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He, X.*; 鍵 裕之*; 小松 一生*; 飯塚 理子*; 岡島 元*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 町田 真一*; 阿部 淳*; 後藤 弘匡*; et al.
Journal of Molecular Structure, 1310, p.138271_1 - 138271_8, 2024/08
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Chemistry, Physical)重水素化ヒドロキシフルオロマグネシウム[理想組成はMg(OD)F]のO-DF水素結合の高圧応答を中性子粉末回折とラマン分光法を用いて調べた。常温でのリートベルト解析の結果、化学組成はMg(OD)Fであり、結晶構造中で水酸基/フッ素(OD/F)が無秩序化して、2つの水素結合配置が生じていることが分かった。構造解析の結果、水素結合配置は9.8GPaまで維持され、圧力による水素結合の強化は見られなかった。常圧でのラマンスペクトルでは、2613, 2694, 2718cmに3つの水酸基伸縮バンドが観測された。O-D伸縮モードの周波数が高いことから、ヒドロキシル基は弱い水素結合相互作用、あるいは水素結合を持たないことが示唆された。20.2GPaまでは、2694cmを中心とするモードは圧力によってブルーシフトを示し、水素結合は圧縮されても強化されないことが明らかになった。これは、中性子回折の結果と一致した。水素結合の存否と、常圧および高圧での水酸基のブルーシフトの原因について議論した。
小松 一生*; 服部 高典; Klotz, S.*; 町田 真一*; 山下 恵史朗*; 伊藤 颯*; 小林 大輝*; 入舩 徹男*; 新名 亨*; 佐野 亜沙美; et al.
Nature Communications (Internet), 15, p.5100_1 - 5100_7, 2024/06
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Multidisciplinary Sciences)水素結合の対称化とは、水素原子が水素結合の中心に位置する現象である。理論的研究により、氷VIIの水素結合は、圧力が増加するにつれて、水素の分布を変化させながら、いくつかの中間状態を経て、最終的に対称化すると予測されている。これまで、多くの実験的研究が行われてきたにもかかわらず、その水素の位置や転移圧力は一貫していない。われわれは、100GPa以上の圧力で中性子回折実験を行い、氷中の水素分布を決定し、隣接酸素間での分布が80GPa付近で2つから1つになり水素結合が対称化することを世界で初めて観測した。
服部 高典; 鈴木 浩二*; 三代 達也*; 伊藤 崇芳*; 町田 真一*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, 1059, p.168956_1 - 168956_9, 2024/02
被引用回数:2 パーセンタイル:65.72(Instruments & Instrumentation)見込み幅0.5mmのラジアルコリメータを高圧中性子回折実験用に特別に設計し、その性能と有効性を調べた。0.75mm, 1.5mm, 3.0mmのラジアルコリメータはそれぞれ0.50mm, 1.07mm, 2.78mmのみこみ幅を示した。3つのラジアルコリメータの透過率はすべて同等であった。Paris-Edinburgh(PE)プレスとdiamond anvil cell (DAC)を使用した評価では、見込み幅0.5mmラジアルコリメータを使用した場合、アンビル散乱はかなり減少し、サンプル/アンビル信号比はPEプレスとDACでそれぞれ0.5と2.0に達した。これらの結果は、見込み幅0.5mmラジアルコリメータが意図したとおりに製作され、高圧中性子回折実験(特に30GPaを超える実験)に有効であることを示している。今回作成されたラジアルコリメータの見込み幅は、これまで世界の中性子散乱実験用に製作されたものの中で、最も小さい見込み幅を持つものである。
池田 一貴*; 佐次田 頌*; 大友 季哉*; 大下 英敏*; 本田 孝志*; 羽合 孝文*; 齋藤 開*; 伊藤 晋一*; 横尾 哲也*; 榊 浩司*; et al.
