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濱本 真平; 清水 厚志; 猪井 宏幸; 栃尾 大輔; 本間 史隆; 澤畑 洋明; 関田 健司; 渡辺 周二; 古澤 孝之; 飯垣 和彦; et al.
Nuclear Engineering and Design, 388, p.111642_1 - 111642_11, 2022/03
被引用回数:2 パーセンタイル:50.96(Nuclear Science & Technology)日本原子力研究開発機構は、2011年の福島第一原子力発電所事故を契機に作られ2013年12月に施行された新しい規制要件に、高温工学試験研究炉(HTTR)を適合させた。様々な高温ガス炉(HTTR)安全試験を通じて得られたHTGRに関する知見を基に、既存の構造物,系統及び機器の安全性及び耐震分類が議論された。防護の対象となる構築物,系統及び機器が再検討し、安全機能に影響を及ぼす内的・外的脅威への対策が強化された。さらに、設計基準を超える事故として、多量の放射性物質が放出されるおそれのある事故に対する措置を講じた。我々のこの対応が、新しい規制要求に適合していることを、原子力規制委員会は厳格かつ適切に審査した。2014年11月に提出したHTTRの設置許可変更申請書は、9回の修正を経て2020年6月に承認された。この対応は、高温ガス炉の特性を反映すれば、強化された規制要件を満たすためでも合理的に設計できることを示しており、今後の高温ガス炉の開発の参考になると考える。
小野 正人; 飯垣 和彦; 澤畑 洋明; 島崎 洋祐; 清水 厚志; 猪井 宏幸; 近藤 俊成; 小嶋 慶大; 高田 昌二; 沢 和弘
Journal of Nuclear Engineering and Radiation Science, 4(2), p.020906_1 - 020906_8, 2018/04
2011年3月11日、地震の規模を示すマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生した。地震発生時、HTTRは定期点検及び機器の保守管理のため停止していた。HTTRで観測された最大加速度は設計基準地震を超えていたため、総合的な健全性評価を実施した。総合的な健全性評価の考えは2つに分けられる。1つは機器の目視点検であり、1つは観測波を用いた耐震解析である。運転に関わる全ての機器は目視点検を実施した。設備の健全性は点検結果や解析結果により確認した。機器の耐震解析や目視点検の結果、損傷や機能低下は無く、原子炉の運転に関わる問題は無かった。HTTRの健全性は2011年, 2013年, 2015年のコールド状態の運転によっても裏付けられた。さらに、2015年に中性子源を交換するために3つの制御棒案内ブロックと6つの可動反射体ブロックを原子炉から取り出したとき、制御棒案内ブロックの健全性を目視により確認した。
本多 友貴; 藤本 望*; 澤畑 洋明; 高田 昌二; 沢 和弘
Journal of Nuclear Engineering and Radiation Science, 3(1), p.011013_1 - 011013_4, 2017/01
HTTRの燃焼挙動は今後の高温ガス炉開発において重要なデータである。現在までにHTTRを用いた様々な試験が行われており、解析精度の検証が行われてきたが燃焼を伴う解析精度の検証が不十分であった。また、現在のHTTRは燃焼中期にあり、十分なデータが取得されている。そこで本研究では、燃焼を伴う臨界制御棒位置のデータを用いて核解析コードの解析精度の検討を行った。しかしながら、定格試験データは炉内に温度分布があるため、誤差要因が多く検証が困難であった。対してHTTRでは試験ごとに400Kの低温臨界制御棒位置のデータを保有しており、また400K条件での試験データは温度分布が無く解析値と比較する上で良質なデータであるため、まずこれらのデータを用いて燃焼による拡散計算コードCITATIONによる解析精度の検討を行い十分な精度があることを確かめた。これにより、Sm, Puなどの蓄積評価が十分であることを確認した。これらのコードの検証により将来高温ガス炉のための技術基盤の確立を目指す。
