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報告書

令和2年度福島県近沿岸海域等における放射性物質等の状況調査(受託研究)

御園生 敏治; 中西 貴宏; 眞田 幸尚; 尻引 武彦; 卜部 嘉*; 鶴田 忠彦

JAEA-Research 2021-004, 214 Pages, 2021/11

JAEA-Research-2021-004.pdf:12.76MB

東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所(1F)の事故が発生した後、原子力規制庁からの委託を受け、令和2年度に近沿岸海域等における放射性物質の状況調査を実施した。本報告書は、調査により得られた成果をまとめたものである。海水及び海底土のモニタリング結果から調査地点と頻度の適正化に関する評価手法を提示し、効率的かつ効果的な海域モニタリングの在り方について検討した。また、福島沿岸域70地点において柱状試料を採取し、海底土への放射性セシウムの蓄積状況を示した。さらに放射性セシウムの河川からの流入評価のため、沿岸域にセジメントトラップを設置して沈降物を採取するとともに、河川前面における海底土表層の放射性セシウム濃度の水平分布を計測した。平成25年度から平成30年度までに実施された曳航式放射線モニタリングデータについて、天然の放射性核種を考慮した再解析を実施し、沿岸域の海底土における放射性セシウム分布推定図の精度向上を試みた。また、1F沖合のシルトバンド帯にて、海底地形・海底土分布調査を実施し、地形と堆積物の分布状況を把握した。得られた結果より1F前面海域における海底土に含まれる放射性物質の分布と動態について推定を行った。

論文

Impact of extreme typhoon events on the fluvial discharge of particulate radiocesium in Fukushima Prefecture

中西 貴宏; 大山 卓也; 萩原 大樹; 佐久間 一幸

Journal of Coastal Research, 114(SI), p.310 - 314, 2021/10

福島県請戸川の観測結果に基づき、2019年10月の台風イベントに伴う河川からの粒子態$$^{137}$$Cs流出量を評価した。台風イベントによる土砂粒子の流出量は年間の90%を占め、それまで福島原子力発電所事故後最大だった2015年9月出水イベントの約2倍だった。しかし、期間中の粒子態$$^{137}$$Cs濃度低下により、粒子態$$^{137}$$Cs流出量は2015年の約2/3であった。また、2019年10月の粒子態$$^{137}$$Cs流出量は流域の沈着量のわずか0.1%であり、沿岸の$$^{137}$$Cs蓄積量への影響は非常に限られたものだった。

論文

Dynamics of radioactive cesium in coastal area linked with river discharge

御園生 敏治; 鶴田 忠彦; 尻引 武彦; 中西 貴宏; 長尾 誠也*; 落合 伸也*; 眞田 幸尚

Journal of Coastal Research, 114(SI), p.315 - 319, 2021/10

福島県沿岸域における将来の放射性セシウムの動態とその分布を理解するためには、河川からの放射性セシウムの供給を評価することが重要である。しかし、洪水時の沿岸域における懸濁態セシウムの動態に関する研究は少ないのが現状である。豪雨を伴う台風(ブアロイ)が福島県を襲った際にセジメントトラップで捕集された沈降粒子の$$^{137}$$Cs濃度を測定した結果、河川前に設置された観測点では、$$^{137}$$Cs濃度が上昇する傾向を示した。しかしながら、台風の2日後に捕集した試料の$$^{137}$$Cs濃度は、台風前とほぼ同じ水準であった。そのため、豪雨期間の沿岸地域への河川の影響は非常に限られていることが示唆された。

論文

Summary of radioactive Cs dynamics studies in coastal areas and assessment of river impacts

御園生 敏治; 鶴田 忠彦; 中西 貴宏; 眞田 幸尚

Global Environmental Research (Internet), 24(2), p.137 - 144, 2021/06

2011年の東日本大震災後、多くの放射性物質が環境中に放出された。事故から9年が経過し、海底堆積物中の放射能濃度は低下している。しかしながら、河川の影響により、沿岸地域は複雑な動態を呈している。日本原子力研究開発機構では、請戸川河口で研究を行ってきた。以前の研究成果をまとめるとともに、セジメントトラップを使用して、河川から供給される放射性Csを評価した。本研究では、2017年2月から2017年11月まで、福島第一原子力発電所近くの請戸川河口にセジメントトラップからなる係留システムを設置した。その結果フラックスへの再懸濁の割合は60%以上だった。したがって、沿岸域における放射性セシウムの動きが主に再懸濁によるものであることが示唆された。

