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論文

下北沖海域における海洋中放射性核種移行予測システムの構築とケーススタディ

小林 卓也; 印 貞治*; 石川 洋一*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 中山 智治*; 淡路 敏之*; 川村 英之; 外川 織彦

日本原子力学会和文論文誌, 7(2), p.112 - 126, 2008/06

下北沖海域における使用済燃料再処理施設の平常時及び異常時に海洋へ放出される放射性核種の移行を予測する海況予測システムを開発した。開発されたシステムのケーススタディを実施した結果、下記の結論が得られた。(1)沿岸域の海況予報は、海洋大循環モデルにデータ同化手法とネスティング手法を用いることにより、十分実用に耐えられるレベルに到達した。(2)$$^{3}$$Hの仮想放出計算から海産物摂取による最大個人線量を推定したところ、0.45$$mu$$Sv/yであった。この値は一般公衆の線量限度よりも十分低い値である。(3)吸脱着モデルを用いた$$^{137}$$Csの仮想放出計算の結果、60日間の計算期間では海底に堆積する$$^{137}$$Csは全体の約4%であった。今回の仮想放出計算による$$^{137}$$Cs濃度は、当該海域で測定されたグローバルフォールアウトと同程度以下であった。

論文

The Oceanic forecasting system near the Shimokita Peninsula, Japan

印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦; 豊田 隆寛*

Proceedings of International Symposium on Environmental Modeling and Radioecology, p.58 - 64, 2007/03

下北半島沖の太平洋北西部は複雑な水塊構造を成している。海況予報システムを構築するためには、海水循環モデルを使用してこの海域の循環や水塊構造を正確に再現する必要がある。そのため、ネスティング手法を適用してきた。また、海況場の計算結果を初期化するために四次元変分法を使用してデータ同化を適用している。データ同化用のデータは、GTSPPと呼ばれるプロジェクトで得られた現場観測データと人工衛星による海面水温・海面高度データである。2003年に行われた観測データと同時期の計算結果を比較したところ、海況予報システムが高い性能を持つことが確認された。特に、下北半島沖の沿岸モード・渦モードと呼ばれる流れや両モード間の移行過程がよく再現されることがわかった。

口頭

六ヶ所沖現況解析・海況予報システムの構築について,4; 2003年ハインドキャスト実験

印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦; 豊田 隆寛*

no journal, , 

下北半島沖の太平洋における放射性核種の移行を短期(1$$sim$$2週間)程度の時間スケールで予測することを目的とした六ケ所沖現況解析・海況予報システムの開発を進めている。本システムで用いる沿岸域を対象とした六ケ所沖海域モデルの検証を行った。対象期間は2003年とし、計算値と観測値を比較したところ、本システムが目的に対して十分な計算精度を持つことを確認した。

口頭

六ヶ所村沖合海況予測システムを用いた津軽暖水の季節変動の再現

印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦

no journal, , 

本研究では、六ヶ所村沖合海況予測システムを構成する京都大学で開発された海洋大循環モデルの検証を行う。本システムでは、第一段階として太平洋北西部に対して四次元変分法を用いて初期条件を推定し、海況予測を行う。水平解像度は東西1/6度,南北1/8度である。これに二段階のネスティング手法を用いて高解像度化し、最終的には東北沖と北海道南岸を含む海域を東西1/54度,南北1/72度のモデルで計算を行う。この海域は、津軽海峡から流出した津軽暖水が夏季から秋季にかけて渦を形成し、一方冬季から春季には岸沿いに南下することが知られている。モデルの計算結果で水深200mの水温8$$^{circ}$$C以上の水温域を津軽暖水の指標とし、その面積の季節変化を解析したところ、渦モードから沿岸モードへの移行過程と沿岸モードから渦モードへの移行過程がよく再現されていることが確認された。また、夏季には親潮水がこの海域に流入して強い南下流を形成することがわかった。

口頭

SEA-GEARNによるビキニ環礁周辺における核実験の北太平洋への影響の試計算

松浦 康孝*; 中山 智治*; 印 貞治*; 賀佐 信一*; 島 茂樹*; 小林 卓也; 外川 織彦; 石川 洋一*; 淡路 敏之*

no journal, , 

海洋での放射性核種の挙動を明らかにすることを目的として、京都大学が開発した海水循環モデル及び日本原子力研究開発機構が開発した核種移行予測モデルSEA-GEARNを使用し、これらのモデルの性能確認を行っている。このシステムの性能を検証するために、北太平洋で行われた大気圏核実験の影響について、$$^{137}$$Csを対象に海洋での放射性核種の拡散計算を行い、その計算結果と観測値との比較を実施した。

