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竹田 武司; 柴田 大受
JAEA-Review 2024-040, 29 Pages, 2024/09
日本の第6次エネルギー基本計画では、2050年までのカーボンニュートラルを目指したエネルギー政策の道筋を示すことが重要なテーマとなっている。2030年に向けた日本の原子力研究開発(R&D)への政策対応には、国際連携による2030年までの小型モジュール炉(SMR)技術の実証が盛り込まれている。これを踏まえ、脱炭素化と経済成長を同時に達成するGreen Transformation (GX)の実現に向けて、今後10年を見据えた取組の基本方針が取りまとめられた。海外に目を向けると、米国、カナダ、欧州、中国、ロシアを中心に、重工メーカーやR&D機関のみならずベンチャー企業も含めて、国際的にSMRのR&D活動が活発である。このような状況下で、原子力機関(NEA)の原子力施設安全委員会(CSNI)は、SMRの安全性への影響評価を支援するために、SMRに関する専門家グループ(EGSMR)を招集した。EGSMRの取組として、SMRの導入や研究活動に関する最新情報の収集を主目的とした数回にわたるアンケートへの回答の提出が求められた。これに対して、筆頭著者から、JAEAに加えて日立GEニュークリア・エナジー株式会社、三菱重工業株式会社からの情報に基づき回答した。アンケートに対する日本の回答の多くは、CSNI Technical Opinion Paper No.21 (TOP-21)のベースとなる情報である。本報告書では、整理した公開可能な日本のアンケート回答と付加情報を示し、TOP-21の記載内容の一部を補完した。これにより、EGSMRの活動(2022-2023年)を中心とした日本におけるSMRに関するR&Dの調査結果をまとめた。本報告書は、SMRに関する今後の国際協力の議論や国内外の原子力分野の人材育成に役立てることを目的としている。この中で、日本の革新炉のR&Dの主なトピックスとして、高温ガス炉(HTGR)とナトリウム冷却高速炉(SFR)に関して、実用化に必要な技術と現状のギャップを同定している。また、HTGRと水素製造施設の相互接続に関連して、水素製造施設からの可燃性ガスの漏洩と異常発生が安全性に与える影響等について整理している。
深谷 裕司; 後藤 実; 柴田 大受
IAEA-TECDOC-2040, p.133 - 136, 2023/12
日本では、エネルギー資源の確保を目的として、高速増殖炉によるマルチリサイクル核燃料サイクルの確立に向けたバックエンド技術の開発を進めてきた。高速増殖炉開発は基礎研究にとどまっているが、軽水炉燃料サイクルに関しては、ウラン燃料の再処理技術や処分技術をその過程で完成させた。これらの技術は事業者に引き継がれ、実用化されつつある。現在、日本では、高温工学試験研究炉(HTTR)、商用高温ガス炉概念であるガスタービン高温炉設計GTHTR300、及び関連する再処理技術が完成し、国内実証炉計画が進行中である。このような背景から、日本における代表的な核燃料サイクル政策は再処理であるが、日本では、商用高温ガス炉の利用を拡大するために、様々な核燃料サイクルシナリオを検討してきた。そこで、本研究では、そのシナリオと関連技術の開発状況について紹介する。
上出 英樹; 川崎 信史; 早船 浩樹; 久保 重信; 近澤 佳隆; 前田 誠一郎; 佐賀山 豊; 西原 哲夫; 角田 淳弥; 柴田 大受; et al.
