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南川 卓也; 関根 由莉奈; 山田 鉄兵*
日本原子力学会和文論文誌(インターネット), 23(2), p.50 - 63, 2024/06
放射性廃棄物の削減や浄化には、放射性イオンの選択的分離が不可欠である。除去すべき放射性同位元素の中でも、Srは人の健康と環境に大きな脅威を与えている。しかし、CaからSrを分離することが難しいため、環境廃水からのSrの除去は依然として困難である。われわれは、多孔質構造を利用し、廃水からSrを選択的に除去するために、シュウ酸塩とサマリウム(Sm)からツリウム(Tm)までの8種類のランタノイド(Ln)イオンからなる一連の等構造ランタノイド-シュウ酸塩骨格(LOF)を開発した。LOFはイオン交換可能な陰イオン細孔を有し、細孔の大きさはホストLn種によって段階的に変化した。LOFのホストLnがTbの場合、LOFは極めて高いSr選択性を示し、SrとCaの間のイオン半径の微妙な違い(0.2オングストローム)を区別することが可能であり、Sr選択性はゼオライトAの3倍であり、これまでの報告されてきた吸着剤の選択性を上回るものであった。この結果は、LOFを構成するLn種を選択することにより細孔径をサブオングストロームで微調整可能であり、これにより非常に高い選択性が得られたことも示唆された。この新規な細孔サイズ制御方法は簡易であり、様々な分野でのイオン分離の可能性が開く可能性がある。
南川 卓也; 関根 由莉奈; 山田 鉄兵*
Bulletin of the Chemical Society of Japan, 95(5), p.825 - 829, 2022/05
被引用回数:4 パーセンタイル:38.13(Chemistry, Multidisciplinary)環境を浄化するためには、排水中から有害金属を除去する技術が不可欠である。本研究ではワンポット水熱法によって合成されたTbシュウ酸塩フレームワーク(TOF)を利用して、Pb選択的吸着剤を開発した。TOFは、層間空間がイオン交換可能サイトとして機能する2次元シート構造を持つ。Pb, Cd, Mn, Co, Ni, Cu, Na, K, Mg、およびCaを含む混合イオン溶液にTOFを添加した吸着試験では、TOFが他の金属イオンの中でもPbに対して高い選択性を示した。Pbに対するTOFの飽和吸着容量は276mg gであり、従来の鉛吸着剤よりも高い吸着性能を示した。さらに、TOFは可逆的な鉛吸着/脱着を示し、繰り返しの使用可能である。TOFはPbを除去するための吸着剤として優れた可能性を持っており、廃水浄化の有望な材料でもあることが明らかになった。
関根 由莉奈; 南川 卓也; 山田 鉄兵*; 松村 大樹; 根本 善弘*; 竹口 雅樹*; 杉田 剛; 下山 巖; 香西 直文; 諸岡 聡
Journal of Environmental Chemical Engineering, 9(2), p.105114_1 - 105114_12, 2021/04
被引用回数:11 パーセンタイル:47.89(Engineering, Environmental)有害金属除去は安心安全社会構築のために必要な技術である。本研究では、骨の有するイオン交換能を最大限に活用して廃材を用いた有害金属除去材料の開発を行った。炭酸塩水溶液に骨を浸漬することで高炭酸含有ナノアパタイトが形成することを見出した。この材料は、通常の骨、また合成アパタイトに比べて約250、4500倍高いストロンチウム吸着性能を示した。本材料は廃材を利用していることから、低コストかつ高性能な吸着剤として活用が期待できる。
関根 由莉奈; 南川 卓也; 柚木 俊二*; 杉田 剛; 中川 洋; 山田 鉄兵*
ACS Applied Polymer Materials (Internet), 2(12), p.5482 - 5491, 2020/12
被引用回数:50 パーセンタイル:91.59(Materials Science, Multidisciplinary)凍結濃縮を利用した架橋法を開発し、高い圧縮強度(80MPa)と高い圧縮回復性を備えた新しいタイプのカルボキシメチルセルロースナノファイバー(CMCF)ハイドロゲルを開発した。ハイドロゲルは、クエン酸(CA)の水溶液を凍結したCMCFゾルに添加し、次にそのゾルを解凍することによって調製した。凍結濃縮されたCMCFとCA間の反応により、氷結晶構造を反映する剛直な多孔質構造が形成された。圧縮評価により、架橋構造が圧縮応力に対して高い安定性を持つことを明らかにした。凍結架橋の前にベントナイトをCMCFゾルに追加することにより、CMCFヒドロゲルに簡易に固定することに成功した。CMCF-ベントナイトゲルは、化学染料に対して高い吸着性を示した。物理的に架橋されたCMCFヒドロゲルは、毒性がなく、金属を含まず、調製が簡単であるため、さまざまな分野で持続可能な材料として役立つ。
橋本 信*; 吉田 鉄平*; 田中 清尚*; 藤森 淳*; 奥沢 誠*; 脇本 秀一; 山田 和芳*; 掛下 照久*; 永崎 洋*; 内田 慎一*
Physical Review B, 79(14), p.140502_1 - 140502_4, 2009/04
被引用回数:15 パーセンタイル:51.50(Materials Science, Multidisciplinary)In underdoped cuprates, only a portion of the Fermi surface survives as Fermi arcs due to pseudogap opening. In hole-doped LaCuO, we have deduced the "coherence temperature" of quasiparticles on the Fermi arc above which the broadened leading edge position in angle-integrated photoemission spectra is shifted away from the Fermi level and the quasiparticle concept starts to lose its meaning. is found to rapidly increase with hole doping, an opposite behavior to the pseudogap temperature . The superconducting dome is thus located below both and , indicating that the superconductivity emerges out of the coherent Fermionic quasiparticles on the Fermi arc. remains small in the underdoped region, indicating that incoherent charge carriers originating from the Fermi arc are responsible for the apparently metallic transport at high temperatures.
