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論文

Development of a new THINC/WLIC method based on a separate evaluation of the geometrical fidelity and the interface sharpness

福田 貴斉; 山下 晋; 吉田 啓之

Journal of Computational Physics, 545, p.114485_1 - 114485_32, 2026/01

本論文では、界面捕獲法の形状再現性と界面のシャープさを別々に定量的に評価する新しいアプローチを提案する。この新しい評価により、既存の界面捕獲法であるTHINC法とTHINC/WLIC法の間の形状再現性と界面のシャープさのトレードオフ関係が明らかになった。このトレードオフ関係の原因を解明し解決することで、THINC法やTHINC/WLIC法と同程度に簡潔なアルゴリズムを採用しながらも、形状再現性と界面のシャープさの両方において高い性能を発揮する新しいTHINC法ベースのスキームを開発した。THINC/Advanced WLIC (THINC/AWLIC)法と名付けられたこの新しいスキームは、先行するTHINC/WLIC法の重み関数を、1次風上フラックスの寄与を調整できるように再定義することによって開発された。2次元と3次元の複数のベンチマークテストの結果、THINC/AWLIC法は形状再現性と界面のシャープさの両方の観点で既存のTHINC/WLIC法より優れている。さらに、THINC/AWLIC法のアルゴリズムはTHINC/WLIC法と同様に非常で簡潔であるにもかかわらず、その形状誤差はアルゴリズムが複雑な既存の幾何学的スキームの誤差と同等程度である。

報告書

再処理施設の高レベル廃液蒸発乾固事故時の化学挙動解析コードSCHERNのRuO$$_{4}$$気液間移行モデルの高度化

吉田 一雄; 桧山 美奈*; 玉置 等史

JAEA-Research 2025-011, 25 Pages, 2025/11

JAEA-Research-2025-011.pdf:2.15MB

再処理施設の過酷事故の一つである高レベル放射性廃液貯槽の冷却機能喪失による蒸発乾固事故では、沸騰により廃液貯槽から発生する硝酸-水混合蒸気とともにルテニウムの揮発性の化学種(RuO$$_{4}$$)が放出される。このためリスク評価の観点からは、Ruの定量的な放出量の評価が重要な課題である。RuO$$_{4}$$は施設内を移行する過程で床面に停留すると想定されるプール水中の亜硝酸(HNO$$_{2}$$)によって化学吸収が促進されることが想定され、この挙動は実験的に確認されており、Ruの施設内での移行に重要な役割を担う。HNO$$_{2}$$を含む硝酸水溶液へのRuO$$_{4}$$の移行に係る実験から得られた成果をもとに、新たな化学吸収及び物理吸収モデルが提案されている。本報では、SCHERNの解析性能の向上の一環として、これらの吸収モデルを組込み、施設内を移行するRuO$$_{4}$$の気液各相での挙動の解析を試行した。その結果、RuO$$_{4}$$の放出が急激に増加する沸騰晩期では、液相中のHNO$$_{2}$$も急増する傾向が見られ、その濃度変化がその後のRuO$$_{4}$$の移行挙動に大きく影響することを確認した。この結果から硝酸-水混合蒸気の凝縮に伴う気液各相のHNO$$_{2}$$の化学的挙動の解析精度の向上が不可欠である。

論文

Optimising sodium incorporation into potassium-activated metakaolin-based alkali-activated materials

