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丹羽 正和; 島田 耕史; 末岡 茂; 石原 隆仙; 小川 大輝; 箱岩 寛晶; 渡部 豪; 西山 成哲; 横山 立憲; 小形 学; et al.
JAEA-Research 2023-005, 78 Pages, 2023/10
本報告書では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究の一環として実施している地質環境の長期安定性に関する研究について、第4期中長期目標期間(令和4年度令和10年度)における令和4年度に実施した研究開発に係る成果を取りまとめたものである。第4期中長期目標期間における研究の実施にあたっては、地層処分事業における概要・精密調査や国の安全規制に対し研究成果を適時反映できるよう、(1)調査技術の開発・体系化、(2)長期予測・影響評価モデルの開発、(3)年代測定技術の開発の三つの枠組みで研究開発を進めている。本報告書では、それぞれの研究分野に係る科学的・技術的背景を解説するとともに、主な研究成果等について取りまとめた。
鈴木 智也*; 大坪 右京*; 尾形 剛志*; 塩飽 秀啓; 小林 徹; 矢板 毅; 松岡 光昭*; 村山 憲弘*; 成田 弘一*
Separation and Purification Technology, 308, p.122943_1 - 122943_7, 2023/03
被引用回数:2 パーセンタイル:21.17(Engineering, Chemical)主にAgを含む使用済み製品からPd金属をリサイクルするために硝酸抽出が行われており、ほとんどのPd残留物はAg(I)含有溶液から分離される。しかし、このAg(I)溶液中には少量のPd(II)が残存していることが多い。そのため、硝酸溶液中のPd(II)とAg(I)を分離することは、Pdのリサイクルを効率的に進めるために必要不可欠である。本研究では、アミン(R-Amine),イミノ二酢酸(R-IDA),ピリジン(R-Py),ビスピコリルアミン(R-BPA)で機能化した4種類の窒素ドナー型吸着材を用いて硝酸溶液中のPd(II), Ag(I)を分離する研究を実施した。R-Amine,R-IDA,R-Pyは硝酸溶液からAg(I), Cu(II), Ni(II), Fe(III)を選択的に吸着したが、R-AmineはPdの吸着効率が低いことが判明した。一方、R-BPAはPd(II), Ag(I), Cu(II)を全濃度において90%以上吸着することができた。フーリエ変換赤外分光法及び広域X線吸収微細構造法(EXAFS)による吸着金属イオンの構造解析から、窒素ドナー型吸着剤の分離機構を明らかにした。R-IDA, R-Py, R-BPAへのPd(II)吸着は官能基(それぞれイミノ二酢酸,ピリジン,ビスピコリルアミン)へのPd(II)配位を介して起こり、R-Amineへの吸着はNOと[Pd(NO)]のアニオン交換を介して起こることがわかった。R-IDA,R-Py,R-BPAは、配位性吸着機構により、高いPd(II)吸着挙動を示すことが明らかとなった。塩酸(5.0M)およびチオ尿素(0.1M)溶離液は、それぞれR-IDAから83%およびR-Pyから95%のPd(II)を脱離させた。R-Pyは吸着選択性と脱着効率から最も効果的なPd(II)吸着剤だった。
鈴木 智也*; 大坪 右京*; 尾形 剛志*; 塩飽 秀啓; 小林 徹; 矢板 毅; 松岡 光昭*; 村山 憲弘*; 成田 弘一*
Dalton Transactions (Internet), 50(33), p.11390 - 11397, 2021/09
被引用回数:2 パーセンタイル:20.23(Chemistry, Inorganic & Nuclear)本研都市鉱山から白金(Pt)を回収するには、Pt(IV)の溶液化学を理解することが重要である。我々は、濃硝酸溶液中のPt(IV)錯体の化学種と分離を、X線吸収微細構造(XAFS)分光法によって調べた。NaPt(OH)の濃縮硝酸溶液にはPt多核錯体が支配的に存在し、Pt濃度とNaPt(OH)の溶解温度に依存することが明らかになった。0.90g-Pt/Lの加熱硝酸塩溶液と3.2g-Pt/Lの非加熱硝酸塩溶液には主に二核白金錯体が存在する。一方3.0g-Pt/Lの加熱溶液には、四核および六核錯体のような大きな多核錯体が主に存在していた。またイミノ二酢酸で機能化したキレート樹脂と硝酸トリメチルアンモニウムを有する強塩基性アニオン交換樹脂でPt(IV)イオンを吸着させると、大きなPt(IV)錯体の存在を確認した。高濃度のPt(IV)を含む加熱溶液からのPt(IV)錯体は、高い吸着効率を示すことがわかった。さらに、強塩基性陰イオン交換樹脂を使用すれば、Pd(II), Ag(I), Cu(II), Ni(II), Fe(III)が含まれる10M硝酸溶液から選択的にPt(IV)を吸着させることに成功した。
