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論文

第19回国際熱年代学会議開催(Thermo2025)開催報告

長谷部 徳子*; 田上 高広*; 末岡 茂

地質学会News, 29(1), p.12 - 13, 2026/01

2025年9月14日-20日に第19回国際熱年代学会議(Thermo2025)を金沢市商工会議所で開催したため概要を報告する。本会議は、口頭セッションとポスターセッションからなる研究発表と、中日と前日の巡検、前後のショートコースで構成された。会議には24カ国から205人が参加し、ヨーロッパ以外で開催された国際熱年代学会議では過去最多となった。セッションは基礎研究と応用研究を含む11個に分けられ、2件の特別講演を含めると176件の研究発表が行われた。次回のThermo2027は、カナダのBanffで開催される予定である。

論文

地殻の高温領域と山地の隆起形態の関連性; 飯豊山地における事例

福田 将眞; 末岡 茂; 中嶋 徹; Kohn, B.*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (38), p.17 - 21, 2025/12

飯豊山地は非火山性山地でありながら、電磁探査や地震波トモグラフィーの結果探査および、高$$^{3}$$He/$$^{4}$$He比の温泉の湧出から、地下にマグマだまり等の深部起源の高温流体の存在が推定されている。近年、東北日本弧の温度構造とレオロジーを仮定した地球物理学的モデリングの結果が報告され、火山フロントに沿った高温領域における応力集中により、奥羽脊梁山地の現地系の分布や形成過程が説明されることが示された。本研究では、飯豊山地を対象として、山地横断方向に低温領域の熱年代法を適用し、その空間的傾向と高温領域の分布との対応関係を検証することを試みた。熱年代法としては、アパタイト(U-Th-Sm)/He法、アパタイトフィッション・トラック法、ジルコン(U-Th)/He法(以下、順に、AHe法、AFT法、ZHe法)を適用した。先行研究および本研究で新たに得られた年代値を統合すると、17.0$$sim$$2.7MaのAHe年代(n=9)、39.2$$sim$$3.6MaのAFT年代(n=3)、41.2$$sim$$4.4MaのZHe年代(n=7)となった。これらの熱年代データの空間的傾向に着目すると、標高が高い山地中央に向かって若返る傾向を示した。この傾向は断層地塊のブロック状隆起による年代の若返りでは説明できず、先行研究で提案された奥羽脊梁山地の南部や南部フォッサマグナ・関東山地のドーム状隆起による年代の若返りと類似する結果である。また、飯豊山地における熱年代値の分布は高温領域と概ね整合的であり、高温領域の隆起要因としての関連性や隆起形態への寄与が示唆される。

論文

段階エッチングによるモナザイトのフィッション・トラック分析; 南極を含む複数の未知試料への適用

浅井 勇人*; 福田 将眞; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (38), p.9 - 12, 2025/12

近年、新たな熱年代計としてモナザイトフィッション・トラック法の実用化に向けた基礎研究が行われている。約50度以下の極めて低い閉鎖温度を持つことが推定されており、一般的な地温勾配を仮定すると数百mオーダーの削剥史の解明に貢献可能であると期待される。本研究では、様々な熱史を持つ複数の形成年代のモナザイトを用いて、トラック長の測定および分布の比較を実施した。用いた試料は、南極から採取された先カンブリア時代およびカンブリア紀のサンプルと、屋久島から採取された中期中新世のサンプルを主に用いた。結果として、先カンブリア時代のモナザイトからはエッチング時間が60分で9.1$$pm$$0.2ミクロンの分布が得らえた。これは先行研究で報告されたJonesetal.(2023)や入山(2024卒論)の結果と比較して有意に長い。本発表では、他の試料についての長さ分布についても報告予定である。

論文

(U-Th)/He熱年代に基づいた佐渡島の花崗岩類の冷却・削剥史

末岡 茂; 福田 将眞; Kohn, B. P.*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (38), p.36 - 40, 2025/12