International Journal of Hydrogen Energy, 51(Part A), p.79 - 87, 2024/01
被引用回数:3 パーセンタイル:43.34(Chemistry, Physical)Low-vanadium-concentration alloys have low durability, and their hydrogen absorption and desorption amounts decrease by 20% after 100 cycles. In this study, we conducted reverse Monte Carlo modeling on X-ray diffraction patterns and neutron pair distribution functions of the hydrogen-absorbed and desorbed samples of a VTiCr alloy to analyze the variations in the local structure. The local structure surrounding the hydrogen atom in the hydrogen-absorbed phase exhibited minimal changes. In contrast, hydrogen occupied both tetrahedral and octahedral sites of the hydrogen-desorbed phase almost equally during the early cycles; however, the amount of hydrogen occupying the tetrahedral sites increased with the number of cycles.
小林 大輝*; 小松 一生*; 伊藤 颯*; 町田 真一*; 服部 高典; 鍵 裕之*
Journal of Physical Chemistry Letters (Internet), 14(47), p.10664 - 10669, 2023/11
被引用回数:2 パーセンタイル:23.97(Chemistry, Physical)氷IVは、水分子が配向乱れを示す氷の準安定高圧相である。配向秩序は他の氷相ではよく観測されるが、氷IVでは報告されていない。われわれは、DClを添加したDO氷IVのその場粉末中性子回折実験を行い、氷IVにおける水素秩序を調べた。その結果、単位胞体体積の温度微分dV/dTが約120Kで急激に変化することを発見し、またリートベルト解析により低温でわずかに水素が秩序化することを明らかにした。D1サイトの占有率は0.5から外れており、そのずれは試料をより高い圧力で冷却すると増加し、2.38GPa, 58Kで0.282(5)に達した。この結果は、氷IVに対応する低対称の水素秩序状態の存在を証明するものである。しかしながら、高圧下での徐冷によって、完全に水素が秩序化した氷IV相を実験的に生成することは難しいようである。
山口 敏男*; 福山 菜美*; 吉田 亨次*; 片山 芳則*; 町田 真一*; 服部 高典
Liquids (Internet), 3(3), p.288 - 302, 2023/09
圧力0.1MPaから4GPa、温度300Kから500Kにおける2mol/kg MgCl水溶液の構造をX線と中性子散乱測定によって明らかにした。この散乱データを経験的ポテンシャル構造精密化(EPSR)モデリングにより解析し、圧力と温度の関数としてペア分布関数、配位数分布、角度分布、空間密度関数を導出した。Mgは第3殻まで広がったリジッドな溶媒和殻を形成している。つまり、0GPaで約6個の水分子を含む6配位八面体の第1溶媒和殻は、ギガパスカルの圧力領域では、近接イオン対を形成し、約5個の水分子と1個のClとなる。また、Clの溶媒和も、圧力によって大きく変わる。つまり、Clイオンまわりの水分子の配位数は、0.1MPa/300Kでの8から、4GPa/500Kでの10に増加する。また溶媒(水)も、0.1MPa/300Kでの四面体ネットワーク構造から、ギガパスカルの圧力領域では、密に詰まった構造へと変化する。このとき、中心水分子1個まわりの隣接酸素原子数は、0.1MPa/298Kでの4.6個から4GPa/500Kでの8.4個へと徐々に増加する。
山口 敏男*; 吉田 亨次*; 町田 真一*; 服部 高典
Journal of Molecular Liquids, 365, p.120181_1 - 120181_10, 2022/11
被引用回数:1 パーセンタイル:9.30(Chemistry, Physical)3mol/kg NaCl重水溶液を0.1MPa/298K, 1GPa/298K, 1GPa/523K, 4GPa/523Kの温度圧力条件において中性子散乱測定した。また、得られたデータにEmpirical potential structure refinement法を適用し、対相関関数,配位数分布,角度分布(配向相関),空間密度関数(3次元構造)を抽出した。それらの結果から、イオンの溶媒和と会合、溶媒水構造の圧力と温度依存性を議論した。
服部 高典; 中村 充孝; 飯田 一樹*; 町田 晃彦*; 佐野 亜沙美; 町田 真一*; 有馬 寛*; 大下 英敏*; 本田 孝志*; 池田 一貴*; et al.
