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雨倉 宏*; Chettah, A.*; 鳴海 一雅*; 千葉 敦也*; 平野 貴美*; 山田 圭介*; 山本 春也*; Leino, A. A.*; Djurabekova, F.*; Nordlund, K.*; et al.
Nature Communications (Internet), 15, p.1786_1 - 1786_10, 2024/02
高い電子的阻止能領域の照射条件で高エネルギー重イオンを固体に照射すると、イオンの飛跡に沿って潜在イオントラックと呼ばれる柱状の損傷領域が形成される。イオントラックは、多くの物質中で形成されていることが知られているが、ダイヤモンドにおいて観察された例は皆無であった。高エネルギー(GeV)のウランイオンにおいてさえ、観察された例はない。本研究では、2-9MeV Cフラーレンイオンを照射したダイヤモンドにおいて、初めてイオントラックが観察された。高分解能電子顕微鏡による観察により、イオントラックの内部がアモルファス化していることが示唆され、さらに、電子エネルギー損失分光法による分析によって、グラファイト由来の-結合の信号が検知された。分子動力学法に基づく計算シミュレーションで、上記の実験結果を再現することに成功した。
岩瀬 彰宏*; 福田 健吾*; 斎藤 勇一*; 岡本 芳浩; 千星 聡*; 雨倉 宏*; 松井 利之*
Journal of Applied Physics, 132(16), p.163902_1 - 163902_10, 2022/10
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Applied)アモルファスSiO試料に380keVのFeイオンを室温で注入した。注入後、一部の試料に16MeVのAuイオンを照射した。SQUID磁束計を用いて磁気特性を調べ、透過型電子顕微鏡とX線吸収分光法(EXAFSとXANES)を用いてFe注入SiO試料のモルフォロジーを調べたところ、Feナノ粒子のサイズが大きくなっていることがわかった。Feナノ粒子の大きさは、Feの注入量の増加とともに大きくなった。Feナノ粒子の一部はFe酸化物からなり、Fe注入量の増加に伴い、Fe原子の価数や構造が金属-Feに近くなった。Feを注入したSiO試料では、室温での磁性が観測された。少量のFeを注入した試料の磁化-磁場曲線はLangevinの式で再現され、Feナノ粒子が超常磁性的な振る舞いをすることが示唆された。また、Feを多量に注入した場合、磁化-磁場曲線は強磁性状態を示している。このような磁気特性の結果は、X線吸収の結果と一致する。その後の16MeVのAu照射により、Feナノ粒子は破砕され、その結果、磁化は減少した。
雨倉 宏*; Toulemonde, M.*; 鳴海 一雅*; Li, R.*; 千葉 敦也*; 平野 貴美*; 山田 圭介*; 山本 春也*; 石川 法人; 大久保 成彰; et al.
Scientific Reports (Internet), 11(1), p.185_1 - 185_11, 2021/01
被引用回数:10 パーセンタイル:75.98(Multidisciplinary Sciences)シリコンへ6MeV Cイオン照射すると直径10nmのイオントラック損傷が形成されることを見出した。これは、従来知られているイオンエネルギーしきい値(17MeV)よりもはるかに低いエネルギーである。従来知られているような電子的阻止能に由来したイオントラック形成メカニズムだけでは説明できず、それだけでなく核的阻止能に由来した効果も存在する可能性を示唆している。
雨倉 宏*; Li, R.*; 大久保 成彰; 石川 法人; Chen, F.*
Quantum Beam Science (Internet), 4(4), p.39_1 - 39_11, 2020/12
200MeV Xeイオンビームを照射したYAlO (YAG)の屈折率変化の深さ分布測定を行った。その結果、3mまでの浅い領域では電子的エネルギー付与に起因した屈折率変化が見られ、さらに深い6mまでの中間領域では電子的エネルギー付与と弾性衝突によるエネルギー付与の重畳効果がみられ、さらに深い13mでは弾性衝突によるエネルギー付与に起因する屈折率変化が見られた。これらの光学特性の深さ分布は、必ずしも照射損傷の量と一致しないため、損傷の質(照射で誘起される材料歪みなど)も光学特性変化に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
雨倉 宏*; Li, R.*; 大久保 成彰; 石川 法人; Chen, F.*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 474, p.78 - 82, 2020/07
被引用回数:5 パーセンタイル:54.54(Instruments & Instrumentation)YAlO (YAG)とCaFについて、200MeV Xeイオン照射による構造変化と光学応答との相関を調べた。前者はイオン照射後に結晶構造が大きく変化して非晶質相に相変態するのに対して、後者は結晶構造を維持していた。一方で光学応答については、前者はイオン照射後でも透明度が劣化しないのに対して、後者は透明度が大きく劣化して波長が約550nmの吸収バンドが現れて、透明度が大きく劣化していた。結晶構造変化と光学応答との間に正の相関が見られなかった。
Li, R.*; 鳴海 一雅*; 千葉 敦也*; 平野 優*; 津谷 大樹*; 山本 春也*; 斎藤 勇一*; 大久保 成彰; 石川 法人; Pang, C.*; et al.