佐渡島は東北日本弧の背弧側に位置する離島で、鮮新世-第四紀にインバージョンテクトニクスによって形成されたと考えられている。また、日本海東縁変動帯の数少ない陸上露出部でもあり、東北日本弧のネオテクトニクスの研究には好適な地域である。佐渡島の沿岸部には、多段の更新世海成段丘が発達しているが、これらの離水年代と分布高度に基づくと、大佐渡と小佐渡は約30-40万年前以降、南東方向に傾動しながら隆起してきたと推測される。一方、山地の分水嶺は南東側に偏って分布しており、100万年スケールでは逆に北西方向に傾動していた可能性が示唆されている。本研究では、100万年スケールでの北西傾動の有無と、北西から南東に傾動方向が変化した原因を検討するために、佐渡島の花崗岩類を対象に、(U-Th)/He年代法を適用して冷却・削剥史を復元した。大佐渡の1地点(北鵜島)と小佐渡の2地点(川茂、岩首)では後期白亜紀の花崗岩類を採取し、大佐渡の1地点(片辺)では前期中新世の凝灰角礫岩(片辺礫岩)に含まれる花崗岩礫を採取した。(U-Th)/He年代の測定は、アパタイトとジルコンを対象とし、メルボルン大学で実施した。得られた単粒子年代を基に熱史逆解析ソフトを用いて熱史を推定したところ、小佐渡の2地点では約10Ma以前に漸進的な加熱を被った後、数Ma以降に急冷されるという温度変化が共通して得られた。これらはそれぞれ、中新世のリフティングに伴う沈降・堆積と、鮮新世以降の東西圧縮による隆起・削剥を反映していると考えられる。数Ma以降の冷却は、南東側の岩首でより顕著に観られたが、これは100万年スケールでは小佐渡が北西傾動していたというモデルと整合的である。一方、大佐渡の2地点では、最近数Maの急冷は不明瞭であった。この原因として、試料を採取した2地点がいずれも北西側の沿岸部であったため、北西傾動に伴う隆起・削剥量が少ないことに加えて、最近の南東傾動をもたらしている逆断層から見ても下盤側に当たるため、総じて鮮新世以降の隆起・削剥が顕著ではなかったことが考えられる。

論文

(U-Th)/He熱年代学を用いた中国山地の隆起・削剥史の推定

旭 祐輔*; 福田 将眞; 末岡 茂; Kohn, B.*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (38), p.13 - 16, 2025/12

中国山地の隆起はフィリピン海プレートの沈み込みなどの要因が考えられるものの、その詳細なメカニズムについては未解明な部分が残る。そこで、地質時間スケールの隆起・削剥史を推定可能である熱年代学を中国山地に適用する。本研究では、山地スケールでの熱年代学的アプローチを採用し、中国山地東部(広島$$sim$$岡山)の岩石サンプルから分離したアパタイトおよびジルコンに対して(U-Th)/He法(以降、それぞれAHe法、ZHe法)を適用した。結果として、AHe年代では41.0$$sim$$12.7Ma、ZHe年代では74.3$$sim$$15.1Maの年代値が得られ、南から北に向かって若返る傾向が得られた。ただし最北の約13MaのAHe年代は後期新生代の火山岩クラスターの位置に含まれることから、再加熱の可能性が疑われる。今後は18$$sim$$16Maの時計回り回転以降の隆起・削剥が検出される可能性を期待し、更に西側で新たな測線における熱年代法の適用を予定している。

論文

1次元熱移流-拡散-生成方程式に基づく数値モデリングと熱年代学を組み合わせた鮮新世谷川岳花崗岩類の高確度な削剥史

南 沙樹*; 末岡 茂; Malatesta, L. C.*; 福田 将眞; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (38), p.26 - 30, 2025/12

花崗岩は一般的に数km以深の地殻深部で固結するため、固結年代の若い花崗岩が露出する地域では、極めて急速な隆起、削剥が起きている可能性がある。花崗岩の定量的な隆起・削剥速度を推定するためには、主に熱年代学的手法が用いられるが、固結年代の若い花崗岩へ適用する場合、冷却年代は、花崗岩自身の初期冷却と削剥の両方を反映している可能性がある。本研究では、後期中新世-鮮新世の谷川岳花崗岩類が分布する谷川岳地域を対象に、先行研究で報告された熱年代と1次元の熱移流-拡散-生成方程式を用いた貫入プルトンの数値モデリングを組み合わせることで、確度の高い削剥速度の推定を試みた。その結果、約3.3Maのプルトンと約4.0Maのプルトンの1地点では、既報年代に一致するモデル熱史が生成され、それぞれ1.2-1.5mm/yrおよび0.9-1.3mm/yrのモデル削剥速度が得られた。これらの削剥速度はアパタイト(U-Th)/He年代から推定された削剥速度と整合的であり、アパタイト(U-Th)/He年代は初期冷却を反映していないと考えられる。