Chaerun, R. I.; 佐藤 淳也; 平木 義久; 吉田 幸彦; 佐藤 努*; 大杉 武史

Construction and Building Materials, 500, p.144270_1 - 144270_10, 2025/11

アルカリ活性化材料(AAMs)、特にメタカオリンを原料とするものは、その高密度な微細構造と化学的耐久性により、有害廃棄物の固定化に用いる持続可能なバインダーとして大きな注目を集めている。これらの非晶質アルミノケイ酸塩構造は、有害物質を効果的にカプセル化し、環境リスクを低減することができる。しかし、この非晶質ネットワークの安定性を維持することは容易ではなく、特にナトリウム(Na$$^{+}$$))を多く含む前駆体を使用する場合、過剰なNa$$^{+}$$が結晶化を促進し、マトリックスの完全性を損なうことが知られている。本研究では、主にカリウム(K$$^{+}$$))で活性化されたメタカオリン系AAMsにおけるNa+濃度が構造安定性に与える影響を体系的に検討した。その目的は、非晶質構造を保持し化学的安定性を維持できるNa取り込みの閾値を明らかにすることである。透過型電子顕微鏡(TEM)、ラマン分光法、熱力学モデリングを用いて、さまざまなNa:Kモル比におけるK-AAMsの構造進化を解析した。その結果、Na:K比が高い場合には、ナノポアの形成やNaに富むゼオライト相の早期結晶化が生じ、マトリックスの安定性が低下することが明らかとなった。一方で、非晶質ネットワークを維持し、アルミノケイ酸塩骨格を保つ最適なNa:K比が特定された。これらの知見は、高耐久かつ先進的な廃棄物固定化技術に向けたK-AAMsの最適化に有用な指針を提供するものである。

報告書

JMTRに残存する汚染物からの試料採取

大内 卓哉; 永田 寛; 篠田 侑弥; 吉田 颯竜; 井上 修一; 茅根 麻里奈; 阿部 和幸; 井手 広史; 綿引 俊介

JAEA-Technology 2025-006, 25 Pages, 2025/10

JAEA-Technology-2025-006.pdf:1.59MB

日本原子力研究開発機構の研究施設等から発生する放射性廃棄物は、将来的に埋設処分することを予定しており、放射能濃度評価方法の構築が必要である。そこで、大洗原子力工学研究所では、研究施設等廃棄物に対する放射能濃度評価方法の検討に資するため、将来、埋設処分対象となることが想定される放射性廃棄物から試料採取を行い、放射化学分析により放射性廃棄物に含まれる各核種の放射能濃度のデータ取得を行っている。本報告書は、放射能濃度のデータ取得にあたって、試料採取対象の選定の考え方を示すとともに、令和5年度及び令和6年度にJMTR原子炉施設において実施した汚染物からの試料採取内容についてまとめたものである。

論文

Experimental simulation of high-temperature and high-pressure annular two-phase flow using an HFC134a-ethanol system; Characterization of disturbance wave flow

Zhang, H.*; 梅原 裕太郎*; 堀口 直樹; 吉田 啓之; 江藤 淳朗*; 森 昌司*

Energy, 335, p.138090_1 - 138090_18, 2025/10

原子力発電は、カーボンニュートラルな未来を実現するための重要な低炭素エネルギー源である。沸騰水型原子炉(BWR)では、燃料棒周囲における蒸気と水の環状流が原子炉の安全性にとって極めて重要であるが、その高温高圧条件(285$$^{circ}$$C、7MPa)により、直接計測が困難である。この問題に対処するため、我々はHFC134a-エタノール系を低温定圧条件(40$$^{circ}$$C、0.7MPa)で用いることで、BWRの液膜流の模擬実験を実施した。高速度カメラと定電流法を用いて、液膜特性、波速度および周波数を分析した。また表面張力と界面せん断応力の影響を調査した。さらに基底液膜厚さについて新たな相関関係を提案した。

論文

割れ目系岩盤を対象とした物質移行モデルの妥当性確認手法

尾上 博則*; 吉田 芙美子*; 廣田 翔伍*; 周藤 優子*; 三枝 博光*; 石田 圭輔*; 澤田 淳

NUMO-TR-25-03; 技術開発成果概要2024, p.105 - 111, 2025/10

地層処分事業の実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)が、日本原子力研究開発機構(JAEA)をはじめとする関係研究機関及び大学との共同研究等により実施した2024年度の技術開発成果の概要を取りまとめ、報告する。本報告は、NUMOとJAEAの共同研究「ニアフィールドシステムの状態変遷に伴うバリア材及び核種の長期挙動評価のための研究」で2024年度に実施した割れ目系岩盤を対象とした物質移行モデルの妥当性確認手法に関する成果についての概要をまとめたものである。

論文

Conservative ghost fluid method with an interface cell for compressible two-phase fluid simulations

