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冨田 雅典*; 松本 英樹*; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 大塚 健介*; 前田 宗利*; 小林 泰彦
Life Sciences in Space Research, 6, p.36 - 43, 2015/07
放射線誘発バイスタンダー効果は、放射線で直接照射された細胞から放出された細胞間シグナルが、周辺の非照射細胞に放射線応答を誘導する現象である。とりわけ、低フルエンス重イオンが誘導するバイスタンダー効果は、宇宙環境における宇宙飛行士の放射線リスクに直結する重要な問題である。そこで、原子力機構・高崎量子応用研究所のマイクロビーム細胞照射装置を用いた重イオン照射でバイスタンダー効果を誘導し、そのシグナル経路の解析を行った。研究の結果、COX-2遺伝子が含まれる、AktおよびNF-B依存シグナル伝達経路が、一酸化窒素ラジカルが関与する重イオン誘発バイスタンダー応答の誘導に重要であることが示された。加えて、COX-2タンパク質が重イオン誘発バイスタンダー応答におけるバイスタンダー細胞の分子マーカーとして利用できる可能性も示した。
松本 英樹*; 冨田 雅典*; 大塚 健介*; 畑下 昌範*; 前田 宗利*; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 鈴木 芳代; 坂下 哲哉; 池田 裕子; et al.
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 76, 2015/03
低線量/低線量率放射線に対して生物が示す特異的な応答様式には、放射線適応応答、放射線誘発バイスタンダー応答、放射線超高感受性、遺伝的不安定性等がある。我々は、原子力機構において開発された細胞局部照射装置(HZ1)および深度制御種子照射装置(HY1)を用いて、放射線誘発バイスタンダー応答による放射線適応応答の誘導機構の解析を実施した。中央にスポットしたコロニーの細胞に520MeV Arをマイクロビーム照射し、4-6時間培養後に同Arをブロードビーム照射した結果、放射線適応応答の誘導が認められ、この誘導はNO特異的な捕捉剤であるcarboxy-PTIOの添加でほぼ完全に抑制された。このマイクロビーム照射による放射線適応応答の誘導が起きた細胞で、遺伝子の発現が特異的に発現誘導されていることが見いだされ、放射線適応応答の誘導にNOを介したバイスタンダー効果の誘導が関与していることが強く示唆された。
冨田 雅典*; 松本 英樹*; 大塚 健介*; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 鈴木 芳代; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 77, 2015/03
低粒子数の重イオン線による生物影響を解明する上で、DNA初期損傷量に依存しない「非標的効果」が注目されている。特に、放射線に直接曝露された細胞の近傍に存在する全く放射線に曝露されていない細胞において観察される「放射線誘発バイスタンダー応答」は、最も特徴的な非標的効果であり、その解明は放射線生物学のみならず、粒子線がん治療、宇宙放射線の生体影響評価においても重要である。本研究は、これまでの2次元での培養細胞を用いた研究から、組織レベルでの生体応答研究への展開を図るため、分化誘導させたヒト3次元培養皮膚モデルを用い、原子力機構の細胞局部照射装置を利用し、放射線誘発バイスタンダー応答によって生じるシグナル伝達経路の変化を明らかにすることを目的とした。2015年度は、ヒト3次元培養皮膚モデルへの重イオンマイクロビーム照射条件の検討を行い、照射した試料のMTT法による生細胞率測定を実施し、試料全体を重イオンビームで照射したものと比較した。その結果、全体照射した試料では生存率の低下が認められた一方、本条件でマイクロビーム照射した試料では生存率の低下が認められなかった。
川島 裕介*; 松本 哲夫*; 長谷 純宏; 横田 裕一郎
JAEA-Review 2006-042, JAEA Takasaki Annual Report 2005, P. 91, 2007/02
本研究の目標は、きのこ類の育種にイオンビーム照射を利用して、突然変異を誘発することにより新品種を開発し、中山間地域のきのこ産業の活性化に寄与することである。担菌植物ヒラタケの胞子又は組織培養によって得られた2核菌糸体を供試体として、320MeV炭素イオンを100から1kGy照射した。照射後、胞子発芽率と菌糸生長を調査したところ、致死線量は700kGy前後であると推察された。また、照射区試料を新しい培地に接種後、子実体の形成を調査したところ、100Gy照射区では、子実体の生育する方向が一定ではない変異体が得られ、500Gy照射区では、菌傘が漏斗形となり菌柄が太い変異体が得られた。
小林 泰彦; 舟山 知夫; 和田 成一; 古澤 佳也*; 青木 瑞穂*; Shao, C.*; 横田 裕一郎; 坂下 哲哉; 松本 孔貴*; 柿崎 竹彦; et al.