本多 友貴; 藤本 望*; 澤畑 洋明; 高田 昌二; 沢 和弘
Journal of Nuclear Engineering and Radiation Science, 3(1), p.011005_1 - 011005_6, 2017/01
HTTRでは制御棒二段階挿入方法を採用しており、1段目で反射体領域に制御棒を挿入し未臨界にする仕組みとなっている。また将来高温ガス炉においても反射体領域にのみ制御棒を挿入する設計が存在するため、1段目の反射体領域に挿入される制御棒の反応度の解析精度が重要となる。しかしながら、現在まで制御棒価値の高い燃料領域に挿入される制御棒に合わせてセルモデルを作成していたため、1段目の制御棒価値の解析精度が不十分であることが分かった。そこで1段目の制御棒を取り巻く状況に合わせて反射体領域断面積を作成することによる感度解析を行い、将来高温ガス炉の研究開発のための技術基盤の確立を目指す。
島崎 洋祐; 澤畑 洋明; 川本 大樹; 鈴木 尚; 篠原 正憲; 本多 友貴; 勝山 幸三; 高田 昌二; 沢 和弘
Journal of Nuclear Engineering and Radiation Science, 2(4), p.041008_1 - 041008_5, 2016/10
HTTRを用いたメンテナンス技術の開発は、将来HTGRsの定期点検の期間を短縮し、稼働率90%を達成することを目標の一つとして実施されている。HTTRの広領域中性子検出器(WRM)は原子炉内に設置されていること等により、内部状態を詳細に検査することは困難であることから、断線による故障を予知し、その状態を基にした交換を計画することが重要である。HTTRでは、TDR法による特性インピーダンス波形観察及び静電容量測定法等の電気的検査法により、炉内に設置した状態で異常の有無(状態観察)及び断線箇所の特定をする方法が提案され、この方法の有効性を非破壊及び破壊検査により確認した。HTTRでは原子炉起動前などに上記電気的検査法による測定を実施してデータの蓄積をしていく。これらのデータは、WRMの断線予知などの将来HTGRsのメンテナンス技術の高度化に寄与することが期待される。
本多 友貴; 藤本 望; 澤畑 洋明; 沢 和弘
Proceedings of 23rd International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-23) (DVD-ROM), 5 Pages, 2015/05
HTTRの燃焼挙動は今後の高温ガス炉開発において重要なデータである。現在までにHTTRを用いた様々な試験が行われており、解析精度の検証が行われてきたが燃焼を伴う解析精度の検証が不十分であった。また、現在のHTTRは燃焼中期にあり、十分なデータが取得されている。そこで本研究では、燃焼を伴う臨界制御棒位置のデータを用いて核解析コードの解析精度の検討を行った。しかしながら、定格試験データは炉内に温度分布があるため、誤差要因が多く検証が困難であった。対してHTTRでは試験ごとに400Kの低温臨界制御棒位置のデータを保有しており、また400K条件での試験データは温度分布が無く解析値と比較する上で良質なデータであるため、まずこれらのデータを用いて燃焼による拡散計算コードCITATAIONによる解析精度の検討を行い十分な精度があることを確かめた。これにより、Sm, Puなどの蓄積評価が十分であることを確認した。これらのコードの検証により将来高温ガス炉のための技術基盤の確立を目指す。
本多 友貴; 藤本 望; 澤畑 洋明; 沢 和弘
Proceedings of 23rd International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-23) (DVD-ROM), 6 Pages, 2015/05
HTTRでは制御棒二段階挿入方法を採用しており、1段目で反射体領域に制御棒を挿入し未臨界にする仕組みとなっている。また将来高温ガス炉においても反射体領域にのみ制御棒を挿入する設計が存在するため、1段目の反射体領域に挿入される制御棒の反応度の解析精度が重要となる。しかしながら、現在まで制御棒価値の高い燃料領域に挿入される制御棒に合わせてセルモデルを作成していたため、1段目の制御棒価値の解析精度が不十分であることが分かった。そこで1段目の制御棒を取り巻く状況に合わせて反射体領域断面積を作成することで解析精度の向上を図り、将来高温ガス炉の研究開発のための技術基盤の確立を目指す。
