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富永 正英*; 永安 結花里*; 佐々木 幹治*; 古田 琢哉; 林 裕晃*; 笈田 将皇*; 西山 祐一*; 芳賀 昭弘*
Radiological Physics and Technology, 14(4), p.381 - 389, 2021/12
放射線診断技術の発展により、患者の被ばく線量の増大が問題となっており、医療被ばくの最適化を目的として、日本国内で共通の診断参考レベルが策定された。この中で、X線一般撮影については、患者の体表面における線量を各施設の診断線量レベルとして評価することが推奨されている。体表面の線量は、体内部からの後方散乱を表す係数を機器設置やメンテナンス等で測られる空中空気カーマに乗じることで、簡便に導出できる。しかし、障害物からの距離を十分取れない状況では、測定される空中空気カーマへ散乱X線が混入するため、線量評価の誤差の要因となる。そこで、モンテカルロシミュレーション計算により、散乱体の物質や距離が散乱X線へ与える影響を評価した。診断X線のエネルギー領域では、軽元素と重元素で散乱に関する物理現象が異なり、物質毎にX線の照射野やエネルギーへの依存性が変化することがわかった。また、どの物質でも35cm程度の距離を取れば、散乱X線の混入をほぼ無視できることがわかった。
武内 伴照; 鹿窪 勇太*; 松川 義孝*; 野沢 康子*; 外山 健*; 永井 康介*; 西山 裕孝; 勝山 仁哉; 山口 義仁; 鬼沢 邦雄; et al.
Journal of Nuclear Materials, 452(1-3), p.235 - 240, 2014/09
被引用回数:40 パーセンタイル:94.94(Materials Science, Multidisciplinary)400Cにおいて100時間から10,000時間まで熱時効した原子炉圧力容器ステンレスオーバーレイクラッド鋼の微細組織と固さについて、アトムプローブ及びナノインデンテーション法を用いて調べた。フェライト相において、スピノーダル分解によるCrの濃度変調は100時間時効までに急速に進展する一方、NiSiMnクラスタは2,000時間時効で数密度が増加し10,000時間時効においては粗大化した。フェライト相の硬さは時効初期において急速に上昇し、NiSiMnクラスタの形成ではなくCr濃度変調の程度と良い相関にあった。これらの結果から、フェライト相の硬化の主因がスピノーダル分解によるCr濃度変調であることが示唆された。
武内 伴照; 鹿窪 勇太*; 松川 義孝*; 野沢 康子*; 永井 康介*; 西山 裕孝; 勝山 仁哉; 鬼沢 邦雄; 鈴木 雅秀
Journal of Nuclear Materials, 443(1-3), p.266 - 273, 2013/11
被引用回数:16 パーセンタイル:76.22(Materials Science, Multidisciplinary)本研究では、約90%のオーステナイトと10%のフェライトの相分率である原子炉圧力容器オーバーレイクラッドについて、溶接後熱処理の後にJMTRにおいて290Cで7.2 10n/cmまで中性子照射をして、3次元アトムプローブ法でミクロ組織変化を観察し、元素濃度分布や析出状態を評価した。その結果、フェライト相では、照射によってCr及びSiの濃度揺らぎが上昇しており、新たにNi及びMnの濃度揺らぎが生じていた。オーステナイト相では、'(NiSi)様のクラスターが形成していた。一方、われわれが過去に行った400C10,000h時効材では、フェライト相でCrの濃度揺らぎが大きく上昇するとともにG相(Ni-Si-Mn)が形成していたが、オーステナイト相ではミクロ組織変化は観察されなかった。
鈴木 雅秀; 西山 俊明*
保全学, 9(4), p.2 - 8, 2011/01
高経年化技術評価における課題と高経年化対策の充実に向けた今後の取り組みについて、総括的に解説する。高経年化技術評価は、実用炉規則により保安規定の認可事項とすることが義務付けられ、プラント運転開始後28年を経過する日から1年以内及び以降10年ごとに、実施することが要求されている。今後、プラントの運転が長くなり、PLM評価時期を迎えるプラントが増大していくことで審査対象プラントが輻輳する可能性がある。また、これまでのPLMでは、原子炉容器の照射脆化に代表される60年間の運転を仮定した予測評価を実施しているが、それらの予測法はこれまでの運転経験や研究成果等をベースに確立されていることから、今後も継続して最新知見を逐次反映しつつ、その予測法の高度化・高精度化を図っていくことが重要である。さらに、長期的な課題ではあるが、今後50年目のPLMの実施に向けて、評価の条件設定や技術的課題の抽出,検討等を着実に実施していく必要がある。これらに鑑み、より一層のより合理的な評価手法へと高度化していくことが今後の方向となる。
中村 武彦; 西山 裕孝; 知見 康弘; 笹島 栄夫; 扇柳 仁; 中村 仁一; 鈴木 雅秀; 河村 弘