鈴木 智也*; 尾形 剛志*; 田中 幹也*; 小林 徹; 塩飽 秀啓; 矢板 毅; 成田 弘一*
Analytical Sciences, 35(12), p.1353 - 1360, 2019/12
被引用回数:4 パーセンタイル:16.62(Chemistry, Analytical)白金族金属の精錬では、Pd(II)やPt(IV)を含む混合物からRh(III)を効果的に回収することは最も難しい課題の1つである。これら元素の塩化物を含む濃塩酸水溶液に3,3'-diaminobenzidine (DAB)を加えることにより、DABからなる固相にRh(III)を隔離し、Pd(II)とPt(IV)から効果的に分離することに成功した。そこで、Rh(III), H, Cl濃度の推定とX線吸収微細構造測定から、Rh(III)に対するDAB選択性の機構を明らかにした。濃塩酸水溶液中でのRh-DAB反応は2つのステップで起こることがわかった。(1)DABのアミノ基がプロトン化されたDAB三塩酸塩が沈殿し、(2)三塩酸塩と塩化物イオンがアニオン交換し、[RhCl]が濃塩酸溶液中の主化学種であることがわかった。一方HCl濃度が5M未満ではDABによる配位錯体形成を介してPdとPtを回収することができるので、Rh(III)とPd(II)やPt(IV)を効果的に分離する要因であると思われる。
鈴木 智也*; 成田 弘一*; 尾形 剛志*; 鈴木 英哉; 松村 達郎; 小林 徹; 塩飽 秀啓; 矢板 毅
Solvent Extraction Research and Development, Japan, 26(1), p.11 - 19, 2019/06
被引用回数:3 パーセンタイル:13.55(Chemistry, Multidisciplinary)-トリメチルグリシン官能基を持つスチレンジビニルベンゼンポリマー(AMP03)を用いて、硝酸溶液からの2価のパラジウムイオン(Pd(II))の吸着試験を実施した。さらに、FT-IR、及びEXAFSによって、官能基のPd(II)に対する吸着のメカニズムを明らかにした。
鈴木 智也*; 尾形 剛志*; 田中 幹也*; 小林 徹; 塩飽 秀啓; 矢板 毅; 成田 弘一*
Metals, 8(7), p.558_1 - 558_10, 2018/07
被引用回数:13 パーセンタイル:55.72(Materials Science, Multidisciplinary)白金族元素の精製は主に溶媒抽出法によって行われるが、Ruは蒸留によってRuOとして回収される。この蒸留による方法を抽出法に置き換えることができれば、精製プロセスの簡素化が期待される。本研究では、Ruの効率的な抽出法を開発することを目的に、Ruの塩酸中での化学種についてUV-vis分光およびEXAFS法で分析し、N-2-ethylhexyl-bis(N-di-2-ethylhexyl-ethylamide) amine (EHBAA)によって抽出されたRuの特性を調査した。その結果、塩酸濃度が0.5から10MにおけるRuの主たる化学種は、塩酸濃度の上昇に伴って[RuCl(HO)]から[RuCl]へと変化することが明らかとなった。また、EHBAAによるRuの抽出率は塩酸濃度の上昇に伴って増加し、塩酸濃度が5Mで最大に達し、さらに塩酸濃度が上昇すると抽出率は下降に転ずる。抽出錯体のEXAFS分析の結果からは、Ruの内圏には5つのClと1つのHOが存在することが示された。さらに塩酸濃度が増加したときのEHBAAによるRuの抽出率の変化と[RuCl(HO)]の分布曲線がよく似ていることから、EHBAAは[RuCl(HO)]を抽出すると考えられる。
井口 将秀; 齊藤 徹; 河野 勝己; 千田 豊; 中嶋 秀夫; 小川 剛史*; 片山 義紀*; 小方 大成*; 峯村 敏幸*; 渡海 大輔*; et al.