神谷 朋宏; 吉田 啓之

Physics of Fluids, 37(10), p.103359_1 - 103359_23, 2025/10

本研究では、圧縮性気液二相流シミュレーションのために、volume of fluid (VOF)法とghost fluid法に基づく保存スキームを開発した。提案手法の圧縮性二相流体シミュレーションに対する性能と適用性を調べるために、いくつかの一次元および二次元数値テスト問題を扱った。その結果、提案手法の計算結果は厳密解や先行研究の数値計算結果とよく一致した。さらに、提案手法が質量、運動量、エネルギーをほぼ完全に保存できることも示された。以上から、提案手法は圧縮性二相流シミュレーションに適用することができ、質量、運動量、全エネルギーを保存することができると結論付けた。

論文

Speciation of cesium in a radiocesium-bearing microparticle emitted from Unit 1 during the Fukushima nuclear accident by XANES spectroscopy using transition edge sensor

高橋 嘉夫*; 三浦 輝*; 山田 真也*; 関澤 央輝*; 新田 清文*; 橋本 直*; 蓬田 匠; 山口 瑛子; 岡田 信二*; 板井 啓明*; et al.

Journal of Hazardous Materials, 495, p.139031_1 - 139031_19, 2025/09

本発表では、2011年の福島第一原子力発電所事故で放出された放射性セシウム含有微粒子(CsMP)中のセシウムの化学状態を、高分解能X線吸収分光法(XANES)とマイクロX線蛍光($$mu$$-XRF)を用いて解析した。その結果、主にガラス中に溶解したセシウムと、内部空隙表面に濃縮したセシウムの2種が確認された。後者はもともと気体として存在し、溶けたガラスが冷えて固まる際に濃縮したと考えられる。これらの知見は、事故時のCsMP形成過程や今後の廃炉作業、安全評価に重要である。

論文

Solidification/stabilization of low-level radioactive wastes including hazardous substances from uranium fuel processing plants

佐藤 淳也; 高橋 裕太; 砂原 淳*; 齋藤 利充*; 吉田 幸彦; 曽根 智之; 大杉 武史

Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 8, p.307 - 312, 2025/09

For low-level radioactive waste containing hazardous substances (mixed wastes) generated from uranium fuel processing plants, establishing appropriate solidification/stabilization methods is one of the key challenges for their safe and effective storage and disposal in Japan. This study investigated the solidification/stabilization methods of the mixed waste sludge containing hazardous substances of lead, cadmium and mercury by using various solidification materials. Additionally, the compressive strength of solidified products was investigated along with the leaching behavior of hazardous substances.

論文

深層学習に基づく気泡検出技術を用いた複雑流路内3次元可視化計測技術

上澤 伸一郎; 小野 綾子; 吉田 啓之

画像ラボ, p.1 - 5, 2025/08

本稿では、原子炉燃料集合体のような複雑な流路内における気泡の3次元分布を可視化するための新たな計測技術について紹介する。気泡流は多くの工学分野で重要であり、特に原子力工学においては気泡挙動が原子炉の性能や安全性に大きく影響するため、その詳細な把握が求められている。従来のルールベース画像認識では、視線方向に重なった気泡の識別が困難であったが、本研究では深層学習(Mask R-CNNとSwin Transformer)を用いることで、少ない学習データでも高精度な気泡検出を実現した。さらに、ByteTrackを用いたトラッキング技術により、複雑な運動をする多数の気泡の追跡も可能となった。2台のハイスピードカメラを用いて異なる視点から撮影した画像を組み合わせ、楕円体近似により気泡の3次元形状を再構成することで、気泡の位置、直径、速度などの3次元的な瞬時局所情報を取得できる。また、流路内の構造物による視界の遮蔽や屈折の影響を排除するため、水と同程度の屈折率を持つ透明材料(PFAチューブ)を用いて模擬燃料棒を製作し、複雑な構造を持つ流路でも歪みのない撮影と計測を可能にした。これにより、従来困難であった複雑流路内の気泡挙動の3次元可視化が実現された。本技術は、少ないカメラ台数と学習量で高精度な3次元可視化を可能であることから、気泡以外の対象物への応用も期待されている。

論文

Remote size reduction by hydraulic cutter with buffer device attached to robotic arm using visual support system