論文

Applicability of low-temperature thermochronology to the evolution of young ($$<$$$$sim$$5 Ma) orogenic systems: a case study from the Japanese Islands

末岡 茂; 田上 高広*

Progress in Earth and Planetary Science (Internet), 12, p.59_1 - 59_20, 2025/07

 被引用回数:1 パーセンタイル:39.80(Geosciences, Multidisciplinary)

Low-temperature thermochronology, including fission track (FT) and (U-Th-Sm)/He thermochronometry, has been widely used to constrain the exhumation history of orogenic systems over timescales of 10$$^{6}$$-10$$^{8}$$ years. This research employed simple numerical modeling to evaluate the applicability of low-temperature thermochronometry to young orogenic systems uplifted in geologically recent periods such as the Pliocene and Quaternary, such as those in the Japanese Islands. Such orogenic systems are at the younger limit of the applicability because this time scale corresponds to the younger limit of applicability of the major low-temperature thermochronometers and also corresponds to the minimum period required for an orogenic system to be denuded by more than $$sim$$2-3 km after the startof uplift, which is the lower limit detectable by the major low-temperature thermochronometers. Time-temperature paths were generated for varying uplift rates, uplift onsets, and model onsets (equivalent to the rock formation age). These paths were then converted into cooling ages for four thermochronometers: apatite and zircon FT and (U-Th-Sm)/He dating. The calculations were conducted using two models: a constant-elevation model and an increasingelevation model. The modeling results are summarized in look-up tables, illustrating relationships between uplift rates, uplift onsets, rock formation ages and ratios of cooling age and rock formation age. The results indicate that differences in formation age and elevation change minimally impact cooling ages. The modeled dates generally alignwith measured cooling ages in regions where the rate and timing of uplift are well constrained, supporting the reliability of the modeling approach. Consequently, the derived relationships between uplift rates and cooling ages provide a practical method for roughly classifying mountain uplift rates based on cooling ages, without requiring complex simulations. Finally, these relationships were applied to previously reported cooling ages to visualize the distribution of uplift rates across the Japanese Islands over the past few million years. These results provide a benchmark for the low-temperature thermochronological studies, not only in the Japanese Islands, but also in mobile belts around the world that have begun to uplift in the past few million years.

論文

四国山地における低温領域の熱年代データの空間分布とその解釈

福田 将眞; 岡本 晃*; Kohn, B.*; 新正 裕尚*; 末岡 茂; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (37), p.8 - 10, 2024/12

四国山地はフィリピン海プレートの沈み込み帯に平行に分布する非火山性の隆起帯であり、その山地形成過程の解明は南海トラフにおける長期の歪の蓄積・解放メカニズムの制約に資すると期待される。本研究では、地殻浅部(2-6km深度)の熱史・削剥史を推定可能な熱年代法であるアパタイト・ジルコン(U-Th)/He(それぞれ、AHe, ZHe)法およびアパタイトフィッション・トラック(AFT)法を用い、四国山地に分布するペルム紀から中新世の花崗岩類計9点について熱年代分析を試みた。AHeおよびZHe年代測定はメルボルン大学で、AFT年代測定は東濃地科学センターで実施した。年代測定の結果として、8点のAHe年代は約55-7Ma、5点のAFT年代は約90-70Ma、9点のZHe年代は約200-70Maの範囲を示した。これらの値は各手法の閉鎖温度を考えると整合的な関係を示した。また、既往研究で報告されているZFT年代、黒雲母K-Ar年代、およびAHe年代・AFT年代・ZHe年代とも概ね整合的である。

論文

Potential of the young age reference materials; CA-ID-TIMS U-Pb dates of Cenozoic zircons in Japan

