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野村 拓司*; 山本 裕史*; 吉井 賢資
Journal of the Physical Society of Japan, 89(2), p.024704_1 - 024704_10, 2020/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Multidisciplinary)三角格子上のスピン系の磁性は物性物理の分野で古くから取り扱われている。スピン間に反強磁性的相互作用が存在する場合は、フラストレーションにより複雑な磁気状態が発生すること等から、様々な系の性質が調べられている。本系では、このような系の一つであるNiGaSの性質を平均場近似により調べた。バンド計算で求まった電子状態を基にしたHatree-Fock法により、中性子回折で観測されているインコメンシュレートなスピン秩序状態を再現することができた。Ni 3d電子間のクーロン相互作用は2eV程度と小さく、Niスピンの値もS=1.1ボーア磁子程度と小さいことから、弱相関系でありNi-Sの共有結合が強いことも判明した。スピン間の相関関数を求めたところ、中性子非弾性散乱の結果と矛盾しない結果も得られた。
野村 拓司*; 原田 慈久*; 丹羽 秀治*; 石井 賢司*; 石角 元志*; 社本 真一; Jarrige, I.*
Physical Review B, 94(3), p.035134_1 - 035134_9, 2016/07
被引用回数:11 パーセンタイル:47.12(Materials Science, Multidisciplinary)Fe-吸収端での共鳴非弾性X線散乱(RIXS)を用いて、典型的な鉄系超伝導体PrFeAsOの単結晶で、低エネルギー電子励起スペクトルを測定した。
野村 拓司
Journal of the Physical Society of Japan, 84(9), p.094704_1 - 094704_13, 2015/09
被引用回数:3 パーセンタイル:28.27(Physics, Multidisciplinary)銅酸化物高温超伝導体の典型的な親物質であるLaCuOの銅吸収端における共鳴非弾性X線散乱(RIXS)を、詳細な電子バンド構造に基づいて理論的に研究する。第一原理電子構造から導出された最局在ワニエ軌道を用いて、精密な強束縛模型を構成し、そこに銅d電子のクーロン斥力を考慮する。反強磁性的な基底状態をハートレー-フォック近似で記述し、RIXSの中間状態における電子相関効果を乱雑位相近似(RPA)の範囲で考慮する。計算されたRIXSスペクトルは、低エネルギーのマグノン励起、-励起、電荷移動励起を含めて、広いエネルギー領域で実験観測されたスペクトルとよく整合する。特に光子の偏光方向依存性の重要性を強調したい。マグノン励起の強度や-励起のスペクトル構造は入射光子の偏光方向のみならず、放出光子のそれにも強く依存する。
Gretarsson, H.*; 野村 拓司; Jarrige, I.*; Lupascu, A.*; Upton, M. H.*; Kim, J.*; Casa, D.*; Gog, T.*; Yuan, R. H.*; Chen, Z. G.*; et al.
Physical Review B, 91(24), p.245118_1 - 245118_8, 2015/06
被引用回数:6 パーセンタイル:27.97(Materials Science, Multidisciplinary)We report an Fe -edge resonant inelastic X-ray scattering (RIXS) study of KFeSe. This material is an insulator, unlike many parent compounds of iron-based superconductors. We found a sharp excitation around 1 eV, which is resonantly enhanced when the incident photon energy is tuned near the pre-edge region of the absorption spectrum. The spectral weight and line shape of this excitation exhibit clear momentum dependence. In addition, we observe momentum-independent broad interband transitions at higher excitation energy of 3-7 eV. Calculations based on a 70 band orbital model, using a moderate = 2.5 eV, indicate that the 1 eV feature originates from the correlated Fe 3 electrons, with a dominant and orbital character. We find that a moderate yields a satisfying agreement with the experimental spectra, suggesting that the electron correlations in the insulating and metallic iron based superconductors are comparable.