Physical Review B, 106(13), p.134309_1 - 134309_9, 2022/10
被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Materials Science, Multidisciplinary)量子調和振動子(QHO)で近似できる蛍石型のZrHとTiHの水素の振動励起を非弾性非干渉性中性子散乱によって21GPaおよび4GPaまで調べた。第一励起の振動エネルギーはそれぞれ(meV) = 141.4(2) + 1.02(2)(GPa)および(meV) = 149.4(1) + 1.21(8)(GPa)で表され、圧力とともに上昇した。格子定数の圧力変化と組み合わせて得られた金属水素原子間距離()との関係は、(meV) = 1.62(9) 10 (および(meV) = 1.47(21) 10 (であった。これらのカーブの傾きは、様々な蛍石型の金属水素化物の常圧下のトレンドに比べ、急峻であった。から得られた水素波動関数の広がりは、格子間サイトよりも縮み易いことが分かった。高圧下における水素の波動関数の優先的な収縮や小さなにおけるの急峻な立ち上がりは金属原子のイオンコアが水素原子よりも堅いために水素原子が高圧下でより狭い領域に閉じ込められるために起こると考えられる。
山下 恵史朗*; 小松 一生*; Klotz, S.*; Fabelo, O.*; Fernndez-Daz, M. T.*; 阿部 淳*; 町田 真一*; 服部 高典; 入舩 徹男*; 新名 亨*; et al.
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 119(40), p.e2208717119_1 - e2208717119_6, 2022/10
被引用回数:3 パーセンタイル:20.85(Multidisciplinary Sciences)氷の多形体は、圧力や温度により驚くほど多様な構造を示す。水素結合の乱れは、その構造多様性の重要な要因であるだけでなく、その物性をも支配している。しかし、観測可能な逆格子空間が限られていることや、高圧下で測定されたデータの不確かさにより、高圧下において氷多形体の乱れた構造を明らかにすることは困難であった。今回、単結晶および粉末中性子回折の両方を用いて、2.2GPa, 298Kにおいて主要な高圧氷である氷VIIの乱れた構造を初めて明らかにした。最大エントロピー法を用いることにより3次元的な原子分布を導くことに成功し、水素がこれまで言われていた離散的なサイトではなく、リング状に分布をしていることを発見した。また、274Kでの全散乱実験により、氷VIIの水素秩序相である氷VIIIとは、同じ分子構造を持つにもかかわらず、その分子間構造が異なることを明らかにした。今回の単結晶と粉末回折の相補的な構造解析によって、氷VIIのユニークな無秩序構造が明確に示された。今回の発見は、圧力によって大きく変化するプロトンダイナミクスと関連しており、圧力下における氷VIIの異常な物性の構造的な起源を理解することに役立つと考えられる。
Zhang, W. Q.*; 山口 敏男*; Fang, C. H.*; 吉田 亨次*; Zhou, Y. Q.*; Zhu, F. Y.*; 町田 真一*; 服部 高典; Li, W.*
Journal of Molecular Liquids, 348, p.118080_1 - 118080_11, 2022/02
被引用回数:2 パーセンタイル:21.25(Chemistry, Physical)3mol/kgのRbCl水溶液におけるイオンの水和・会合と水素結合した水の構造を、298K/0.1MPa, 298K/1GPa, 523K/1GPa, 523K/4GPaにおける中性子回折と経験的ポテンシャル構造精密化モデリングにより調べた。その結果、構造パラメータは温度と圧力に依存していることがわかった。高圧・高温条件では、RbとClの第二水和層がより明確になる。第一水和層におけるRbの平均酸素配位数は、配位距離を0.290nmから0.288nmに縮めながら、常圧では6.3だったのが、4GPaでは8.9に増加した。第一水和シェルのClの平均酸素配位数は、常圧で5.9、4GPaで9.1と圧力により増加し、対応する配位距離は0.322nmから0.314nmへと減少した。Rbと中心の水分子の第一溶媒和シェルにおける水双極子の配向は圧力に敏感であるが、Clの第一溶媒和シェルにおける水双極子の配向は温度圧力によらずあまり変化しなかった。Rb-Clの隣接イオンペアの数は、温度が高くなると減少し、圧力が高くなると増加する。水分子は密に詰まっており、極限状態では水分子の四面体水素結合ネットワークはもはや存在しない。