論文

Factors affecting $$^{137}$$Cs concentrations in river water under base-flow conditions near the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant

中西 貴宏; 舟木 泰智; 佐久間 一幸

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 328(3), p.1243 - 1251, 2021/06

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Chemistry, Analytical)

2017年から2018年にかけて福島第一原子力発電所周辺河川の$$^{137}$$Cs濃度を測定した結果、溶存態$$^{137}$$Cs濃度・懸濁態$$^{137}$$Cs濃度ともに流域の平均$$^{137}$$Cs沈着量と良い相関を示した。沈着量で規格化した$$^{137}$$Cs濃度は流域内の森林への沈着割合と負の相関を示し、現時点では森林からの流出は河川水の$$^{137}$$Cs濃度を高める要因でないことが示唆された。

論文

Leaching characteristics of $$^{137}$$Cs for forest floor affected by the Fukushima nuclear accident; A Litterbag experiment

佐久間 一幸; 吉村 和也; 中西 貴宏

Chemosphere, 264, p.128480_1 - 128480_9, 2021/02

 被引用回数:2 パーセンタイル:0(Environmental Sciences)

福島県太田川上流域において、リターバックを用いて針葉樹および広葉樹からの溶存態$$^{137}$$Csの溶出特性を調査した。各樹種のリターを36個のリターバックにそれぞれ封入し、2017年6, 12月に各林床に設置した。2017年8, 12月および2018年3, 5, 8, 12月に、各林床から3つずつサンプルを採取し、純水に浸漬した。その後溶出水を、浸漬後20分, 140分, 1日後に採取した。溶存態$$^{137}$$Cs濃度を分析した。溶存態$$^{137}$$Cs溶出率については、針葉樹(0.13-2.0%)に比べ、広葉樹(0.81-6.6%)が高かった。溶出率に対して、先行降雨,先行温度及び積算温度を用いた重回帰モデルは、実測値をよく再現した(R$$^{2}$$=0.61-0.99)。

論文

Reservoir sediments as a long-term source of dissolved radiocaesium in water system; a mass balance case study of an artificial reservoir in Fukushima, Japan

舟木 泰智; 佐久間 一幸; 中西 貴宏; 吉村 和也; Katengeza, E. W.*

Science of the Total Environment, 743, p.140668_1 - 140668_9, 2020/11

 被引用回数:5 パーセンタイル:39.03(Environmental Sciences)

This study provides new insights regarding to the long-term temporal change and the mass balance of dissolved $$^{137}$$Cs in an artificial reservoir affected by the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident. Time-series water samples were collected from 2014 to 2019 for $$^{137}$$Cs concentration measurements in and around Ogaki Dam Reservoir in which the catchment has a high $$^{137}$$Cs inventory. We revealed that the arithmetic mean of dissolved $$^{137}$$Cs concentration was significantly higher in the output water than in the main input water, and the effective ecological half-live of dissolved $$^{137}$$Cs of the output water was longer than that in the main input water. Remarkably, it is considered that the output dissolved $$^{137}$$Cs was significantly larger than the total input dissolved $$^{137}$$Cs. Reservoir sediments containing high $$^{137}$$Cs activity may become even more important in the future as sources of bioavailable dissolved $$^{137}$$Cs.