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM), 6 Pages, 2008/10
軽水炉の長期利用や高度利用における安全性を維持向上するためには、燃料や材料の照射挙動を適切に把握することが非常に重要である。日本政府と日本原子力研究開発機構は、現行軽水炉の高経年化や高度利用並びに次世代軽水炉の開発における照射にかかわる課題の解決に貢献するため、材料試験炉(JMTR)を改修し新たな試験装置を整備することとした。この中で異常過渡時や高負荷運転時の燃料の健全性を調べる試験を計画している。2011年に終了するJMTRの改修後、まず新型燃料の出力急昇試験を行う計画である。JMTRの新たな燃料照射試験は、NSRRでの反応度事故模擬試験やホットラボを用いたLOCA試験と組合せることで、高燃焼度燃料の通常運転時から異常過渡,事故までを広くカバーする総合的な研究を成す。材料照射試験では、原子炉圧力容器鋼の破壊靭性試験,ステンレス鋼の応力腐食割れ試験,ハフニウムなど原子力材料の照射試験を計画している。これらの照射研究は現状の課題に応えるばかりでなく、顕在化してないトラブルにプロアクティブに対応するための課題の同定に貢献することが期待される。
西山 裕孝; 鬼沢 邦雄; 鈴木 雅秀; Anderegg, J. W.*; 永井 康介*; 外山 健*; 長谷川 雅幸*; 亀田 純*
Acta Materialia, 56(16), p.4510 - 4521, 2008/09
被引用回数:68 パーセンタイル:92.16(Materials Science, Multidisciplinary)中性子照射した原子炉圧力容器鋼で、粒界のリン偏析と照射硬化が延性脆性遷移温度(DBTT)に及ぼす影響を、オージェ電子分光分析,局所電極型アトムプローブ、及び陽電子消滅法による組織分析を用いながら検討した。中性子照射により粒界のリン偏析が誘起されることを示した。また、材料中のリン含有率が高くなると照射硬化が大きくなることを示した。これは、照射によって生成した空孔によって安定化されたリン集合体によるものであることを明らかにした。粒界のリン濃度及び照射硬化とDBTTの関係、並びに破面観察から、中性子照射によって粒界におけるリンの脆化能が小さくなる現象を見いだし、脆化の主要因は照射硬化によることを示した。
西山 裕孝; 鬼沢 邦雄; 鈴木 雅秀
Journal of ASTM International (Internet), 4(8), 12 Pages, 2007/09
原子炉圧力容器鋼に対し、熱時効、並びに中性子照射によるPの粒界偏析と粒界脆化に関する検討を行った。450C550Cの温度で10,000時間まで熱時効を行い、粒界P偏析はMcLeanモデルに従い、粒界P濃度が10%増加するとシャルピー延性脆性遷移温度(DBTT)は約40C上昇することを示した。P添加、及び熱時効により粒界脆化した材料についてマスターカーブ法による破壊靭性を行った結果、破壊靭性値のばらつきは、へき開破壊と粒界破壊という異なる破壊靭性レベルが反映されたものとなり、マスターカーブ法による標準解析によれば下限領域の破壊靭性値が非安全側に評価された。そこで、破壊靭性値の評価対象を粒界破壊に起因する破壊靭性分布の下限に偏らせることによって、合理的に粒界破壊が考慮された破壊靭性値を評価できることを示した。また、290Cで6.910n/cm(E1MeV)までの中性子照射を行い、粒界P偏析の照射量依存性を明らかにするとともに、Pの粒界偏析に照射硬化が重畳した場合においても、マスターカーブ法における参照温度とDBTTのシフトがほぼ等価であることが確認された。
永井 康介*; 外山 健*; 西山 裕孝; 鈴木 雅秀; Tang, Z.*; 長谷川 雅幸*
Applied Physics Letters, 87(26), p.261920_1 - 261920_3, 2005/12
被引用回数:27 パーセンタイル:67.43(Physics, Applied)原子炉圧力容器鋼における照射脆化は安全上極めて重要な問題であり、その予測は実機、及び照射速度が高い材料試験炉による照射データに基づいて行われている。ここで、材料試験炉による加速照射が、照射速度が低い実機の照射脆化をどの程度再現できるかについて、脆化機構の観点から明らかにすることが重要である。本研究では、照射速度が約4桁異なる原子炉圧力容器鋼の中性子照射材について、陽電子消滅法を用い、照射脆化の原因の一つとなるナノサイズの銅析出物の分析を行った。その結果、極めて低い照射速度の中性子照射によって銅析出が加速されることを明らかにした。これは、実機の原子炉圧力容器鋼における銅析出による照射脆化は、加速照射データで予測されるよりも低い照射量、すなわち短時間で起きることを意味するものである。
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム; 中島 甫*; 柴田 勝之; 塚田 隆; 鈴木 雅秀; 木内 清; 加治 芳行; 菊地 正彦; 上野 文義; 中野 純一; et al.