井口 啓; 吉田 将冬; 平野 宏志*; 和田 政臣*; 森 敬仁*; 北村 哲浩

Journal of Robotics and Mechatronics, 37(4), p.973 - 983, 2025/08

核燃料製造施設におけるグローブボックスや内装設備の解体は、通常手作業で行われている。ロボットアーム等を用いた遠隔解体技術の導入により、解体作業における作業効率の向上と被ばくリスクの低減が期待される。油圧カッターはグローブボックスの鉄骨構造を切断するための効率的なツールの一つと考えられているが、ロボットアームに取り付けた油圧カッターで対象物を遠隔切断する場合、その反力によりロボットアームや周辺の構造物を損傷する可能性がある。そのため、本研究では油圧カッターによる切断時の反力を吸収する「緩衝機構」を設計、製作し、機能確認のための鋼材切断試験を実施した。さらに「緩衝機構」を搭載したロボットアームと作業環境を3Dビューワに投影し、遠隔解体作業を支援する視覚支援システムを開発し、今回の切断試験でその機能確認を行った。その結果、「緩衝機構」が油圧カッターによる切断時の急激な動きを吸収し、ロボットアームの損傷を防いだことから「緩衝機構」が意図したとおりに機能することが確認できた。また、3Dビューワはロボットアームのオペレータに死角のないクリアな視界を提供し、視覚支援システムが油圧カッター等の解体ツールを使用した遠隔解体に有効であることを確認した。

論文

Characteristics of droplet evaporation on high-temperature porous surfaces for estimating cooling time of fuel debris

結城 光平*; 堀口 直樹; 吉田 啓之; 結城 和久*

Mechanical Engineering Journal (Internet), 12(4), p.24-00451_1 - 24-00451_8, 2025/08

福島第一原子力発電所の燃料デブリは通常、浸漬状態で冷却される。しかし、予期せぬ水位低下が発生した場合、冷却水が多孔質構造を持つ高温の燃料デブリに接触する。このような場合、燃料デブリを早急に冷やす必要があるが、固液接触時の毛細管現象といった熱挙動は十分に理解されていない。本論文では、1mm以下の小孔を有する金属多孔体に接触した液滴の蒸発特性を評価した基礎研究について述べる。孔径1, 40, 100$$mu$$mのブロンズまたはステンレス多孔体を用いた実験を行い、液滴のライフタイム曲線を推定した。結果として、発生した蒸気が小孔から排出されることで、多孔質体表面ではライデンフロスト現象が抑制されることがわかった。さらに、ブロンズ多孔質体では多孔質体の温度が上昇すると微細構造を持つ酸化膜が毛細管現象を促進した。一方、ステンレス多孔体では濡れ性が低いことで毛細管現象が抑制され、孔内への液滴の吸収および分散が抑制される。したがって、燃料デブリには毛細管力が作用しないと仮定して冷却システムを構築すべきである。

論文

Neutronics/thermal-hydraulics coupling simulation using JAMPAN in a single BWR assembly

神谷 朋宏; 永武 拓; 小野 綾子; 多田 健一; 近藤 諒一; 長家 康展; 吉田 啓之

Mechanical Engineering Journal (Internet), 12(4), p.24-00461_1 - 24-00461_9, 2025/08

原子力機構では、高忠実な核熱連成シミュレーションを実現するためにJAEA Advanced Multi-Physics Analysis platform for Nuclear systems (JAMPAN)の開発を行っている。今回は、JAMPANを用いたMVP/JUPITER連成シミュレーションの実現可能性を確認するため、単一のBWR燃料集合体に対する核熱連成シミュレーションを実施した。核熱連成シミュレーションの結果、ボイド率とそれに対応する燃料棒の発熱量分布について定性的に妥当であることを確認した。

論文

Discrimination of disposal-restricted materials in waste containers by nondestructive testing and image analysis with high-energy X-ray computed tomography

村上 昌史; 吉田 幸彦; 南郷 脩史*; 久保田 省吾*; 黒澤 卓也*; 佐々木 紀樹

Journal of Nuclear Science and Technology, 62(7), p.650 - 661, 2025/07

 被引用回数:1 パーセンタイル:78.42(Nuclear Science & Technology)

