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大内 則幸
Evolution of Ionizing Radiation Research, p.41 - 62, 2015/09
コロニー形成法を用いた放射線生物学における定量的なアプローチと、線量-効果関係としての様々な細胞生存曲線について説明する。放射線照射に対する細胞の生存率曲線は、最も基本的な実験データとして利用されているにも関わらず、これまでは経験的な多項式でフィットするだけに留まり、生物メカニズムに基づいた導出例は存在しない。本論文では、たとえ生物種が異なっていたとしても、様々な条件下で生存率曲線が数学的にユニバーサリティを持つことに着目し、コロニー形成法による定量的なアプローチと、線量-効果関係としての様々な細胞生存曲線についての解析結果を示す。関数形がユニバーサリティを持つことは、生物種間を超えて、事象の数学的な普遍性が存在することを示している。また、染色体の構造変化が放射線損傷の修復確率に影響を与える事から、さらに細胞生存曲線の関数形にも影響を及ぼす可能性について述べる。
坂下 哲哉; 浜田 信行*; 川口 勇生*; 大内 則幸; 原 孝光*; 小林 泰彦; 斎藤 公明
PLOS ONE (Internet), 8(7), p.e70291_1 - e70291_10, 2013/07
被引用回数:8 パーセンタイル:35.01(Multidisciplinary Sciences)コロニー形成能の測定は、放射線照射後の細胞の重要な情報を与える。通常、50個以上の細胞からなるコロニーを、増殖可能な細胞からなるコロニーとして生存率を評価してきた。しかし、従来無視されてきた50個に満たない細胞からなるコロニーに関して詳細に調べたところ、サイズ分布が対数-対数グラフで直線にプロットできることがわかった。本研究では、この直線関係について分岐プロセスモデルを導入し、世界で初めて照射後の数世代にわたる細胞増殖死の確率を推定できることを発見した。また、従来、増殖可能なコロニーとして評価されたてきた生存コロニーに、このモデルを拡張応用することにより、生存率曲線を再現することに成功した。この一連の解析により、放射線照射後の細胞の継世代的な影響には、比較的短い数世代に及ぶ増殖死が高まる影響と、それよりも長い世代にわたって継続する増殖死の機構が存在することを明らかにした。本研究による、半世紀以上見過ごされてきたコロニーアッセイの隠れた重要性の指摘と、コロニーアッセイによる継世代影響解析方法の提案は、今後の放射線生物研究の進展に重要な貢献を果たすものと期待される。
大内 則幸
日本数理生物学会ニュースレター, (68), p.5 - 8, 2012/09
2011年の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の電源喪失事故により、大量の放射性物質が環境中に放出された。放射線の健康影響に関して、一般に強い注目が集まることになった。そのような放射線の健康影響及び生物影響の研究について、初期の研究テーマから分子生物学の黎明期にかけて解説し、幾つかの数理モデル等に関して紹介する。
大内 則幸
Current Topics in Ionizing Radiation Research, p.269 - 296, 2012/03
放射線の健康影響は一般にDNAに生じた損傷から始まることが知られている。そのような微細なスケールの損傷がさまざまな細胞内の代謝等の反応経路を通じて突然変異という形で蓄積し、やがてがん細胞を生じそのクローン増殖で腫瘍が発生する。このレビューにおいておもに細胞レベルの現象、つまり腫瘍の発生と成長に関して述べる。内容に関しては以下のようである。(1)放射線健康影響に関する概観、(2)放射線の生物影響のレビュー、(3)コンピュータモデリングの導入、(4)細胞レベルの放射線影響のモデル化、(5)計算結果と解析、おもに成長曲線解析、(6)まとめ
坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 大内 則幸; 伴 信彦*
放射線生物研究, 45(4), p.379 - 395, 2010/12
近年、放射線防護と放射線影響の分野において、生命現象を「多種多様な構成要素からなる複雑な大規模システム」として捉える「システムバイオロジー(Systems Biology)」を用いて放射線影響の理解を試みる「システム放射線生物学(Systems Radiation Biology)」の研究及びプロジェクトが欧米を中心に進められている。また、日本においてもシステム放射線生物学への関心が高まりつつある。本解説では、システム放射線生物学とはそもそもどのような研究分野であり何を目指しているのか、将来自分たちの研究にどのように役立つものなのか等について、4人の研究者が異なる立場からオムニバス形式にて概説する。
大内 則幸
Radiation Protection Dosimetry, 143(2-4), p.365 - 369, 2010/12
