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論文

(U-Th)/He thermochronometric mapping across the northeast Japan Arc; Towards understanding mountain building in an island-arc setting

福田 将眞*; 末岡 茂; Kohn, B. P.*; 田上 高広*

Earth, Planets and Space (Internet), 72(1), p.24_1 - 24_19, 2020/02

 被引用回数:0 パーセンタイル:100(Geosciences, Multidisciplinary)

島弧の山地形成の解明を目的として、東北日本弧北部において(U-Th)/He熱年代を用いて冷却・削剥史を推定した。10地点の試料から88.6-0.9Maのアパタイト年代、83.9-7.4Maのジルコン年代が得られた。アパタイト年代から推定した削剥速度は、前弧側で$$<$$0.05mm/yrと低い値を示し、古第三紀以降の緩慢な削剥が推測された。一方、奥羽脊梁山地と背弧側では0.1-1.0mm/yr以上の削剥速度が得られ、3-2Ma以降の隆起イベントを反映していると考えられる。このような削剥史の対照性は、東北日本弧南部における先行研究の結果と整合的で、主にプレート沈み込みに起因した東北日本弧全体に共通の性質だと考えられる。一方で、特に背弧側では削剥速度の南北差が大きく、hot fingersのような島弧直交方向の構造の影響が示唆された。

論文

Electron Spin Resonance (ESR) thermochronometry of the Hida range of the Japanese Alps; Validation and future potential

King, G. E.*; 塚本 すみ子*; Herman, F.*; Biswas, R. H.*; 末岡 茂; 田上 高広*

Geochronology (Internet), 2(1), p.1 - 15, 2020/01

石英の電子スピン共鳴(ESR)法は、岩石の冷却史の推定に有効な可能性が示唆されていたが検証が不十分だった。本研究では飛騨山脈の試料を用いてESR熱年代法の検証を行った。Al中心とTi中心の熱安定性は従来の予想より低く、長石のルミネッセンスと同程度と推定された。ESRデータから推定された熱史は、同じ試料のルミネッセンスデータから推定された熱史と同様のパターンを示した。一方、ESRの方がより長期間の熱史を復元することができ、石英のESR熱年代法が第四紀後期の地形発達史の解明に広く有用である可能性が示された。

論文

高空間解像度の熱年代マッピングによる奥羽脊梁山地の隆起形態の推定; アパタイトフィッション・トラック法による展開

福田 将眞*; 末岡 茂; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 森下 知晃*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (32), p.12 - 16, 2019/12

東北日本弧の奥羽脊梁山地について、稠密な熱年代マッピングと斜面発達モデルの比較によって、隆起形態の制約を試みた。本研究で対象とした奥羽脊梁山地の南部では、山地の外側から内側に向かってアパタイトFT年代が若くなる(削剥速度が速くなる)傾向が見られた。従来提唱されていた奥羽脊梁山地の隆起モデルは、傾動隆起モデルとドーム状隆起モデルの2つであるが、斜面発達モデルを用いた検討によると、このような削剥速度分布は、ドーム状隆起モデルを支持すると考えられる。本研究地域では、脆性的なブロック状の変形よりも、地下の高温領域における塑性変形の伝播が支配的だと考えられるが、奥羽脊梁山地の他の箇所にもこの結果が適用できるかどうかは今後の課題である。

論文

東北日本弧前弧域における熱年代学的研究; アパタイトFT年代予報

梶田 侑弥*; 福田 将眞*; 末岡 茂; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 森下 知晃*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (32), p.6 - 7, 2019/12

太平洋プレートと北米プレート間の沈み込み帯に形成された島弧である東北日本弧の前弧域(阿武隈山地・北上山地)を対象として、アパタイトフィッション・トラック法を用いて隆起・削剥史を検討した。試料は、各山地を横断する方向にそれぞれ6地点と5地点で採取した。阿武隈山地では2地点で年代値が得られ、46.1$$pm$$6.9Maと73.9$$pm$$26.7Maと、先行研究と調和的な結果となった。北上山地では、同じく2地点で年代が得られ、66.8$$pm$$10.4Maと65.8$$pm$$10.4Maとなった。この2つの年代は先行研究より有意に若いが、両者の研究地域間には早池峰構造帯東縁断層が分布しており、年代差との関係は今後の検討課題である。