宇宙生物科学, 18(4), p.235 - 240, 2004/12
銀河宇宙線のように、低フルエンス・低フルエンス率の高LET重イオン(粒子線)による生物影響を明らかにするためには、マイクロビームを用いた細胞照射実験が有効な手段となる。そこで、高エネルギー重イオンマイクロビームを顕微鏡観察下の生物試料に照射するために原研・高崎研・バイオ技術研究室で開発した細胞局部照射装置を用いて、哺乳動物培養細胞を個別に重イオンで照射・観察する実験系を開発した。標的細胞を貫通したイオンのエネルギーと個数をシンチレータ/フォトマルを用いて測定することによって、重イオンを1個ずつカウントしながら正確に照射することが可能となった。さらに、CR-39を直ちに37Cでエッチングして各標的細胞における実際のイオン飛跡を可視化すると同時に、その飛跡が可視化されたCR-39上で細胞の照射後培養と観察を継続する方法を確立した。国内外の重粒子線のマイクロビーム開発の歴史を概観し、細胞核へのシングルイオンヒット効果やバイスタンダー効果に関する最近の研究成果をレビューする。
田口 光正; 松本 裕一*; 森山 正洋*; 南波 秀樹; 青木 康; 平塚 浩士*
Radiation Physics and Chemistry, 58(2), p.123 - 129, 2000/04
被引用回数:6 パーセンタイル:42.55(Chemistry, Physical)1,2,4,5-tetracyanobenzene(TCNB)をドープしたPVAフィルムに数百MeVのC及びNe,Arイオンを照射した。照射後の吸収スペクトル測定によりTCNBラジカルアニオンの生成が確認された。吸光度は低フルエンス領域において増加し、高フルエンスでは減少した。このフルエンス依存性はラジカルの生成及び消滅を示しており、円筒状のケミカルトラックモデルを用いて解析したところ、トラック半径が見積もられた。トラック半径はイオンの核子あたりのエネルギーつまり比エネルギーの増加に伴い小さくなった。さらに同じ比エネルギーでは照射核子が大きいほど半径も大きくなることがわかった。また、吸光度とESR測定の結果から求められたラジカル生成のG値は線照射と比べて小さかった。
田口 光正; 松本 裕一*; 南波 秀樹; 青木 康; 平塚 浩士*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 134(3-4), p.427 - 430, 1998/00
被引用回数:5 パーセンタイル:73.79(Instruments & Instrumentation)1,2,4,5,-テトラシアノベンゼン(TCNB)をドープしたPVAフィルムに330MeV,Ar及び220MeV,Cイオンを照射したところ、340-480nmにTCNBアニオンラジカルに相当する吸収スペクトルが得られた。その生成量は両イオン照射において共に低フルエンス領域で増加、高フルエンス領域で減少することが分かった。1個のイオンによって引き起こされる領域をケミカルトラックとして、ラジカル生成量のフルエンス依存性をシミュレーションしたところ、Arでは50nm、Cでは20nmの半径を持つことが分かった。
田口 光正; 青木 康; 南波 秀樹; 渡辺 立子*; 松本 裕一*; 平塚 浩士*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 132(1), p.135 - 141, 1997/00
被引用回数:8 パーセンタイル:56.73(Instruments & Instrumentation)TIARA内のサイクロトロンに接続した垂直ポートに時間分解発光測定を行うためのシングルフォトンカウンティングシステムを構築した。高分子フィルム中のナフタレンにArイオン照射したところ、S励起状態からの発光が観測された。さらに発光減衰を測定したところ早い成分が観測され、LET依存性を示すことが分かった。これはシミュレーションの結果、LETの増加にともない励起される分子の数が相対的に増えることが原因であることが分かった。
田口 光正; 南波 秀樹; 青木 康; 渡辺 立子*; 松本 裕一*; 渡辺 宏
JAERI-Tech 96-046, 65 Pages, 1996/11
重イオン照射により固体及び液体中に付与される高密度なエネルギー付与によって誘起される現象を理解するために、TIARA施設内のAVFサイクロトロンの垂直ポートに、重イオンによるエネルギー付与の空間分布測定及び高速時間分解吸収・発光測定の可能な微小領域線量分布測定装置を設置した。本報告書は、装置の仕様、性能、運転方法の説明及び基本データをまとめたものである。
和田 成一; 小林 泰彦; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 横田 裕一郎; 松本 義久*; 大戸 貴代*; 細井 義夫*; 鈴木 紀夫*; 浜田 信行*; et al.