島崎 洋祐; 澤畑 洋明; 川本 大樹; 鈴木 尚; 篠原 正憲; 本多 友貴; 勝山 幸三; 高田 昌二; 沢 和弘
Proceedings of 23rd International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-23) (DVD-ROM), 7 Pages, 2015/05
HTTRを用いたメンテナンス技術の開発は、将来HTGRsの定期点検の期間を短縮し、稼働率90%を達成することを目標の一つとして実施されている。HTTRの広領域中性子検出器(WRM)は原子炉内に設置されていること等により、内部状態を詳細に検査することは困難であることから、断線による故障を予知し、その状態を基にした交換を計画することが重要である。HTTRでは、TDR法による特性インピーダンス波形観察及び静電容量測定法等の電気的検査法により、炉内に設置した状態で異常の有無(状態観察)及び断線箇所の特定をする方法が提案され、この方法の有効性を非破壊及び破壊検査により確認した。HTTRでは原子炉起動前などに上記電気的検査法による測定を実施してデータの蓄積をしていく。これらのデータは、WRMの断線予知などの将来HTGRsのメンテナンス技術の高度化に寄与することが期待される。
山下 真一*; 岩松 和宏; 前橋 佑樹*; 田口 光正; 端 邦樹; 室屋 裕佐*; 勝村 庸介*
RSC Advances (Internet), 5(33), p.25877 - 25886, 2015/02
被引用回数:12 パーセンタイル:37.81(Chemistry, Multidisciplinary)ブロマイド(Br)は水酸化(OH)ラジカルと反応して分子吸光係数の大きな中間体を生じるため、放射線誘起水中OHラジカルの反応プローブとして使われてきた。放射線照射後ナノ秒領域のOHラジカルの挙動を解明するためにはBrの濃度を高くする必要があるものの、高濃度のBrとOHラジカルの反応機構は不明であった。NOおよびArで飽和した0.9-900mMのNaBr水溶液へのパルス電子線照射によって生じたOHラジカルとBrの反応中間体の時間挙動を光吸収により計測した。BrはOHラジカルと反応してBrOH、さらにBrを生じる。異なる実験条件で得られたBrOHやBrのタイムプロファイルに対して、既報の反応速度式、速度定数を用いたスパーモデルシミュレーションを行った結果、10mM以上の高濃度条件では、2BrOHBr + 2OHの反応(反応度度定数: k=3.810 Ms)を新たに考慮することで実験結果をよく再現できることを明らかにした。
植田 祥平; 相原 純; 坂場 成昭; 本田 真樹*; 降旗 昇*; 沢 和弘
Journal of Nuclear Science and Technology, 51(11-12), p.1345 - 1354, 2014/11
被引用回数:9 パーセンタイル:57.01(Nuclear Science & Technology)商用規模では初の国産高温ガス炉燃料であるHTTR燃料は、被覆燃料粒子の製造時破損ならびに原子炉運転中の追加破損を最小限に抑えるよう策定した燃料設計および安全基準をもとに世界最高レベルの製造品質を達成した。また、HTTR運転中における燃料性能を把握するため、燃料から放出された核分裂生成物ガスの測定およびガス放出挙動のモデル化による高精度な評価手法を開発した。950C・50日間の高温連続運転を含むHTTRの運転時において、燃料からの核分裂生成物ガス放出率は1.210を下回る結果が得られ、国産高温ガス炉燃料の優れた照射性能が実証された。これらの日本のHTTR燃料技術によってGEN-IV・VHTR等の実用型高温ガス炉用燃料を世界に先駆けて実用化できる見通しを得た。
村上 陽之; 木津 要; 土屋 勝彦; 小出 芳彦; 吉田 清; 尾花 哲浩*; 高畑 一也*; 濱口 真司*; 力石 浩孝*; 夏目 恭平*; et al.
