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佐藤 達彦; 松谷 悠佑; 浜田 信行*
International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics, 114(1), p.153 - 162, 2022/09
被引用回数:5 パーセンタイル:84.82(Oncology)放射線皮膚反応に対する生物学的効果比(RBE)の評価は、粒子線治療やホウ素中性子補足療法(BNCT)の治療計画、及びJCO事故のような中性子を含む緊急時被ばくや宇宙飛行士被ばくの放射線防護指針を決定する際、極めて重要となる。本研究では、マイクロドジメトリに基づく放射線皮膚反応に対するRBE評価モデルを開発し、そのモデルパラメータを過去数10年に渡って発表されてきた細胞実験や動物実験結果より決定した。その結果、細胞実験から推定したRBEは、動物実験から推定した値と比べて低い傾向にあることが分かった。また、開発したモデルを用いて様々な放射線被ばくに対する皮膚反応RBEの平均値及びその誤差範囲を計算した結果、20-30年前に国際放射線防護委員会(ICRP)や米国放射線審議会(NCRP)が評価した値は、最新の実験値とも整合性があることが明らかになった。本成果は、粒子線治療やBNCTの治療計画のみならず、放射線防護に用いる皮膚反応RBEの奨励値を決定する際にも有用となる。
松谷 悠佑; 浜田 信行*; 谷内 淑恵*; 佐藤 志彦; 石川 正純*; 伊達 広行*; 佐藤 達彦
Cancers (Internet), 14(4), p.1045_1 - 1045_15, 2022/02
被引用回数:7 パーセンタイル:84.48(Oncology)福島原子力発電所の事故後、不溶性の放射性セシウム含有微粒子(Cs-BMP)が発見された。放射性Cs摂取後の内部被ばくのリスクに関しては、従来、可溶性Csが全身へ均一に分布した条件を想定した臓器線量から推定されてきた。一方、Cs-BMPは正常組織に長期的に付着し、慢性的な不均一被ばくを引き起こす可能性がある。本研究では、Cs-BMPによる不均一被ばく後の放射線影響の解明へ向けて、炎症応答とDNA損傷誘発との関係を調査した。炎症性シグナル経路であるNF-B p65とCOX-2に焦点を当てた実験により、線による均一被ばくと比較して、Cs-BMPの近位の細胞ではNF-B p65が活性化される一方、遠位の細胞ではNF-B p65と同時にCOX-2も有意に活性化する傾向を観察した。また、炎症性シグナルの阻害剤を用いた実験により、Cs-BMP近位の細胞の放射線感受性の低下と遠位の細胞の放射線感受性の増強の双方に対し、炎症性シグナルの活性が深く関与することがわかった。これらの結果は、Cs-BMPによる被ばく後の放射線影響は、従来の均一被ばくに基づく推定とは異なることを示唆している。
坂下 哲哉*; 佐藤 達彦; 浜田 信行*
PLOS ONE (Internet), 14(8), p.e0221579_1 - e0221579_20, 2019/08
被引用回数:6 パーセンタイル:43.22(Multidisciplinary Sciences)放射線被ばくに起因する白内障発症をより確実に防ぐため、国際放射線防護委員会は眼の水晶体線量限度値の引き下げを提案している。しかしながら、白内障発症のメカニズムや線量応答は明らかになっていない。そこで本研究では、個々の細胞動態に基づいて白内障発症率を計算する数理モデルを開発し、そのモデルで使用するパラメータを白内障自然発症に対する疫学データから決定した。そして、決定したパラメータを用いて、放射線被ばくに起因する白内障発症率の線量応答関数を推定した。本モデルは、今後、白内障に対する放射線防護指針を改訂する際、極めて有用となる。
松谷 悠佑; 佐藤 志彦; 浜田 信行*; 伊達 広行*; 石川 正純*; 佐藤 達彦
Scientific Reports (Internet), 9(1), p.10365_1 - 10365_9, 2019/07
被引用回数:12 パーセンタイル:63.03(Multidisciplinary Sciences)不溶性放射性微粒子(Cs含有粒子)は、呼吸器系に吸引された後、長期にわたって気管に付着し、微粒子周辺の正常組織に不均一な線量分布をもたらすと考えられている。このような微粒子によってもたらされる生物影響は不明なままであるため、本研究では、均一な被ばくとの比較の中で、微粒子による局所的慢性被ばく下において蓄積される核内DNA損傷を研究した。我々は、微粒子を含むマイクロキャピラリーを、正常肺細胞を含む培養皿に配置し、24時間もしくは48時間被ばく後に核内誘発-H2AX focusの有意な変化を観察した。モンテカルロ計算と均一被ばくとの比較から、微粒子による局所被ばく下では、遠位細胞に対する細胞間シグナル誘発DNA損傷と近位細胞に対するDNA損傷誘発の低減(防御効果)の両者が誘発されることが示唆された。微粒子による臓器線量は微量であることから、従来の放射線リスク評価で十分であると思われる。本研究により、不溶性Cs含有粒子による不均一暴露下でのDNA損傷の空間分布を定量化することに初めて成功した。