Nanotechnology, 31(26), p.265606_1 - 265606_9, 2020/06
被引用回数:5 パーセンタイル:33.73(Nanoscience & Nanotechnology)材料中に埋め込まれた金ナノ粒子に4MeV Cイオンと200MeV Xeイオンを照射した時の伸長変形現象について、3つの材料(アモルファスカーボン,CaF,結晶酸化インジウムスズ(ITO))について調べ、その材料依存性を調べた。どの材料についても、イオン照射に伴って結晶性を失う傾向が見られた。ITOが、最も金ナノ粒子の変形が顕著であり、かつ照射後にもかかわらず結晶性を保っていた。結晶性の材料において金ナノ粒子の変形を報告する初めて報告例となる。
Li, R.*; Pang, C.*; 雨倉 宏*; Ren, F.*; Hbner, R.*; Zhou, S.*; 石川 法人; 大久保 成彰; Chen, F.*
Nanotechnology, 29(42), p.424001_1 - 424001_8, 2018/10
被引用回数:5 パーセンタイル:25.59(Nanoscience & Nanotechnology)銀イオン注入法と高速重イオン照射法を組み合わせることで、Nd:YAG(Nbをドープしたイットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶中に埋め込まれている銀ナノ粒子を制御性良く変形させることができた。本研究では、Nd:YAG結晶中に埋め込まれた球形状の銀ナノ粒子に高速重粒子線を照射することで、銀ナノ粒子を変形させることを試みた。今回、照射前後の表面プラズモン共鳴の微小な変化を検知できることを利用して、照射による金属ナノ粒子のわずかな変形を検出することにも成功した。また、離散双極子近似(DDA)計算と組み合わせることで、その変形度を定量化する手法を開発した。
雨倉 宏*; Kluth, P.*; Mota-Santiago, P.*; Sahlberg, I.*; Jantunen, V.*; Leino, A. A.*; Vazquez, H.*; Nordlund, K.*; Djurabekova, F.*; 大久保 成彰; et al.
Physical Review Materials (Internet), 2(9), p.096001_1 - 096001_10, 2018/09
被引用回数:10 パーセンタイル:38.08(Materials Science, Multidisciplinary)高速重イオンを非晶質SiOに照射すると、核に低密度物質、その周りの殻に高密度物質が誘起され、核/殻状のイオントラック損傷が形成されることが知られている。この核/殻状のイオントラック損傷の形成を説明するモデルとして、核部分に超高温の蒸気相が形成されることを仮定するモデルが提唱され、有力なモデルとされている。しかし、本研究での分子動力学計算の結果、イオン照射に伴うエネルギー伝達密度が低い(3keV/nm以下)条件では蒸気相は実現されない結果になるにもかかわらず、一方でそのような実験条件でも核/殻状のイオントラック損傷が形成されることが今回の実験で明らかになった。以上の解析のみならず、様々な補足実験や計算の結果、従来重要とされてきた蒸気相の形成は、照射影響(核/殻状のイオントラック損傷の形成等)を起こすための必須条件ではないことが明らかになった。
雨倉 宏*; 河野 健一郎*; 大久保 成彰; 石川 法人
Physica Status Solidi (B), 252(1), p.165 - 169, 2015/01
被引用回数:10 パーセンタイル:42.32(Physics, Condensed Matter)Znナノ粒子に200MeV Xeイオンを照射した後、照射に伴うナノ粒子の伸長と粒子間平均距離を評価するためにSPring-8においてX線小角散乱測定を行った。高照射量領域において、小角散乱信号の方位角依存性が現れ、ナノ粒子の形状変化を検知することができた。また、イオントラック(柱状欠陥集合体)の形成に伴う小角散乱信号は、低照射量でも観測された。この結果は、イオントラックが重畳するときに新たに通過するイオントラックが事前に存在したイオントラックを消去して上書きするオーバーライティングモデルを支持するものである。また、粒子間平均距離は照射量増加に伴って増加し、小さいナノ粒子の分解と大きいナノ粒子の成長を示唆している。