IEEE Transactions on Applied Superconductivity, 24(3), p.4200205_1 - 4200205_5, 2014/06
被引用回数:25 パーセンタイル:73.77(Engineering, Electrical & Electronic)JT-60SAの中心ソレノイドは、ひずみに弱いNbSn素線を用いたケーブル・イン・コンジット導体を用いて製作される。中心ソレノイドモデルコイルは、実機製作を開始する前にコイル巻線や接続部の製作方法の妥当性を検証するために製作し、極低温において通電試験を行った。モデルコイルは4層のパンケーキコイルからなり、内径や外径、絶縁構成などは実機と同じである。実機製作に使用される治具用い、実機と同等の手順で製作した。モデルコイルは、核融合科学研究所のコイル試験装置を用いて極低温において通電試験を行った。試験の結果、圧力損失や臨界電流値,接続抵抗値は要求性能を満たすことが確かめられ、NbSnマグネットの製作方法が確立できた。本論文では、中心ソレノイドモデルコイルの仕様及び製作方法、試験について報告する。
木津 要; 村上 陽之; 土屋 勝彦; 吉田 清; 野元 一宏*; 今井 良夫*; 湊 恒明*; 尾花 哲浩*; 濱口 真司*; 高畑 一也*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity, 23(3), p.4200104_1 - 4200104_4, 2013/06
被引用回数:23 パーセンタイル:70.83(Engineering, Electrical & Electronic)JT-60SAの中心ソレノイド(CS)の最大経験磁場、電流値、電圧は8.9T, 20kA, 10kVである。そのため、高磁場・高電流密度のNbSn導体を開発した。CSの外形と高さは2m, 1.6mである。幾つかの構成部品を新規に開発し、試験を行った。供給磁束を最大化するためには、巻線の直径をできるだけ大きくする必要がある。そのために、ジョイントの空間を最小化できるバットタイプのジョイントを開発した。DGEBAエポキシを用いた絶縁は、100kGyの線照射においても十分な強度を有していることが示された。44に導体を積み重ねたサンプルに運転時の2倍の応力を運転回数与えた後に絶縁試験を行ったところ、21kVより大きな絶縁耐力があった。これらの結果より、CS実機製作が開始できる。
植田 祥平; 相原 純; 沢 和弘; 安田 淳*; 本田 真樹*; 降旗 昇*
Progress in Nuclear Energy, 53(7), p.788 - 793, 2011/09
被引用回数:27 パーセンタイル:87.9(Nuclear Science & Technology)日本における高温ガス炉(HTGR)燃料製造技術は、1960年代からのHTTR計画において原子力機構(JAEA)と原子燃料工業(NFI)が共同で開発を行ってきた。それをもとにして、NFIはHTTRの初装荷及び2次燃料(各0.9tU)を製造した。2010年3月までのHTTR初装荷燃料の高温長期連続運転によってその高い品質が確認された。この成果を踏まえて、高燃焼度用燃料を開発した。また、従来の燃料に用いられていた炭化珪素(SiC)層を炭化ジルコニウム(ZrC)層に置き換えた革新的な被覆燃料の開発のために、JAEAはZrC被覆条件を最適化するための試験を行い、被覆温度等の最適化の他、定比性などの特性を調べた。
植田 祥平; 相原 純; 本田 真樹*; 降旗 昇*; 沢 和弘
Proceedings of 18th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-18) (CD-ROM), 2 Pages, 2010/05
超高温ガス炉(VHTR)燃料においては、HTTRの3.6%FIMAより遥かに大きな燃焼度(1520%FIMA)まで安全性を保つ必要がある。TRISO燃料の健全性を高燃焼度まで保つためには、機械的強度向上と内圧上昇緩和のために、SiC層とバッファ層を厚くする必要がある。原子力機構においては、過去に高燃焼度用燃料を開発し、9%FIMAまでの性能を確認した。今回の研究開発においては、新たに高燃焼度用燃料を製造した。真球度その他によって示されるように、この新しい燃料の品質は過去の燃料よりも高品質であった。
都筑 和泰; 神谷 健作; 篠原 孝司; Bakhtiari, M.*; 小川 宏明; 栗田 源一; 武智 学; 河西 敏; 佐藤 正泰; 川島 寿人; et al.