no journal, ,
高LET重イオン照射では修復困難な、又は修復不可能なDNA損傷のクラスター損傷が生じると考えられている。しかしながら、高LET重イオン照射によるDNA損傷の修復反応はいまだ詳細には解明されていない。DNA2本鎖切断修復はおもに非相同性末端結合によるので、非相同性末端結合を担うKuの高LET重イオン照射によるDNA損傷に対する反応を解析することにより、高LET重イオン照射による非相同性末端結合を調べた。照射細胞にはKu80の変異したxrs5細胞を形質転換し、GFPを融合したKu80を発現する細胞(xrs5-GFP-Ku80)とGFPのみを発現する細胞(xrs5-GFP)を用いた。照射には線及び原研高崎のTIARAにおいてイオンビーム(LET=2.71610keV/m)を照射した。xrs5-GFP-Ku80細胞はxrs5-GFP細胞よりも放射線抵抗性であることが観察された。不活化断面積を算出したとき、xrs5-GFP-Ku80細胞とxrs5-GFP細胞の不活化断面積の差はLETが増加するにつれて小さくなった。細胞核内のH2AXとKuを観察したとき、Cイオン(108keV/m)やNeイオン(321keV/m)照射では照射1030分後までH2AXとKuが共局在することが観察された。一方、Arイオン(1610keV/m)照射において照射10分後では細胞内に共局在するシグナルは観察されたが、照射20分後には明確なGFPシグナルの局在化は観察されなかった。LETによって非相同性末端結合の反応は異なっていた。
和田 成一; 舟山 知夫; 松本 義久*; 大戸 貴代*; 坂下 哲哉; 浜田 信行*; 横田 裕一郎; 柿崎 竹彦; 細野 義夫*; 鈴木 紀夫*; et al.
no journal, ,
高LET重イオン照射細胞におけるDNA2本鎖切断の非相同性末端結合修復を解明するため、非相同性末端結合を担うKuのDNA損傷に対する反応を解析した。照射細胞にはKu80の変異したxrs5細胞を形質転換し、GFPを融合したxrs5-GFP-Ku80とGFPのみのxrs5-GFPを用いた。そして線及び各種イオンビーム(LET=2.71610keV/m)を照射し、細胞の生存率を調べた。いずれの照射でもxrs5-GFP-Ku80はxrs5-GFPよりも放射線抵抗性であり、不活性化断面積の差はLETが増加するにつれて小さくなった。細胞核内のH2AXとKuを観察したとき、Cイオン(108keV/m)照射では1030分後まで共局在が観察された。一方、Arイオン(1610keV/m)照射では、照射10分後は共局在するシグナルは観察されたが、照射20分後には明確な局在化は観察されず、LETによってDNA修復の非相同性末端結合の反応は異なっていた。
川島 裕介*; 松本 哲夫*; 長谷 純宏; 横田 裕一郎
no journal, ,
本研究の目標は、きのこ類の育種にイオンビーム照射を利用して、突然変異を誘発することにより新品種を開発し、中山間地域のきのこ産業の活性化に寄与することである。野生ヒラタケの胞子又は組織培養によって得られた2核菌糸体を供試体として、炭素イオンを100から1kGy照射した。その結果、致死線量は500から600Gy前後であると推察された。また 100Gy照射区では、子実体の生育する方向が一定ではない変異体が得られ、500Gy照射区では、菌傘が漏斗形となり菌柄が太い変異体が得られた。