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北条 公伸*; 廣田 貴俊*; 名越 康人*; 深堀 拓也*; 清水 万真*; 下平 昌樹; 小川 琢矢*; 八代醍 健志*; 大畑 充*; 南 二三吉*
Proceedings of ASME 2024 Pressure Vessels & Piping Conference (PVP 2024) (Internet), 9 Pages, 2024/07
加圧熱衝撃事象における延性-脆性遷移温度域の原子炉圧力容器の破壊挙動を予測するため、日本溶接協会規格(WES)として塑性拘束補正係数を導入した評価手法の策定を目指している。WESでは当該評価手法として、簡易法と詳細法の2種類を定める予定である。簡易法による塑性拘束補正係数
の算出では、材料の降伏応力、降伏比、ワイブル形状母数をパラメータとした式を用いる。また、塑性拘束補正係数
は評価対象の欠陥寸法や構造物の板厚にも依存する。本研究では、様々な原子炉圧力容器を対象として簡易法による塑性拘束補正係数
を求めるため、構造物の板厚や亀裂寸法、降伏比やワイブル形状母数を変化させた感度解析を実施した。また、加圧熱衝撃事象は温度変化を伴う事象であることから、ワイブル形状母数等の温度依存性に関する検討も行った。
下平 昌樹; 山口 義仁; 岩田 景子; 勝山 仁哉; 知見 康弘
Proceedings of ASME 2024 Pressure Vessels & Piping Conference (PVP 2024) (Internet), 10 Pages, 2024/07
日本電気協会規格(JEAC)4206では、加圧熱衝撃事象時の原子炉圧力容器(RPV)の非延性破壊を防止するため、材料の破壊靭性が亀裂先端に生じる応力拡大係数を上回ることが要求されている。破壊靭性は、通常板幅に対して深い亀裂を有するコンパクトテンション(C(T))試験片を用いて評価されるのに対して、応力拡大係数はRPVの板厚に対して浅いステンレスオーバーレイクラッド(クラッド)下亀裂を想定して算出される。さらに、破壊靭性試験は単軸荷重によって行われるのに対して、RPVの想定亀裂には熱応力及び内圧による二軸の荷重が負荷される。このような亀裂深さやクラッドの有無、荷重負荷条件の違いは、亀裂先端の塑性拘束状態を変化させ、破壊靭性値評価に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、現行のRPVの構造健全性評価手法の保守性を定量的に評価するため、クラッド下亀裂を有する大型試験体を用いた多軸破壊試験を計画している。本報告では、多軸破壊試験の実施に向けた試験体形状や荷重負荷方法の検討内容及び当該試験の参照データとなる予備試験結果について報告する。予備試験では、亀裂の深さや形状を変えた試験体を用いた破壊試験を行い、浅い亀裂を有する試験体ではC(T)試験片に比べて破壊靭性値が高めに評価されることを示した。さらに、亀裂先端の拘束状態に依存せずに破壊靭性値を予測可能なローカルアプローチを用いて多軸試験体で得られる破壊靭性値の予測を行った。その結果、多軸試験体で得られる破壊靭性値は、JEAC4206に基づいて設定される破壊靭性遷移曲線に対して、十分な裕度を有することを示した。
河 侑成; 下平 昌樹; 勝山 仁哉
Transactions of the 27th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT 27) (Internet), 7 Pages, 2024/03
国内の原子炉圧力容器(RPV)の溶接継手熱影響部(継手HAZ)は監視試験対象部位である。継手HAZ内には非均質に金属組織が分布し、破壊靭性のばらつきが大きいと考えられるものの、HAZ試験片の採取位置における金属組織の違いが機械的特性及び照射脆化感受性に及ぼす影響は詳細に調べられていなかった。本研究では継手HAZの非均質な組織に着目し、まず未照射材について溶接金属と母材の境界からの距離に応じて3箇所(0.5mm, 1mm及び2mm)の継手HAZ、及び母材から採取した微小試験片(Mini-C(T)試験片)を用いて破壊靭性を評価した。その結果、HAZの破壊靭性は母材と比べてばらつきが大きく、特に溶接金属と母材の境界から0.5mmのHAZにおいて破壊靭性のばらつきが最も大きい傾向を示した。HAZに対する破壊靭性参照温度は採取した3箇所の中で有意な差が得られたものの、いずれの破壊靭性参照温度も母材より低く、破壊靭性値が高いことを確認した。本研究結果により、未照射状態では母材が継手HAZを代表して破壊靭性を保守的に評価できることを確認した。
名越 康人*; 深堀 拓也*; 岡田 裕*; 高橋 昭如*; 下平 昌樹; 上田 貴志*; 小川 琢矢*; 八代醍 健志*; 高橋 由紀夫*; 大畑 充*
Transactions of the 27th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT 27) (Internet), 9 Pages, 2024/03