佐野 亜沙美; 柿澤 翔*; 市東 力*; 服部 高典; 町田 真一*; 阿部 淳*; 舟越 賢一*; 鍵 裕之*
High Pressure Research, 41(1), p.65 - 74, 2021/03
被引用回数:4 パーセンタイル:42.98(Physics, Multidisciplinary)高温高圧下における中性子散乱実験のために、河合型マルチアンビルセル(MA6-8)を開発した。信号強度を確保しするために、1段目アンビルにはスリットおよびテーパーを施して開口角を確保した。中性子の透過率の高いSiCバインダーの焼結ダイアモンドを2段目アンビルに使用することで、最高23.1GPaにおいて充分な強度の信号を取得することに成功した。また超硬合金を2段目アンビルに使用した実験では16.2GPa, 973Kでのデータ取得に成功し、超硬合金製アンビルの有用性を示した。本研究により、J-PARCのPLANETにおいてこれまで利用されてきたMA6-6では到達できなかった温度・圧力条件をMA6-8が達成できることが示された。
中野 智志*; 佐野 亜沙美; 服部 高典; 町田 真一*; 小松 一生*; 藤久 裕司*; 山脇 浩*; 後藤 義人*; 亀卦川 卓美*
Inorganic Chemistry, 60(5), p.3065 - 3073, 2021/03
被引用回数:11 パーセンタイル:73.68(Chemistry, Inorganic & Nuclear)アンモニアボランのX線および中性子回折実験を常圧及び高圧下で行った。常圧下で二水素結合中のH-H距離は、ファンデルワールス半径の2倍(2.4)よりも短い。約1.2GPaでの常圧相から第一高圧相への相転移で、半分の水素は原子間距離が延び、二水素結合が壊れた。さらに加圧すると、すべての原子間距離は2.4よりも短くなり、二水素結合が再び形成された。さらに、約11GPaで、空間群(Z=2)を持つ第二高圧相(HP2)へ転移した。この時、分子軸はより傾き、二水素結合の種類は6から11へと増えた。第3の相転移の直前(18.9GPa)で、最短の二水素結合は1.65になった。本研究は、高圧下の構造相転移によりアンモニアボラン中の二水素結合が破壊、再形成するのを実験的に初めて観測したものである。
Miao, P.*; Tan, Z.*; Lee, S. H.*; 石川 喜久*; 鳥居 周輝*; 米村 雅雄*; 幸田 章宏*; 小松 一生*; 町田 真一*; 佐野 亜沙美; et al.
Physical Review B, 103(9), p.094302_1 - 094302_18, 2021/03
被引用回数:3 パーセンタイル:21.40(Materials Science, Multidisciplinary)層状ペロブスカイトPrBaCoOは、熱膨張のない複合材料を作るために必要な負の熱膨張(NTE)を示す。NTEは、自発的な磁気秩序と密接に関連していることがわかっていた(磁気体積効果: MVE)。今回、われわれは、PrBaCoOの連続的な磁気体積効果が、本質的には不連続であり、大きな体積を持つ反強磁性絶縁体(AFILV)から、小さな体積をもつ強磁性卑絶縁体(FLISV)への磁気電気的相転移に起因することを明らかにした。また、磁気電気効果(ME)は、温度,キャリアドーピング,静水圧,磁場などの複数の外部刺激に対して高い感度を示した。これは、これまでよく知られている対称性の破れを伴う巨大磁気抵抗やマルチフェロイック効果などのMEとは対照的であり、輝コバルト鉱のMEは同一の結晶構造で起こる。われわれの発見は、MEとNTEを実現するための新しい方法を示しており、それは新しい技術に応用されるかもしれない。
山根 崚*; 小松 一生*; 郷地 順*; 上床 美也*; 町田 真一*; 服部 高典; 伊藤 颯*; 鍵 裕之*
Nature Communications (Internet), 12, p.1129_1 - 1129_6, 2021/02