橋本 信*; 田中 清尚*; 吉田 鉄平*; 藤森 淳*; 奥沢 誠*; 脇本 秀一; 山田 和芳*; 掛下 照久*; 永崎 洋*; 内田 慎一*
Physica C, 460-462(2), p.884 - 885, 2007/09
被引用回数:3 パーセンタイル:17.34(Physics, Applied)高温超伝導研究において、より高温から現れる擬ギャップと超伝導ギャップの関係の解明は重要な課題である。本研究では、広い濃度領域のLaSrCuOと過剰酸素導入により超伝導化したLaCuOを用い、角度積分光電子分光を温度変化させて測定し、擬ギャップと超伝導ギャップを調べた。結果、擬ギャップは低ホール濃度へ向かって増大して行くのに対し、超伝導ギャップは超伝導を示す試料でほとんど一定であった。これらの結果は、超伝導ギャップがフェルミ面アーク付近(0,0)-(,)で開き、擬ギャップはフェルミ面の(,0)近傍で開くことで説明でき、低ホール濃度ではフェルミアークが小さくなることから、超伝導ギャップは大きくなれないことを示している。
橋本 信*; 吉田 鉄平*; 田中 清尚*; 藤森 淳*; 奥沢 誠*; 脇本 秀一; 山田 和芳*; 掛下 照久*; 永崎 洋*; 内田 慎一*
Physical Review B, 75(14), p.140503_1 - 140503_4, 2007/04
被引用回数:66 パーセンタイル:88.30(Materials Science, Multidisciplinary)高温超伝導体LaSrCuOの低濃度から高濃度に渡る試料と、過剰酸素を導入したLaCuOの試料を用いて、角度積分光電子分光実験を行った。結果、超伝導ギャップと擬ギャップは異なるホール濃度依存性を示した。ホール濃度の低下に伴い、超伝導ギャップエネルギーは小さいままほとんど変化しないのと対照的に、擬ギャップエネルギーと擬ギャップ温度は顕著な増加を示した。この結果は、超伝導ギャップがフェルミアークの(0,0)-方向に生じ、擬ギャップが付近に生じていることを示唆しており、両ギャップが微視的に異なる起源を持つことを明らかにした。
渡邉 雅之; 南川 卓也*; 山田 鉄兵*; 木村 貴海; 並木 康祐*; 村田 昌樹*; 西原 寛*; 館盛 勝一
Inorganic Chemistry, 42(22), p.6977 - 6979, 2003/11
被引用回数:34 パーセンタイル:75.00(Chemistry, Inorganic & Nuclear)トリス(2-ピリジル)カルビノールとよばれる三脚状の配位子は、金属間距離が非常に短いランタノイド二核錯体を形成することを明らかにした。通常この配位子は三座配位子として働くが、本研究では頭頂部にある酸素ドナーをうまく架橋配位させることで、二核錯体を形成させることが可能となることを見いだした。合成されたEu(III)とTb(III)の錯体では、配位子から金属中心にエネルギー移動を起こすため、強い発光をしめすことが確認された。
関根 由莉奈; 南川 卓也; 三浦 大輔*; 柚木 俊二*; 杉田 剛; 中川 洋; 山田 鉄兵*
no journal, ,
本研究では、セルロースナノファイバーとクエン酸を原料とする高い圧縮強度(80MPa)、成形性を有するゲルの合成法及び材料を開発した。セルロースナノファイバーを凍結させてからクエン酸溶液と反応させることにより、凍結凝集したセルロースナノファイバーが固定化され、材料の強度が飛躍的に向上することを発見した。ゲル材料の高強度化に大きな影響を与える構造と物性の相関について発表する。
南川 卓也; 関根 由莉奈; 山田 鉄兵*
no journal, ,
有害金属や放射性元素による汚染は世界中で問題となっており、汚染物質の効率的な除去方法の確立が求められている。本研究では、配位子とテルビウムからなる配位高分子(Terbium Oxalate Framework: TOF)を活用し、イオンを選択的かつ可逆的に吸着する材料の開発を行なった。開発したTOFのPb吸着性能は、最大吸着容量(Qmax)と分配係数(Kd)で評価される。TOFのQmaxは276mg gであり、一般的な吸着剤であるゼオライト等と比べても非常に大きな値を示した。また、Kdは、6.710cm gであり、一般的に10cm g以上の分配係数があれば吸着性能が高いとされるKdの数値を超えている。またこの吸着剤は、多数のイオンが混合した溶液からでも鉛を非常に選択的に分離することから、非常高い鉛選択性を持つ。更に、TOFに吸着したPbは高濃度のNHClを添加すると平衡反応で脱着できる。これらから、TOFは廃棄物からPbを選択に分離回収できる可能性が示されており、非常に有効な鉛除去剤となる可能性が示された。
南川 卓也; 関根 由莉奈; 山田 鉄兵*
no journal, ,