JAERI-Tech 2004-015, 114 Pages, 2004/03
東京電力(株)福島第二原子力発電所2号機においては、原子力安全・保安院の指示によりシュラウド溶接部の目視点検を実施し、炉心シュラウド中間胴/中間部リング溶接線H3外面にひび割れを発見した。本調査は、東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプルの調査・評価に関して、原研が第三者機関として調査計画の策定段階から加わり、調査中には随時試験データの評価や試験現場への立会を実施し、最終的に得られた調査データを入手し原研独自の調査報告書を作成することにより、調査の透明性を確保することを目的として実施した。本調査の結果と溶接により発生する引張残留応力及び炉水中の比較的高い溶存酸素濃度を考慮すると、このき裂は応力腐食割れ(SCC)であると考えられる。応力腐食割れの発生原因については、さらに施工法の調査などを行い検討する必要がある。
西山 裕孝; 鈴木 雅秀
金属, 73(8), p.48 - 52, 2003/08
軽水炉圧力容器鋼を長期に使用する場合、中性子照射・熱により材料中の不純物元素であるPが結晶粒界に偏析し、粒界強度が弱められて粒界破壊が生じることによる脆化、いわゆる粒界脆化を考慮する必要性が指摘されている。しかし、粒界脆化の発生に対する粒界P濃度のしきい値や粒界P濃度の中性子照射量依存性が十分に明らかにされておらず、ごく長期間の使用による粒界脆化の顕在化の可能性を否定できない。本稿では、A533B鋼を中心に、粒界偏析と粒界脆化の関係、並びに粒界脆化に対する破壊靭性評価に関する研究の現状について、筆者らの最近の実験結果も参照して述べる。
西山 昌秀*; 前川 覚*; 稲見 俊哉; 岡 与志男*
Physical Review B, 67(22), p.224435_1 - 224435_11, 2003/06
被引用回数:48 パーセンタイル:85.53(Materials Science, Multidisciplinary)ハイゼンベルグかごめ格子反強磁性体であるポタシウムジャロサイトのスピンダイナミクスをNMRで調べた。秩序相でのスピン格子緩和時間は温度の低下とともに急速に減少し、これは、15Kのエネルギーギャップを持ったスピン波の2マグノンプロセスでよく説明できる。また副格子磁化の温度依存性もスピン波の存在を支持する。これらの結果はフラストレートした古典カゴメ格子反強磁性体の低エネルギー励起がスピン波で記述できるという初めての実験的証拠である。われわれは一イオン性異方性をいれたq=0構造でのスピン波を計算し、ハイゼンベルグかごめ格子反強磁性体のスピン揺らぎの特徴に付いて議論する。
鈴木 雅秀; 西山 裕孝
金属, 71(8), p.42 - 45, 2001/08
Cu含有量が少ない原子炉圧力容器鋼材(以後、低銅圧力容器鋼材と呼ぶ)の照射特性について、実験的に検討した結果を紹介し、脆化にかかわる課題について解説した。照射データは全てJMTRを用いて取得したものである。全般的な照射特性としては、シャルピー衝撃特性の変化量(T41J)は小さく、良好な性質を有することがわかるが、鋼材間のばらつきが大きく、鋼材によっては、21019 n/cm (E1MeV)の照射でT41Jが60を超える。高純度の低銅鋼材に対しては、脆化予測式から判断すればもっと脆化の低減が期待されてもよいものである。低銅鋼材における照射特性の相違、ばらつきは鋼材組織の何を反映しているのかについて、未照射材を用いた検討を行った。この結果、中性子による変化の少ない低銅鋼材ほど微細で高密度の炭化物を有する組織となっていることがわかった。この他、化学成分として窒素の効果等について言及した。
稲見 俊哉; 森本 多磨喜*; 西山 昌秀*; 前川 覚*; 岡 与志男*; 奥村 肇*
Physical Review B, 64(5), p.054421_1 - 054421_6, 2001/08