被引用回数:36 パーセンタイル:84.45(Multidisciplinary Sciences)氷は、非常に多彩な構造多形を示す。これまで報告されていない新しい相に関して実験・理論両面から研究がなされている。水素の秩序-無秩序相に関して、現在知られているような一つの無秩序相に一つの秩序相があるのか、いくつかの秩序相がありえるのかが議論の的になっている。今回の研究で、氷VI相の第2の水素秩序相となる新しい相(氷XIX)を発見した。これは、無秩序相から、いくつかの異なる水素秩序相ができることを示している。このような多重性は他のすべての水素無秩序相にも起こりえるもので、氷の構造探査に新しい視点を与えるものである。このことによって、これまで謎だった問題:水素秩序相の中心対称性の存在や、(反)強誘電性誘起が明らかになる可能性がある。また究極的には、氷の高温高圧相図を完全に解明することにつながる。
服部 高典; 佐野 亜沙美; 町田 真一*; 大内 啓一*; 吉良 弘*; 阿部 淳*; 舟越 賢一*
High Pressure Research, 40(3), p.325 - 338, 2020/09
被引用回数:4 パーセンタイル:34.92(Physics, Multidisciplinary)パリエジンバラプレスを用いた中性子回折実験における圧力伝達媒体の実際的な影響を調べるために、種々の圧力媒体(Pb, AgCl,常温および高温の4:1メタノールエタノール混合液(ME), N, Ar)を用いてMgOの回折パターンを約20GPaまで測定した。MgO 220回折線の線幅から見積もった試料室内の静水圧性は、Pb, AgCl, Ar,室温ME混合液, N, 高温MEの順に良くなる。これは、これまでのダイヤモンドアンビルセルを用いた結果と異なり、高圧下で固化した後も常温MEはArより高い性能を示す(パリエジンバラプレスで用いられたアンビルの窪みの効果と思われる)。これらの結果とより高い性能が期待されるNeが強い寄生散乱をだしてしまうこととを考えると、約20GPaまでの中性子実験においては、ME混合液(できれば高温が良い)が最良の圧力媒体であり、アルコールと反応する試料には液体Arで代替するのが良いことが明らかとなった。
Bauer, R.*; Tse, J. S.*; 小松 一生*; 町田 真一*; 服部 高典
Nature, 585(7825), p.E9 - E10, 2020/09
被引用回数:7 パーセンタイル:89.27(Multidisciplinary Sciences)氷Ihの100Kでの圧力誘起構造変化を中性子その場観察により調べた。熱力学的安定相への転移を促進するために、長時間をかけてゆっくり加圧した。その結果は、最近Tulk, et.al., Nature 2019らにより報告された、同じ条件での振る舞い(結晶から結晶への逐次晶相転移)とは異なり、1.0GPaで部分的に高密度アモルファス相(HDA)へ、さらに約1.5GPaで氷VII相へと転移することが分かった。また後者の圧力は、これまでのどの報告より低かった。その間の圧力では、結晶氷Ihまたは氷VIIはHDAと共存し、また形成された氷VIIは減圧しても0.1GPaまで安定であった。非常にゆっくりとした加圧はHDA相の中の結晶相の結晶性に大きな影響を与えることがわかる。これまでのすべての研究結果を踏まえ、圧力誘起非晶質化は以下のように説明できる。相転移開始は、氷格子のせん断不安定性によって引き起こされる。同温度圧力で熱力学的に安定相(水素秩序化氷VIII)の代わりに無秩序化した氷VIIが現れるのは、水素無秩序化単一ネットワークから水素秩序化相互貫入結晶ネットワークへの構造変化は、低温下では熱エネルギーが小さいために難しく、そのため水素無秩序化ネットワークがそのまま残される。今回の結果は、低温下で加圧された氷がとる構造は、相転移カイネティクスにコントロールされており、温度に依存することを示す。
赤浜 裕一*; 宮川 仁*; 谷口 尚*; 佐野 亜沙美; 町田 真一*; 服部 高典
Journal of Chemical Physics, 153(1), p.014704_1 - 014704_5, 2020/07
