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吉田 一雄; 玉置 等史; 桧山 美奈*
JAEA-Research 2023-001, 26 Pages, 2023/05
再処理施設の過酷事故の一つである高レベル放射性廃液貯槽の冷却機能喪失による蒸発乾固事故では、沸騰により廃液貯槽から発生する硝酸-水混合蒸気とともにルテニウム(Ru)の揮発性の化学種が放出される。このためリスク評価の観点からは、Ruの定量的な放出量の評価が重要な課題である。再処理施設のリスク評価の精度向上に資するため、計算プログラムを用いて当該事故時でのソースタームを解析的に評価する手法の整備を進めている。提案する解析手法では、まず廃液貯槽の沸騰をSHAWEDで模擬する。模擬結果の蒸気発生量等を境界条件としてMELCORにより施設内の蒸気等の流れに沿って各区画内の熱流動状態を模擬する。さらに各区画内の熱流動状態を境界条件としてSCHERNを用いてRuを含む硝酸、NO等の化学挙動を模擬し、施設外への放射性物質の移行量(ソースターム)を求める。本報では、仮想の実規模施設での当該事故を想定して、これら3つの計算プログラム間でのデータの授受を含めて解析事例を示す。
深谷 裕司; 丸山 貴大; 後藤 実; 大橋 弘史; 樋口 英明
JAEA-Research 2023-002, 19 Pages, 2023/06
商用高温ガス炉使用済燃料の再処理に由来する廃棄物の処分に関する研究を行った。軽水炉の再処理と高温ガス炉の再処理では燃料の構造の違いによる大きな違いがあるため、軽水炉に対して制定された再処理の廃棄物処理に関する法律の高温ガス炉廃棄物への適用性を確認すべきである。そこで、技術の違いを比較するとともに、全炉心燃焼計算を用いて、黒鉛廃棄物の放射化量及び表面汚染による放射能濃度を評価することにより、再処理廃棄物について比較を行った。その結果、SiC残渣廃棄物は、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(2000年法律第117号)の第二種特定放射性廃棄物として軽水炉のハル・エンドピースと同様に地層処分されるべきことが分かった。黒鉛廃棄物については、軽水炉のチャンネルボックスと同様に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(1957年法律第166号)の第二種廃棄物としてピット処分による浅地中処分されるべきことが分かった。
小出 馨
JAEA-Research 2023-003, 101 Pages, 2023/06
東濃地科学センターでは、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究(地層科学研究)として広域地下水流動研究(19922019年度)を実施してきた。本研究はその一環として、広域を対象とした地質環境特性調査において、特に重要と考えられる地下水の地表への流動経路となりうる地層境界や断層破砕帯等の存在を推定する調査手法の構築を目標に、従来、地質分野での適用が困難とされてきた日本のような温暖湿潤地域の森林域を対象に、衛星リモートセンシングによる地下水流出点等の高地下水面地点の推定手法の開発に取り組んだ。開発に当たり、「地下水からの水分供給を受けている樹木は、干ばつ等による水分ストレスの程度が小さく、水分供給を受けていない樹木と比べ成長度が高い」及び「樹木の生育に関する影響因子の状態が同一の場合、同様な生育状態を示すとすれば、地下水以外の影響因子の状態が同じ環境下で生育状態が異なる場合、その原因は地下水の状態差にある」との作業仮説を設定した。これに基づき、地下水からの水分供給に起因する樹木の生育状態の差異を検出するため、NDVI (Normalized Difference Vegetation Index)等の既存の植生指標に比べ、植被率等の植生物理量に対する応答の直線性・耐飽和性に優れ、植生の水分ストレスにも感度を持つ新たな植生指標(AgbNDVI: Added green band NDVI)を考案した。また、対象領域を樹木の生育に関する影響因子(標高・斜面傾斜角・斜面方位角・林相)の組み合わせによって区分した微小領域(セグメント)ごとに植生指標値の統計量から林分の平均的な生育状態(植生指標値)を求め、それを上回る地点を植生指標値の異常点(高植生指標地点)として抽出するセグメント解析手法を考案した。本手法の妥当性を検証するため、岐阜県東濃地域の約5km四方の範囲を研究対象に、衛星データ(SPOT HRV)を用いて本手法を適用した。その結果、研究対象領域を555のセグメントに区分し、AgbNDVI画像(57600画素)から3768画素の高植生指標地点を抽出した。高植生指標地点における樹木の生育状態及び地形・地質状況を確認した結果、樹木(アカマツ: )は他の地点に比べ成長度が高いこと、また、高植生指標地点は地下水流出が発生しやすい斜面の傾斜変換点や地質境界付近及び既知の湧水点の近傍や地下水面の高い地点に分布していることが明らかになった。