野村 拓司
Journal of the Physical Society of Japan, 83(6), p.064707_1 - 064707_11, 2014/06
被引用回数:5 パーセンタイル:40.22(Physics, Multidisciplinary)典型的な軌道秩序物質であるKCuFの銅K吸収端における共鳴非弾性X線散乱(RIXS)を微視的な理論に基づいて解析した。スペクトル形状とその偏光依存性、光子の移行運動量依存性を実験と整合する形で説明できた。我々の微視的な軌道分解解析によれば、高エネルギー領域のスペクトルはCu-軌道に関連する電荷移動励起に起源し、低エネルギー領域のスペクトルは5つのCu-軌道に関連する-励起に起源する。RIXSスペクトルの各重みを微視的な軌道励起過程に具体的に結びつけることができた。これは対称性に基づく以前の現象論的解析を超えるものである。
Jarrige, I.*; 野村 拓司; 石井 賢司; Gretarsson, H.*; Kim, Y.-J.*; Kim, J.*; Upton, M.*; Casa, D.*; Gog, T.*; 石角 元志*; et al.
Physical Review B, 86(11), p.115104_1 - 115104_4, 2012/09
被引用回数:8 パーセンタイル:35.38(Materials Science, Multidisciplinary)鉄系高温超伝導体PrFeAsOとその親物質であるPrFeAsOに対して、運動量分解した共鳴非弾性X線散乱を初めて観測した。主な結果は次の2点である。まず、第一に、16バンドの模型を用いて、低エネルギーの励起が, 軌道の特性を有するバンド内遷移に支配されていることを示し、電子相関に強く依存していることを示す。これによって、クーロン斥力とフント結合を見積もることができる。特に軌道依存した電子相関におけるの果たす役割が明らかとなる。第二に、短距離の反強磁性相関が点での励起の説明には不可欠であることから、超伝導状態においてもそれが存在することが示される。
野村 拓司; 兼下 英司*
Journal of the Physical Society of Japan, 81(2), p.024707_1 - 024707_11, 2012/02
被引用回数:2 パーセンタイル:19.28(Physics, Multidisciplinary)ストライプ秩序を起こしたニッケル酸化物LaSrNiO(=1/3)におけるニッケルK吸収端の共鳴非弾性X線散乱(RIXS)を理論的に解析する。RIXSスペクトルの計算においては、Ni 3とO 2軌道を考慮した現実的な模型を用いて、ストライプ秩序した基底状態をハートレーフォック近似の範囲で記述し、電子相関の効果を乱雑位相近似の範囲で考慮する。計算したRIXSスペクトルは、光子の運動量変化がストライプベクトルに等しい時に、低エネルギー領域にウェイトを示し、最近の実験と整合している。RIXSスペクトルのこの異常な運動量依存性の起源について微視的に議論する。
前野 悦輝*; 橘高 俊一郎*; 野村 拓司; 米澤 進吾*; 石田 憲二*
Journal of the Physical Society of Japan, 81(1), p.011009_1 - 011009_29, 2012/01
被引用回数:420 パーセンタイル:99.39(Physics, Multidisciplinary)このレヴューでは、2011年秋の時点で知られている範囲において、層状ルテニウム酸化物SrRuOの超伝導特性について要約しその評価を与える。本論文では、2003年のMackenzieとMaenoによるレビュー以後になされた主たる進展をまとめている。ここでは、特にSrRuOに対して描かれてきたスピン三重項,奇パリティ対形成のシナリオについて、その正当性を厳しく評価することに主眼を置いている。
野村 拓司
Physica C, 470(Suppl.1), p.S365 - S367, 2010/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Applied)鉄ニクタイドにおける高温超伝導を摂動論の範囲で研究する。鉄の局在的な3d軌道を考慮に入れた5バンドのハバード模型を用いる。ペアリングの相互作用を鉄サイトにおけるオンサイトのクーロン相互作用について3次まで摂動展開してエリアッシュベルグ方程式を解く。超伝導の秩序変数はフェルミ面間で符号を変え、フェルミ面上ではノードはなく超伝導ギャップが完全に開く。最も安定な対対称性は波である。電子フェルミ面あるいはホールフェルミ面が消失するような高いドーピング領域では超伝導が消えることが示唆される。