Fusion Engineering and Design, 88(9-10), p.2520 - 2524, 2013/10
被引用回数:10 パーセンタイル:60.75(Nuclear Science & Technology)ITER TF構造物は高さ約17m,幅約9mのD型形状の大型溶接鋼構造物であり、その最大溶接深さは260mmとなる。TF構造物溶接時には、極低温における溶接継手強度を確保するために、溶接材料として、核融合炉設備規格 超伝導マグネット構造規格で規定されているFMYJJ1を、また、構造材料として4種類の窒素添加強化型ステンレス鋼を使用する計画である。原子力機構では、溶接深さと構造材料の組合が極低温における溶接継手の機械特性に与える影響を調査するために、FMYJJ1を使用した片側狭開先TIG溶接により、板厚40mmの4種類の構造材料の組合せ、及び板厚200mmの2種類の構造材料を組合せた溶接継手を製作し、これらの溶接継手から引張試験片を製作した。これらの試験片を用いて実施した4Kでの引張試験の結果、低い強度の構造材料を使用すると溶接継手の強度も低下するが、構造材料の強度を下回らないことがわかった。また、200mm厚さの溶接継手における引張試験結果では、継手強度は板厚方向にほぼ一定であり、極厚材の溶接においても実機TF構造物製作に十分な継手強度を確保できることを明らかにした。
井口 将秀; 千田 豊; 高野 克敏; 河野 勝己; 齊藤 徹; 中嶋 秀夫; 小泉 徳潔; 峯村 敏幸*; 小方 大成*; 小川 剛史*; et al.
IEEE Transactions on Applied Superconductivity, 22(3), p.4203305_1 - 4203305_5, 2012/06
被引用回数:9 パーセンタイル:47.41(Engineering, Electrical & Electronic)日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)はITERの建設において、トロイダル磁場(TF)コイル構造物(以下、TF構造物)すべての製作を担当する。TF構造物調達活動の一環として、原子力機構はTF構造物の材料品質確認、及び製作技術の検討及び検証活動を行ってきた。原子力機構は日本機械学会が2008年に制定した核融合炉設備規格超電導マグネット構造規格(JAME S KA1 2008)(以下、JSME規格)のTF構造物製造適用を提案しており、JSME規格の実用性を検証するために、実規模試作用に製作したステンレス鍛鋼品に対する品質確認試験を4Kにて実施し、JSME規格との比較を実施した。また、製作技術検討活動として、FMYJJ1ワイヤを使用した狭開先TIG溶接の溶接施工法の検証、溶接能率向上のためのFMYJJ1以外のワイヤの適用可能性の検討、TF構造物施工法確認のためにTF構造物の小規模及び実規模試作を行ってきた。本発表ではこれらの活動結果について報告する。
井口 将秀; 千田 豊; 中嶋 秀夫; 小川 剛史*; 片山 義紀*; 小方 大成*; 峯村 敏幸*; 宮部 圭介*; 渡海 大輔*; 新見 健一郎*
低温工学, 47(3), p.193 - 199, 2012/03
ITERトロイダル磁場コイル構造物(TF構造物)は、高さ約17m,幅約9mのD型形状の大型溶接鋼構造物である。原子力機構はITER建設においてTF構造物すべての製作を担当しており、実機TF構造物製作に向けた製作技術の実証と合理化を目的として、実規模試作を行ってきた。原子力機構は日本機械学会が2008年に制定した核融合炉設備規格超伝導マグネット構造規格(以下、JSME規格)のTF構造物製作への適用を提案しており、JSME規格に基づいて製造したステンレス鍛鋼品の品質確認試験を実施し、JSME規格の実機用材料製造への適用性を確認した。また、TF構造物製作に必要な溶接施工法の検証を実施し、その溶接品質を確認するとともに、実規模試作を実施することで、これまで不明瞭であった溶接変形挙動を明らかにし、実機TF構造物の製作に目途を付けることができた。
中村 勤也*; 尾形 孝成*; 菊地 啓修; 岩井 孝; 中島 邦久; 加藤 徹也*; 荒井 康夫; 魚住 浩一*; 土方 孝敏*; 小山 正史*; et al.