日本溶接協会CAF小委員会では、塑性拘束効果を考慮した破壊評価手法ガイドラインの策定を目指している。この評価手法では、脆性破壊を評価するためのBereminモデルと延性亀裂成長を評価するためのGTNモデルを用いる。そこで、これらの評価モデルの適用性を検証するため、CAF小委員会の参加機関によるベンチマーク解析が行われた。ベンチマーク解析は、各機関が有する有限要素解析コードを用い、2種類の低合金鋼(A及びB)の破壊試験に対して実施されてきた。本発表では、低合金鋼Bに対する解析結果を報告する。Bereminモデルにおいて、一般的なワイブル形状母数( = 10, 20, 30)を用いた場合、各機関で計算されたワイブル応力が概ね一致することを確認した。また、Toughness Scaling Modelに基づいて、塑性拘束度が異なる2種類の試験片を用いてワイブル形状母数
を算出した。算出されたワイブル形状母数
は解析機関によりばらつきはあったものの、最終的に算出されるワイブル応力は一致することを確認した。GTNモデルに関して、評価に用いるパラメータを1T-C(T)試験片の室温での荷重-変位関係に基づいて最適化した。最適化されたパラメータを用いてGTNモデルに基づき評価されたJ-R曲線が各機関で一致することを確認した。
下平 昌樹; 河 侑成; 高見澤 悠; 勝山 仁哉; 鬼沢 邦雄
Proceedings of ASME 2023 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2023) (Internet), 11 Pages, 2023/07
最新の原子炉圧力容器の構造健全性評価においては、マスターカーブ法に基づく正確な破壊靭性参照温度Tの取得が必要である。破壊靭性参照温度T
はMini-C(T)破壊靭性試験片によって取得可能であり、この試験片の寸法や初期亀裂形状に関しては、ASTM規格のE1921や日本電気協会電気技術規程JEAC4216に規定されている。最近、ASTM E1921では評価の正確性や試験を行う上での利便性を向上させるために、何度か予亀裂形状に関する規定の変更が行われてきた。このような規格の改定に伴うMini-C(T)試験片の許容予亀裂形状の変化は、予亀裂先端の塑性拘束状態を変化させ、T
評価に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、ASTM E1921やJEAC4216に規定される予亀裂形状に関する要求の妥当性について議論するため、Mini-C(T)試験片の予亀裂湾曲が破壊靭性評価に及ぼす影響について、ワイブル応力解析を含む有限要素解析によって定量的に評価した。その結果、ASTM E1921-21で定められた最大湾曲を有する亀裂形状の場合、亀裂先端の塑性拘束が弱められ、理想的な直線状亀裂を有するMini-C(T)試験片で得られる破壊靭性値に比べて高めの破壊靭性値が得られる可能性を示した。また、上述の最大湾曲を許容した場合、非保守的なT
が取得されることをワイブル応力解析によって示した。一方、JEAC4216で許容される最大湾曲を有する亀裂形状の場合は、理想的な直線状亀裂の場合と比べてT
の有意な差は見られなかった。
吉田 健太*; 外山 健*; 井上 耕治*; 永井 康介*; 下平 昌樹
まてりあ, 62(3), p.154 - 158, 2023/03
原子炉圧力容器(RPV)の中性子照射脆化因子の一つである直径3nm程度の微細な転位ループを高精度に分析するために開発したウィークビーム走査透過型電子顕微鏡(WB-STEM)に関する解説を行うとともに、当該手法と3次元アトムプローブ法(APT)及び陽電子消滅法(PAS)を組み合わせた最先端の照射脆化研究について紹介する。WB-STEMは材料内部に存在する特定の格子欠陥に対して最適な電子線の収束角及び検出角を設定することによって、従来透過型電子顕微鏡での観察が困難であった微細な転位ループの定量評価を可能にする手法である。この手法を用いて10n/m
程度の低照射量から10
n/m
を上回る高照射量まで複数照射量条件で照射された欧州加圧水型軽水炉の監視試験片中の転位ループを分析し、APTやPASで分析した溶質原子クラスターとの比較を行った。その結果、8.2
10
n/m
から1.2
10
n/m
の高照射量領域において転位ループの数密度が顕著に増加することを明らかにした。また、測定された転位ループ及び溶質原子クラスターの数密度や寸法からモデル式に基づいて、これら微細組織の脆化への寄与を評価し、高照射量領域において転位ループが脆化に大きく寄与する可能性を示した。
下平 昌樹; 飛田 徹; 高見澤 悠; 勝山 仁哉; 塙 悟史
Journal of Pressure Vessel Technology, 144(1), p.011304_1 - 011304_7, 2022/02