長田 充弘; 福田 将眞; 末岡 茂; 中嶋 徹; 横山 立憲; Wall, C. J.*; 檀原 徹*; 岩野 英樹*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (37), p.11 - 13, 2024/12

近年、分析技術の発達により100万年以降の若い地質単元でもジルコンによるU-Th-Pb年代測定が可能となりつつある。しかしながら、その分析を評価しうる若い標準試料はほとんどない。本研究では、著者らが研究をすすめている100万年オーダーのジルコン試料(TRG04とOGPK)を対象に、同位体希釈表面電離質量分析(ID-TIMS)法によるU-Pb年代測定を試みた。その結果、それぞれ予察的に2.6654$$pm$$0.0016Maおよび1.1266$$pm$$0.0014MaのU-Pb年代を得た。

論文

The Impact of climate on relief in the northern Japanese Alps within the past 1 Myr; The case of the Tateyama mountains

Bartz, M.*; King, G. E.*; Bernard, M.*; Herman, F.*; Wen, X.*; 末岡 茂; 塚本 すみ子*; Braun, J.*; 田上 高広*

Earth and Planetary Science Letters, 644, p.118830_1 - 118830_11, 2024/10

 被引用回数:4 パーセンタイル:53.20(Geochemistry & Geophysics)

The impact of climate on mountain relief is unknown, mainly due to the difficulties of measuring surface processes at the timescale of glacial-interglacial cycles. An appropriate setting for studying mountain erosion in response to Quaternary climate change is found in the Tateyama mountains in the Hida mountain range (northern Japanese Alps) due to distinct geomorphological features of glacial, periglacial, and fluvial processes. The Japanese Alps uplifted within the past ca 1-3 Myr and experienced multiple glaciations during the late Quaternary. We use ultra-low temperature thermochronometers based on the luminescence of feldspar minerals and the electron spin resonance (ESR) of quartz minerals, in combination with inverse modelling to derive rock cooling rates and exhumation rate histories at 10$$^{4}$$-10$$^{6}$$ year timescales from 19 rock samples from three transects in the Tateyama region. While luminescence signals have already reached their upper dating limit, ESR signals (Al and Ti centres) yielded ESR ages of ca 0.3-1.1 Ma, implying surface processes active in the Pleistocene. Based on a negative age-elevation relationship, local relief reduction at a cirque-basin scale is identified over the past 1 Myr, whereas a positive age distribution with elevation for samples close to the mountain top does not follow this trend. Inverse modelling reveals rock cooling rates on the order of 30-80 deg. C/Ma, with slightly faster cooling for cirque-floor samples, which equate with erosion rates of 0.5-1 mm/yr that exceed rates from periglacial and fluvial processes in the same locality. Thus, our data suggest that Quaternary climate change coupled with distinct surface processes modified the slopes of the Tateyama mountains leading to a localised decrease in relief over the second half of the Quaternary, whilst the mountain peaks were unaffected by the relief reduction.

論文

Vibration test and fatigue test for failure probability evaluation method with integrated energy

木下 貴博*; 岡村 茂樹; 西野 裕之; 山野 秀将; 栗坂 健一; 二神 敏; 深沢 剛司*

International Journal of Pressure Vessels and Piping, 211, p.105299_1 - 105299_5, 2024/10

 被引用回数:1 パーセンタイル:16.65(Engineering, Multidisciplinary)

ナトリウム冷却高速炉(SFR)の地震確率論的リスク評価(S-PRA)において、原子炉容器などの主要機器の耐震評価は重要である。多くの機器は、地震動時に疲労損傷のような蓄積された損傷によって破損する。本研究では、振動試験および疲労試験で算出されるエネルギーを比較することにより、エネルギーを用いた破損確率評価手法を開発した。振動試験では、エネルギーバランス式を用いて破損時の累積振動エネルギーを評価し、疲労試験では、実験結果に基づいて破損時の累積振動エネルギーを評価した。その結果、振動試験によって破損時の累積エネルギーを推定し、その値が疲労試験結果に基づくエネルギーの範囲内であることが示された。

論文

Short communication: Inverse correlation between radiation damage and fission-track etching time on monazite