永井 崇之; 岡本 芳浩; 山岸 弘奈*; 柴田 大輔*; 小島 一男*; 長谷川 毅彦*; 佐藤 誠一*; 深谷 茜音*; 畠山 清司*
JAEA-Research 2023-004, 45 Pages, 2023/09
ホウケイ酸ガラス中のガラス成分や廃棄物成分の局所構造は、その化学組成によって変化する。本研究は、ガラス固化体を模擬したガラス(以下、模擬廃棄物ガラス)を対象に軟X線領域のXAFS測定を実施し、原料ガラス成分のホウ素(B)やケイ素(Si)、廃棄物成分の鉄(Fe)やセシウム(Cs)の化学的状態等を評価した。模擬廃棄物ガラスの化学的安定性を把握するため、浸出試験に供したガラス表面を対象に、BのK吸収端、FeのL、L吸収端及びCsのM、M吸収端のXANESスペクトル測定を行った。その結果、浸出液に曝露されたガラス表面は変化し、明瞭なXANESスペクトルが得にくくなることが分かった。BのK吸収端XANESスペクトルから、浸出試験後の試料表面は未浸漬の試料表面と比較してB-Oの3配位構造(BO)が増加し、4配位構造(BO)が減少する傾向を確認した。FeのL、L吸収端及びCsのM、M吸収端のXANESスペクトルから、浸漬時間が長くなるに従って、ガラス表面に存在するCsが浸出液中へ溶出することを確認した。未浸漬の模擬廃棄物ガラスを対象に、SiのK吸収端XANESスペクトルを測定した結果、NaO濃度によるXANESスペクトルの変化が廃棄物成分濃度による変化より大きいことを確認した。
丹羽 正和; 島田 耕史; 末岡 茂; 石原 隆仙; 小川 大輝; 箱岩 寛晶; 渡部 豪; 西山 成哲; 横山 立憲; 小形 学; et al.
JAEA-Research 2023-005, 78 Pages, 2023/10
本報告書では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究の一環として実施している地質環境の長期安定性に関する研究について、第4期中長期目標期間(令和4年度令和10年度)における令和4年度に実施した研究開発に係る成果を取りまとめたものである。第4期中長期目標期間における研究の実施にあたっては、地層処分事業における概要・精密調査や国の安全規制に対し研究成果を適時反映できるよう、(1)調査技術の開発・体系化、(2)長期予測・影響評価モデルの開発、(3)年代測定技術の開発の三つの枠組みで研究開発を進めている。本報告書では、それぞれの研究分野に係る科学的・技術的背景を解説するとともに、主な研究成果等について取りまとめた。
杉原 健太; 小野寺 直幸; 井戸村 泰宏; 山下 晋
JAEA-Research 2023-006, 47 Pages, 2023/10
本報告書では、気液二相流シミュレーションのためのフェーズフィールドモデルに基づく新しい界面捕獲法を提案する。従来のフェーズフィールドモデルでは、界面補正強度パラメータは計算領域内の最大流速から決定されていたが、界面補正は空間全体に一様に適用されているため、補正を必要としない位置にも適用されていた。新手法では、フェーズフィールド変数あるいはフェーズフィールドモデルの強度に空間分布を持つように拡張し、局所的な流速場に応じた最適なパラメータを設定できるようにした。また、界面移流試験や気泡上昇計算の誤差解析を用いた系統的なパラメータスキャンに基づき、最適なフェーズフィールドパラメータを導出する手法を提案する。気液二相流のベンチマークテストを通じて、提案モデルを検証し、提案モデルが従来のフェーズフィールドモデルよりも高精度であることを示す。
須藤 彩子; Mszros, B.*; 佐藤 拓未; 永江 勇二
JAEA-Research 2023-007, 31 Pages, 2023/11