被引用回数:33 パーセンタイル:81.02(Materials Science, Multidisciplinary)磁化率と粉末中性子回折の測定から、カゴメ格子反強磁性体KCr(OD)(SO)がこれまでの報告と異なり、4.0Kで明確な反強磁性秩序を持つことを見いだした。磁気構造はいわゆるq=0型の120度構造であったが、定量的な解析を行ったところ、ほぼ平面型の120度構造をなす磁気モーメントの方向が、ab面内で均等に分布しているという結果になった。われわれは、この物質の基底状態として、q=0構造がc軸の回りでゆっくり回転しているというモデルを提案する。この解釈は得られた磁気構造や試料依存性を良く説明するものである。
明午 伸一郎; 原田 正英; 今野 力; 池田 裕二郎; 渡辺 昇; 坂元 眞一*; 武藤 豪*; 三宅 康博*; 西山 樟生*; 下村 浩一郎*; et al.
JAERI-Conf 2001-002, p.314 - 324, 2001/03
原研・KEK大強度加速器統合計画における中性子散乱実験値施設における3GeV陽子ビーム輸送ラインについて検討を行った。これらのターゲットの配置案では、一つのビームを有効的に共有できる「串刺しターゲット」になっている。3GeV陽子ビームは、中間子実験用の炭素標的を通過した後に水素ターゲットに入射する。ビームオプティクス及びピームスピルの計算は、TRANSPORT及びDECAY-TURTLEコードを用いて行った。TRANSPORTコードを用いて、ビームライン構造について検討を行い、全長70mの候補とするビームラインを得た。さらにDECAY-TURTLEを用いて、上記のビームラインにおける、ビーム形状及びビームスピルの計算を行った。この結果ビームスピルは目標とする10%以下にできることがわかった。また、中性子ターゲットにおけるビーム形状も目標とする横13cm,縦5cmの一様にできることがわかった。
西山 裕孝; 鬼沢 邦雄; 出井 義男; 鈴木 雅秀
JAERI-Research 2000-047, 32 Pages, 2000/10
軽水炉圧力容器内面のステンレス肉盛クラッドに用いられている代表的な2種類の溶接方法、すなわち、エレクトロスラグ溶接(ESW)、サブマージドアーク(SAWM)によってクラッド供試材を製作し、溶接残留応力分布を明らかにするとともに、クラッド材の熱時効及び中性子照射脆化について評価した。クラッド部には降伏応力に達する程度の引張応力、母材溶接熱影響部に圧縮応力が存在することが明らかとなった。40010000hの熱時効においては、ESW、SAWMクラッド材とも降伏応力の上昇、延性脆性遷移温度(DBTT)の高温側へのシフト及び上部棚吸収エネルギー(USE)の低下が生じた。290、1.2~1.510n/cm(E1 MeV)の中性子照射によっても同様な変化を示した。これらの変化は、ESW、SAWMともほぼ同程度であったが、初期値についてはESWの方がDBTTが低くUSEが高かった。また、クラッド材と母材の中性子照射によるDBTTシフトを比較した場合、クラッド材のシフト量は母材に比べて小さいという結果が得られた。
稲見 俊哉; 西山 昌秀*; 前川 覚*; 岡 与志男*
Physical Review B, 61(18), p.12181 - 12186, 2000/05
被引用回数:24 パーセンタイル:73.37(Materials Science, Multidisciplinary)カゴメ格子反強磁性体のポタシウムジャロサイトの磁気構造を中性子粉末回折を用いて研究した。通常、カゴメ格子では、基底状態の高い縮重度のため長距離秩序が阻害され、また、理論的には、絶対零度で構造がq=0構造より安定であるとされている。しかしながら、ポタシウムジャロサイトは65Kでq=0構造に秩序する。加えて、q=0構造は、正と負のカイラリティを持つ2つの状態が縮重しているが、観測された磁気構造は正のカイラリティのみでできていた。われわれは、弱い-イオン性の異方性がこの磁気構造を実現させていることを見いだした。ジャロサイトにおける比較的高温での磁気秩序もこの異方性に帰着できる。