佐藤 達彦; 増永 慎一郎*; 熊田 博明*; 浜田 信行*
Radiation Protection Dosimetry, 183(1-2), p.247 - 250, 2019/05
被引用回数:6 パーセンタイル:62.49(Environmental Sciences)粒子・重イオン輸送計算コードの放射線生物学への応用として、我々は、様々な放射線治療の治療効果を推定する確率論的マイクロドジメトリック運動学(SMK)モデルを開発している。本研究では、ホウ素・中性子捕捉療法の治療効果推定にSMKモデルを利用可能とするため、ホウ素薬剤の細胞内・細胞間不均一性及び線量率効果を考慮できるようモデルを改良した。改良したモデルは、過去において実施したホウ素薬剤を投与したマウスに中性子ビームを照射した動物実験結果を用いて検証した。発表では、改良したSMKモデル及び検証結果の詳細を報告する。
佐藤 達彦; 増永 慎一郎*; 熊田 博明*; 浜田 信行*
Scientific Reports (Internet), 8(1), p.988_1 - 988_14, 2018/01
被引用回数:39 パーセンタイル:93.16(Multidisciplinary Sciences)ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の治療効果は、使用するホウ素薬剤の細胞核内外における不均一性に依存する。本研究では、その不均一性を考慮したマイクロドジメトリ解析に基づく新たなBNCT治療効果推定モデルを提案する。モデルは、過去に重粒子線治療に対して提案したSMK(Stochastic Microdosimetric Kinetic)モデルを改良したものであり、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを用いて計算した細胞核レベルの吸収線量分布から治療効果を推定する。開発したモデルは、従来利用されてきた2つのホウ素薬剤による治療効果の違いを的確に表現可能であり、将来のBNCT治療計画の高度化のみならず、創薬研究においても重要な役割を果たすことが期待できる。
横山 須美*; 浜田 信行*; 林田 敏幸*; 辻村 憲雄; 立崎 英夫*; 黒澤 忠弘*; 青天目 州晶*; 大口 裕之*; 大野 和子*; 川浦 稚代*; et al.
Journal of Radiological Protection, 37(3), p.659 - 683, 2017/09
被引用回数:14 パーセンタイル:82.46(Environmental Sciences)国際放射線防護委員会が2011年に水晶体の職業等価線量限度を下げることを勧告して以来、多くの議論が様々な国々でなされてきた。この論文は、日本における水晶体の放射線防護の現状と新しい水晶体線量限度の潜在的なインパクトに関する議論をとりまとめる。トピックは水晶体線量限度の歴史的変遷、水晶体の職業被ばくの現状(例えば、医療労働者, 原子力労働者、および福島原子力発電所労働者)と測定、生物学的研究および放射線白内障に関する疫学研究の現状を含んでいる。焦点は日本の状況に置かれているが、そのような情報の共有は他の多くの国々にとって有用になると思われる。
佐藤 達彦; 浜田 信行*
放射線生物研究, 51(4), p.397 - 401, 2016/12
2016年10月26日28日にかけて広島市で開催された日本放射線影響学会第59回大会において、著者らが座長となり「計算シミュレーションによる放射線生物研究」と題したワークショップを開催した。ワークショップには約50名の参加があり、国内でシミュレーションによる放射線生物研究を実施している研究者6名が講演した。各演題のタイトルは「DNA損傷・飛跡構造解析に関する研究」・「照射・非照射細胞混在環境を模擬した確率的モデルによる細胞応答に関する研究」・「低線量放射線生体影響研究における数理モデルの有用性」・「細胞生存率モデルを用いた粒子線治療に関する研究」・「白内障の自然発症モデルの構築」・「時空間的異質性を考慮した発がん数理モデル解析」で、ミクロからマクロまで幅広い範囲をカバーしている。また、ワークショップでは、各テーマで必要となる入力情報やそこから得られる出力情報を整理することにより、テーマ間の連携可能性について重点的に議論した。本稿では、ワークショップの概要をまとめるとともに、各発表内容を簡単に紹介する。
浜田 信行*; 佐藤 達彦
Mutation Research; Reviews in Mutation Research, 770(Part B), p.262 - 291, 2016/10