Nondestructive methods were investigated to effectively discriminate disposal-restricted materials, including aluminum, batteries, combustibles, lead, and mercury, inside waste containers without opening them. An industrial computed tomography (CT) system with maximum X-ray energy of 9 MeV was used to visualize inside 27-cm diameter pails and 59-cm diameter drums filled with typical waste materials such as combustibles, glass, concrete, and metals. The CT images with 0.5 mm spacing were acquired, and three-dimensional (3D) models were constructed. A good linear relationship was observed between the gray values in the obtained CT images and the densities of materials. Combustibles, lead, and mercury were extracted via simple segmentation based on their apparent densities. 3D feature-based discriminations were further applied to batteries and certain aluminum objects based on their structural characteristics. Almost all batteries contained in the drums were successfully discriminated regardless of deformation, except for a few cases under extreme conditions. Aluminum was extracted along with glass and concrete; however, pipes with distinctive shapes could be identified in a relatively selective manner. The discrimination methods developed in this study will be effective in revealing the contents of waste containers, particularly for harmful materials that need to be separated for proper disposal.

論文

JMTR施設における廃液移送管漏えい事象の分析と再発防止対策

荒木 大輔; 大内 卓哉; 篠田 侑弥; 吉田 颯竜; 川俣 貴則; 綿引 俊介

日本保全学会第21回学術講演会要旨集, 5 Pages, 2025/07

JMTR(材料試験炉: Japan Materials Testing Reactor)原子炉建家の放射性廃液を一時貯留する廃液タンクへ移送するために敷設された廃液移送配管からの漏えい事象について、敷設された環境条件、使用状況等から発生原因が「湿潤大気環境応力腐食割れ」や「すきま腐食」であることを解明した。発生原因を踏まえたうえで配管取り替え後の再発防止対策について報告する。

報告書

再処理施設の高レベル廃液蒸発乾固事故のMELCORを用いた施設内の熱流動解析モデルの検証

吉田 一雄; 桧山 美奈*; 玉置 等史

JAEA-Research 2025-003, 24 Pages, 2025/06

JAEA-Research-2025-003.pdf:2.06MB

再処理施設の過酷事故の一つである高レベル放射性廃液貯槽の冷却機能喪失による蒸発乾固事故では、沸騰により廃液貯槽から発生する硝酸-水混合蒸気とともにルテニウム(RuO$$_{4}$$)の揮発性の化学種が放出される。このためリスク評価の観点からは、Ruの定量的な放出量の評価が重要な課題である。揮発性Ruは施設内を移行する過程で床面に停留するプール水中の亜硝酸によって化学吸収が促進されることが想定され、施設内の硝酸-水混合蒸気の凝縮水量がRuの施設内での移行に重要な役割を担う。当該事故の施設内の熱流動解析では、水の熱流動を解析対象とするMELCORコードを用いている。解析では、凝縮の支配因子である蒸発潜熱が、事故時での施設内の温度帯域で同程度であることから硝酸をモル数が等しい水として扱っている。本報では、この解析モデルの妥当性を確認するために、MELCORの制御関数機能を用いて硝酸-水混合蒸気を水蒸気で近似することによって生じる誤差を補正する解析モデルを作成し解析を実施し補正効果を比較することで従来の解析モデルの妥当性を確認した。その結果、補正解析モデルの適用によって各区画のプール水量の分布は変化するものの施設内のプール水量の総和には影響しないことを確認した。

論文

Numerical analysis of natural convective heat transfer with porous medium using JUPITER

上澤 伸一郎; 山下 晋; 佐野 吉彦*; 吉田 啓之

Journal of Nuclear Science and Technology, 62(6), p.523 - 541, 2025/06

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)

東京電力福島第一原子力発電所(1F)の廃炉における汚染水対策として、日本原子力研究開発機構(JAEA)では、燃料デブリの位置や発熱、空隙率の影響を含む、空冷時の熱挙動を計算するため、ポーラスモデルを用いたJUPITERコードによる数値解析手法の開発を進めている。本研究では、ポーラスモデルを用いたJUPITERの妥当性確認を行うため、多孔質体を用いた自然対流熱伝達実験とその数値シミュレーションを実施した。実験とシミュレーションの温度と速度の分布を比較すると、多孔質体の上面付近の温度を除き、シミュレーションの温度分布は実験の温度分布と良く一致した。また、速度分布も実験結果と定性的に一致した。妥当性確認に加えて、本研究では、多孔質体の内部構造に基づく有効熱伝導率が自然対流熱伝達に及ぼす影響について検討するために、様々な有効熱伝導率モデルを用いた数値シミュレーションも実施した。その結果、多孔質媒体内の温度分布や自然対流の速度分布はモデルごとに大きく異なることがわかり、燃料デブリの有効熱伝導率は1Fの熱挙動解析における重要なパラメータの一つであることがわかった。