日本原子力学会和文論文誌, 10(4), p.245 - 256, 2011/12
「常陽」での照射試験を目的として、金属ウラン,ウラン-プルトニウム合金及び金属ジルコニウムを原料に、U-20Pu-10Zr燃料スラグを射出鋳造法により製造した。いずれの燃料スラグも表面は滑らかであり、合金組成,密度,長さ,直径,不純物濃度も製造仕様を満足した。製造した燃料スラグを、熱ボンド材,熱遮へい体及び要素反射体とともに下部端栓付被覆管に充填してTIG溶接を行い、ナトリウムボンド型金属燃料要素6本を組み立てた。これらの燃料要素は、今後B型照射燃料集合体に組み立てられた後、「常陽」に装荷されて国内で初めてとなる金属燃料の照射試験が実施される予定である。
仙波 毅; 尾方 伸久; 長谷川 健
PNC TN7410 92-044, 25 Pages, 1993/03
動燃事業団では、岩盤内の割れ目帯の位置・規模・その透水性を非破壊で評価する手法の開発を行っており、その一環として、OECD/NEAストリパ計画で開発された試錐孔内用レーダーシステム(RAMAC)を導入し、日本の岩盤に対する適用性を把握するために、様々な岩種を対象として適用試験を実施してきた。本稿では、日本の岩盤を対象に実施したレーダー法シングルホール(反射法)調査結果について延べる。その結果を要約すると以下のようになる。(1)各試錐孔について、レーダー反射図を作成し、反射面を抽出した。(2)電磁波の岩盤内伝播距離は、岩盤の電気比抵抗に影響をうける。すなわち、岩盤の電気比抵抗が100 m程度であれば、周波数が20MHzのアンテナで試錐孔から5m程度の範囲までしか調査を行うことができないが、岩盤の電気比抵抗が10,000 m程度であれば同じアンテナで試錐孔から100m程度の範囲まで調査可能であることがわかった。
尾方 伸久; 大澤 英昭; 仙波 毅; 柳沢 孝一
PNC TN7410 92-001, 48 Pages, 1992/01
岩盤中の地下水の流れを評価するためには、まず岩盤中の水理地質構造をモデル化する必要がある。そのモデルを構築する際には、地形や水理地質構造をいかに簡略化するか、境界条件や透水係数などの水理定数をいかに現実にそくした妥当な値に設定するのかが重要な課題となる。結晶質岩盤中の透水係数は、岩盤中のさまざまな割れ目の要因(性状、密度、ネットワーク等)に支配されていると考えられている。その透水係数と各割れ目特性との関係を明らかにするため、多変量解析の手法(重回帰分析、クラスター分析)を用いて解析をおこなった。用いたデータは、岐阜県東濃地域の花崗岩中に掘削された2孔の試錐孔で得られたAN-1,32点・AN-3,24点での透水係数測定値とそれに対応する物性値である。その結果、以下の事が明らかとなった。(1)本地域の花崗岩の透水性を支配しているのは、岩盤中に発達する割れ目系であり、その割れ目の数、割れ目の開口程度、充填鉱物の有無などの違いにより透水係数値が決定づけられている。