次世代原子炉が拓く新しい市場; NSAコメンタリーシリーズ, No.28, p.14 - 36, 2023/10
高速炉、高温ガス炉を始めとする次世代原子炉の開発が進み、日本を含む世界の電力あるいは熱利用など産業利用の市場への貢献が目前となっている。ここでは、世界の動向を含め日本の開発状況についてまとめ、特に第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)の活動ならびに日本の高速炉、高温ガス炉、世界のSMRについて開発の現状を解説した。
篠原 正憲; 角田 淳弥; 柴田 大受; 平田 勝
JAEA-Evaluation 2022-006, 198 Pages, 2022/11
日本原子力研究開発機構(以下、「原子力機構」)は、外部有識者からなる高温ガス炉及び水素製造研究開発・評価委員会において、第3期中長期計画期間(平成27年度から令和3年度)の事後評価及び第4期中長期計画期間(令和4年度から令和10年度)の事前評価を受けた。その結果、第3期中長期計画期間の事後評価については、技術系委員10名のうち、2名の委員がS評価、7名の委員がA評価及び1名の委員がB評価とし、総合評価としてA評価を受けた。また、人文・社会系委員1名の委員がB評価、1名の委員がC評価とし、総合評価としてB評価を受けた。第4期中長期計画期間の事前評価については、複数の評価委員が「要改善」と評価した項目はあるものの、過半の委員が妥当と判断した。本報告書は高温ガス炉及び水素製造研究開発・評価委員会の構成、評価項目、評価結果及び原子力機構の措置について記載したものである。
篠原 正憲; 角田 淳弥; 稲葉 良知; 柴田 大受
第59回X線材料強度に関する討論会講演論文集, p.22 - 28, 2022/11
地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出量を削減する「脱炭素化」が世界的に取り組まれる中、日本は2050年カーボンニュートラルの達成と再生可能エネルギーの主力電源化を目標として掲げている。高温ガス炉は950Cの高温の熱を供給可能な原子炉であり、水素製造、高効率発電、化学・石油プラントへの高温蒸気供給、低温排熱を利用した海水淡水化、地域暖房など、多様かつ高効率の熱利用が期待されている。発電分野のみならず、運輸、製鉄等の原子力エネルギーを未利用の分野で高温ガス炉システムを利用することにより、温室効果ガスの排出量削減が期待できる。本稿では、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献しうる原子力システムとして、高温ガス炉の実用化に向けた日本原子力研究開発機構の取組みを紹介する。
柴田 大受; 西原 哲夫; 久保 真治; 佐藤 博之; 坂場 成昭; 國富 一彦
Nuclear Engineering and Design, 398, p.111964_1 - 111964_4, 2022/11
被引用回数:2 パーセンタイル:48.47(Nuclear Science & Technology)日本原子力研究開発機構は、高温ガス炉の研究開発を進めている。原子炉技術の研究開発は、高温工学試験研究炉(HTTR)を用いて行われている。HTTRは2021年に大規模な補強無しで運転再開された。2022年1月には、OECD/NEAのLOFCプロジェクトにおける安全性実証試験を実施した。原子力機構は、熱化学法ISプロセスによるカーボンフリー水素製造の研究開発を進めている。また、高温ガス炉の実用化に向けた設計研究を行っている。HTTRによる水素製造の実証に関する新たな試験プログラムが開始された。2030年までの最初の実証のため、メタンの水蒸気改質による水素製造システムが選定された。
Shaimerdenov, A.*; Gizatulin, S.*; Dyussambayev, D.*; Askerbekov, S.*; 植田 祥平; 相原 純; 柴田 大受; 坂場 成昭
Nuclear Engineering and Technology, 54(8), p.2792 - 2800, 2022/08
被引用回数:7 パーセンタイル:89.36(Nuclear Science & Technology)In the core of the WWR-K reactor, a long-term irradiation of tri-structural isotopic (TRISO)-coated fuel particles (CFPs) with a UO kernel was carried out under normal operating conditions of the high-temperature gas-cooled reactor (HTGR). This TRISO fuel was attained at the temperature of 950 to 1,100 C, and the uranium burnup of 9.9% FIMA (fission per initial metal atom) during the irradiation. The release of the gaseous fission product from the fuel was measured in-pile, and its release-to-birth (R/B) ratio was evaluated using the model developed in the High-Temperature Engineering Test Reactor (HTTR) project. After the irradiation test, fuel compacts were subjected to electric dissociation and nondestructive inspections such as X-ray radiography and gamma spectrometry. Finally, it was concluded that integrity of the TRISO fuel irradiated at approximately 9.9% FIMA was demonstrated, and a low fuel failure fraction and a low R/B measured with krypton-88 indicated good performance and reliability of the high burnup TRISO fuel.