被引用回数:30 パーセンタイル:51.16(Biotechnology & Applied Microbiology)眼の水晶体は、人体の中で最も放射線感受性の高い組織の一つであり、白内障は、あるしきい値以下の線量では生じない組織応答と考えられている。放射線による白内障発生を防ぐため、国際放射線防護委員会(ICRP)は、2011年以降、水晶体の線量限度値として20mSv/年を奨励している。しかし、この奨励値は、低LET放射線に対する白内障発生の知見から決められたものであり、生物学的効果比が高いと考えられている高LET放射線被ばくによる白内障発生に対して適切かどうかは、十分な検討が行われていない。そこで、本レビューでは、高LET放射線被ばくによる白内障発生に関するICRPの防護指針の変遷や、その疫学・放射線生物学に関する知見を整理するとともに、将来必要な研究に関して議論する。
遠藤 章; 浜田 信行*
Isotope News, (745), p.42 - 43, 2016/06
2016年2月18日、東京大学本郷キャンパスおいて、国際放射線防護委員会(ICRP)のシンポジウム「ICRP Symposium on Radiological Protection Dosimetry」が開催された。ICRP第2専門委員会は、内部被ばく及び外部被ばくの線量評価に用いる線量係数の評価を担っており、その評価に必要な体内動態モデル、線量評価モデル、基礎データの開発を進めている。本シンポジウムは、ICRPが現在取り組んでいる線量係数評価のための一連の活動を紹介するとともに、今後必要な研究について議論することを目的として開催された。本稿ではシンポジウムの概要を報告する。
赤羽 恵一*; 飯本 武志*; 伊知地 猛*; 岩井 敏*; 大口 裕之*; 大野 和子*; 川浦 稚代*; 黒澤 忠弘*; 立崎 英夫*; 辻村 憲雄; et al.
保健物理, 50(4), p.257 - 261, 2015/12
光子と線の混合フィールドでは、皮膚に割り当てられた同じ線量は、(3)の保守的な推定として水晶体への線量に一般に割り当てられる。しかしながら、線量限度と同じオーダーの非常に高い線量が与えられるかもしれない例外的なケースでは、その保守的にバイアスのかかった線量はあまりにも制限的であり、(3)の正確な評価は望ましい。この記事は、線(3)の線量測定をどんなときに、どのようにしてなすべきかについて実用的な提案をする。
坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 服部 佑哉; 池田 裕子; 武藤 泰子*; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 浜田 信行*; 白井 花菜*; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 74, 2015/03
昆虫・哺乳動物等を用いた実験から、放射線被ばくにより学習障害等の神経系への影響がもたらされることが示唆されている。我々は、神経系を研究するためのモデル生物として知られる線虫を用いて、化学走性学習が、特定の条件下においてのみコバルト60線照射の影響を受けることを明らかにした。しかし、線虫のどの部位における放射線応答が、化学走性学習行動の変化を誘導するかは明らかでない。そこで、我々は、炭素イオンマイクロビームを用いて、線虫の化学走性学習に対する直接的な放射線の影響部位を明らかにすることを目的とした。マイクロビーム照射技術は、細胞あるいは組織レベルでの直接的な放射線の影響を調べるための有効なツールとして知られている。本報告では、2つの線虫変異体(, )に対して、マイクロビームの局部照射を行った結果について報告する。
佐藤 達彦; 浜田 信行*
PLOS ONE (Internet), 9(11), p.e114056_1 - e114056_20, 2014/11
被引用回数:11 パーセンタイル:43.07(Multidisciplinary Sciences)様々な線種の電離放射線に照射された細胞の生存率について、標的効果と非標的効果の双方を考慮して推定可能な新たなモデルを開発した。放射線場を特徴づけるための指標として、従来のモデルでよく使われてきたマクロ吸収線量やLETではなく、各細胞核及びその内部構造(ドメイン)におけるミクロ吸収線量の確率密度分布を用いた。これらの確率密度分布は、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSにより計算可能である。標的効果の表現には、以前に確立したDSMK(二重確率論的マイクロドジメトリ動態)モデルを用い、非標的効果の表現には新たなモデルを開発した。開発したモデルの妥当性を調べるため、様々な細胞腫や照射条件に対する生存率について、その生物実験データとモデル計算データを比較した。その結果、モデル計算は広範囲の線量とLETについて生物実験データをよく再現することが示された。標的効果、非標的効果、Bcl-2過剰発現の効果を考慮したこの新たなモデルは、重粒子線治療、密封小線源治療、ホウ素中性子捕獲療法など、様々な先進医療の治療成績と有害事象の評価精度向上に役立つと期待できる。
赤羽 恵一*; 飯本 武志*; 伊知地 猛*; 岩井 敏*; 大口 裕之*; 大野 和子*; 川浦 稚代*; 立崎 英夫*; 辻村 憲雄; 浜田 信行*; et al.