論文

低温領域の熱年代学的手法に基づく南部フォッサマグナ地域の山地の隆起・削剥史解明

小林 侑生*; 末岡 茂; 福田 将眞*; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 森下 知晃*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (32), p.8 - 11, 2019/12

本州弧と伊豆弧の衝突帯である南部フォッサマグナ地域の山地において、山地の隆起・削剥史の解明のためにアパタイトフィッション・トラック(AFT)解析を実施した。南部フォッサマグナ地域から離れた筑波山, 足尾山地, 奥秩父では、岩体の形成年代に近いAFT年代が得られたのに対して、身延山地や関東山地では、岩体形成年代より有意に若いAFT年代が得られた。AFT長データを用いた熱史逆解析の結果によると、関東山地北部$$sim$$中央部と身延山地では約1Ma、関東山地南部と奥秩父では4$$sim$$5Ma頃の急冷イベントが推定されたが、これらは伊豆ブロックと丹沢ブロックの衝突時期とそれぞれ一致する。各ブロックの衝突と本地域の山地形成の関係については今後の検討課題である。

論文

Thermal fluid activities along the Mozumi-Sukenobu fault, central Japan, identified via zircon fission-track thermochronometry

末岡 茂; 郁芳 隋徹*; 長谷部 徳子*; 村上 雅紀*; 山田 隆二*; 田村 明弘*; 荒井 章司*; 田上 高広*

Journal of Asian Earth Sciences; X (Internet), 2, p.100011_1 - 100011_11, 2019/11

ジルコンフィッション・トラック(ZFT)熱年代により、茂住祐延断層沿いの熱異常検出を試みた。ZFT年代は110-73Ma、ZFT長は7.1-9.0$$mu$$mを示し、これらを基にした熱史逆解析の結果から、約60Maと30-15Maの再加熱イベントが認定された。前者は約65Maの神岡鉱床の形成に伴う熱水活動を反映していると考えられる。後者は日本海拡大時の火成活動起原の加熱で、高温流体の滞留が介在している可能性が高い。

論文

低温領域の熱年代学の原理と地殻浅部のテクトニクスへの応用

末岡 茂; 田上 高広*

地学雑誌, 128(5), p.707 - 730, 2019/10

熱年代学は熱による放射年代の若返りを利用して、試料の熱史を推定する学問領域であり、世界各地において隆起・削剥史の解明に用いられてきた。本稿では、前半部では熱年代学の原理についてレビューする。すなわち、代表的な熱年代学的手法、熱アニーリングの数学的モデル、閉鎖温度やpartial annealing zoneの概念、熱史の逆解析手法などについて紹介する。後半部では、テクトニクスへの応用と題して、隆起・削剥に係る用語の整理、年代から冷却史や削剥史を復元する手法、主要な応用事例などについて述べる。

論文

Low-temperature thermochronological database of bedrock in the Japanese Islands

末岡 茂; 田上 高広*

Island Arc, 28(4), p.e12305_1 - e12305_8, 2019/07

 被引用回数:0 パーセンタイル:100(Geosciences, Multidisciplinary)

日本列島における長期の削剥史の把握のため、日本列島の基盤岩類における低温領域の熱年代データをコンパイルした。計90編の文献、1096地点のデータから、アパタイトフィッション・トラック年代418点、ジルコンフィッション・トラック年代851点、アパタイト(U-Th)/He年代42点、ジルコン(U-Th)/He年代30点が収集された。データの密度には地域差があり、今後はデータ数の少ない地域でのデータの充実、特に報告数が少ない(U-Th)/He年代の測定が望まれる。

論文

Thermal history analysis of granitic rocks in an arc-trench system based on apatite fission-track thermochronology; A Case study of the Northeast Japan Arc

福田 将眞*; 末岡 茂; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 荒井 章司*; 田上 高広*