雨倉 宏*; Sele, M. L.*; 石川 法人; 大久保 成彰
Nanotechnology, 23(9), p.095704_1 - 095704_7, 2012/03
被引用回数:13 パーセンタイル:49.02(Nanoscience & Nanotechnology)ナノ粒子の形状制御は、偏光素子などの光素子開発に必要な技術である。本研究では、イオン照射に伴うナノ粒子の形状伸長(shape elongation)現象と、伸長したナノ粒子の熱的安定性を調べることで、形状制御に必要な試料処理条件パラメータを同定した。また、融点が形状変化に与える影響の有無も調べた。シリカ酸化物中のZnナノ粒子とVナノ粒子を高速重イオンで照射し、照射試料を1000Cまでの温度域で焼鈍処理した。直線偏光二色性分光法を用いて、処理後の試料中のナノ粒子形状を評価した。イオン照射によって、ナノ粒子の形状が伸長したことが確認できる。照射後焼鈍実験の結果、Znナノ粒子は、融点(420C)よりも高い温度(500C)では液体状態であるにもかかわらず、伸長形状を保持していることがわかった。一方、Vナノ粒子は、融点(1890C)より低い900Cで固体状態であるにもかかわらず、原子移動が起こり、伸長形状から球状形状に変化することがわかった。融点は、必ずしもナノ粒子の形状変化の決定要因ではないことがわかった。本研究は、施設供用制度の基づいて行われた加速器実験の成果である。
雨倉 宏*; 石川 法人; 大久保 成彰; 中山 佳子*; 三石 和貴*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 269(23), p.2730 - 2733, 2011/12
被引用回数:13 パーセンタイル:69.86(Instruments & Instrumentation)高速重イオン照射による(シリカ中に埋め込まれた)金属ナノ粒子の形状伸長を説明する既存のモデルとして、熱スパイクモデル(ピコ秒の温度上昇を伴う融解とその後の凝固に至るプロセス)がある。このモデルの妥当性を検証するために、融点の大きく異なる金属であるバナジウム(バルク融点1890C)と亜鉛(バルク融点420C)の金属ナノ粒子の200-MeV Xe照射効果をそれぞれ比較し検討した。その結果、それぞれの融点が異なるにもかかわらず、両者はほぼ同程度の形状伸長を示した。この結果は既存のモデルの修正の必要性を示唆する。シリカの融解と金属ナノ粒子の融解とが同時並行で進行しないことを考慮した修正モデルを提案した。
雨倉 宏*; 石川 法人; 大久保 成彰; Ridgway, M.*; Giulian, R.*; 三石 和貴*; 中山 佳子*; Buchal, C.*; Mantl, S.*; 岸本 直樹*
Physical Review B, 83(20), p.205401_1 - 205401_10, 2011/05
被引用回数:35 パーセンタイル:78.55(Materials Science, Multidisciplinary)シリカに埋め込まれた金属ナノ粒子が高速重イオンの照射方向に形状伸長する現象について研究した。この現象が、イオン照射に伴って形成される欠陥集合体(イオントラック)が重畳することによって間接的に引き起こされる現象なのか、あるいはイオントラックと金属ナノ粒子とが直接相互作用して起きる現象なのかを明らかにすることは、現象解明の重要な鍵となる。本研究では、Znナノ粒子に、イオントラックがほとんど重畳しない低照射量(5.010 Xe/cm)の200-MeV Xeを照射したときにおいても形状伸長が起きることを、検出感度の高い光学的方法を用いて明らかにし、後者のシナリオの可能性の方が高いことを示した。