保健物理, 49(3), p.153 - 156, 2014/09
外部被ばくによる水晶体の線量測定に係る歴史と方法論について要約する。1989年の放射線防護関係法令の改正において、ICRP1977年勧告に基づいて導入された実効線量当量概念と水晶体の線量限度(150mSv/年)は、体幹部が不均一な放射線に曝される状況下における外部被ばくによる線量評価法を大きく変えた。そのような状況(鉛エプロンの着用によってしばしばもたらされる)では、作業者は、鉛エプロンの下側に一つ、鉛エプロンの上側(一般に上着の襟)にもう一つの個人線量計を着用する。後者の線量計は、実効線量当量評価のための線量分布を与えること、水晶体の線量当量を評価することの二つの役目をはたす。個人線量計によって指示された(10)と(0.07)のうち、値の大きな方又はより適切な値が、(3)の替わりに記録のため使用される。
浜田 信行*; 坂下 哲哉; 原 孝光*; 藤通 有希*
放射線生物研究, 49(3), p.318 - 331, 2014/09
コロニー形成法は、半世紀以上にわたり、細胞の放射線感受性評価に最も頻用されている。我々は、ヒト初代正常二倍体線維芽細胞のコロニー形成実験を行い、50個未満の細胞から構成される増殖不全コロニーと50個以上の細胞から構成される生存コロニーの大きさと構成細胞数を解析することで、生存コロニーが巨細胞や多核化細胞などを含む不均一な集団であること、増殖不全コロニーの構成細胞数が遅延的に生じる細胞増殖死の短期的・長期的な変化を反映していることを明らかにするとともに、ヒト初代正常二倍体水晶体上皮細胞のコロニー形成実験から、照射細胞に由来するコロニーが高線量ほど巨大化するという新たな現象を見いだした。本稿では、これらの知見について総説する。
佐藤 達彦; 真辺 健太郎; 浜田 信行*
PLOS ONE (Internet), 9(6), p.e99831_1 - e99831_10, 2014/06
被引用回数:7 パーセンタイル:33.82(Multidisciplinary Sciences)福島第一原子力発電所の事故以降、国内外で内部被ばくのリスクに関心が高まっている。放射性同位元素(RI)が細胞核内に取り込まれた場合、その内部被ばくのリスクと同じ吸収線量の線による外部被ばくのリスクの比(生物学的効果比、RBE)は、1を超える可能性がある。そこで、本研究では、粒子輸送計算コードPHITSを用いて、様々なRIが細胞核、細胞質及び細胞外に局在した場合の放射線挙動を詳細に解析し、ミクロレベルで見た吸収線量の空間的かつ確率的分布を計算した。その結果、福島原発事故で放出された主要なRI(Cs, Cs及びI)による内部被ばくと線による外部被ばくでは、ミクロレベルで見た吸収線量分布にほとんど差はなく、そのRBEは、バイスタンダー効果など最新の生物学的知見を考慮しても最大で1.04程度であることが分かった。この結果は、最新の国際放射線防護委員会(ICRP)による勧告の妥当性を証明するものである。
坂下 哲哉; 浜田 信行*; 川口 勇生*; 原 孝光*; 小林 泰彦; 斎藤 公明
Journal of Radiation Research, 55(3), p.423 - 431, 2014/02
被引用回数:3 パーセンタイル:17.67(Biology)コロニー形成試験において、従来、50個以上の細胞からなるコロニーを、増殖可能な細胞からなるコロニーとして生存率を評価してきた。最近、我々は、コバルト60線を照射した正常線維芽細胞について、従来無視されてきた50個に満たない細胞からなるコロニーのサイズ分布が対数-対数グラフで直線にプロットできることを示し、また、分岐プロセスモデルを導入することにより照射後数回の分裂にわたる遅延的細胞増殖死の確率を推定した。さらに、モデルの拡張により生存率曲線の再現にも成功した。本論文では、この一連の解析方法を、炭素線照射を実施した正常線維芽細胞に適用し、増殖不全コロニーのサイズ分布、生存率曲線の解析に加えて、生物学的効果比の評価及び2次コロニーの評価を実施した。本論文により、我々の提案手法が、(1)異なる線質に対しても適用可能であること、(2)2次、3次コロニーとの組み合わせなどの応用が可能であることが示された。遅延的な放射線の効果を明らかできる本研究の手法を、今後の放射線生物研究の進展に役立てることが期待される。