東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所で形成された燃料デブリの臨界評価のためには、燃料デブリ中に含まれる成分の偏析傾向を把握することは非常に重要である。特に、燃料デブリ中で中性子吸収材としての役割を担うと考えられるFeおよびGdの分布状況は臨界性に大きな影響を与えると考えられる。本研究では炉心酸化物溶融物中の凝固過程におけるFeおよびGdの偏析傾向を解明するため、コールドクルーシブル誘導加熱法を用い炉心構成材料(UO、ZrO、FeO、GdO、模擬核分裂生成物(MoO、NdO、SrO、RuO))、コンクリート主成分(SiO、AlO、CaO)の溶融凝固試験を行った。本試験では、加熱中溶融試料を徐々に下部に引き抜くことによって、下部から上部に向かって凝固させることを実現した。元素分析の結果、Feは試験体中心付近で試験体下部の最大3.4倍濃縮することがわかった。FeOの初期組成、冷却速度、相分離の有無にかかわらず、すべての試験体でFeの試験体中心部付近への偏析が確認された。このことから、FeOは溶融物中で最終凝固領域に向けて偏析することが考えられる。一方、Gdは試験体中の試験体下部で試験体中心付近の最大2.6倍濃縮した。GdOは初期組成1at.%以上の場合、冷却速度、相分離の有無にかかわらず、すべての試験体で試験体下部への偏析が確認された。このことから、GdOは溶融物中に1at.%以上含まれる場合、初期に凝固する領域に偏析することが考えられる。一方、模擬核分裂生成物の顕著な偏析は確認されなかった。
永井 崇之; 長谷川 毅彦*
JAEA-Research 2023-008, 41 Pages, 2023/12
ガラス固化技術開発施設(TVF)では、高レベル放射性廃液の保管に伴うリスクを低減するため、高レベル放射性廃液をガラス固化する作業を進めている。また、TVFにおけるガラス固化を着実に進めるため、ガラス固化技術課は、ガラス溶融炉の構造を改良した新たな3号溶融炉を製作し、この溶融炉の性能を確認する作業を実施している。今回、TVF3号溶融炉の製作における作動確認のドレンアウト試験で流下した模擬ガラス固化体からサンプルを採取し、固化体表層と破断面の性状を評価した。ラマン分光測定、放射光XAFS測定、LA法ICP-AES分析により実規模スケールで製造した固化体の表層と破断面を測定した結果、表層と破断面の性状に若干の差があることを確認した。この固化体サンプルは、白金族元素を含まない模擬廃棄物ガラス組成であるため、実ガラス固化体のガラス構造と異なると予想されるが、実規模スケールの通電加熱・流下方式で製造したサンプルを評価できる貴重な機会となった。また、今回のTVF3号溶融炉の作動確認に供したカレット及び同じ化学組成で別の製造ロットのカレットを対象に、これらカレットの性状を測定分析した結果、化学組成が同等であってもカレット製造履歴が異なるとガラス構造に差が生じることを確認した。さらに、これらガラス構造が異なるカレットを溶融した凝固サンプルを分析した結果、カレットで確認したガラス構造の差が溶融した凝固サンプルに残留することを確認した。
廣内 淳; Charnock, T.*
JAEA-Research 2023-009, 47 Pages, 2023/10
放射線緊急事態の復旧段階における意思決定では、様々な選択肢の復旧戦略を実行する人々の予測線量、コスト、労力、廃棄物の量、廃棄物の放射能濃度を提供することが重要である。European Model for Inhabited Areas(ERMIN)は、これらの情報を提供することができる。米国環境保護庁が開発したWaste Estimation Support Tool(WEST)は、放射線事故とその後の除染作業によって発生する廃棄物の潜在的な量と放射能濃度を推定することに焦点を当てたものである。本研究では、ERMINとWESTの廃棄物計算手法を比較し、ERMINツールのさらなる開発に役立てることを目的とした。ERMINとWESTの比較から、ERMINの改善点として、1)壁や天井の除染オプションを評価できるように内装をよりよく表現すること、2)廃棄物のエンドポイントを液体と固体に細分化すること、3)コンクリートの表面に対する高圧洗浄や消火を追加すること、4)異なる建物環境に対してさまざまな建ぺい率を追加することが提案された。
外間 智規; 木村 仁宣; 外川 織彦
JAEA-Research 2023-010, 57 Pages, 2024/02