放射性Srは核分裂反応から起こる主な生成物であり、原子力の廃液に多く含まれ、原発事故などにおいても除去が求められる重要な元素である。しかし、海水や環境に一度入った放射性ストロンチウム(Sr)を除去するのは、放射性廃棄物が多く発生する非常に困難な作業となる。これは特にカルシウムイオン(Ca)とストロンチウムイオン(Sr)を分離する技術が十分に確立されていないためである。これは、SrとCaは物性が似ており、イオン半径も僅か0.2Aしか違いがないため、両イオンを分別することが困難なことが原因である。本研究では、細孔のサイズをナノレベルで微調整を可能にする、新たな配位高分子群を使って、僅か0.2Aしか違いがないイオンサイズの違いを精密に認識することでこれまでにない高い選択性でSrだけを分離することに成功した。
南川 卓也; 小越 友里恵; 桑原 彬; 山田 鉄兵*; Zanella, M.*; Jansat, S.*; Manning, T.*; Rosseinsky, M.*
no journal, ,
液体廃棄物中から、放射性セシウム(Cs)とストロンチウム(Sr)を取り除く材料としては、ゼオライトなど細孔性の材料が知られているが、これらの細孔は非常に安定であるため、細孔中からこれらの元素を取り出し、回収することや、細孔のサイズを自由に変化させることは困難である。一方、最近研究が進んできた配位高分子(MOF)は、配位子と金属を選択することで細孔をデザインできるため、細孔の大きさを自由に変化させることができる。また、この材料の細孔は、溶液の変化に敏感なため、一度取り込んだゲスト分子も溶液条件を変化させれば容易に取り出すことができる。本研究では、新規なMOFである(NH)[Ln(CO)(HO)] (Ln=Y, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu)を合成し、MOFの細孔サイズをこれまでにない方法で制御し、調整することで、溶液中からCsやSrを選択的に分離した。また、一度取り込んだCsやSrをMOFから回収する実験を行い、放射性廃棄物から有用な放射性金属元素を回収できる可能性を示した。
南川 卓也; 山田 鉄兵*; 小越 友里恵; 桑原 彬; Alexandros, K.*; David, S.*; Marco, Z.*; Jansat, S.*; Troy, D. M.*; Matthew, J. R.*
no journal, ,
In this study, we synthesized series of MOFs with the formula of (NH)[Ln(CO)(HO] (Ln = Sm, Eu, Gd, Dy, Ho, Er, Tm, Yb) to remove radioactive ions from solution. And we investigated the behavior of ion uptake by changing the host metals. Moreover, we tried a new radioactive ion recovery cycle by recovering the radioactive ions from the MOF and the starting MOF from the resulting MOFs.
三浦 大輔; 南川 卓也; 山田 鉄兵*; 関根 由莉奈
no journal, ,
カルボキシメチルセルロースナノファイバー(CMCF)と有機酸から成る高い圧縮強度(80MPa)及び成形性を有するゲル材料を開発した。CMCFを凍結させてから有機酸溶液と反応させることにより、強固なポリマー骨格が形成され、材料強度が飛躍的に向上した。本研究では、凍結凝集したCMCFの構造が有機酸を介して固定化される過程の観察に成功した。凍結凝縮がゲル材料の強度向上に寄与するメカニズムについて詳しく発表する。
南川 卓也; 関根 由莉奈; 山田 鉄兵*
no journal, ,
有害金属や放射性元素による汚染は世界中で問題となっており、汚染物質の効率的な除去方法の確立が強く求められている。有害元素の除去方法には様々な手法があるが、大掛かりな設備を必要としない吸着剤(活性炭やゼオライト等)が良く用いられる。しかしこれら吸着剤はイオン選択性をほとんど持たないため、あらゆる金属イオンを吸着してしまい、短期間で平衡状態に達してしまうために使用済み吸着剤の廃棄物が大量に発生する問題がある。また、不可逆的な吸着であることから、分離回収が困難である。このように、既存の技術では資源循環が極めて困難である現状がある。本研究では、細孔のサイズをナノレベルで微調整を可能にする、配位子と金属からなるジャングルジム構造を持った配位高分子を活用し、イオンを選択的かつ可逆的に吸着する材料の開発を行なった。