報告書

平成31年度福島県近沿岸海域等における放射性物質等の状況調査(受託研究)

御園生 敏治; 鶴田 忠彦; 中西 貴宏; 眞田 幸尚; 尻引 武彦; 宮本 賢治*; 卜部 嘉*

JAEA-Research 2020-008, 166 Pages, 2020/10

JAEA-Research-2020-008.pdf:13.11MB
JAEA-Research-2020-008(errata).pdf:0.92MB

東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所(1F)の事故が発生した後、原子力規制庁からの委託を受け、平成31年度に近沿岸海域等における放射性物質の状況調査を実施した。本報告書は、平成31年度に実施した調査により得られた結果をまとめたものである。1F近傍の近沿岸海域における海水・海底土の今後の中長期的な放射性物質濃度調査の在り方について、科学的根拠に基づき、「海域モニタリングの進め方」に必要な考え方の整理を行った。中長期的な調査方法を決めるために必要な基礎情報として、海底地形・海底土分布調査を実施し、海底の地形と底質の粒度分布の関連性も把握を試みた。さらに、採泥調査を行い、福島県沿岸域において柱状試料を採取し、放射性セシウム濃度を分析した。河川から流入する懸濁物質に含まれる放射性セシウムの動態を把握するため、セジメントトラップを用いて沈降物を採取し、放射性セシウム濃度を測定した。また、放射性セシウムの河川からの流入評価のために河川前面の海底土表層の放射性セシウム濃度の計測を実施した。得られた結果より1F前面海域の海底土の放射性物質分布の動態について推定を行った。さらに、平成25年度から実施していた曳航式モニタリングデータの再解析を実施し、沿岸域における放射性セシウム分布推定図の精度向上を試みた。

報告書

Status of study of long-term assessment of transport of radioactive contaminants in the environment of Fukushima (FY2018) (Translated document)

長尾 郁弥; 新里 忠史; 佐々木 祥人; 伊藤 聡美; 渡辺 貴善; 土肥 輝美; 中西 貴宏; 佐久間 一幸; 萩原 大樹; 舟木 泰智; et al.

JAEA-Research 2020-007, 249 Pages, 2020/10

JAEA-Research-2020-007.pdf:15.83MB

2011年3月11日に発生した太平洋三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により、東京電力(現東京電力ホールディングス)福島第一原子力発電所の事故が発生し、その結果、環境中へ大量の放射性物質が放出された。この事故により放出された放射性核種は、その大部分が森林に沈着している。これに対し、面積が広大であり大量の除去土壌などが生じる、多面的な森林の機能が損なわれる可能性があるなどの問題があり、生活圏近傍を除き、汚染された森林の具体的な除染計画はない。そのため、未除染の森林から放射性セシウムが流出し、既に除染された生活圏に流入することで空間線量率が上がってしまうのではないか(外部被ばくに関する懸念)、森林から河川に流出した放射性セシウムが農林水産物に取り込まれることで被ばくするのではないか、規制基準値を超えて出荷できないのではないか(内部被ばくに関する懸念)などの懸念があり、避難住民の帰還や産業再開の妨げとなる可能性があった。日本原子力研究開発機構では、環境中に放出された放射性物質、特に放射性セシウムの移動挙動に関する「長期環境動態研究」を2012年11月より実施している。この目的は、自治体の施策立案を科学的側面から補助する、住民の環境安全に関する不安を低減し、帰還や産業再開を促進するといった点にある。本報告書は、原子力機構が福島県で実施した環境動態研究におけるこれまでの研究成果について取りまとめたものである。

論文

Radiocesium distribution in the sediments of the Odaka River estuary, Fukushima, Japan

萩原 大樹; 中西 貴宏; 小西 博巳*; 鶴田 忠彦; 御園生 敏治; 藤原 健壮; 北村 哲浩

Journal of Environmental Radioactivity, 220-221, p.106294_1 - 106294_9, 2020/09

 被引用回数:0 パーセンタイル:0(Environmental Sciences)

Radiocesium that originated from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident was deposited on the ground surface and has been transported via fluvial discharge, primarily in the form of particulates, to downstream areas and eventually to the ocean. During transportation, some of the radiocesium accumulated on the riverbed. In this study, we quantified the radiocesium deposition on the riverbed in the Odaka River estuary and investigated the radiocesium sedimentation process of the river bottom. Our results show that the radiocesium inventory in the seawater intrusion area is larger than those in the freshwater and marine parts of the estuary. Moreover, the particle-size distribution in the seawater intrusion area shows a high proportion of silt and clay particles compared with the distribution in other areas. The increased radiocesium inventory in this area is attributed to the sedimentation of fine particles caused by hydrodynamic factors (negligible velocity of the river flow) rather than flocculation factor by salinity variation.