中嶋 徹; 福田 将眞; 末岡 茂; 仁木 創太*; 河上 哲生*; 檀原 徹*; 田上 高広*

Geochronology (Internet), 6(3), p.313 - 323, 2024/07

本研究ではモナズ石の化学組成と放射線損傷がフィッション・トラックのエッチング時間に与える影響を調べた。モナズ石のフィッション・トラック年代測定法は超低温熱年代としての応用が期待されているが、モナズ石の化学組成や放射線損傷がフィッション・トラックのエッチング時間に与える影響は明らかになっておらず、分析方法が確立していない。私たちはモナズ石のラマン分光分析と化学組成の定量分析から、日本国内のモナズ石試料について放射線損傷の蓄積レベルを見積もった。またフィッション・トラックのエッチング実験を行い、これらの変数がエッチングの時間に与える影響を調べた。

論文

First report of geo- and thermochronological results from the Cordillera Central, Luzon, Philippines

中嶋 徹; 末岡 茂; 長田 充弘; Kohn, B. P.*; Ramos, N. T.*; 堤 浩之*; 田上 高広*

Earth, Planets and Space (Internet), 75(1), p.176_1 - 176_11, 2023/12

 被引用回数:4 パーセンタイル:33.77(Geosciences, Multidisciplinary)

本研究では島弧山地における中間質マグマの貫入と隆起・侵食過程を理解する目的で、フィリピン、ルソン島の中央コルディエラ山地に地質・熱年代測定を適用した。ジルコンU-Pb年代は32.54$$pm$$0.70から6.11$$pm$$0.15(2SE)Maであり、これは第三紀火成活動に伴う中・上部地殻における中間質マグマの断続的な貫入イベントを反映している。ジルコンのフィッション・トラック(ZFT)年代は35.63$$pm$$2.17から6.91$$pm$$0.36(2SE)Maであり、それぞれの試料採取地点におけるジルコンU-Pb年代と対比される。これは中間質マグマが貫入後、即座に250$$sim$$350$$^{circ}$$Cまで冷却したことを反映している。一方、ジルコンとアパタイトの(U-Th-Sm)/He(ZHe, AHe)年代はそれぞれ11.71$$pm$$0.36から8.82$$pm$$0.26Maと9.21$$pm$$0.52から0.98$$pm$$0.088(2SE)Maであり、ジルコンのU-Pb年代やZFT年代よりも若い傾向にある。これは各地点における岩石の冷却速度が低温領域において減少したことを示唆する。そのため、ZFT年代は中間質マグマの初期冷却を、AHe年代は隆起・侵食に伴う冷却をそれぞれ反映していると考えられる。AHe年代の地理的分布は、第四紀に中央コルディエラ山地全体がブロック状に隆起したことを示唆している。

論文

鮮新世$$sim$$第四紀深成岩体の固結年代・深度に基づいた飛騨山脈黒部地域の削剥史

末岡 茂; 河上 哲生*; 鈴木 康太*; 鏡味 沙耶; 横山 立憲; 芝崎 文一郎*; 長田 充弘; 山崎 あゆ*; 東野 文子*; King, G. E.*; et al.

フィッション・トラックニュースレター, (36), p.1 - 3, 2023/12

飛騨山脈黒部地域には、世界一若い露出プルトンである黒部川花崗岩体を含め、10-0.8Maの若い深成岩体が複数露出する。深成岩体が一般に地下数km以深で形成されることを考えると、削剥速度は数mm/yrないしそれ以上に達する可能性がある。しかし、これらの若い岩体の貫入やこれに伴う熱水活動等の熱擾乱のため、熱年代法による、冷却史に基づく削剥史の復元は簡単ではない。本研究では、地熱条件に依らない削剥評価のため、主に鮮新世から第四紀の深成岩体の固結年代と固結深度から、黒部地域の削剥史の復元を試みた。固結年代はジルコンU-Pb年代測定法、固結深度はAl-in-Hbl地質圧力計により推定した。計14試料から固結年代と固結深度のペアを得た結果、固結深度は約6-10kmでほぼ均一で、東西及び南北のいずれにも系統的な変化を示さなかった。この結果は、黒部-高瀬川破砕帯の東側の断層ブロックが、東に傾動したと考える従来のモデルとは不調和である。固結深度と固結年代のプロットから復元された削剥史は、約5.5-0.8Maにはほとんど削剥が起こらず、それ以降の時代に平均で約7-14mm/yrの急速な削剥が起こったことを示した。この結果は、ダム堆砂量や宇宙線生成核種法から推定された数十から数千年程度の侵食速度や、約1Ma以降に信濃大町方面で黒部地域からの花崗岩礫の供給が急増したことと矛盾しない。0.8Ma以降の黒部地域の急速な隆起・削剥の原因としては、東西圧縮応力の発現以降、黒部地域の地温が高い領域に沿って変位・変形が局在化した可能性が考えられ、現在、レオロジーと地温構造を考慮した変形シミュレーションによる検証を進めている。