篠原 正憲; 角田 淳弥; 柴田 大受; 平田 勝
JAEA-Evaluation 2022-001, 104 Pages, 2022/06
日本原子力研究開発機構(以下、「原子力機構」)は、外部有識者からなる高温ガス炉及び水素製造研究開発・評価委員会において、令和2年度の年度評価、令和3年度の研究計画及び第3期中長期計画(平成27年度から令和3年度)の見込評価に関する評価を受けた。その結果、年度評価については、技術系委員10名のうち、1名の委員がS評価、8名の委員がA評価及び1名の委員がB評価とし、総合評価としてA評価を受けた。また、人文社会系委員2名の委員がB評価とした。一方、第3期中長期計画の見込評価については、技術系委員10名のうち、1名の委員がS評価、8名の委員がA評価及び1名の委員がB評価とし、総合評価としてA評価を受けた。また、人文社会系委員2名の委員がB評価とした。本報告書は高温ガス炉及び水素製造研究開発・評価委員会の構成、評価項目、評価結果及び原子力機構の措置について記載したものである。
武田 哲明*; 稲垣 嘉之; 相原 純; 青木 健; 藤原 佑輔; 深谷 裕司; 後藤 実; Ho, H. Q.; 飯垣 和彦; 今井 良行; et al.
High Temperature Gas-Cooled Reactors; JSME Series in Thermal and Nuclear Power Generation, Vol.5, 464 Pages, 2021/02
本書は、原子力機構における今までの高温ガス炉の研究開発の総括として、HTTRの設計、燃料、炉内構造物や中間熱交換器などの要素技術の開発、出力上昇試験、950Cの高温運転、安全性実証試験などの運転経験及び成果についてまとめたものである。また、HTTRでの知見をもとに、商用炉の設計、高性能燃料、ヘリウムガスタービン、ISプロセスによる水素製造などの要素技術開発の現状について記述しており、今後の高温ガス炉の開発に非常に有用である。本書は、日本機械学会の動力エネルギーシステム部門による化石燃料及び原子力によるエネルギーシステムの技術書のシリーズの一冊として刊行されるものである。
上出 英樹; 柴田 大受
NREL/TP-6A50-77088 (Internet), p.35 - 38, 2020/09
The flexibility of nuclear technology is one of the significant capabilities for advanced reactors when we consider their commercialization. JAEA has several research and development activities aiming at innovation that will provide further flexibility, including a sodium-cooled fast reactor (SFR) and an HTGR. These activities are as follows: (1) Development of an innovative design evaluation code system for SFR and other advanced reactors, (2) Codes and standards for maintenance of innovative reactors, (3) Fast neutron irradiation using the experimental fast reactor, Joyo, (4) Demonstration of higher safety performance of HTGR and the capability of its application to hydrogen production. The details of these activities and how they contribute to improving the flexibility (i.e., operational flexibility, deployment flexibility, and product flexibility) of advanced reactors, such as SFR and HTGR, are explained in this paper.
柴田 大受; 佐藤 博之; 植田 祥平; 竹上 弘彰; 高田 昌二; 國富 一彦
2018 GIF Symposium Proceedings (Internet), p.99 - 106, 2020/05
第四世代原子力システムの一つである超高温ガス炉(VHTR)システムについて、原子力研究開発機構で実施している研究開発活動の進捗についてまとめた。高温工学試験研究炉(HTTR)は2010年に原子炉出口温度950Cでの50日間連続運転を達成し、その際、被覆粒子燃料の優れた品質を示した。また、高燃焼度化に向けてZrC被覆粒子の開発を進めている。炉内の構造物に用いる黒鉛の耐酸化性の向上のため、黒鉛へのSiC被覆について中性子照射の影響を調べている。将来の商用高温ガス炉コジェネレーションシステムについて、国際的な安全基準の整備を進めている。HTTRは新規制基準の適合性審査を経て、2019年に再稼働を見込んでいる。ISプロセス連続水素製造試験設備では、2016年に31時間の連続試験が完了した。HTTRでの水素製造-ガスタービン試験に向けた基本設計を完了した。
西原 哲夫; 柴田 大受; 稲葉 良知
保全学, 18(1), p.30 - 34, 2019/04
世界の高温ガス炉開発の現状、並びに、それらの国と日本原子力研究開発機構が進めている協力について説明する。そして、これらの協力を通した日本の高温ガス炉技術の国際展開の考えを示す。
柴田 大受; 水田 直紀; 角田 淳弥; 坂場 成昭; 大崎 貴士*; 加藤 秀樹*; 井澤 祥一*; 武藤 剛範*; Gizatulin, S.*; Shaimerdenov, A.*; et al.