論文

Mineral composition characteristics of radiocesium sorbed and transported sediments within the Tomioka river basin in Fukushima Prefecture

萩原 大樹; 小西 博巳*; 中西 貴宏; 藤原 健壮; 飯島 和毅; 北村 哲浩

Journal of Environmental Radioactivity, 211, p.106042_1 - 106042_10, 2020/01

 被引用回数:2 パーセンタイル:39.03(Environmental Sciences)

The deposited radiocesium in the Fukushima river basin is transported in the river systems by soil particles and redistributed in the downstream areas. Although predicting the behaviors of minerals that adsorb radiocesium and of radiocesium dissolved in river water within the river systems is essential, the dominant mineral species that adsorb radiocesium have not yet been comprehensively identified. We identify herein such mineral species by investigating the $$^{137}$$Cs distribution and the mineral species in each size fraction that are found in the bedload sediments from an upstream reservoir to an estuary within the Tomioka river basin located east of Fukushima Prefecture in Japan. In the fine sand sediment, which is the dominant fraction in terms of the $$^{137}$$Cs quantity in the river bedload, the $$^{137}$$Cs concentrations of the felsic and mafic minerals are comparable to that of micas. The mafic minerals contain 62% of the $$^{137}$$Cs in the fine sand fraction in the upstream area, while the felsic minerals contain the highest quantities of $$^{137}$$Cs in the downstream area. These results suggest that the quantification of the mineral species and the $$^{137}$$Cs concentration of each size fraction are critically important in predicting the behaviors of the minerals and radiocesium within the Fukushima river basin in the future.

論文

Factors controlling dissolved $$^{137}$$Cs concentrations in east Japanese rivers

辻 英樹*; 石井 弓美子*; Shin, M.*; 谷口 圭輔*; 新井 宏受*; 栗原 モモ*; 保高 徹生*; 倉元 隆之*; 中西 貴宏; Lee, S*; et al.

Science of the Total Environment, 697, p.134093_1 - 134093_11, 2019/12

 被引用回数:8 パーセンタイル:62.46(Environmental Sciences)

福島第一原子力発電所事故の影響を受けた河川の溶存態放射性セシウム濃度の制御要因を明らかにするため、東日本66箇所の河川で調査を行った。溶存態$$^{137}$$Cs濃度について流域の平均$$^{137}$$Cs沈着量・土地利用・土壌組成・地形・水質との関連性を評価した結果、地形的な湿潤指標(TWI)が有意に正の相関を示した。ヨーロッパの河川でも同様の相関が認められるが、日本の河川では湿地帯ではなく市街地が溶存態$$^{137}$$Cs濃度に強く影響していた。

論文

A Modeling approach to estimate the $$^{137}$$Cs discharge in rivers from immediately after the Fukushima accident until 2017

佐久間 一幸; 中西 貴宏; 吉村 和也; 操上 広志; 難波 謙二*; Zheleznyak, M.*

Journal of Environmental Radioactivity, 208-209, p.106041_1 - 106041_12, 2019/11

 被引用回数:4 パーセンタイル:37.91(Environmental Sciences)

タンクモデルとL-Q式を用いた簡易な$$^{137}$$Cs流出モデルを開発した。福島第一原子力発電所事故初期から2017年にかけて、阿武隈川および浜通り河川から海洋へ流出する$$^{137}$$Cs量および流出率を推定した。事故後約半年間における$$^{137}$$Cs流出量および流出率はそれぞれ、18TBq(3.1%)および11TBq(0.8%)であった。これらは2011年6月以降に観測された流出率に比べ、1-2桁程度高く、事故初期の流域から河川を通じて流出する$$^{137}$$Csは非常に重要であると考えられた。しかし、河川を通じた海洋への$$^{137}$$Cs流出量は、福島第一原子力発電所からの直接放出(3.5PBq)および大気由来の沈着量(7.6PBq)に比べ、2桁程度小さいため、海洋への影響は限定的であることが示唆された。

論文

Repeatability and reproducibility of measurements of low dissolved radiocesium concentrations in freshwater using different pre-concentration methods

栗原 モモ*; 保高 徹生*; 青野 辰雄*; 芦川 信雄*; 海老名 裕之*; 飯島 健*; 石丸 圭*; 金井 羅門*; 苅部 甚一*; 近内 弥恵*; et al.

