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渡辺 力*; 石川 修平*; 川島 正行*; 下山 宏*; 小野寺 直幸; 長谷川 雄太; 稲垣 厚至*
Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics, 250, p.105783_1 - 105783_17, 2024/07
被引用回数:3 パーセンタイル:56.29(Engineering, Civil)ラグランジュ粒子分散モデルとラージ・エディ・シミュレーション(LES)コードを組み合わせた漂流雪のシミュレーションを実施した。このモデルは、質量輸送率の流速依存性や粒径分布の変動といった観測された特徴を正確に再現した。また、従来の推定に反して、跳躍層の高さは流速とともに単調に増加することを示した。さらに、推定された跳躍層の高さ付近で跳躍から浮遊への移行が確認され、密な雪の流れが表面近傍流の小規模な低速ストリークと関連していることがわかった。
小野寺 直幸; 井戸村 泰宏; 長谷川 雄太; 朝比 祐一; 稲垣 厚至*; 下瀬 健一*; 平野 洪賓*
計算工学講演会論文集(CD-ROM), 28, 4 Pages, 2023/05
高度計算機技術開発室では、都市全域を含む広域の風況場から細かな路地等を捉えたマルチスケールの風況シミュレーションコードCityLBMの開発を進めている。CityLBMは、格子ボルツマン法に適合細分化格子を適用した省メモリ化、および、GPUスーパーコンピュータによる高性能計算により、数km四方に対してリアルタイムのアンサンブルシミュレーションが可能となる。一方、実現象には、モデル化できない複雑な境界条件が含まれているため、観測データをシミュレーションに反映させるためのデータ同化技術が必要である。本研究では、現実の風況を再現するために、アンサンブルカルマンフィルターに基づく地表面温度バイアスの最適化手法を提案した。CityLBMの検証として、東京都心部を対象とした観測システムシミュレーション実験を実施し、地表面近傍の温度から、境界条件として与えている地表面温度を推定する。
渡辺 力*; 高木 毬衣*; 下山 宏*; 川島 正行*; 小野寺 直幸; 稲垣 厚至*
Boundary-Layer Meteorology, 181(1), p.39 - 71, 2021/10
被引用回数:8 パーセンタイル:44.33(Meteorology & Atmospheric Sciences)速度場とスカラー場に対する二つの分布関数を用いた格子ボルツマン法を用いて、植生キャノピー内およびその上部における、パッシブスカラを含む流れのラージエディ・シミュレーションを実施した。植物キャノピーが分散型シンクとして機能するトップダウンスカラーの場合、キャノピー上面のスカラー流束は、はるか上方から発生するキャノピーへ侵入する流れ(スイープ)により決定される。一方で、キャノピーからスカラーが放出される現象は、キャノピー上部で発生する渦により引き起こされる。本論文では、この様な渦の発生は、キャノピー上方からの大規模なスイープと、キャノピー内部の幅広い範囲での放出現象が接近することで引き起こされることを明らかとした。
武田 哲明*; 稲垣 嘉之; 相原 純; 青木 健; 藤原 佑輔; 深谷 裕司; 後藤 実; Ho, H. Q.; 飯垣 和彦; 今井 良行; et al.