Proceedings of 9th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2018) (USB Flash Drive), 7 Pages, 2018/10
高温ガス炉(HTGR)の炉内構造物には黒鉛が用いられている。空気侵入事故による黒鉛構造物の酸化は、安全性の観点から重要な課題である。黒鉛表面へのSiC被覆は、黒鉛の耐酸性を向上させる有望な技術である。しかし、炉内構造物への適用については、この材料の高温、中性子照射に対する健全性を確認することが重要である。原子力機構と日本の黒鉛メーカは耐酸化黒鉛の研究開発を進めてきた。原子力機構とカザフスタンINPとは、ISTCパートナープロジェクトの枠組みを利用して耐酸化黒鉛に対する中性子照射効果について調べた。本報は、SiC被覆を施した耐酸化黒鉛への中性子照射後試験の結果について述べるものである。耐酸化黒鉛のうち、ある一つの銘柄については照射後の酸化試験において優れた特性を示した。
Shaimerdenov, A.*; Gizatulin, S.*; Kenzhin, Y.*; Dyussambayev, D.*; 植田 祥平; 相原 純; 柴田 大受
Proceedings of 9th International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2018) (USB Flash Drive), 6 Pages, 2018/10
高温ガス炉燃料の100GWd/tへの高燃焼度化開発のため、原子力機構の協力の下、国際科学技術センター(ISTC)のプロジェクトにおいて、カザフスタン核物理研究所(INP)が高温ガス炉燃料試料の照射試験並びに照射後試験を実施している。新設計の四層三重(TRISO)被覆燃料粒子を円筒状の黒鉛マトリックス燃料コンパクトに成形した照射燃料試料は、日本において製作された。ヘリウムガススウィープ照射キャプセルの設計製作はINPが実施し、WWR-K照射炉を用いての照射試験が2015年4月から実施された。次の段階として、照射済み燃料試料の照射後試験が2017年2月にISTCの新規プロジェクトとして開始された。照射済み燃料試料の非破壊試験および破壊試験に係る様々な照射後試験技術がINPによって開発された。本報では、高燃焼度化TRISO燃料の照射後試験のために開発した技術並びに試験結果について中間報告する。
水田 直紀; 角田 淳弥; 柴田 大受; 大崎 貴士*; 加藤 秀樹*; 井澤 祥一*; 武藤 剛範*; Gizatulin, S.*; 坂場 成昭
炭素材料科学の進展; 日本学術振興会第117委員会七十周年記念誌, p.161 - 166, 2018/10
原子力機構及び日本の黒鉛メーカ4社(東洋炭素,イビデン,東海カーボン,新日本テクノカーボン)は、高温ガス炉の炉内構造材料に用いる黒鉛の耐酸化性を向上させることを目的に、CVD法によりSiCコーティングを施した耐酸化黒鉛の研究を進めている。本報では、国際科学技術センター(ISTC)のパートナープロジェクトとして実施した、カザフスタン共和国の核物理研究所(INP)のWWR-K炉による耐酸化黒鉛の中性子照射試験について紹介する。照射試験に先立ち、各試験片に対して未照射条件での酸化試験を行った結果、耐酸化試験片全てにおいて、CVD法により施されたSiCコーティングが十分な耐酸化性を示すことがわかった。中性子照射試験は終了しており、今後はWWR-Kホットラボでの炉外酸化試験を行う計画である。
西原 哲夫; Yan, X.; 橘 幸男; 柴田 大受; 大橋 弘史; 久保 真治; 稲葉 良知; 中川 繁昭; 後藤 実; 植田 祥平; et al.