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 322(2), p.477 - 485, 2019/11

 被引用回数:2 パーセンタイル:42.44(Chemistry, Analytical)

福島県の淡水に含まれる低レベル溶存態放射性セシウム濃度の測定に関する繰り返し精度と再現精度を評価した。21の実験施設が5つの異なる前濃縮法(プルシアンブルー含浸フィルターカートリッジ,リンモリブデン酸アンモニウム共沈,蒸発,固相抽出ディスク、およびイオン交換樹脂カラム)によって10L試料3検体を前濃縮し、放射性セシウム濃度を測定した。全$$^{137}$$Cs濃度測定結果のzスコアは$$pm$$2以内で、手法間の誤差は小さいことが示された。一方で、各実験施設内の相対標準偏差に比べて、施設間の相対標準偏差は大きかった。

論文

福島県内の河川における放射性セシウム濃度の推移

中西 貴宏

Isotope News, (765), p.22 - 25, 2019/10

東京電力福島第一原子力発電所の事故によってもたらされた放射性セシウムの、福島県内河川水中での濃度の推移について、発表者らが進めてきた調査から得られた知見を解説する。河川水中の放射性セシウム濃度は事故から数年後も減少し続けているが、溶存態放射性セシウム濃度の低下傾向は時間とともに緩やかになってきている。

論文

Temporal changes in radiocesium deposition on the Fukushima floodplain

中西 貴宏; 佐藤 成二; 松本 卓巳*

Radiation Protection Dosimetry, 184(3-4), p.311 - 314, 2019/10

 被引用回数:2 パーセンタイル:42.44(Environmental Sciences)

福島県では未除染山地森林から輸送される放射性セシウムの堆積による生活圏での被ばく線量増加が懸念されている。本研究では、事故後数年間における福島県内河川敷における放射性セシウムの堆積履歴を調査した。河川を流下する懸濁物質中の放射性セシウム濃度と河川敷の空間線量率も継続観測した。多くのケースで、河川敷への年間土砂堆積量はわずか数kg m$$^{-2}$$で、表層堆積物の放射性セシウム濃度は懸濁物質中の放射性セシウム濃度と同じ減少傾向を示した。それに同調して、河川敷の空間線量率も時間とともに低下していた。大規模出水があった2015年には、上流にダムをもたない河川で数百kg m$$^{-2}$$の土砂堆積と空間線量率の急激な減少が観測された。逆に言えば、ダムによって河川敷への放射性セシウムの堆積が顕著に減少することを示した。

報告書

福島における放射性セシウムの環境動態研究の現状(平成30年度版)

長尾 郁弥; 新里 忠史; 佐々木 祥人; 伊藤 聡美; 渡辺 貴善; 土肥 輝美; 中西 貴宏; 佐久間 一幸; 萩原 大樹; 舟木 泰智; et al.

JAEA-Research 2019-002, 235 Pages, 2019/08

JAEA-Research-2019-002.pdf:21.04MB

2011年3月11日に発生した太平洋三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により、東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生し、その結果、環境中へ大量の放射性物質が放出され、その大部分が森林に沈着している。これに対し、面積が広大であり大量の除去土壌等が生じる、多面的な森林の機能が損なわれる可能性があるなどの問題があり、生活圏近傍を除き、汚染された森林の具体的な除染計画はない。そのため、未除染の森林から放射性セシウムが流出し、既に除染された生活圏に流入することに対する懸念があり、避難住民の帰還や産業再開の妨げとなる可能性があった。原子力機構では、環境中に放出された放射性物質、特に放射性セシウムの移動挙動に関する「長期環境動態研究」を2012年11月より実施している。この目的は、自治体の施策立案を科学的側面から補助する、住民の環境安全に関する不安を低減し、帰還や産業再開を促進するといった点にある。本報告書は、原子力機構が福島県で実施した環境動態研究におけるこれまでの研究成果について取りまとめたものである。