論文

日本の山岳地域におけるESR熱年代学の適用; 試料の前処理によるESR信号への影響の評価

梶田 侑弥*; 末岡 茂; 谷 篤史*; 磯谷 舟佑*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (36), p.6 - 8, 2023/12

近年、低温熱年代学の手法を用いて、若い島弧である日本列島の山地の隆起・削剥史の推定が可能になってきた。電子スピン共鳴(ESR)法は、超低温熱年代計として期待される手法の1つであるが、応用研究は未だに少数であり、熱年代計としてのESR法の妥当性の検証を含め、研究事例の蓄積が求められる。本研究では、ESR熱年代学の日本の山岳地域への適用の前段階として、試料の前処理が年代値に及ぼす影響について検討するため、天然試料および人工石英を用いた露光・粉砕実験を実施した。実験室内における3日間の光曝露実験では、ESRシグナル強度に変化は観察されなかった。一方、試料の粉砕実験では、粉砕過程及び粉砕器具の違いがシグナル強度に影響する可能性が示唆された。今後の検討手段として、プレヒートの実施、天然試料を用いた粉砕の影響評価、Selfragを利用した粒子破壊を伴わない岩石粉砕手法との比較などが挙げられる。

論文

Eustatic change modulates exhumation in the Japanese Alps

King, G. E.*; Ahadi, F.*; 末岡 茂; Herman, F.*; Anderson, L.*; Gautheron, C.*; 塚本 すみ子*; Stalder, N.*; Biswas, R.*; Fox, M.*; et al.

Geology, 51(2), p.131 - 135, 2023/02

The exhumation of bedrock is controlled by the interplay between tectonics, surface processes, and climate. The highest exhumation rates of centimeters per year are recorded in zones of highly active tectonic convergence such as the Southern Alps of New Zealand or the Himalayan syntaxes, where high rock uplift rates combine with very active surface processes. Using a combination of different thermochronometric systems including trapped-charge thermochronometry, we show that such rates also occur in the Hida Mountain Range, Japanese Alps. Our results imply that centimeter per year rates of exhumation are more common than previously thought. Our thermochronometry data allow the development of time series of exhumation rate changes at the time scale of glacial-interglacial cycles, which show a fourfold increase in baseline rates to rates of $$sim$$10 mm/yr within the past $$sim$$65 k.y. This increase in exhumation rate is likely explained by knickpoint propagation due to a combination of very high precipitation rates, climatic change, sea-level fall, range-front faulting, and moderate rock uplift. Our data resolve centimeter-scale sub-Quaternary exhumation rate changes, which show that in regions with horizontal convergence, coupling between climate, surface processes, and tectonics can exert a significant and rapid effect on rates of exhumation.

論文

ジルコン(U-Th)/He法の年代標準試料の探求(続報); 複数のジルコン試料における年代学的検討

福田 将眞; Kohn, B. P.*; 末岡 茂; 檀原 徹*; 岩野 英樹*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (35), p.7 - 10, 2022/12

ジルコン(U-Th)/He法の年代標準試料を確立する目的で、4つのジルコン試料について(U-Th)/He年代分析を実施した。令和2年度に報告した仁左平ジルコンに引き続いて、3年度は国内の地質試料として、濃飛流紋岩,鷲走ヶ岳月長石流紋岩およびフィッション・トラック法およびU-Pb法の年代標準試料であるMt. Dromedary, OD-3を採用した。結果として、濃飛流紋岩については二次加熱を示唆する年代の若返りが観察されたが、残り3試料については先行研究の既往年代と整合的なデータが得られた。これまで得られている7つのZHeデータを総評すると、先行研究で測定した歌長流紋岩のジルコンが最も単粒子年代のばらつきが小さく、標準試料として適切であると考えられる。今後は、年代のばらつきの原因の探求のため、ジルコン粒子の化学分析や組織観察を行う予定である。