被引用回数:1 パーセンタイル:10.27(Environmental Sciences)近年、低線量放射線リスクの推定は、多様化する医療被ばくや放射線防護の観点からますます重要になってきている。一般に知られるように、低線量放射線による発がんは放射線によるDNA損傷に端を発し、そのような小さな影響が長時間の細胞内における生化学的反応を経て細胞レベルにまで現れ、最終的にがん細胞のクローン増殖によって腫瘍が発生する。このように生物学的な放射線影響は、空間及び時間的にミクロなDNA損傷レベルから腫瘍レベルまで、幅広い時空スケールを持つ現象であり、実験的にその影響を調べることが困難な現象である。低線量生物影響におけるこのような難しい条件を克服するには、生物メカニズムをベースにした数理モデルを用いて発がん過程を研究することが有効である。今回は、構築した細胞レベルの発がんモデルの紹介をし、腫瘍の成長曲線に関する幾つかの統計解析の結果について報告する予定である。発表においてはがんの個体数変動ダイナミクスのみではなく、組織構造における発がんを含む形態的変化に関しても報告する予定である。
大内 則幸
Data Science Journal (Internet), 6(Suppl.), p.S278 - S284, 2007/05
低線量放射線により生物影響、つまり低線量リスク評価は医療被曝も含むさまざまな被曝や放射線防護の観点から年々重要性を増してきている。今回われわれが発表するのは、それら低線量の放射線影響を調べるためのコンピュータによるシミュレーションとモデル化についてである。コンピュータシミュレーション及びモデリングは、低線量の放射線影響のように実験的に調べるのが困難であるようなスケールの空間、及び時間領域の現象が対象であるため、非常に有効である。今回われわれの発表では、おもに分子原子レベルから細胞レベルまでに関する3つのステージ、(1)放射線によるDNA鎖切断,(2)分子動力学によるDNA損傷修復の研究,(3)細胞レベルの腫瘍形成ダイナミクス、に関する研究を紹介する。
大内 則幸
保健物理, 40(2), p.166 - 169, 2005/06
低線量における発がん過程を念頭においた新しい発がん数理モデルの開発について報告する。細胞レベルの物理的ダイナミクスを考慮した、細胞がん化から腫瘍の形成までを記述する新しいモデルを構築した。モデルは細胞集団レベルにおいて、細胞間の接着,変形,移動などの物理的に記述可能なダイナミクスと、突然変異による細胞の変異,細胞分裂,細胞死、など細胞内部のダイナミクスの両方を持ち、細胞ががん化し、腫瘍を形成する様子を経時的に調べることができる。
大内 則幸; Glazier, J. A.*; Rieu, J.-P*; Upadhyaya, A.*; 沢田 康次*
Physica A, 329(3-4), p.451 - 458, 2003/11
被引用回数:88 パーセンタイル:91.41(Physics, Multidisciplinary)拡張LargeQ状態-Pottsモデルは、細胞集団の腫瘍形成やtissue rearrangement、またセルソーティングを記述するのに使われ、さまざまな組織の細胞レベルのシミュレーションのスタンダードなテクニックになってきている。しかし、これまで用いられてきた細胞間の接着エネルギーが正であるモデルでは、実験と定性的には非常によく合うが、定量的な記述はうまくいかない。ここで、われわれは実際の細胞の持つ「接着力」をうまく表すように系のエネルギーを定義し、また新たな物理的な相互作用項をモデルに取り入れることで実験データとよく合うモデルを構築することに成功した。このモデルは、今後さまざまな細胞レベルの現象を記述するのに用いられることが期待される。
大内 則幸
no journal, ,
細胞におけるDNAの収納構造であるクロマチン繊維は、細胞周期に依存してドラスティックにその構造を変化させる。放射線により生じたDNAの二重鎖切断の結果、クロマチン繊維が切断を生じるが、適切に修復されるか、あるいはされないかによって染色体異常が生じたり、あるいは突然変異が生成されてその後の生物影響へと進行していく。今回、溶液中の染色体の実験データをもとに弾性体の近似、及び統計力学的近似を用いて微分方程式でクロマチン繊維をモデル化して、溶液の場合や真空中などの条件でクロマチン繊維の構造変化や動態をシミュレーションした。またモデルに切断を作成して、その切断箇所の動的ダイナミクスを調べることで、その損傷の修復しやすさなどに関して調べた。その結果、切断のタイミングや溶液の粘性によっては、切断した箇所を繋ぐために修復酵素が到達する時間よりも数倍速く切断端が離れてしまうことがわかった。さらに細胞周期に依存した凝集状態の違いを考慮したモデルを用いて、切断端の動態との関係を調べた結果についても報告する。
大内 則幸
no journal, ,
放射線の生物影響を考える際に用いられるdose-response関係は、低線量域では科学的に妥当なデータが得られておらず、広島長崎の被曝者のデータ等の高線量域のデータを外挿しているのが現状である。低線量域での生物影響は発がんであるが、そのような影響のリスク評価のため、発がんプロセスをモデル化して腫瘍の形成をシミュレーションした結果について報告する。
大内 則幸
no journal, ,
近年、細胞のがん化プロセスにおいて物理的な刺激(細胞接着や細胞の変形等)がDNA生成あるいはアポトーシスに寄与していることが判明し、それら要因の発がんプロセスへの寄与に関する研究の必要性も高まっている。シャーレ上の実験と異なり、ヒトにおける発がんプロセスは、さまざまな環境条件の異なる中で進むが、それらの発がん過程への影響・寄与に関してはまだ研究が進んでいないと思われる。今回、組織構造において、腫瘍がどのように成長するかを調べるために組織構造をモデル化した数理モデルを構築した。会議において、腫瘍成長のダイナミクス及び、その形態変化に関して発表する予定である。
大内 則幸; Pinak, M.