Nuclear Fusion, 46(11), p.966 - 971, 2006/11
被引用回数:16 パーセンタイル:48.19(Physics, Fluids & Plasmas)JFT-2Mでは、発電実証炉のブランケット構造材の有力候補である低放射化フェライト鋼のプラズマへの適用性を調べる「先進材料プラズマ試験」を段階的に進めてきた。核融合原型炉では壁安定化効果を利用して規格化ベータ3.55.5程度のプラズマを生成することが想定されているため、フェライト鋼のような強磁性体壁をプラズマに近づけた時のMHD安定化への影響を評価することは応用上重要である。そこで、壁とプラズマとの距離を変え、安定化効果を調べる実験を行った。まずプラズマの位置,圧力をより正確に評価するための平衡計算コードの改良を行った。改良後のコードを実験と比較し、良い一致が見られた。そのうえでプラズマを壁に近づける実験を行い、プラズマ小半径で規格化した壁との距離が1.3程度の範囲までフェライト鋼壁と高規格化ベータプラズマが共存し得ることを実証した。また、壁との距離以外の条件が共通しているデータセットを抽出し、壁に近い配位の方が(1)限界が上昇する、(2)コラプスに至る時定数が長くなるなど、壁安定化効果の存在を示唆するデータが得られた。
河西 敏*; 神谷 健作; 篠原 孝司; 川島 寿人; 小川 宏明; 上原 和也; 三浦 幸俊; 岡野 文範; 鈴木 貞明; 星野 克道; et al.
Fusion Science and Technology, 49(2), p.225 - 240, 2006/02
被引用回数:3 パーセンタイル:24.08(Nuclear Science & Technology)約30台の計測装置から構成されているJFT-2Mの計測診断システムは、プラズマ生成,制御,平衡,安定性,閉込め,NBIやRF(LH, ICRF, ECH)による加熱,RFによる電流駆動の研究に使用されてきた。このうち、運動シュタルク効果を利用した偏光計,荷電交換反応分光器,重イオンビームプローブ,飛行時間測定法による中性粒子測定器等は、Hモード,高リサイクリング定常(HRS)Hモードの閉込め改善機構の解明や運転領域の探求に貢献した。赤外テレビカメラ,損失イオンプローブは、リップル損失粒子による壁への熱負荷,主プラズマからの損失するイオンに関する研究でそれぞれ重要な役割を果たした。この論文は、これらの計測機器についてレビューしたものである。
都筑 和泰*; 木村 晴行; 草間 義紀; 佐藤 正泰; 川島 寿人; 神谷 健作; 篠原 孝司; 小川 宏明; 上原 和也; 栗田 源一; et al.
Fusion Science and Technology, 49(2), p.197 - 208, 2006/02
被引用回数:11 パーセンタイル:60.11(Nuclear Science & Technology)低放射化フェライト鋼は核融合原型炉のブランケット構造材の有力候補である。しかし、強磁性体であるため、プラズマの生成,制御,閉じ込め,安定性等に悪影響を与えることが懸念されていた。また、酸素不純物の吸蔵量が大きいことから、プラズマ中に不純物を放出することも懸念された。JFT-2Mでは段階的にフェライト鋼を導入して適合性試験を進めた。その最終段階では、真空容器内壁の全面にフェライト鋼を設置して実験を行った。プラズマ生成,制御に関しては、フェライト鋼によって生成される磁場が、外部磁場の10%程度であり、トカマクプラズマが既存の制御系で生成可能であることを示した。また、高規格化ベータプラズマに対する適合性を調べる実験を行い、フェライト鋼壁の存在下でも原型炉の運転領域に相当する規格化ベータ3.5程度のプラズマが生成できることを実証した。壁に近づけると不安定性の成長速度が遅くなることを示し、フェライト鋼壁が非磁性導体壁と同様の壁安定化効果を持つことを示した。低ベータでのロックトモード,Hモード遷移等にも悪影響は観測されなかった。以上のように、フェライト鋼の原型炉への適用に対し見通しを与える結果が得られた。
小川 宏明; 山内 有二*; 都筑 和泰; 川島 寿人; 佐藤 正泰; 篠原 孝司; 神谷 健作; 河西 敏; 草間 義紀; 山口 薫*; et al.
