲルとなる。今回、弾性ゲルのゲル分率,吸水性及び機械的特性に及ぼす分子量の影響を検討した。その結果、保管時間が一定の場合、分子量の高いCMCほどゲル分率は高くなった。しかし、低分子量CMCであっても混合後の保管時間を長くすると、ゲル分率は高分子量CMCのときと変わらなかった。低分子量CMCゲルは、高分子量のモノに比べ、より柔らかく吸水力が高いことがわかった。高分子量CMCゲルでは、保管時間を長くするとますます硬くなったが、低分子量CMCゲルの柔らかさと高吸水性は、保管時間に依存せず、変化しないことが明らかとなった。