High Temperature Gas-Cooled Reactors; JSME Series in Thermal and Nuclear Power Generation, Vol.5, 464 Pages, 2021/02
本書は、原子力機構における今までの高温ガス炉の研究開発の総括として、HTTRの設計、燃料、炉内構造物や中間熱交換器などの要素技術の開発、出力上昇試験、950Cの高温運転、安全性実証試験などの運転経験及び成果についてまとめたものである。また、HTTRでの知見をもとに、商用炉の設計、高性能燃料、ヘリウムガスタービン、ISプロセスによる水素製造などの要素技術開発の現状について記述しており、今後の高温ガス炉の開発に非常に有用である。本書は、日本機械学会の動力エネルギーシステム部門による化石燃料及び原子力によるエネルギーシステムの技術書のシリーズの一冊として刊行されるものである。
横内 浩志*; 稲垣 厚至*; 神田 学*; 小野寺 直幸
土木学会論文集,B1(水工学)(インターネット), 76(2), p.I_253 - I_258, 2020/00
格子ボルツマン法LESモデルを用いた都市大気境界層の大規模数値計算モデルを用いて、都市の自動車由来大気汚染物質を想定したスカラーの動態評価を行った。スカラーはパッシブスカラーを仮定し、その動態計算をLagrange的手法により表現した。本モデルを移動排出源由来の大気汚染が深刻化しているジャカルタを対象に計算を実施した。計算条件として、ジャカルタで以前計画されていた沿岸巨大建造物GARUDAの有無による2通りの条件を設定し、それが下流の都市に及ぼす影響を評価した。計算結果より、地表面付近において、GARUDAの有無に由来する主流方向風速分布,粒子濃度分布に顕著な差は確認できなかった。一方で建物レベル(10[m]-30[m])では、GARUDAの影響による風速の低下に伴い、粒子密度が増加していることを確認した。
稲垣 厚至*; Wangsaputra, Y.*; 神田 学*; Ycel, M.*; 小野寺 直幸; 青木 尊之*
SOLA (Scientific Online Letters on the Atmosphere) (Internet), 16, p.120 - 124, 2020/00
被引用回数:1 パーセンタイル:3.28(Meteorology & Atmospheric Sciences)都市境界層を対象とした風況解析により、内層および外層のスケーリングと乱流強度分布の類似性を検討した。計算条件として、現実的な建物形状の上に発達する中立条件を仮定すると共に、計算領域19.2km4.8km
高さ1kmに対して2m格子を設定した。乱流強度分布は計算領域内で局所的に定義できる。内層と外層に対してスケーリング則を当てはめることで、表面形状に関係なく、内層と外層内の乱流強度予測のばらつきを減らすことが可能となる。スケーリングされたプロファイル間のばらつきは、各層のスケーリングパラメーターの不一致に起因するが、長さまたは速度の比率からなる無次元パラメーターを導入することで、それらの類似性を示した。
吉田 剛*; 二宮 和彦*; 稲垣 誠*; 髭本 亘; Strasser, P.*; 河村 成肇*; 下村 浩一郎*; 三宅 康博*; 三浦 太一*; 久保 謙哉*; et al.
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 320(2), p.283 - 289, 2019/05
被引用回数:4 パーセンタイル:35.53(Chemistry, Analytical)分子へのミュオン捕獲過程における価電子の役割をカスケード計算を補助的に用いることで求めた。低運動量ミュオン大気圧の期待標的に打ち込み、ライマンおよびバルマー系列のミュオンX線を測定することにより初期状態を求めた。この結果から、大きな軌道角運動量を持つ軌道への捕獲に際しては炭素中の孤立した対電子が大きな役割を果たしていることを提案した。
稲垣 厚至*; 神田 学*; Ahmad, N. H.*; 八木 綾子*; 小野寺 直幸; 青木 尊之*
Boundary-Layer Meteorology, 164(2), p.161 - 181, 2017/08
被引用回数:33 パーセンタイル:71.86(Meteorology & Atmospheric Sciences)本研究では、東京都市部に対して、中立安定状態における大気境界層に対する数値解析を行なった。GPUを用いた並列計算を実施することで、19.2km4.8km
1kmの領域に対して2m解像度のラージエディ・シミュレーションが可能となった。大規模計算結果より、境界層上部の乱流統計量や境界層全域におよび特徴的なストリーク構造等の再現が可能であることが確認された。
柴田 雅博; 澤田 淳; 舘 幸男; 牧野 仁史; 若杉 圭一郎; 三ツ井 誠一郎; 北村 暁; 吉川 英樹; 小田 治恵; 石寺 孝充; et al.