Journal of Asian Earth Sciences; X (Internet), 1, p.100005_1 - 100005_9, 2019/06

削剥史推定のため、東北日本弧南部の花崗岩類にアパタイトフィッション・トラック熱年代解析を適用した。前弧側では79.5-66.0Ma、奥羽脊梁山脈では29.8-5.5Ma、背弧側では19.1-4.6Maの年代が得られた。熱史逆解析の結果と併せると、前弧側は新生代を通じて静穏(削剥速度が0.05mm/yr以下)と考えられる一方で、奥羽脊梁と背弧側は3-2Ma以降の隆起に伴う急速な削剥(1-数mm/yr)が推定された。また、奥羽脊梁は傾動ポップアップ型の隆起モデルよりも、ドーミング型の隆起モデルの方が年代分布と整合的である。背弧側山地の隆起開始時期は、従来のモデル(5-3.5Ma)と異なり、奥羽脊梁と同時期(3-1Ma)と推定され、背弧側におけるテクトニクス史の地域差が示唆された。

論文

茂住祐延断層のジルコンFT熱年代解析; 熱史モデルによる再検討

末岡 茂; 郁芳 隋徹*; 長谷部 徳子*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (31), p.9 - 12, 2018/12

上載地層法が適用できない断層の活動性評価手法として、熱年代学の手法による検討が有望だと考えられている。本研究は、跡津川断層帯の茂住祐延断層にジルコンフィッション・トラック(ZFT)熱年代解析を適用した郁芳(2011)のデータの再検討を試みたものである。郁芳(2011)は、茂住祐延断層の2本の破砕帯を貫く調査坑道内において、110-70MaのZFT年代と7-9$$mu$$mのZFT長を報告し、加熱の原因を約65Maの神岡鉱床の形成に伴う熱水活動だと解釈した。一方、本研究による熱史逆解析の結果によれば、加熱の時期は見掛け年代より新しく、約30-15Maと推定された。この時期は日本海拡大期に当たっており、当時の火成活動が加熱イベントに関連していると考えられる。しかし、加熱メカニズムについては、地表に堆積した火山噴出物からの単純な熱伝導では説明が困難であり、今後の検討課題である。

論文

Thermo2018 @ Quedlinburgの参加報告

福田 将眞*; 末岡 茂; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (31), p.26 - 29, 2018/12

第16回熱年代国際会議(Thermo2018)が、2018年9月16$$sim$$21日にドイツのQuedlinburgで開催された。本会議には、世界29ヶ国から約250人(+15人の招待講演者)が出席し、口頭69件、ポスター150件の計219件の発表が行われた。これらについて、報告者らの印象に残った講演や雑感などを中心に報告する。

論文

低温領域の熱年代学的手法を用いた東北日本弧における隆起・削剥史の解明

福田 将眞*; 末岡 茂; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 荒井 章司*; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (30), p.7 - 10, 2017/12

東北日本弧の100万年スケールの地殻変動像把握のために、阿武隈山地、奥羽脊梁山脈、朝日山地にて、アパタイトフィッション・トラック(AFT)解析を実施した。前弧側の阿武隈山地では79.5-66.0Maの古いAFT年代が得られ、熱履歴解析の結果や先行データと合わせて、本地域は白亜紀後期以降は比較的安定な削剥環境だったことが推定された。対照的に、奥羽脊梁山脈では29.8-5.5Ma、背弧側の朝日山地では21.0-17.6Maの若いAFT年代が得られた。熱履歴解析の結果や既報のアパタイト(U-Th)/He年代と合わせると、最近数Maの山地形成に伴う急冷を反映していると解釈できる。脊梁山脈と背弧側の一部では、日本海拡大より古い年代も得られたが、これらの解釈に関しては、今後の追加分析が望まれる。

論文

Uplift and denudation history of the Akaishi Range, a thrust block formed by arc-arc collision in central Japan; Insights from low-temperature thermochronometry and thermokinematic modeling

末岡 茂; 池田 安隆*; 狩野 謙一*; 堤 浩之*; 田上 高広*; Kohn, B. P.*; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 荒井 章司*; 柴田 健二*