JAEA-Technology 2018-004, 182 Pages, 2018/07
日本における高温ガス炉の研究開発は1960年代後半に開始した。原子力機構は国内メーカーと協力して、システム設計, 燃料, 黒鉛, 金属材料, 原子炉技術, 高温機器, 燃料・黒鉛の照射試験、高温熱利用技術等の研究開発を実施してきた。1990年に日本初の高温ガス炉である高温工学試験研究炉HTTRの建設を開始し、1998年に初臨界に達し、その後、様々な試験運転を行い、日本の高温ガス炉技術を確立するとともに、高温ガス炉が有する固有の安全性を実証してきた。本報告書では、高温ガス炉システムの設計例、日本が有する世界最高の高温ガス炉技術及びHTTRの建設、運転保守を通じて得られた知見、熱利用技術について紹介する。
相原 純; 植田 祥平; 後藤 実; 稲葉 良知; 柴田 大受; 大橋 弘史
JAEA-Technology 2018-002, 70 Pages, 2018/06
HTFPコードは、高温ガス炉(HTGR)の核分裂停止後の核分裂生成物(FP)の燃料棒からの追加放出量を計算するコードである。軽微な変更を施したFORNAX-AコードもHTFPコードと同様の計算が可能である。そこで、本報告において軽微な変更を施したFORNAX-Aコードを用い、HTFPコードとのCsの放出挙動に関する結果の比較を行った。軽微な変更を施したFORNAX-Aコードによる計算結果から評価した被覆燃料粒子(CFP)からのCs-134の放出定数は、HTFPコードにおけるデフォルト値とはかなり異なることがわかった。
深谷 裕司; 笠原 清司; 水田 直紀; 稲葉 良知; 柴田 大受; 西原 哲夫
JAEA-Research 2018-004, 38 Pages, 2018/06
高温ガス炉導入検討のための需要調査及び熱バランスの検討を行った。はじめに、先行研究の需要調査に対する整理を行った。次に、高温ガス炉の商用炉設計であるGTHTR300の熱バランスとその特徴について調べ整理した。これらの情報を踏まえ、現在の日本の需要に見合う高温ガス炉導入基数を算出した。また、今後の研究の発展に備え、熱バランス評価コードの整備も行った。
國富 一彦; 西原 哲夫; Yan, X.; 橘 幸男; 柴田 大受
日本原子力学会誌ATOMO, 60(4), p.236 - 240, 2018/04
優れた安全性を有し、950Cの高温熱が取り出せる黒鉛減速ヘリウム冷却型の熱中性子炉である高温ガス炉は、二酸化炭素の排出削減を目的に、発電以外の多様な産業における熱利用が期待されている。日本原子力研究開発機構では、高温工学試験研究炉(HTTR)により高温ガス炉の安全性を実証するとともに、熱利用系の実証に向けた研究開発を進めている。また、産官学と連携して我が国の高温ガス炉技術の国際展開に向けた活動を進めている。本報では、高温ガス炉に関する研究開発の状況及び国内外との協力について紹介する。
本多 友貴; 稲葉 良知; 中川 繁昭; 山崎 和則; 小林 正一; 青野 哲也; 柴田 大受; 石塚 悦男
JAEA-Technology 2017-013, 20 Pages, 2017/06
崩壊熱は高温ガス炉の代表的な事象である減圧事故時の高温ガス炉の固有の安全性を示す上で重要な因子である。これまで、安全評価で使用する崩壊熱については、旧原子力安全委員会の安全審査指針に基づき、十分な保守性を考慮した評価式を用いてきた。一方で、社会的ニーズである確率論的リスク評価実施に向けて不確実さ評価の重要性が高まっている。これを受けて、原子力機構では、高温工学試験研究炉(HTTR)を活用して不確実さ評価手法の確立を目指した研究を進めているが、本検討を進めるにあたり参照値となる崩壊熱データが必要となった。しかしながら、これまで、ブロック型高温ガス炉を対象とした崩壊熱最適評価手法の適用性確認に必要なデータは存在していない。そこで、HTTRを用いて、実炉データに基づく崩壊熱の評価を実施し、崩壊熱最適評価手法の適用性確認に必要なデータ取得を目指す。一連の試験の初めとして、平成28年度2月に、長期運転をしていないHTTRを用いて、崩壊熱が無い理想的な条件の下、崩壊熱評価の適用性確認試験(コールド試験)実施し、高温ガス炉の残留熱除熱特性データを取得した。本報告書では、実炉データに基づく崩壊熱の評価手法の提案をすると共に、当該評価に必要となる原子炉の残留熱除熱特性評価手法の検証について報告する。