(2)クラスター分析によって各透水係数に対応する分類構造が得られた。各クラスターにはそれぞれ異なった透水係数が分布し、その特性は割れ目の開口、充填幅、交差本数、孔井の割れ目卓越方向などに支配されている。(3)クラスター分析の結果、同一透水係数を示す異なった試験区間でも、割れ目性状が微妙に異なっている場合がある。したがって、透水係数値のみで分類するのではなくほかの特性も考慮した分類が必要である。今回実施したような統計解析手法を用いて解析をおこなうには、使用したデータ数では不十分であり、現在の解析精度には若干問題が残る。今後データの集積を図るとともに再解析をおこなう予定である。
鈴木 智也*; 尾形 剛志*; 成田 弘一*; 塩飽 秀啓; 谷田 肇; 小林 徹; 矢板 毅
no journal, ,
塩酸水溶液中の三価白金族イオン(Ru(III), Rh(III), Ir(III))は、[MCl(HO)]を形成することが知られている。これらの金属イオンはHOとClの配位子交換が遅いことやRuやIrに関してはIV価に酸化されることもあり、極めて複雑な錯形成挙動を示す。また金属イオンは外圏における水和が強く、難抽出性の化学種としても知られており、三価白金族イオンの抽出挙動の把握は難しく、そのメカニズムに関する知見はほとんど報告されていない。我々のこれまでの研究から、Ru(III)抽出ではトリオクチルアミン(TOA)とジヘキシルスルフィド(DHS)の協同抽出系の有用性を見出している。今回はこの協同抽出系におけるメカニズムを明らかにするため、放射光XAFS等を用いて、有機相中におけるRu(III)錯体の構造について検討した。有機相中のRu(III)錯体は、SPring-8に設置したJAEA専用ビームラインBL22XUに於いて、QuickXAFS透過法により分析した。塩酸水溶液中のRu(III)抽出率では、DHSやTOAの単独系ではRu(III)は抽出されないが、TOA及びDHSを混合することで大幅に抽出率が上昇したことから、[RuCl(HO)]の抽出反応への寄与が示唆される。しかしTOA-DHS混合溶液のUV-Visスペクトルより、抽出後のRu(III)錯体の内圏構造は[RuCl(HO)]や[RuCl]とは異なることが示唆された。これに放射光XAFS測定結果を組み合わせると、抽出系に関してはRu(III)の内圏に存在するClあるいはSの数が増えたことを示しており、TOA-DHS混合溶液中のRu(III)錯体が[RuCl]や[RuCl(DHS)]として存在していることを示唆された。Ru(III)-ClとRu(III)-Sは配位原子の原子番号が隣接し結合距離も類似しており、EXAFSスペクトルから[RuCl]と[RuCl(DHS)]-の区別は難しいが、電荷の中和を考慮すると[RuCl(DHS)](H・TOA)として抽出されると考えられる。
鈴木 伸一; 阿久津 和宏; 矢板 毅; 岡本 芳浩; 尾形 剛志*; 竹下 健二*; 稲葉 優介*; 池田 篤史; 小林 徹; 緒明 博*; et al.