坂下 哲哉; 浜田 信行*; 川口 勇生*; 大内 則幸; 原 孝光*; 小林 泰彦; 斎藤 公明
PLOS ONE (Internet), 8(7), p.e70291_1 - e70291_10, 2013/07
被引用回数:7 パーセンタイル:33.82(Multidisciplinary Sciences)コロニー形成能の測定は、放射線照射後の細胞の重要な情報を与える。通常、50個以上の細胞からなるコロニーを、増殖可能な細胞からなるコロニーとして生存率を評価してきた。しかし、従来無視されてきた50個に満たない細胞からなるコロニーに関して詳細に調べたところ、サイズ分布が対数-対数グラフで直線にプロットできることがわかった。本研究では、この直線関係について分岐プロセスモデルを導入し、世界で初めて照射後の数世代にわたる細胞増殖死の確率を推定できることを発見した。また、従来、増殖可能なコロニーとして評価されたてきた生存コロニーに、このモデルを拡張応用することにより、生存率曲線を再現することに成功した。この一連の解析により、放射線照射後の細胞の継世代的な影響には、比較的短い数世代に及ぶ増殖死が高まる影響と、それよりも長い世代にわたって継続する増殖死の機構が存在することを明らかにした。本研究による、半世紀以上見過ごされてきたコロニーアッセイの隠れた重要性の指摘と、コロニーアッセイによる継世代影響解析方法の提案は、今後の放射線生物研究の進展に重要な貢献を果たすものと期待される。
明尾 潔*; 浜田 信行*; 舟山 知夫; 明尾 庸子*; 小林 泰彦
組織培養研究, 32(1), p.195 - 202, 2013/06
本研究では、培養ヒト網膜血管内皮(RE)細胞において、細胞障害を引き起こす活性酸素種から細胞を防護するグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)遺伝子の発現が、L-dopa投与とイオンビーム照射によってどのように変化するかをリアルタイム逆転写PCR法を用いて解析した。L-dopa単体での投与は、RE細胞におけるGPx遺伝子遺伝子の発現を抑制した一方で、イオンビーム照射とともに投与すると、Heイオン及びCイオン照射の場合は抑制が、Neイオンの場合は発現の促進が認められた。この結果から、GPx遺伝子の発現制御において、L-dopaの効果よりもイオンビーム照射の効果のほうが大きく作用することを意味していることが示唆された。
坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 浜田 信行*; 下澤 容子; 深本 花菜*; 横田 裕一郎; 楚良 桜*; 柿崎 竹彦*; 和田 成一*; 舟山 知夫; et al.
Biological Sciences in Space, 26, p.21 - 25, 2012/10
神経系のモデル生物として知られる線虫を用いて、化学走性学習に対する低LET及び高LET放射線の影響について調べた。また、野生型及び変異体の結果を比較した。高LET炭素線(C, 18.3MeV/u, LET=113keV/m)及びCo 線照射実験を行った結果、学習後期よりも初期の影響が大きい傾向及び変異体で応答が消失する点は両放射線で同じであった。以上の結果から、化学走性学習に関して低LET及び高LET放射線の両放射線とも影響を与えること、及びその作用メカニズムには遺伝子が関与していることが示唆された。