JAEA-Research 2014-030, 457 Pages, 2015/03
原子力機構(JAEA)がこれまで蓄積してきた技術やノウハウを、原子力発電環境整備機構(NUMO)が今後行う精密調査地区の選定等の処分事業に適用できるよう、実施主体の視点に沿って実用化を図っていくための具体的な考え方と進め方を策定すること等を目的として、2011年度よりJAEAとNUMOは以下の3つのテーマについて共同研究を進めている。(1)水理の観点からみた母岩の適性を評価する方法に関する検討: 水理地質構造モデル構築手法の事例調査に基づいて、得られた知見を評価ツリーとして整理し、モデルの不確実性やそれらの評価項目への影響等についての検討を行った。(2)シナリオの構築方法に関する検討: 状態設定手順を実務的な観点から、さらに見直すとともに、セメント影響とガラス溶解挙動について、知見の体系的な整理と不確実性の影響について解析的検討を行った。(3)核種移行パラメータの設定方法に関する検討: 母岩の分配係数を対象に、国内外の事例調査をもとに複数の設定手法を整理し、堆積岩及び花崗岩への適用を通じ妥当性や課題を確認した。溶解度について、溶解度制限固相の決定を含む設定手法を検討し、主要核種への適用を通じ妥当性や課題を確認した。
柴田 雅博; 澤田 淳; 舘 幸男; 早野 明; 牧野 仁史; 若杉 圭一郎; 三ツ井 誠一郎; 小田 治恵; 北村 暁; 大澤 英昭; et al.
JAEA-Research 2013-037, 455 Pages, 2013/12
原子力機構(JAEA)及び原子力発電環境整備機構(NUMO)は、平成24年度に引き続き、JAEAがこれまで蓄積してきた技術やノウハウを、NUMOが今後行う精密調査地区の選定等の処分事業に直接適用できるよう、実施主体の視点に沿って実用化を図っていくことを目的として、概要調査段階における処分場の設計・性能評価に関連する主要な技術テーマについて検討した。(1)水理の観点からみた母岩の適性を評価する方法に関する検討については、平成24年度に引き続き、結晶質岩を対象とした地下水移行時間の評価ツリーを拡充するとともに、新たに堆積岩を対象とした評価ツリーを作成した。(2)シナリオの構築に関する検討については、平成24年度の状態設定手順を実務的な観点から見直し、緩衝材を対象として試行した。また、安全機能への不確実性の影響について解析的検討を行った。(3)核種移行パラメータの設定に関する検討については、母岩の分配係数を対象に、国内外の事例調査をもとに複数の条件変換手法を含む設定手法を整理し、堆積岩及び花崗岩への適用を通じ妥当性や課題を確認した。さらに、溶解度について、溶解度制限固相の決定を含む設定手法を検討し、主要核種への適用を通じ妥当性や課題を確認した。
柴田 雅博; 澤田 淳; 舘 幸男; 牧野 仁史; 早野 明; 三ツ井 誠一郎; 谷口 直樹; 小田 治恵; 北村 暁; 大澤 英昭; et al.
JAEA-Research 2012-032, 298 Pages, 2012/09
原子力機構(JAEA)と原子力発電環境整備機構(NUMO)は、概要調査段階における処分場の設計・性能評価に関連する主要な技術テーマについて、原子力機構が蓄積してきた技術やノウハウを、NUMOが今後の処分事業に適用できるよう、実施主体の視点に沿って実用化を図っていくための具体的な考え方と進め方を策定するとともに、必要な開発課題と今後の計画を明らかにすることを目的として、2011年度に共同研究を実施した。実施テーマと概要は以下の通り。(1)対象母岩の選定に関する検討:母岩特性のうち水理に着目し、母岩特性を評価するための項目、及び地下水移行時間の評価手法について、地質環境の調査・評価と関連付けたうえで整理した。(2)シナリオの構築に関する検討:シナリオ構築手順を具体化するとともに、ガラス固化体の溶解と核種の浸出、オーバーパックの腐食、緩衝材の長期変遷について、現象理解に関する最新の知見を構造的に整理した。(3)核種移行パラメータの設定に関する検討:緩衝材の分配係数と拡散係数、母岩の分配係数を対象として、パラメータ設定の方法論を検討し、その方法論に従った試行を行った。(4)知識情報の品質確保に関する検討:知識情報の品質を確保するための考え方や手法を、(2)シナリオの構築で検討した状態設定に対する論拠に関する情報を例として検討した。