Journal of Geophysical Research; Solid Earth, 122(8), p.6787 - 6810, 2017/08

複数の熱年代学的手法とthermo-kinematicモデリングを用いて赤石山脈の削剥史を検討した。熱年代は東に向かって系統的に若返り、赤石山脈北部は東縁に分布する糸魚川-静岡構造線の活動によって隆起した可能性が示唆された。Thermo-kinematicモデリングによって詳細な検討を加えた結果、糸魚川-静岡構造線の変位速度が5-10mm/yr、傾斜が27-45度、デコルマ深度が20-25kmのとき、熱年代測定結果と既存の地形・地球物理データを矛盾なく説明できることが確認できた。隆起速度と削剥速度は約4mm/yrと推定された。一方、赤石山脈南部は、先行研究による少数の熱年代データは北部と異なる値を示しているほか、地形・地質構造等の違いを考慮すると、北部とは別の時期・メカニズムによって隆起している可能性がある。

論文

First report of (U-Th)/He thermochronometric data across Northeast Japan Arc; Implications for the long-term inelastic deformation

末岡 茂; 田上 高広*; Kohn, B.*

Earth, Planets and Space (Internet), 69(1), p.79_1 - 79_18, 2017/05

 被引用回数:6 パーセンタイル:47.33(Geosciences, Multidisciplinary)

東北日本弧の地質時間スケールにおける変形像解明のため、島弧横断方向に(U-Th)/He年代測定を実施した。アパタイト(U-Th)/He年代では52-1.5Ma、ジルコン(U-Th)/He年代では39.6-11.0Maの加重平均年代が得られた。前弧側の阿武隈山地は52-49.6Maの比較的古い年代を示し、新生代ほぼ全体を通じて安定な地質環境(削剥速度:約0.01-0.1mm/yr)だったと推定された。対照的に、奥羽脊梁山地や背弧側の朝日山地は11.2-1.5Maの若い年代を示し、日本海拡大以降の山地形成による急冷(削剥速度:約0.1-1mm/yr)を反映していると解釈できる。奥羽脊梁山地(あるいは朝日山地も)では山頂側でより大きな削剥速度が推定され、西南日本弧の断層地塊山地とは異なる隆起・削剥様式を有している可能性が指摘された。以上の成果は、典型的な島弧である東北日本弧でも、熱年代に基づいた山地の隆起・削剥史解析が有効であることを示している。

論文

新学術「地殻ダイナミクス」の概要と熱年代学による貢献

田上 高広*; 末岡 茂; Kohn, B. P.*; 福田 将眞*

フィッション・トラックニュースレター, (29), p.1 - 2, 2016/12

新学術研究「地殻ダイナミクス」は2014年度から開始された分野横断型の学術研究プロジェクトで、東北地方太平洋沖地震が起こったテクトニックな背景の解明のために、島弧地殻の基本的な特性や状態の理解を目指している。そのうち、「A02異なる時空間スケールにおける日本列島の変形場の解明」班では、様々な時空間スケールにおける歪・歪速度場の推定と統一的な理解を目指している。われわれは、近年進展の著しい低温領域の熱年代学手法を用いて、地質学的時間スケール(10$$^{5}$$$$sim$$10$$^{7}$$年)の鉛直歪速度の復元を行っている。日本列島における既存の熱年代データのコンパイル、奥羽脊梁山脈の解析、飛騨山脈の解析の3つについて、概要と最新の成果を報告する。

論文

Thermo 2016 in Maresiasの参加報告

末岡 茂; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (29), p.26 - 28, 2016/12

第15回熱年代学国際会議(Thermo2016)が、2016年9月19日から9月23日にかけて、ブラジル、サンパウロ州のMaresiasで開催された。本会議には、世界20ヶ国から131人(+8人の招待講演者)が出席し、口頭44件、ポスター44件の計88件の発表が行われた。これらについて、報告者らの印象に残った講演や雑感などを中心に報告する。

論文

New approach to resolve the amount of Quaternary uplift and associated denudation of the mountain ranges in the Japanese Islands

末岡 茂; 堤 浩之*; 田上 高広*

Geoscience Frontiers, 7(2), p.197 - 210, 2016/03

 被引用回数:9 パーセンタイル:41.51(Geosciences, Multidisciplinary)