論文

Trend of $$^{137}$$Cs concentration in river water in the medium term and future following the Fukushima Nuclear accident

中西 貴宏; 佐久間 一幸

Chemosphere, 215, p.272 - 279, 2019/01

 被引用回数:20 パーセンタイル:88.35(Environmental Sciences)

福島第一原子力発電所事故の影響を強く受けた2河川において、河川水中の$$^{137}$$Cs濃度を2015年4月から2018年3月までの3年間調査した。その結果、事故後中期における、河川水中の溶存態および粒子態$$^{137}$$Cs濃度の減少傾向が明らかになった。両河川の溶存態および粒子態$$^{137}$$Cs濃度は同様の経時変化を示し、溶存$$^{137}$$Cs濃度は水温に関連した季節変動が観測されたが、時間とともに減少傾向を示した。溶存態$$^{137}$$Cs濃度の環境半減期は事故後初期の報告値よりも長く、溶存態$$^{137}$$Cs濃度の減少速度が時間とともに徐々に遅くなっていることを示唆した。溶存態$$^{137}$$Cs濃度の温度依存性は年々弱くなり、数十年にわたって同じ濃度レベルに留まる可能性が示された。

論文

Distribution and fate of $$^{129}$$I in the seabed sediment off Fukushima

乙坂 重嘉; 佐藤 雄飛*; 鈴木 崇史; 桑原 潤; 中西 貴宏

Journal of Environmental Radioactivity, 192, p.208 - 218, 2018/12

AA2017-0744.pdf:1.17MB

 被引用回数:9 パーセンタイル:51.75(Environmental Sciences)

2011年8月から2013年10月にかけて、福島第一原子力発電所から160km圏内の26観測点において、海底堆積物および沈降粒子中の$$^{129}$$I濃度を観測した。2011年における海底堆積物中の$$^{129}$$I濃度は0.02$$sim$$0.45mBq/kgであった。同海域の海底への主な$$^{129}$$Iの沈着は事故後の半年以内に起こったと推測され、その初期沈着量は約0.36$$pm$$0.13GBqと見積もられた。ヨウ素は生物による利用性の高い元素であるが、事故由来の放射性ヨウ素を海産生物を介して摂取することによる被ばく量は、極めて低いと推定された。福島周辺の陸棚縁辺域(海底水深200$$sim$$400m)では、2013年10月にかけて表層堆積物中の$$^{129}$$I濃度がわずかに増加した。この$$^{129}$$I濃度の増加をもたらす主要因として、福島第一原子力発電所近傍の海底から脱離した$$^{129}$$Iの陸棚縁辺域への再堆積と、河川を通じた陸上からの$$^{129}$$Iの供給の2つのプロセスが支配的であると考えられた。

論文

Evaluation of sediment and $$^{137}$$Cs redistribution in the Oginosawa River catchment near the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant using integrated watershed modeling

佐久間 一幸; Malins, A.; 舟木 泰智; 操上 広志; 新里 忠史; 中西 貴宏; 森 康二*; 多田 和広*; 小林 嵩丸*; 北村 哲浩; et al.

Journal of Environmental Radioactivity, 182, p.44 - 51, 2018/02

 被引用回数:7 パーセンタイル:42.65(Environmental Sciences)

福島第一原子力発電所の南西15kmに位置する荻ノ沢川を対象に、水循環流域シミュレーターGETFLOWSを用いて、流域内の土砂と$$^{137}$$Csの再分布を評価した。河道への$$^{137}$$Csの供給は主に河川近傍と森林のガリで発生し、河川から離れた森林域における寄与は小さいことが示唆された。森林内の表層土壌中の$$^{137}$$Csは、主に物理減衰と下方浸透、系外にわずかに流出することで減少していた。将来的に河川近傍から河川への$$^{137}$$Csの供給量が小さくなることが示唆された。

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