野村 拓司
Journal of the Physical Society of Japan, 78(3), p.034716_1 - 034716_12, 2009/03
被引用回数:27 パーセンタイル:76.45(Physics, Multidisciplinary)最近鉄ニクタイドで発見された高温超伝導を摂動論の範囲で解析する。具体的には、現実的な電子構造を有する多バンド(2バンドと5バンド)ハバード模型を用いてエリアッシュベルグ方程式を解き、超伝導対対称性,転移温度のドーピング依存性,対形成機構などを調べる。有効対相互作用はオンサイトのクーロン相互作用について3次まで摂動展開して求める。摂動論による弱結合理論によって次のことが示される。5バンドの計算では、現実的なクーロン相互作用の強さの範囲で実際の高い転移温度が説明できる。こうして、非従来型(格子振動媒介型ではない)超伝導が実現している可能性が高い。超伝導の秩序変数はフェルミ面上では符号を変えないが、フェルミ面間では符号を変える。結果として、超伝導対対称性はすべてのパラメータ域で、ノードのない拡張型波(より正確には波)である。2バンドの模型は実際の高い転移温度を説明するのには不十分である。
野村 拓司; 山田 耕作*
Journal of the Physical Society of Japan, 78(1), P. 018001_1, 2009/01
(37)式の右辺の3行目と5行目の行頭のマイナス符号はプラス符号でなければならない。
野村 拓司
Journal of the Physical Society of Japan, 77(Suppl.C), p.123 - 124, 2008/11
被引用回数:14 パーセンタイル:62.95(Physics, Multidisciplinary)鉄ニクタイド超伝導について、クーロン相互作用による非従来型超伝導の可能性を現実的な2バンドと5バンドのハバード模型を用いて摂動論の範囲で研究した。オンサイトのクーロン相互作用について3次までの摂動展開により有効対相互作用を求め、線形化されたエリアッシュベルグ方程式を解く。5バンドの模型に関する数値計算により、現実的な相互作用の強さの範囲で実際の高い転移温度が得られることが示される。超伝導の対称性はフェルミ面上にノードのないスピン一重項s波状態だが、超伝導の秩序変数がフェルミ面間で符号を変える。一方で、2バンドの模型は実際の高い転移温度を説明するのには不十分であることが示される。
野村 拓司; 平島 大*; 山田 耕作*
Journal of the Physical Society of Japan, 77(2), p.024701_1 - 024701_10, 2008/02
被引用回数:8 パーセンタイル:49.99(Physics, Multidisciplinary)SrRuOのスピン三重項超伝導状態における動的スピン帯磁率を計算することで可能な集団的スピン励起を調べた。揺動的な三重対凝縮体の帯磁率への効果が考慮される。三重項対対称性は()(+と仮定する。小さな(現実的な)相互作用の異方性では、低エネルギーのスピン波励起のモードが帯磁率の虚部にピーク構造として現れる。本研究では現実的な多バンド模型を用いて研究するがこれは以前に1バンドの模型でなされた研究の自然な拡張である。
高橋 学*; 五十嵐 潤一*; 野村 拓司
Physical Review B, 75(23), p.235113_1 - 235113_9, 2007/06
被引用回数:18 パーセンタイル:60.66(Materials Science, Multidisciplinary)反強磁性体NiOのNi吸収端における共鳴非弾性X線散乱スペクトルの理論解析を行った。反強磁性基底状態をHartree-Fock近似で求め、内殻正孔によるポテンシャルをBorn近似で扱い、電子相関の効果を乱雑位相近似で扱った。結果として実験結果で得られているスペクトル形状とその光子波数変化依存性が定量的に説明される。