口頭

Nowcasting/forecasting system of the ocean circulation off Rokkasho village

印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦

no journal, , 

発表者らにより、本州北部に位置する六ヶ所村沿岸域を対象とした海況予報・現況解析システムが開発されてきた。地形の影響を受けて、この海域の海洋循環は非常に複雑である。過去の海洋観測により、この付近の海洋循環は二つのモードにより季節変化することが明らかになっている。一つは冬季に日本沿岸に沿って南下する沿岸モードであり、もう一つは夏季に時計周りの循環を形成する渦モードである。このような複雑な海洋循環を示す海域に対して正確な海況予報・現況解析をするうえで、高解像度の四次元変分法の使用を可能にするダウンスケーリングは非常に有効である。数値実験の結果、高解像度の四次元変分法を適用した海況予報・現況解析システムは過去に観測された沿岸・渦モードをよく再現することに成功した。

口頭

核燃料物質等の輸送における表面密度限度値の見直し検討,1-2; 核種ごとの危険度を取り入れた表面汚染限度値の検討

宗像 雅広; 手塚 広子*; 横山 直美*; 松浦 康孝*

no journal, , 

放射性物質輸送物の表面汚染による被ばくに関して、輸送の実態調査に基づいた被ばくシナリオ及び解析評価モデルを検討し構築するとともに、構築したモデルを用いて表面汚染に基づく被ばく線量値に対する検討を行った。

口頭

The Oceanic forecasting system near the Shimokita Peninsula, Japan

印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 石川 洋一*; 淡路 敏之*; 小林 卓也; 川村 英之; 外川 織彦; 豊田 隆寛*

no journal, , 

本州北端に位置する下北半島周辺海域は高温高塩分の海水が日本海から津軽海峡を通過して低温の親潮と混合し、複雑な海洋構造が観測されている。また本海域では日本海を起源とする津軽暖水の季節変動により、津軽暖水が冬から春の季節は沿岸に沿って南下(沿岸モード)し、夏から秋の季節は半島沖で時計回りの循環流を形成する(渦モード)。下北半島周辺海域の海況予報システムを開発するためには、このような水塊構造を数値モデルで詳細に再現することが必要である。そこで1-2km程度の詳細水平格子及び4次元変分法を用いたデータ同化手法を用いて2003年における対象海域の予報計算を実施した(現況再現実験)ところ、良好な再現結果を得た。

口頭

核燃料物質等の輸送における表面密度限度値の見直し検討,2-2; 核種ごとの危険度を取り入れた表面汚染限度値の検討

宗像 雅広; 手塚 広子*; 松浦 康孝*

no journal, , 

TECDOC-1449では、放射性物質の輸送における輸送物非固定性表面汚染からの被ばく線量を49核種に対して評価した。本検討は、日本における輸送の実態調査に基づく合理的な被ばく評価モデルによる表面密度限度値の導出を行い、TECDOC-1449のモデル評価値と比較して限度値適用時の留意点を検討した。その結果、TECDOC-1449のモデルから試算された最も厳しいAc-227の限度値は0.03Bq/cm$$^{2}$$となり、本検討での値(0.63Bq/cm$$^{2}$$)に比べ1桁程度小さい値を示している。これはTECDOC-1449のモデルが、表面に付着した核種の全量が吸入被ばくに寄与する等の保守的な仮定を用いているためと考えられる。本検討においては、表面汚染物質のはく離割合を考慮した吸入被ばくシナリオを設定して評価したところ、吸入被ばくが決定経路となる核種において、TECDOC-1449のモデルから算出された限度値に比べおおむね大きな値を示した。このことから、TECDOC-1449のモデルからの限度値の算出とその基準への適用時にはその保守性に対するより詳細な検討が必要であることが示唆される。

口頭

六ヶ所沖現況解析・海況予報システムの構築について,3; 北西太平洋データ同化システム

石川 洋一*; 淡路 敏之*; 印 貞治*; 中山 智治*; 松浦 康孝*; 島 茂樹*; 豊田 隆寛*; 小林 卓也; 外川 織彦; 川村 英之

no journal, , 

本研究は、六ヶ所沖現況解析・海況予報システムを開発し、下北半島沖における放射性核種の移行を数週間程度の時間スケールで予報することを目的としている。本発表では、このシステムを構成する要素の一つである北西太平洋域の循環場を現況解析・海況予報するためのデータ同化システムについて紹介する。本研究で用いたデータ同化手法は、4D-VAR(adjoint法)である。海水循環モデルの水平分解能は東西方向・南北方向に各々1/6$$^{circ}$$$$cdot$$1/8$$^{circ}$$であり、鉛直分解能は最深部で78層とした。数値モデルに同化する観測データは、海面水温データ(東北大学 NGSST)・海面高度データ(AVISO NRT-MADT)・現場観測データ(NOAA GTSPP)を用いた。数値計算は、2003年2月7日から観測データを同化して解析場を求めた。2003年4月の計算結果と観測結果を比較すると、データ同化により親潮の南下等の海況場が現実的に再現されることが確認された。下北半島沖の循環場は津軽暖流によっても大きな影響を受けることから、太平洋の循環場だけでなく、日本海の循環場を現実的に再現することが重要である。また、データ同化により観測で見られるような中規模渦が確認されたが、その発生場所は観測結果とは多少異なるという問題点も見られた。このことは、最適化がまだ十分に行われていないことが原因の一つであると考えられる。今後、同化実験を進めていけば、より精度の高い計算が可能であると期待される。

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