Journal of Nuclear Materials, 329-333(Part1), p.678 - 682, 2004/08
被引用回数:4 パーセンタイル:29.18(Materials Science, Multidisciplinary)JFT-2Mでは原型炉の構造材として有力視されている低放射化フェライト鋼(F82H)を段階的に真空容器内に設置して高性能プラズマとの適合性を試験する「先進材料プラズマ適合性試験」を実施している。フェライト鋼はその化学的特性(錆びやすい)から酸素不純物の増加が懸念されている。また、重水素保持特性に関してはこれまで十分なデータの蓄積がない。そこで、フェライト鋼を真空容器内壁の20%に設置した場合と全面に設置した場合の不純物挙動を分光診断で測定した。その結果、真空容器内壁全面に設置した場合であっても、プラズマが直接相互作用をしない位置に設置した場合では、不純物放出が大きな問題とならないことを示す結果を得た。また、フェライト鋼の重水素保持特性では、重水素はおもに酸化層に吸蔵され、機械研摩等により酸化層を除去した状態では、構造材として広く用いられているSUS-316Lと同様であることを示す結果を得た。
都筑 和泰; 篠原 孝司; 神谷 健作; 川島 寿人; 佐藤 正泰; 栗田 源一; Bakhtiari, M.; 小川 宏明; 星野 克道; 河西 敏; et al.
Journal of Nuclear Materials, 329-333(1), p.721 - 725, 2004/08
被引用回数:7 パーセンタイル:45.06(Materials Science, Multidisciplinary)低放射化フェライト鋼は核融合原型炉のブランケットの有力な候補材料であるが、強磁性体であり不純物の吸蔵量も大きいことから高性能プラズマとの共存性の実証が不可欠である。JFT-2Mにおいては、原研炉のブランケット壁を模擬するため、真空容器の内壁全面にフェライト鋼を設置し、適合性試験を行っている。プラズマ生成,制御に関しては、フェライト鋼によって生成される磁場が、外部磁場の10%程度であることを示し、トカマクプラズマが既存の制御系で生成可能であることを示した。さらに、原型炉においても、制御に対する影響はJFT-2Mと同程度と予測されることを示した。また、原型炉で想定されている高規格化ベータプラズマに対する適合性を調べる実験を行い、フェライト鋼壁の存在下でも壁無しの安定化限界に近い、規格化ベータ3.3程度のプラズマが生成できることを実証した。この配位をベースにしてプラズマを全体的に弱磁場側の壁に近付けたところ、ディスラプション直前のモードの成長速度が壁の時定数程度(数ms)まで低減した。これは壁安定化効果の存在を示唆する。その他、低ベータでのロックトモード,Hモード遷移等にも悪影響は観測されておらず、フェライト鋼の原型炉への適用に対し、明るい見通しを与える結果が得られた。
都筑 和泰; 木村 晴行; 川島 寿人; 佐藤 正泰; 神谷 健作; 篠原 孝司; 小川 宏明; 星野 克道; Bakhtiari, M.; 河西 敏; et al.
Nuclear Fusion, 43(10), p.1288 - 1293, 2003/10
被引用回数:39 パーセンタイル:74(Physics, Fluids & Plasmas)JFT-2Mでは、原型炉のブランケット構造材料の候補である低放射化フェライト鋼とプラズマとの適合性を調べる実験を進めてきている。昨年度にはフェライト鋼内壁を真空容器内に全面的に設置する作業を行い、今年度より実験を開始している。プラズマ生成,制御は問題なく行われ、金属不純物の放出も検出限界以下であった。改善閉じ込め(Hモード)も実現され、そのしきいパワーもこれまでと同等であった。プラズマ安定性に関してもこれまでの所悪影響は観測されておらず、規格化が3を超える放電との共存性も示された。高速イオンのリップル損失に関しても顕著な低減が実証された。以上のように、フェライト鋼の悪影響は小さく、有望な結果を得ている。JFT-2Mでは、その他にも先進的、基礎的な研究を行っている。先進的粒子供給手法であるコンパクトトロイド(CT)入射実験においては、再現性よくプラズマ中へ入射が行われ、CT入射に伴う密度の急上昇が初めて明確に観測された。