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松田 達磨
物性研究, 97(4), p.702 - 729, 2012/01
2011年9月26日30日に高野山で開催された「重い電子系若手秋の学校」に用いたテキストの内容である。希土類やアクチノイド化合物の高純度結晶育成について、基本的事項及び実際の手法を解説した。また、高純度結晶でのみ観測が可能なドハース・ファンアルフェン効果についての基本的理解と実験手法についても解説を行った。加えて実際の研究例も示した。
奥村 雅彦
物性研究, 96(6), p.617 - 656, 2011/09
近年、物性物理の分野では、固体中の電子をレーザーで制御した原子で模倣する「光格子系」が注目を集めている。この系で固体系をシミュレートし、高温超伝導などの機能素材の発現機構を探ったり、より高機能な素材をシミュレートしたりすることが期待されている。この系は現在も理論・実験ともに進展が著しいが、日本語による総合的なレビューは未だない。このような現状において、物性研究編集から依頼の下、「超伝導・超流動研究の接点」というシリーズ連載の一部として、光格子系の基礎物理と実験の現状をまとめたレビューを執筆した。光格子系は物性の基礎問題の解決に対して大変有用な系であり、今後の機能材料開発への貢献が大いに期待されている。進展が早い分野であるが、原段階で総合的なレビューをまとめ、今後の展開を予測した。
社本 真一
物性研究, 93(6), p.754 - 781, 2010/03
中性子は磁気モーメントを持つが、電荷を持たない粒子である。室温の水などで速度を減速された中性子は、その波長とともに運動量とエネルギーの関係において、物質内の電子スピンや格子の素励起を調べるのに非常に適している。またパルス中性子では広い逆格子空間の散乱パターンを飛行時間法により効率よく測定できることから、その散乱パターンをフーリエ変換することで実空間での二体分布関数(対相関関数)を正確に求めることができる。その特徴を利用して、周期構造をもたないアモルファスの構造から結晶性の物質の構造まで、幅広く物質の構造解析に用いられる。さらにその中間に存在する乱れた結晶性物質やナノ物質の構造解析も可能である。ここではパルス中性子を利用した構造の研究について紹介しながら、一部ではあるがJ-PARC物質・生命科学実験施設の散乱装置も併せて紹介する。さらに実空間の構造の乱れ、及びその物性とのかかわりについて、最近の研究例を含めてわかりやすく紹介したい。
橋本 竹治; 田中 宏和*; 小泉 智; 黒崎 一裕*; 小林 四郎*
物性研究, 87(1), p.18 - 19, 2006/10
非平衡開放系の散逸構造形成過程についての一研究として、本研究では酵素反応により溶液中で人工合成されるセルロース系を研究対象として用いた。そして系が形成するメゾスケールの自己秩序構造の形成過程・機構についての研究成果を議論する。
五十嵐 誉廣; 尾形 修司*
物性研究, 86(1), p.1 - 36, 2006/04
大規模系に対する解析手法として、粗視化粒子/分子動力学ハイブリッド法の開発を行った。粗視化粒子法では、原子の情報を統計平均を取ることで粗視化点にくりこみ粗視化点の剛性マトリクスを得る。粗視化粒子法の変換には近似が含まれておらず第一原理的に剛性マトリクスを得ることができるので、他の粗視化法と比較して精度が良いという特徴を持つ。本研究ではオリジナルの粗視化粒子法に含まれる計算コスト,系の平行移動,系の回転の問題を解決し、応用性を高めた修正粗視化粒子法の開発を行い、計算精度の検証を行った。次に修正粗視化粒子法と古典分子動力学法を接続した粗視化粒子/分子動力学ハイブリッド法の開発を行った。接続にはbuffered-cluster法を用い、粗視化比率の変化部位については修正粗視化粒子法を各領域について適用する手法を採用した。最後に、粗視化粒子/分子動力学ハイブリッド法を用いた応用例として、アルゴン薄板系の弾性波伝播解析と鉄系の構造解析を行った。本研究で得られたこれらの結果と古典分子動力学法の結果を比較検討し、粗視化粒子/分子動力学ハイブリッド法の有用性を議論する。
水木 純一郎
物性研究, 79(3), p.481 - 490, 2002/12
放射光X線を利用した構造物性研究に関する最近のわれわれの研究を紹介する。其の中で特に放射光の特長である波長選択性のメリットを生かした共鳴効果の利用について、その原理,特徴を説明し研究例を紹介する。
下司 和男
物性研究, 22(4), p.387 - 391, 1974/04
強誘電体とその関連物質の相転移に対する静水圧の効果についてのこれまでの研究をまとめ、静水圧の効果と強誘電性の機構との関係、間接型と呼ばれる強誘電体の外力効果の特徴、CaSr(CHCOO)型結晶の興味ある高圧効果についてのトピックスについて論述した。
古川 和男; 大野 英雄
物性研究, 19(5), p.B35 - B45, 1973/05
液体の本性は、その流動性にあるといってよいが、その原因がどのような構造論的条件によって現れるかを、具体的な無機物質について考察を始め、その物性の特長をも明らかにして行こうとするのが、副題の無機液体構造化学の目的とする所である。現在までに明らかにすることができた所を単原子液体すなわち、稀ガス元素液体および純金属液体につき、まず論じ、液体合金およびイオン性液体、特にアルカリハライド液体構造研究における基本的な立場を明らかにして、今後の詳細かつ定量的な理論樹立の前提条件を明らかにした。