熱年代学は、熱による放射年代の若返りを利用して、過去の熱イベントの時期や温度などを調べる学問領域である。山地においては、冷却量を削剥量に読み換えることで削剥史の推定が可能であり、過去40年にわたり、世界各地の造山帯で用いられ成果をあげてきた。一方、日本国内では、山地が小規模で削剥量が少ないことや、隆起開始時期が新しいこともあり、従来の熱年代学的手法の適用は比較的困難であった。しかし近年、低温領域における熱年代学の手法が飛躍的な発展を遂げており、手法面における障害は急速に低減されつつある。本稿では、(1)日本列島及びその山地のテクトニクス及び地形学的特徴、(2)熱年代学以外の手法による、日本列島の山地における隆起・削剥の測定例、(3)日本列島の山地における熱年代学的研究の問題点と応用例、(4)木曽山脈の事例と日本列島の山地における現在の有効性と適用範囲、について紹介する。

論文

日本列島の基盤岩類の熱年代コンパイル

末岡 茂; 田上 高広*

フィッション・トラックニュースレター, (28), p.8 - 10, 2015/12

島弧スケールでの冷却史・削剥史の把握を目的として、日本列島の基盤岩類について、既存の熱年代データのコンパイルを行った。2015年4月現在までに、未公表データを含む70編以上の文献から、アパタイトFT年代約370点、ジルコンFT年代約650点を取りまとめた。年代値は第四紀から三畳紀まで様々であるが、地域的には中部$$sim$$近畿の山岳地域や西南日本外帯では豊富なデータが報告されているのに対し、東北日本弧や中国地方では少ないなど、偏りが見られた。コンパイル作業は今後も継続を予定しているが、最終的な成果の公表時期・方法については未定である。

論文

低温領域の熱年代学の発展と日本の山地の隆起・削剥史研究への応用

末岡 茂; 堤 浩之*; 田上 高広*

地球科学, 69(1), p.47 - 70, 2015/01

熱年代学は、熱による放射年代の若返りを利用して、過去の熱イベントの時期や温度などを調べる学問領域である。山地においては、冷却量を削剥量に読み換えることで削剥史の推定が可能であり、過去40年にわたり、世界各地の造山帯で用いられ成果をあげてきた。一方、日本国内では、山地が小規模で削剥量が少ないことや、隆起開始時期が新しいこともあり、従来の熱年代学的手法の適用は比較的困難であった。しかし近年、低温領域における熱年代学の手法が飛躍的な発展を遂げており、手法面における障害は急速に低減されつつある。本稿では、まずフィッション・トラック法と(U-Th)/He法を中心に、(1)熱年代学の原理、(2)近年における低温領域の熱年代学の発展、(3)分析手順、(4)海外の山地における適用例の概略を紹介する。また、(5)日本列島の山地における隆起・削剥に関する既存研究の紹介により、日本列島の山地の特徴と研究意義を示し、(6)日本列島の山地に熱年代学的手法を適用した既存研究および、(7)筆者らによる木曽山脈や赤石山脈の事例研究を通じて、(8)現段階における日本の山地での熱年代学的手法の有用性や適用可能範囲を議論する。

論文

アパタイトFT解析に基づいた養老-鈴鹿-布引山地の隆起・削剥史

末岡 茂; 堤 浩之*; 田上 高広*; 長谷部 徳子*; 田村 明弘*; 荒井 章司*; 柴田 健二

フィッション・トラックニュースレター, (27), p.17 - 19, 2014/12

地殻変動の長期予測を行う上で、山地の隆起開始時期や高度の変遷といった発達過程の把握が重要となる。本研究では、近畿の逆断層卓越地域と中部の横ずれ断層卓越地域の構造境界に分布する養老-鈴鹿-布引山地について、アパタイトフィッション・トラック法(AFT法)を用いて、隆起・削剥史の解明を行った。AFT年代測定の結果、47-30Maという年代が得られ、鈴鹿山脈の中部から南部で最も若く、南北に向かって古くなる傾向が認められた。AFT年代とAFT長を基にした熱履歴解析の結果、これらの年代差は最近数100万年間の山地の隆起に伴う削剥量の違いを反映していると解釈できる。古琵琶湖や東海湖といった沈降域が南から北へと発達したのに対し、隆起域はより複雑な発達過程をたどったことが示唆される。

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