野村 拓司; 五十嵐 潤一*; 高橋 学*
放射光, 20(3), p.171 - 179, 2007/05
最近、高輝度放射光を利用することにより、遷移金属化合物などのいわゆる相関の強い電子系における電子励起スペクトルが観測されている。特に、硬X線領域での遷移金属吸収端における共鳴非弾性X線散乱(RIXS)実験により、光子の波数変化に依存した励起スペクトルが観測されている。本稿では、最近著者たちによって作られたRIXSの微視的理論を解説する。そこでは、散乱スペクトルが遷移金属電子の動的密度相関関数に関係付けられることが重要である。幾つかの遷移金属酸化物で観測されているスペクトルの形状及びその波数依存性が半定量的に説明される。
野村 拓司
Journal of the Physical Society of Japan, 74(6), p.1818 - 1829, 2005/06
被引用回数:26 パーセンタイル:73.62(Physics, Multidisciplinary)SrRuOの波超伝導状態における輸送的性質の定量的な解析を行った。具体的には、平均場近似の範囲で、超音波減衰係数と熱伝導度を計算した。現実的な多バンドの電子構造を持つ模型に対して微視的な計算に基づき超伝導ギャップを求め、輸送量を計算し実験と比較した。結果として、実験結果を定量的に再現することに成功した。
野村 拓司; 五十嵐 潤一*
Physical Review B, 71(3), p.035110_1 - 035110_5, 2005/01
被引用回数:47 パーセンタイル:82.48(Materials Science, Multidisciplinary)銅酸化物高温超伝導体の母物質であるLaCuOにおける共鳴非弾性X線散乱の実験結果を理論的に解析した。平均場近似で基底状態を記述し、励起過程を乱雑位相近似で扱った。実験ではスペクトルの形状に光子の運動量移行への強い依存性が得られているが、これらを定量的に説明することに成功した。
野村 拓司; 山田 耕作*
日本物理学会誌, 59(12), p.893 - 897, 2004/12
格子振動によって媒介される従来の超伝導においては、クーパー対を形成する2粒子間の相対角運動量が波つまりの散乱振幅が引力になっていることが重要であった。本稿で対象とする異方的超伝導では、散乱振幅のの成分が強い引力になっていることが本質的である。銅酸化物超伝導体をはじめとするさまざまな強相関電子系で実現されている異方的超伝導が、フェルミ液体論に基づいてどのように統一的に理解されているか、最近の発展を踏まえて解説する。
野村 拓司; 五十嵐 潤一*
Journal of the Physical Society of Japan, 73(7), p.1677 - 1680, 2004/07
被引用回数:26 パーセンタイル:73.65(Physics, Multidisciplinary)擬1次元銅酸化物におけるCu1-4共鳴吸収に伴う非弾性X線散乱を理論的に解析した。おもにスペクトル形状の強い運動量変化依存性に焦点を当てて議論を行った。反強磁性的基底状態を平均場近似で記述し、そこからの電子励起を乱雑位相近似で扱った。電子相関を摂動的に考慮することにより、実験結果と半定量的に一致したスペクトルの運動量変化依存性が得られることを示した。
柳瀬 陽一*; 重城 貴信*; 野村 拓司; 池田 浩章*; 堀田 貴嗣; 山田 耕作*
Physics Reports; A Review Section of Physics Letters, 387(1-4), p.1 - 149, 2003/11
被引用回数:210 パーセンタイル:83.22(Physics, Multidisciplinary)強相関電子系の超伝導の本質的な性質について、統一的観点からのレビューを行う。具体的に取り上げる物質は、銅酸化物高温超伝導体、BEDT-TTF有機超伝導体、ルテニウム酸化物SrRuO、そして重い電子系超伝導体である。実験結果についてのレビューをした後、Dyson-Gor'kov方程式に基づいて超伝導の性質を議論するための理論形式を説明する。そして、銅酸化物、有機導体、ルテニウム酸化物、重い電子系の超伝導に対する理論的結果を順に紹介していく。