論文

熱年代学的手法に基づく谷川岳地域の熱史・削剥史の推定

南 沙樹*; 末岡 茂; 福田 将眞; 長田 充弘; Kohn, B. P.*; 横山 立憲; 鏡味 沙耶; 梶田 侑弥*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (35), p.22 - 26, 2022/12

一般的に花崗岩は、地下数kmから数十kmの深部で形成される。したがって、最近形成された若い花崗岩が、現在地表に露出する地域では、極めて急速な隆起・削剥が起きている可能性がある。世界的に見ると、約5Maより若い花崗岩の分布は、変動帯に集中している。変動帯にある日本列島でも、飛騨山脈の黒部川花崗岩や、南部フォッサマグナ地域の丹沢トーナル複合岩体などで、ジルコンU-Pb年代測定(閉鎖温度900$$^{circ}$$C以上)により数Ma以内の若い形成年代が報告されている。本研究の対象地域である谷川岳地域は、東北日本弧南部の背弧側に位置し、その地質は主に、後期白亜紀-古第三紀の花崗岩類と、これらに貫入する鮮新世の谷川岳花崗岩類(赤湯岩体・谷川岩体・巻機岩体)から成る。先行研究では、谷川岳花崗岩類について、形成年代を表すジルコンU-Pb年代(約4.0-3.2Ma)と、約280$$^{circ}$$C付近の冷却年代を表す、ジルコンのフィッション・トラック(ZFT)年代(約3.3-2.9Ma)及び、350-400$$^{circ}$$C付近の黒雲母K-Ar年代(約3.9-3.1Ma)などが報告されている。しかし、約280$$^{circ}$$Cより低温域における熱史は不明である。本研究では、後期白亜紀水上石英閃緑岩と谷川岳花崗岩類について、未測定の地点にU-Pb年代測定を実施し、約200$$^{circ}$$C以下の低温側の熱史・削剥史を推定するためにジルコンとアパタイトの(U-Th)/He年代測定(ZHe年代: 閉鎖温度160-200$$^{circ}$$C、AHe年代: 閉鎖温度55-80$$^{circ}$$C)を実施した。その結果、谷川岳花崗岩類は、ジルコンU-Pb年代測定により、約6.0-3.2Maの間に少なくとも3回の異なる時代の貫入によって形成されたことが明らかとなった。また、最近の山地形成に関連した削剥を最も反映していると期待される、AHe年代の閉鎖温度から地表温度(10$$^{circ}$$C)の平均冷却速度は、山頂稜線の東側に位置する巻機岩体と水上石英閃緑岩で13-36$$^{circ}$$C/Ma、稜線西側の谷川岩体の1地点(AHe年代: 約1.2Ma)で36-60$$^{circ}$$C/Maと推定された。稜線東側では、AHe年代が約3.0-2.0Ma頃に集中しており、この時期の急速な削剥が示唆される。AHe年代から得られた削剥速度について、丹沢山地や東北日本弧と比較すると、谷川岳地域の削剥速度は、島弧-島弧衝突帯の丹沢山地や、歪の集中で知られる奥羽脊梁山地のような地殻変動が活発な地域に匹敵することが示唆された。

論文

北上山地における熱年代学データとその解釈

梶田 侑弥*; 末岡 茂; 福田 将眞; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (35), p.19 - 21, 2022/12