論文

Numerical investigation of the accuracy of a conductance-type wire-mesh sensor for a single spherical bubble and bubbly flow

上澤 伸一郎; 小野 綾子; 永武 拓; 山下 晋; 吉田 啓之

Journal of Nuclear Science and Technology, 62(5), p.432 - 456, 2025/05

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Nuclear Science & Technology)

ワイヤメッシュセンサ(WMS)の精度を明らかにするため、単一の球形気泡と気泡流に対してWMSの静電場シミュレーションを実施した。単一気泡の静電場シミュレーションでは、様々な気泡位置における電流密度分布と、送信ワイヤから受信ワイヤまでの電流経路を示した。その結果、WMS周囲の不均一な電流密度分布に基づく系統的誤差があることを明らかにした。また、数値流体解析コードJAEA Utility Program for Interdisciplinary Thermal-hydraulics Engineering and Research (JUPITER)で得られた気泡流結果に対して静電場シミュレーションを実施したところ、線形近似やMaxwellの式などの、WMS信号からボイド率への既存の変換方法では0と1の間の瞬間ボイド率の中間値を定量的に推定できなかった。また、WMS信号に対してボイド率$$pm$$0.2という大きなばらつきがあり、瞬間ボイド率を定量的に計測することが困難であることがわかった。一方で、時間平均ボイド率においては、流路の中心付近のボイド率は線形近似を使用して推定でき、流路壁面近くのボイド率はMaxwellの式を使用して推定できることがわかった。

論文

北陸地方における$$^{7}$$Be降下量の地域分布

吉田 圭佑; 加藤 慎吾; 奥山 慎一; 中野 政尚; 石森 有; 内田 賢吾*; 井上 睦夫*

保健物理(インターネット), 60(1), p.40 - 47, 2025/04

1992年から2021年まで、北陸地方の4地点(福井県敦賀市、福井市、金沢市、石川県志賀町)で月間の$$^{7}$$Be降下量を測定した。地点間の違いは10月から3月の間に生じており、山沿いに位置する金沢市では$$^{7}$$Be降下量が高く、4400Bq/m$$^{2}$$となっていた。平野部や沿岸部に位置する敦賀市、福井市、志賀町では、それぞれ3300Bq/m$$^{2}$$、2800Bq/m$$^{2}$$、2500Bq/m$$^{2}$$となっており、日本海沿岸の他の地域(秋田、新潟、鳥取、島根)と同等の値であった。北陸地方における$$^{7}$$Be降下量の地域差は、主に降水量、地形的特徴、$$^{7}$$Be濃度に起因すると考えられる。

論文

Redox control in arsenic accumulation with organic matter derived from a varved lacustrine deposit in the Jurassic accretionary complexes

益木 悠馬*; 勝田 長貴*; 内藤 さゆり*; 村上 拓馬*; 梅村 綾子*; 藤田 奈津子; 松原 章浩*; 南 雅代*; 丹羽 正和; 吉田 英一*; et al.

Journal of Hazardous Materials, 485, p.136843_1 - 136843_10, 2025/03

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.00(Engineering, Environmental)

滋賀県東部の姉川上流域には、伊吹山の斜面崩壊でせき止められて生じた2つの湖成層の河岸段丘が分布する。このうち、下位の湖成層は、植物遺体のC-14年代測定から完新世中期に形成されたことが明らかとなった。また、湖成層の岩相は、mmスケールの縞状構造に富む層が10cmオーダーでシルト質粘土層と互層し、化学分析からヒ素が大陸地殻の約30倍の濃度(77$$mu$$g/g)で濃集する。さらに、蛍光X線やX線吸収分光などを用いた微小領域測定から、縞状構造は1年に1枚の縞を刻む年層であること、ヒ素は春季と秋季の循環期に堆積したこと、ヒ素は硫化物として存在し非晶質有機物と共存することなどが示された。これらの結果から、年縞のヒ素濃集は、季節変動に伴う有機物の供給と、続成過程における有機物分解によるレドックス変動によって生じたことが明らかとなった。

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