no journal, ,
TPEN-NIPAゲルを多孔質ガラス粒子に塗布した吸着剤によるアメリシウム:Am(III)のユウロピウム:Eu(III)からの分離特性について検討した。同吸着剤を用いるカラムクロマトグラフィーでの分離特性試験からは、pH4から5程度の水溶液からAm(III)が効率よく吸着し、Eu(III)からの分離が可能であることがわかった。pH5程度の条件下におけるイオンの存在状態をEXAFSにより解明したところ、Eu(III)の周りには水のみが存在し、水和錯体として吸着剤と相互作用している一方、Am(III)の模擬であるd電子系イオンであるカドミウム:Cd(II)イオンは、一部吸着剤の窒素の直接的な配位が確認された。これらの結果から、Am(III)とEu(III)との分離においては水と吸着剤との競争反応が重要な役割を果たしていることを示唆している。
鈴木 伸一; 阿久津 和宏; 矢板 毅; 塩飽 秀啓; 小林 徹; 竹下 健二*; 尾形 剛志*; 稲葉 優介*; 緒明 博*; 森 敦紀*
no journal, ,
TPEN系ゲルを導入した抽出クロマト剤によるAm(III)/Eu(III)吸着・分離特性の検討と、Ln(III)の本抽出クロマト剤に対する吸着機構の考察を行った。本抽出クロマト剤を用いてAm(III)/Eu(III)吸着試験を行った結果、pH=4の溶離液を用いた場合、Am(III)は効率よく吸着するのに対して、Eu(III)の大部分は溶離することが確認された。このことから、pH=4の溶離液を用いることでAm/Euの分離が可能であることが示された。また、クロマト剤に吸着したEu(III)の錯体構造を広域X線吸収微細構造(EXAFS)法により明らかにしたところ、Eu(III)は水和錯体として存在していることが示唆された。したがって、Eu(III)はクロマト剤と水和水を介した弱い相互作用により吸着していることが明らかとなった。
竹下 健二*; 尾形 剛志*; 中野 義夫*; 松村 達郎
no journal, ,
溶媒抽出法やイオン交換法などの分離プロセスでは、目的物質の分離・回収工程において大量の化学物質を必要とすることから大量の二次廃棄物発生は避けられない。そこで、溶媒抽出法に代わる新規抽出技術として感温性高分子ゲルを用いた「温度スイングクロマト分離法」を提案している。この抽出法では、感温性高分子ゲルの温度変化によって起こる体積相転移現象を利用し、ゲルに導入した高機能性配位子(包接化合物)の構造変化によって錯体形成能を制御して、目的金属イオンを高選択抽出する。原理的に目的金属の抽出・回収に化学物質を必要とせず、2次廃棄物をほとんど発生しない。本研究では包接型配位子N,N,N',N'-tetrakis(4-propenyloxy-2-pyridylmethyl)-ethylenediamine (TPPEN)を導入したN-isopropylacrylamide(NIPA)共重合ゲルを用いて、3価アクチノイド(Am(III))とランタノイド(Eu(III))の高選択分離及び3価アクチニドの温度スイング回収について検討した。その結果、ゲルの膨潤状態においてAm(III)がゲルに選択的に抽出され、分離係数は18であった。また、そのゲルを収縮状態にすることによって抽出されたAmの90%を回収することができた。
竹下 健二*; 尾形 剛志*; 中野 義夫*; 松村 達郎; 森 敦紀*
no journal, ,
TPEN誘導体であるTPPEN(N,N,N',N'-tetrakis(4-propenyloxy-2-pyridylmethyl)ethylenediamine)をNIPA(poly-N-isopropylacrylamide)と共重合した感温性ゲルを用いた温度スイング抽出法によって、Am(III)とEu(III)の抽出分離を試みた。ゲル膨潤状態(5C)においてEu(III)からのAm(III)の分離が観察され、その分離係数はpH5.2において18であった。この抽出されたAm(III)の90%以上が、膨潤状態(5C)から収縮状態(40C)へのゲルの体積相転移に伴って放出された。このゲルによるAm及びEuの抽出に対する放射線の影響について、線照射(10kGy)と核種(Cm)の長期吸着試験によって評価した。その結果、このTPPEN-NIPAゲルは、これらの試験において損傷は観察されなかった。これらの結果は、この温度スイング抽出法が分離変換技術の確立に不可欠なMA分離プロセスに適用可能であることを示唆している。
松村 達郎; 竹下 健二*; 尾形 剛志*; 森 敦紀*
no journal, ,
4f/5f元素相互分離(MA/Ln分離)のため新規配位子としてTPENの疎水化誘導体の検討を進めている。TPENのピリジン環をキノリン環に置き換えたTQENを合成し、その特性を確認した。その結果、良好に疎水化を達成していることを確認したが、抽出性能についてはAmとEuについて有意な抽出を認められなかった。これは、キノリン環が嵩高いため、錯体を形成する際に有効な包接構造をとることを阻害することが原因と考えられる。今後、MA/Ln分離プロセスに有効に適用可能な配位子の開発を進めるには、錯体の立体構造の詳細な検討が必要であろうと考えられる。