本講演では、東北日本弧前弧域に分布する北上山地を対象に、白亜紀深成岩類のアパタイトフィッション・トラック(AFT)年代、アパタイトヘリウム(AHe)年代のこれまでの結果に、FT長分布を用いた熱史逆解析結果を加えた熱年代学データの解釈を試みる。AFT年代は東縁部の約130Maから西に向かって70Ma程度まで若くなる。一方AHe年代は西縁部の約80Maを除けば約50-30Maにまとまる。北上山地の白亜紀深成岩類のジルコンU-Pb年代は135-120Maでほぼ均一なので、AFTとAHe年代の傾向は岩体の形成年代が原因ではない。またFT長を用いた熱史逆解析結果はいずれも徐冷を示し、短期的な熱イベントの存在は積極的には支持されない。以上を踏まえると、10$$^{6}$$年以上のスケールで地殻浅部における熱構造史もしくは隆起・削剥史が東西で異なると考えられる。熱構造史が異なる可能性としては、火山フロントの移動の影響が考えられる。このとき火山フロントはAFT年代の下限である約70MaからAHe年代の上限の約50Maの間に北上山地中央付近にあったと想定されるが、そのような証拠は知られていない。一方で隆起・削剥史が異なる場合、AFT年代からは沿岸部より内陸側を隆起させるような、AHe年代からは東西でほぼ一様な隆起形態が考えられる。10$$^{6}$$年以上の前弧域の隆起には底付け付加が支配的な要因の一つとなり得る(underplating model)。このunderplating modelでは、島弧横断方向に隆起量の差が見られ、沿岸部よりやや内陸側に隆起のピークを生じるため、AFT年代の東西傾向は説明可能である。また、沈み込むプレート速度が5cm/yr以下ではunderplating modelの隆起が起きないことも示されている。北上山地ではアダカイト質の浄土ヶ浜流紋岩類の活動時期(44.3Ma)には暖かいプレートが沈み込んでいたと考えられ、この時期の前後には底付け付加の隆起が停止していた可能性が高い。その後、底付け付加による隆起は再開したが、沈み込むプレートが交代したことにより、AHe年代に東西で差をもたらすほどの削剥量の違いを生むに至らなかった可能性が考えられる。

論文

低温熱年代学に基づくスラブ起源流体活動に伴う熱異常検出の試み

末岡 茂; 岩野 英樹*; 檀原 徹*; 岡本 晃*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (35), p.1 - 4, 2022/12

沈み込み帯では、スラブからの脱水によりメルトが生成され火山弧が形成されることはよく知られている。一方で、西南日本前弧域などでは、メルトの生成を伴わないスラブ起源流体の活動が報告されている。このような流体活動は、前弧域における熱輸送・物質移動に関わるのみならず、内陸の地震活動や泥火山の噴出との関連が指摘されている。また、地熱資源の開発や地下重要施設の安全性評価などの社会的な側面からも、その性質の理解が望まれている。本講演では、過去のスラブ起源流体活動の痕跡と考えられる熱水変質帯を対象に、低温領域の熱年代学に基づいて、流体活動の熱的特徴(到達温度,継続期間など)の検討を試みた事例を紹介する。事例対象としたのは、紀伊半島本宮地域と有馬地域の2つで、いずれもスラブ起源流体の湧出が盛んな地域として知られている。本宮地域では、平治川の露頭において、熱水脈およびその近傍の母岩(四万十帯砂岩)を採取した。有馬地域では、白水峡付近の六甲断層露頭から、断層からの距離に応じて基盤岩(風化花崗岩)を採取した。これらの試料から分離したジルコンとアパタイトを対象に、FT法, U-Pb法, (U-Th)/He法による熱年代解析を実施した。しかし、いずれの試料,いずれの熱年代計においても、新しい時代の熱異常は検出できない結果となった。そこで、一次元熱伝導モデルとHeFTy ver. 1.9.3のフォワードモデルに基づいて、熱水活動に伴う冷却年代の空間分布を再現して検証を行った。その結果、熱水温度が150$$^{circ}$$Cの、1000年程度の加熱期間ではこれらの熱年代計では熱異常の検出は困難と推定された。一方、熱水温度が200-300$$^{circ}$$Cの場合、1000年以下の加熱期間でも、アパタイトFT年代やジルコン(U-Th)/He年代の若返りが期待できる。スラブ起源流体の場合、火山性の熱水と異なり、地表付近で再加熱されないため、熱年代法で熱異常を検出するには、地表付近までどれだけ高温が維持されるかが鍵となる。スラブ起源流体の熱的特徴の把握と熱年代法によるアプローチの適用性のさらなる検証のためには、200-300$$^{circ}$$Cの熱水活動が期待される地域における事例の蓄積が望まれる。

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