西山 裕孝; 深谷 清; 鬼沢 邦雄; 鈴木 雅秀; 中村 照美*; 貝原 正一郎*; 吉田 和夫*; 佐藤 彰*
JAERI-Tech 98-041, 30 Pages, 1998/10
本報告書は平成7,8年度に実施した照射試験片の再生技術の開発に関する原研・IHI共同研究の成果をまとめたものである。当該年度は、表面活性化接合法の高度化を図るために、接合面形状の変更を行い、接合制御パラメータとしてトルクを導入した。また、接合した試験片の非破壊検査、接合中の試験片の温度測定等を行うとともに、接合がシャルピー衝撃試験結果に与える影響等について詳細に検討した。さらに、中性子照射を受けても接合部の健全性が確保できることを示した。
石井 敏満; 深谷 清; 西山 裕孝; 鈴木 雅秀; 衛藤 基邦
Journal of Nuclear Materials, 258-263, p.1183 - 1186, 1998/00
被引用回数:40 パーセンタイル:92.73(Materials Science, Multidisciplinary)核融合炉構造材料の候補材料となっている低放射化フェライト鋼(F82H)の疲労特性に及ぼす試験温度及び引張側保持の影響を評価するため、試験温度が室温~650C、制御ひずみ範囲が0.4~2.0%の試験条件で、保持無し及び引張側保持の高温低サイクル疲労試験を実施した。その結果、次のような知見を得た。(1)試験温度や制御ひずみ範囲の増大に伴い疲労寿命は減少した。(2)制御ひずみ範囲が0.5%の試験では、繰り返し疲労試験中の引張側最大荷重の減少に及ぼす試験温度の影響が顕著に現れた。(3)600Cにおける引張側保持試験では、保持無しの試験に比べて寿命が低下すると共に引張側最大荷重の減少が著しくなり、この試料の組織観察では、炭化物の粗大化とラーベス相の析出が確認できた。
西山 裕孝; 深谷 清; 鈴木 雅秀; 衛藤 基邦
Journal of Nuclear Materials, 258-263, p.1187 - 1192, 1998/00
被引用回数:4 パーセンタイル:38.66(Materials Science, Multidisciplinary)照射温度が290C~400Cで、110~310n/m(E1MeV)の中性子照射を受けた2.25Cr-1Mo鋼について、引張試験、シャルピー衝撃試験及び電気化学的試験の結果から、中高温度域での中性子照射脆化の特徴について検討を行った。照射温度が400Cの場合、照射脆化はマトリックスの硬化によって誘起されるが、この程度は極めて小さい。しかし、照射量が110n/m以上になると、非硬化性の脆化すなわち粒界脆化が生じた。一方、照射温度を約300Cから400Cに変えた場合、300Cにおける照射量の大小すなわち照射硬化量に関係なく、その後の400C照射によって照射硬化のほとんどが回復した。したがって、400C照射による2.25Cr-1Mo鋼の脆化の主因は粒界脆化であることがわかった。また、電気化学的分極法により、その原因が不純物等の照射誘起偏析であることが推察された。
西山 裕孝; 深谷 清; 鬼沢 邦雄; 鈴木 雅秀; 中村 照美*; 貝原 正一郎*; 佐藤 彰*; 吉田 和夫*
Small Specimen Test Techniques (ASTM STP 1329), 0, p.484 - 494, 1998/00
表面活性化法をシャルピー衝撃試験片の再生に適用し、各種評価試験に供した。試験片再生に関しては、接合部の溶融領域・熱影響部を狭くすること、照射脆化の回復を防止するために試験片の温度上昇を極力抑えることが必要である。表面活性化法によれば母材を溶融せずに材料を接合できることから、上記の要件に対して、極めて有効な方法である。原子炉圧力容器鋼を用い、接合後の組織観察、再生されたシャルピー衝撃試験及び接合中の温度測定により以下の結論が得られた。(1)最適化された接合条件により、熱影響部の幅は片側1mm以下である。(2)再生されたシャルピー衝撃試験片から延性脆性遷移温度等の評価が可能である。(3)他の一般的な溶接法による試験片再生と比較して、接合中の温度を低く抑えられる。