被引用回数:10 パーセンタイル:54.18(Chemistry, Physical)室温下で3.2GPaまでの圧力における黒リンの構造解析を粉末中性子回折によって行った。高圧下のリン原子の結合距離と結合角を精密に決め、これまでのX線単結晶解析の結果[Brown and Randqvist, Acta Cryst. 19, 684 (1965)]と一致することを確認した。結晶格子は異方的な圧縮を示すが、P1-P2およびP1-P3結合距離は圧力によらずほぼ一定であり、P3-P1-P2結合角のみ顕著に減少した。この結果から、Cartzら[J. Chem. Phys. 71, 1718 (1979)]により報告されている結合距離との顕著なずれは、解消された。我々の構造データは、高圧下における黒リンのDirac半金属状態を明らかにするに役立つ。
齋藤 寛之*; 町田 晃彦*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*; 佐藤 豊人*; 折茂 慎一*; 青木 勝敏*
Physica B; Condensed Matter, 587, p.412153_1 - 412153_6, 2020/06
被引用回数:5 パーセンタイル:22.66(Physics, Condensed Matter)重水素を含んだfcc Niを、3.36GPaで1073Kから300Kへ冷却した際の、構造中の重水素(D)の席占有率を中性子その場観察により調べた。多くの重水素はfccの金属格子の八面体サイトを占め、またわずかながら四面体サイトへの占有も見られた。八面体サイトの占有率は、1073Kから300Kへの冷却で0.4から0.85へ増大した。一方、四面体サイトの占有率は約0.02のままであった。この温度に依存しない四面体サイトの占有率は普通でなく、その理由はよくわからない。水素による膨張の体積と水素組成の直線関係から、重水素の侵入による体積膨張は、2.09(13) 原子と求められた。この値は、過去NiやNi Fe合金で報告されている2.14-2.2 原子とよく一致している。
齋藤 寛之*; 町田 晃彦*; 飯塚 理子*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*; 佐藤 豊人*; 折茂 慎一*; 青木 勝敏*
Scientific Reports (Internet), 10, p.9934_1 - 9934_8, 2020/06
被引用回数:5 パーセンタイル:22.07(Multidisciplinary Sciences)4-6GPaの圧力で1023-300Kに降温中の鉄重水素化物の中性子回折パターンを測定した。二重六方晶構造を持つ'重水素化物は温度圧力に応じて他の安定または準安定相と共存し、673K, 6.1GPaではFeD、603K, 4.8GPaではFeDの組成を持つ固溶体を形成した。300Kに段階的に降温する際、D組成は1.0まで上昇し、一重水素化物FeDを生成した。4.2GPa, 300Kにおけるdhcp FeDにおいて溶け込んだD原子は、中心位置から外れた状態で二重六方格子の八面体空隙のすべてを占めていた。また、二重六方晶構造は12%の積層欠陥を含んでいた。また磁気モーメントは2.110.06B/Feであり、Feの積層面内で強磁性的に並んでいた。
小松 一生*; Klotz, S.*; 町田 真一*; 佐野 亜沙美; 服部 高典; 鍵 裕之*
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 117(12), p.6356 - 6361, 2020/03
被引用回数:20 パーセンタイル:60.20(Multidisciplinary Sciences)多くの多形が知られる氷も、2GPa以上ではその数が少なくなり、約60GPaでは氷VIIとVIIIのみとなる。両相は、共通の酸素骨格を持ち、水素の秩序状態が異なっている。今回約15GPaまでの低温高圧中性子回折実験により、VII-VIII転移における水素の秩序化の速度が圧力により減少し、10GPaでは分オーダーになることがわかった。さらに加圧すると、驚くべきことにその速度は再び早くなった。このような異常な振る舞いは、これまで言われていた「加圧による水分子の回転運動の鈍化と同時に起こる水素の併進運動の活性化」により説明できる。今回観測されたこの水素ダイナミックスのクロスオーバーは、これまでラマン散乱, X線回折,プロトン伝導により報告されてきた10-15GPaにおける氷VII相の異常の起源であると思われる。