原子力災害時に住民の甲状腺中放射性ヨウ素放射能の簡易測定を行うことが計画されている。簡易測定にはスクリーニングレベル:0.20Sv/hが目安として設定されており、原子力災害等の状況に応じて適切に見直すこととされている。しかしながら、スクリーニングレベルの見直しに関する具体的な方針は定められていない。スクリーニングレベルの見直しについては、甲状腺内部被ばく線量の判断レベルや簡易測定の実施期間等、簡易測定の可否に係る要因について考慮する必要がある。本研究では、スクリーニングレベル:0.20Sv/hの設定根拠を整理するとともに、原子力災害時におけるスクリーニングレベル見直しの実行性について考察を行った。スクリーニングレベルを0.0250.50Sv/hの範囲で見直した場合の判断レベルと実施期間との関係を計算し、スクリーニングレベル見直しの実行性について考察を行った。その結果、スクリーニングレベルの見直しについては、適切な判断レベルと実施期間を選択しなければならないという技術的な制約はあるものの実行可能であることが分かった。しかしながら、原子力災害時の簡易測定の実際を想定した場合、スクリーニングレベル見直しについては、実施期間の延長が必要な状況において0.0300.20Sv/hの範囲で設定することが妥当であろうと評価した。
外川 織彦; 外間 智規; 平岡 大和; 齊藤 将大
JAEA-Research 2023-011, 78 Pages, 2024/03
原子力災害時に大気へ放射性物質が放出された場合には、住民等の被ばくを低減するための防護措置として、自家用車やバス等の車両を利用して避難や一時移転が実施される。避難等を実施した住民等や使用した車両の汚染状況を確認することを目的として、原子力災害対策重点区域の境界周辺から避難所までの経路途中において避難退域時検査が行われる。その際に、我が国では表面汚染密度の測定によるOIL4=40,000cpmという値が除染を講じる基準として用いられる。しかし、この値が設定された経緯や導出方法については、系統的かつ詳細な記述や説明は公式文書には見受けられず、また原子力防災の専門家でさえも全体に亘って詳細に説明できる人はほとんどいないことを認識した。本報告書では、我が国の避難退域時検査における除染の基準として用いられるOIL4を科学的・技術的に説明するために、その導出方法を調査・推定するとともに、それらの結果について検討と考察を行うことを目的とした。この目的を達成するために、我が国における除染基準を設定する上での根拠を示すとともに、被ばく経路毎の線量基準に対応した表面汚染密度限度を導出する方法を調査・推定した。さらに、我が国におけるOIL4の位置付けと特徴、OIL4の改定時における留意点という観点から、OIL4に関する考察と提言を行った。
中西 千佳*; 太田 雅和; 廣内 淳; 高原 省五
JAEA-Research 2023-012, 29 Pages, 2024/02
OSCAARプログラムは日本原子力研究開発機構で開発した原子炉事故の確率論的リスク評価プログラムである。OSCAARプログラムに含まれる、土壌表面に沈着した放射性核種の再浮遊による長期被ばくに関するモデルを改良するために、セシウム137の再浮遊係数を計算した。再浮遊係数の計算には、大気-土壌-植生の一次元モデルSOLVEG-Rを用いた。風速は粒子の再浮遊挙動に影響の大きい気象因子であることから、風速一定とした場合の再浮遊係数の年平均値を計算した。高さ1mにおける再浮遊係数の年平均値は、風速6m s未満では変動幅が比較的小さく、風速6m s以上では風速の上昇に対応して顕著な増加傾向を示した。風速1m sから7m sでの再浮遊係数の値は10から10 mの範囲内であった。
廣内 淳; Charnock, T.*
JAEA-Research 2023-013, 57 Pages, 2023/12
近年、ICRPは環境線源からの外部被ばくに対する線量換算係数をICRP Publ.144として発表した。European Model for Inhabited Areas(ERMIN)は、ICRP Publ.144の「地面上および地面内の平面状線源」の状況に非常に近い「オープンエリア」環境を含む、いくつかの理想的な居住環境下の線量換算係数を整備している。この研究では、ガンマ線による外部被ばくにおける線量換算係数、空気カーマから実効線量への換算係数、ベータ線による線量換算係数について、ERMINでの値とICRP Publ.144での値とを比較し、最新知見に基づいてERMINの幾つかの改良点を示した。まずICRP Publ.144に基づいて新しい「オープンエリア」環境を作成した。新しい線量換算係数を作成し、以前は深さに依存していないものから、土壌の深さを考慮した9つの係数に変更した。ERMINでは制動放射線が考慮されていなく、Cs-137、Pr-143、Pr-144、Ru-106、Sr-89、Sr-90、Y-90、Y-91の線量換算係数がERMINとICRP Publ.144で大きく異なっていた。ICRP Publ.144に基づく補正係数を用いて、制動放射線を考慮した線量換算係数を作成した。