稲垣 八穂広*; 酒谷 圭一*; 山村 由貴*; 三ツ井 誠一郎; 野下 健司*; 三浦 吉幸*; 兼平 憲男*; 越智 英治*; 椋木 敦*; 千葉 保*
第7回再処理・リサイクル部会セミナーテキスト, p.136 - 137, 2011/01
これまでの静的溶解試験では、ガラス溶解に伴い反応溶液の液性が変化するため、任意の液性一定条件での測定評価が困難であった。本研究では、我が国の模擬ガラス固化体であるJAEA-P0798ガラス及びJNFL-KMOCガラスについて、新たに考案したマイクロチャンネル流水試験法を用いた任意の液性一定条件での溶解試験を行い、ガラスの本質的特性の一つである初期溶解速度(: 反応溶液中シリカ濃度がゼロの条件でのガラス溶解速度)を精密に測定し、その温度依存性,pH依存性を体系的に評価した。その結果、いずれのガラス試料についても
は温度とともに増大し、各温度においてpHに関してV字型の依存性を示すことがわかった。
岩月 輝希; 佐藤 治夫; 棚井 憲治; 稲垣 学; 澤田 淳; 新沼 寛明; 石井 英一; 前川 恵輔; 戸村 豪治; 真田 祐幸; et al.
JAEA-Research 2009-002, 156 Pages, 2009/05
「高レベル放射性廃棄物の地層処分基盤研究開発に関する全体計画」及び研究技術開発の現状に基づいて既往の研究計画を更新し、幌延深地層研究計画第2段階における平成2021年度の具体的な研究計画を作成した。計画検討にあたっては、施設建設工程などの制約条件を踏まえたうえで、深地層の科学的研究,地層処分研究開発にかかわる研究技術開発(地質環境特性調査評価技術,地下施設建設に伴う地質環境変化の調査評価技術,深地層における工学技術,地層処分に必要な工学技術,安全評価技術など)の今後の実施計画として、ボーリング調査計画やモニタリング計画,工学試験などの計画検討を行ったうえで、各課題の現中期計画終了時の達成目標を明確化した。
小野寺 直幸; 下川辺 隆史*; 井戸村 泰宏; 河村 拓馬; 長谷川 雄太; 伊奈 拓也; 稲垣 厚至*; 平野 洪賓*; 下瀬 健一*; 小田 僚子*; et al.
no journal, ,
GPUスーパーコンピュータ上において、メートル解像度の風況シミュレーションに観測データをリアルタイムに同化した、都市街区内の風況デジタルツインの実現を目指している。二年目である2023年度は高精度に局所の風況を再現するために、局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)に基づくデータ同化手法をCityLBMに適用した。外力を加えた二次元等方乱流のデータ同化数値実験における検証では、LETKFにおいて64個のアンサンブルを使用することで、基礎的なデータ同化手法であるナッジング法と比較して1/16の粗い観測点で同程度の精度が得られることを確認した。また、三次元角柱周りの流れのデータ同化数値実験においても、LETKFを適用することで、観測で得られた角柱後方に発生するカルマン渦の位相を高い精度で再現できることを確認した。以上より、物体を含む非定常な流れを観測データに同化できる見通しが立ち、風況デジタルツインの研究開発が前進した。
早野 明; 澤田 淳; 後藤 淳一*; 石井 英一*; 守屋 俊文*; 稲垣 学*; 窪田 茂*; 江橋 健*
no journal, ,
地層処分事業における母岩の選定には、段階的に進められる地質環境の調査から得られる情報などに基づき、岩体が母岩としての適性を有するかの評価結果に基づく判断が求められる。その適性を評価するための指標は、安全評価や処分場の概念設計における重要な項目と、地質環境モデルから評価可能な情報とを関連づけた設定が有効である。この項目を、両者間の共有のインターフェースとして利用することで、母岩の選定にかかわる考え方の整理が進むと考えられ、先行する国外の処分事業でもその有効性が示されている。本研究では、水理の観点で母岩の特性の優劣を表す項目を一覧表に整理した。また、その項目を地質環境モデルから評価するための手順の整理として、項目を起点に、調査データなどの不確実性に起因して想定される代替ケースや代替モデルといった複数の選択肢を系統的に示す「評価ツリー」を提案し、地下水移行時間を評価するための評価ツリーを例示した。
