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Buesseler, K. O.*; German, C. R.*; 本多 牧生*; 乙坂 重嘉; Black, E. E.*; 川上 創*; Manganini, S. M.*; Pike, S.*
Environmental Science & Technology, 49(16), p.9807 - 9816, 2015/08
被引用回数:22 パーセンタイル:53.79(Engineering, Environmental)福島第一原子力発電所の115km南東の沖合の定点において、水深500m(上層)と1000m(下層)の2層にセジメントトラップを設置し、3年間にわたって沈降粒子を採取した。採取した沈降粒子は主に鉱物で構成されており、沈降粒子の多くは定点周辺の陸棚域の海底を起源としていると推測された。沈降粒子中のCs/Pb比を福島周辺海域の堆積物の値と比較した結果、沈降粒子は水深120m以浅の陸棚上部と500m以深の陸棚斜面の2種類の堆積物で構成していることがわかった。本研究で観測した沈降粒子による放射性Csの輸送量は、同原子力発電所の100km東で観測した先行研究での値に比べて一桁高かった。この観測点による違いは、放射性Csを沈着した陸棚堆積物が、南東向きの底層流によって沖合へと運ばれたためと推測された。ただし、この陸棚-沖合間の放射性Csの水平輸送量は、陸棚上の堆積物中に存在する放射性Csのごく一部であることから、この過程が福島第一原子力発電所周辺の海底における放射性Csの蓄積量を急速に減少させる能力は低いと考えられる。
Sanial, V.*; Buesseler, K. O.*; Charette, M.*; Casacuberta, N.*; Castrillejo, M.*; Henderson, P.*; Juan Diaz, X.*; 神田 譲太*; Masque, P.*; 長尾 誠也*; et al.
no journal, ,
福島第一原子力発電所事故の事故後の一年間で、福島沿岸の海水中の放射性セシウム濃度は数桁に亘って減少したものの、5年経過した現在においても、事故前に比べて高いレベルを維持している。本研究では、2015年10月に福島沿岸及び海底地下水中の放射性セシウムの分布を調査した。最も高い放射性セシウム濃度は、海水ではなく、福島第一原発から35km南の地下水から検出された。これは、事故直後に海底堆積物に蓄積した放射性セシウムが、地下水流動によって脱離したためと推察された。海底地下水の流出は、陸-海洋間の化学物質の重要な輸送経路であることが知られており、福島第一原発由来の放射性核種の輸送経路としても無視できないと考えられる。
Kenyon, J.*; Buesseler, K. O.*; Casacuberta, N.*; Castrillejo, M.*; 乙坂 重嘉; Drysdale, J.*; Pike, S.*; Juan Diaz, X.*
no journal, ,
福島周辺海域における表層海水中のCs/Sr濃度比から、これらの放射性核種の供給源や供給割合について議論する。事故以前の表層海水中のCs/Sr放射能比は1.6で、1960年代の核実験によるフォールアウトの影響を受けていた。このCs/Srは、事故直後に391まで上昇した。これらの2つの値を主要な供給源の情報とし、その後の議論に用いることとした。2011年から2016年にかけて、海水中の事故由来放射性核種濃度は減少を続けたが、福島第一原子力発電所施設の近傍では、2016年においても事故前に比べてやや高い濃度が観測された。なお沖合海域では、事故前に比べて有意に高い濃度およびCs/Sr比は、2016年の観測では観測されなかった。上記の結果から、これらの放射性核種は、福島第一原子力発電所施設からごくわずかずつ海洋に流出していると推測されるが、その流出率は十分に低いレベルにあると言える。
Buesseler, K. O.*; German, C. R.*; 本多 牧生*; 乙坂 重嘉; Black, E. E.*; 川上 創*; Manganini, S. M.*; Pike, S.*
no journal, ,
2011年7月から2014年6月までの約3年間、福島第一原子力発電所の南東沖115kmの地点(海底水深1300m)の500m層と1000m層に時系列式セジメントトラップを設置して沈降粒子を捕集し、捕集粒子中の放射性セシウム(CsおよびCs)を測定した。観測されたCsフラックスの季節変動が、海洋表層の生物活動の季節変動とは異なることや、捕集粒子の主要成分は鉱物起源物質であること等から、捕集されたCsは、海洋表層から鉛直的に沈降したものに加え、底層を水平的に移動したものを多く含むと推測された。捕集粒子のCsと鉛-210の比(Cs/Pb)から、事故由来の放射性セシウムが吸着した福島周辺の陸棚堆積物の一部が、冬季や荒天時に再懸濁して沖合へと運ばれたことが示唆された。特に、2013年秋季に観測されたCsフラックスの増加は、福島沖を通過した複数の台風の影響によるものと推定された。福島沿岸の海底に蓄積した事故由来の放射性セシウムが、再懸濁によってどの程度外洋へ水平輸送されていくのかについて、継続的な調査が必要である。