no journal, ,
放射線影響の指標としては、細胞レベルにおいては線量に対するDNA鎖切断の頻度、個体レベルにおいては染色体異常の頻度がよく用いられている。DNA鎖切断と染色体異常(切断)は連続したイベントと考えられるが、それら一連の事象がどのように関係しているのかに関してはあまりコンセンサスが得られていないように見える。今回、数理モデル化したヒト17番染色体を用いて、そのさまざまな動態についてコンピュータシミュレーションを用いて調べた。特に放射線による切断が生じた際の切断端は時間とともに離れていくが、その動態と修復酵素の集積する速度との関係について計算結果を報告したい。
大内 則幸
no journal, ,
広い意味での発がんは日本において死因の第一位を占めており、およそ30%の死因になっている。5年生存率がおよそ50%であることから、半分ほどの人は生涯においてなんらかの形でがんに罹患すると考えられる。一般にがんの定義は、遺伝子の突然変異の蓄積によって正常細胞から変異した悪性がん細胞の凝集体である。ここで悪性とは、浸潤と転移能を持つことを示す。このように、がん化の過程は、(1)突然変異の蓄積で正常細胞ががん細胞に変異する、(2)クローン増殖でがん細胞が増える、(3)腫瘍が悪性化する、と考えられる。この仮定は遺伝子変異の多段階過程として知られる。腫瘍の成長過程の数学モデルとして、イニシエーション,プロモーション,プログレッション(IPP)という概念が知られ、それを用いてがん化過程をモデル化した。放射線はIPPの原因の一つと考えられている。発表において細胞レベルの数理モデルを紹介し、その動的特性、特に形態的視点からを発表する。腫瘍の形態的特性は、その境界長が形態に依存することからも悪性化のステージにおいて重要な寄与をすると考えられる。
坂下 哲哉; 浜田 信行*; 川口 勇生*; 大内 則幸; 原 孝光*; 小林 泰彦; 斎藤 公明
no journal, ,
コロニー形成能の測定は、放射線照射後の細胞の重要な情報を与える。通常、50個以上の細胞からなるコロニーを、増殖可能な細胞からなるコロニーとして生存率を評価してきた。しかし、従来無視されてきた50個に満たない細胞からなるコロニーに関して詳細に調べたところ、サイズ分布が対数-対数グラフで直線にプロットできることがわかった。本研究では、この直線関係について分岐プロセスモデルを導入し、世界で初めて照射後の数世代にわたる細胞増殖死の確率を推定できることを発見した。また、従来、増殖可能なコロニーとして評価されたてきた生存コロニーに、このモデルを拡張応用することにより、生存率曲線を再現することに成功した。この一連の解析により、放射線照射後の細胞の継世代的な影響には、比較的短い数世代に及ぶ増殖死が高まる影響と、それよりも長い世代にわたって継続する増殖死の機構が存在することを明らかにした。
大内 則幸
no journal, ,
20世紀半ばになり、生物影響の一つの指標として、広義の細胞死(増殖死)を定量的に測定する方法が確立され(Puck&Marcus, 1956)、放射線に対する細胞の影響が測定可能になった。その結果、放射線の種類や強度、また様々な種類の細胞に対する応答関数として、サバイバル曲線が得られた。その関数形は大きく2種類あることが知られており、細胞内にある仮想的な幾つかの「標的」に放射線がヒットすることにより、影響が現れるという標的理論を用いてそれら関数が導出可能であることがわかったが、標的数や細胞死に必要なヒット数を変えても同じように実験データを再現可能である点から、モデルの正当性には疑問が持たれている。その後、放射線の標的がDNAであることがわかり、放射線の生物への影響は細胞内に入射した放射線がDNAに対してエネルギーを付与することによるDNA損傷がオンセットであることが判明し、放射線によるDNA損傷の動態の詳細に関する研究が進められるようになった。発表においては、放射線生物学において広く知られる数理関係を説明し、問題解明に関する現状のアプローチとしてのDNA損傷研究について述べる予定である。
坂下 哲哉; 浜田 信行*; 川口 勇生*; 大内 則幸; 原 孝光*; 小林 泰彦; 斎藤 公明
no journal, ,