澤田 淳; 早野 明; 後藤 淳一*; 稲垣 学*
no journal, ,
NUMO-JAEA共同研究の一環として実施した概要調査段階における設計・性能評価手法の高度化のうち、母岩の適性を評価する方法の検討を進めた。具体的には、母岩の特性として主に地下水移行時間に着目し、概要調査で得られる情報量を考慮して様々なモデル構築方法、解析方法を整理した評価ツリーを構築した。
柴田 雅博; 澤田 淳; 舘 幸男; 稲垣 学*; 黒澤 進*; 後藤 淳一*; 澁谷 早苗*
no journal, ,
原子力発電環境整備機構と原子力機構は、2011年度2013年度の3か年において、概要調査段階において、処分場を設置する候補母岩を選定して処分場の概念設計を行う点、予備的な安全評価を行う点から、(1)水理の観点からみた母岩の適性を評価する方法、(2)シナリオ開発手法、(3)核種移行パラメータ設定方法をテーマとした共同研究を実施した。本件はその全体概要について報告する。
澤田 淳; 早野 明; 後藤 淳一*; 稲垣 学*
no journal, ,
母岩は、熱環境,水理場,力学場,化学環境等の処分場の設置環境の観点、および岩体の広がりや工程・経済性等、事業の成立性の観点からその適性の評価により選定する。その適性を評価するための具体的な項目の検討として、本検討では水理の観点に着目して、母岩としての適性を評価するための方法を整理した。水理の観点からみた母岩としての適性を評価するための項目として、地下水移行時間について、概要調査で得られる情報量の違いを考慮に入れた母岩の適性を評価するための方法をとりまとめてツリー構造で整理した。
稲垣 厚至*; 小野寺 直幸; 神田 学*; 青木 尊之*
no journal, ,
都市大気環境はマルチスケールの現象であるため、高解像度および広域の計算を実施する必要がある。本研究では、GPUスーパーコンピュータであるTSUBAMEを用いたラージエディ・シミュレーション手法を用いて都市大気境界層を解析することを実現した。統計量として、都市キャノピー内の値を比較することで、解析手法の妥当性を示す。
相馬 康孝; 小松 篤史; 上野 文義; 稲垣 博光*
no journal, ,
高温水中におけるステンレス鋼すき間内の溶液環境を知ることは、応力腐食割れ(SCC)のメカニズムを解明する上で重要である。われわれはこれまでに、溶存酸素を含む高温水中に浸漬したステンレス鋼のすき間内においては、すき間外(バルク水)が高純度水であっても、すき間内溶液の導電率(crev)がバルク水のそれよりも最大で2桁以上大きい値を示すことを報告した。すき間内溶液導電率が大きく上昇することは、き裂先端部のアノード溶解挙動を、外界とのガルバニックカップリングの観点から理解する上で重要である。しかしながら、高純度水中において
crevが上昇するメカニズムは明らかではない。そこで本研究では、外部環境因子として、バルク水の導電率と溶存酸素濃度を変化させ、
crevの応答挙動を分析することにより
crevの上昇メカニズムを考察した。温度288
Cの高温高圧水中におけるSUS316Lステンレス鋼のすき間内溶液導電率(
crev)のDO濃度変動に対する応答挙動を、バルク水が純水および薬液添加状態で分析した結果、以下の結論が得られた。(1)
crevは低DO濃度域(300ppb程度以下)では電位と共に上昇し、電位が
crev上昇の駆動力と考えられた。一方、それ以上の高DO域では電位に対して単調増加とはならなかった。(2)
crevの最大値はバルク水の導電率に関わらず、ほぼ一定値を示したことから、すき間内環境は何らかの平衡反応で決定されていると推測された。(3)バルク水が高純度の場合、DO濃度の上昇により
crevはすき間の奥行きに依存せずほぼ同時に上昇した。このことから、鋼材そのものがアニオン源として寄与する可能性が推測された。