コロニー形成能の測定は、放射線照射後の細胞の重要な情報を与える。通常、50個以上の細胞からなるコロニーを、増殖可能な細胞からなるコロニーとして生存率を評価してきた。しかし、従来無視されてきた50個に満たない細胞からなる増殖不全コロニーに関して詳細に調べたところ、サイズ分布が両対数グラフで直線にプロットできることが分かった。本研究では、増殖不全コロニーの直線関係について分岐プロセスモデルを導入し、世界で初めて照射後の数世代にわたる細胞増殖死の確率を推定した。また、増殖不全コロニーモデルの結果を拡張することにより、従来、増殖可能なコロニーとして評価されたてきた生存コロニーの生存率曲線を再現することにも成功した。この一連の解析により、放射線照射後の細胞の継世代的な影響には、比較的短い数世代に及ぶ影響と、それよりも長い世代にわたって継続する増殖死の機構とが存在することを明らかにした。
大内 則幸
no journal, ,
細胞の放射線感受性は、コロニー形成法で得られる細胞生存率(照射放射線に対する生存細胞の割合)で定量的に測定可能であるが、そのような細胞の放射線感受性は、細胞周期のどの時期に放射線を照射されたかに大きく依存して周期的に変化することが知られている。感受性のパターンに関しては細胞の種類などでも異なるが、広く培養細胞として実験で用いられるヒト由来の培養細胞(HeLa細胞)の場合、分裂後期(G1期)と分裂前期(G2期)に照射された場合は放射線に対する感受性が小さく(細胞生存率が大きい)、逆にM期やS期に照射された場合、感受性が非常に大きい(細胞生存率が小さい)。このような細胞周期に依存した放射線感受性の原因としては、これまで細胞内の様々な動態、例えば細胞周期チェックポイントでの制御機構の存在や、細胞周期の段階毎のDNA修復能の差などの結果であると予想されてきた。今回、このような周期的な放射線感受性の起因に関して、染色体の細胞周期に依存した構造変化を伴う動態から調べた。そのために、染色体の動力学モデルをその弾性的性質を基に構築し、実際に各細胞周期の段階毎の立体構造をシミュレーションで構築し、さらにDNAの二重鎖切断を導入することで、そのDNA損傷部位の動態から調べた結果に関して発表する。
大内 則幸
no journal, ,
細胞の放射線応答は、照射された細胞周期のステージに依存して大きく異なる。中でも細胞生存率は、細胞周期に依存した二峰性の周期的な変動を伴う。そのような細胞周期ステージ依存性は、放射線損傷修復率の細胞周期依存の変動や、チェックポイント機構の存在などからの現象論的に説明されるが、理論的な説明はまだない。細胞生存率を計算する標的理論において放射線の最終的なターゲットは染色体であるが、その形態やサイズは時間と共に変化している。ターゲットとしての染色体動態と、細胞生存率の関係はどのようなものだろうか?今回、ヒト17番染色体を対象に放射線損傷部位の動態を調べるため、染色体の弾性力の実験データからKelvin-Voigt modelに熱ゆらぎの項を加えた方程式でクロマチン繊維をモデル化した。間期においてクロマチン繊維は200倍ほど凝縮して直径およそ3mの核内に収まっている。細胞周期ステージごとの染色体の立体構造を求めるため、間期細胞核内の非常に長いクロマチン繊維から、弾性的性質を利用することで、アニーリング法を用いて凝縮した間期染色体の空間構造の構築に成功した結果を発表する。
斎藤 公明; 渡辺 立子; 樋口 真理子; 大内 則幸; 赤松 憲; 木名瀬 栄
no journal, ,
修復困難なDNA損傷に特に注目して、DNA損傷生成過程と修復過程の研究を行ってきた。DNA損傷生成過程については、放射線によるエネルギー付与,ラジカルの生成・拡散と化学反応,DNA損傷の生成までの一連の過程をモンテカルロ法を用いてシミュレーションしている。平成16年度以降は、陽子線からウランイオンまでの任意の粒子線に対するシミュレーションが可能なコードを開発し、このコードを用いてヘリウムイオン,炭素イオン等を対象としたシミュレーションを既に実施し、高LET放射線によるDNA損傷の特徴を明らかにした。DNA修復過程に関しては、分子動力学計算を用いて損傷DNAと修復酵素の相互作用メカニズムの研究を行ってきた。平成16年度以降は、2つの損傷がDNA上に近接して存在するクラスター損傷に注目して研究を進め、クラスター損傷の修復されにくさの要因の一部を明らかにした。