被引用回数:1 パーセンタイル:10.11(Engineering, Mechanical)JEAC4206-2016における原子炉圧力容器の構造健全性評価では、材料の破壊靭性が、想定欠陥であるクラッド下半楕円亀裂の先端における応力拡大係数よりも高いことが求められている。しかしながら、破壊靭性試験片と想定亀裂の亀裂深さやクラッドの有無といった違いにより、塑性拘束状態や破壊靭性評価に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、クラッド下亀裂が破壊靭性評価に及ぼす影響を調べるため、3点曲げ破壊靭性試験及び有限要素解析を実施した。その結果、クラッド下亀裂の塑性拘束が表面亀裂のそれに比べて弱いことを解析によって示した。さらに、クラッド下亀裂の弱い塑性拘束の影響により、クラッド下亀裂の破壊靭性が表面亀裂よりも見かけ上高くなることを実験及びローカルアプローチによって明らかにした。
岩田 景子; 高見澤 悠; 河 侑成; 下平 昌樹; 岡本 芳浩; 本田 充紀; 勝山 仁哉; 西山 裕孝
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 511, p.143 - 152, 2022/01
被引用回数:2 パーセンタイル:35.55(Instruments & Instrumentation)The main causes of the irradiation embrittlement of RPVs are the formation of a solute cluster and the matrix defect. To investigate these embrittlement mechanisms, it is necessary to complementarily apply microstructure analyses. The extended X-ray absorption fine structure (EXAFS) technique can detect changes in the atomic structure because of a vacancy-type defect or interstitial atoms introduced by irradiation around selected atoms. In this study, to investigate such microstructural changes due to irradiation, we performed an EXAFS examination for high-copper RPV steels subjected to ion irradiation. We investigated microstructures of the crystal structure around specific element such as Cu, Mn, and Ni, which are known to be the atoms included in the solute atom clusters and lattice defects such as vacancy-type defects. The results indicated that the solute atoms clusteris thought to aggregate in the Fe matrix while maintaining the bcc structure and that not only a vacancy-type defect but also a tensile configuration-type dumbbell pair could be located around both Cu and Ni atoms.
下平 昌樹; 飛田 徹; 名越 康人*; Lu, K.; 勝山 仁哉
Proceedings of ASME 2021 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2021) (Internet), 8 Pages, 2021/07
JEAC4206-2016における原子炉圧力容器の構造健全性評価では、材料の破壊靭性が、想定欠陥であるクラッド下半楕円亀裂の先端における応力拡大係数よりも高いことが求められている。しかしながら、破壊靭性試験片と想定亀裂の亀裂深さやクラッドの有無といった違いにより、塑性拘束状態や破壊靭性評価に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、半楕円亀裂に対する拘束効果やクラッドが破壊靭性評価に及ぼす影響を調べるため、4点曲げ破壊靭性試験及び有限要素解析を実施した。その結果、半楕円亀裂最深点における見かけの破壊靭性がマスターカーブ法に基づく5%信頼下限を上回り、現行評価手法が保守性を有することを確認した。半楕円亀裂における破壊の起点は亀裂最深点だけでなく試験体表面近傍にも観察された。有限要素解析の結果、半楕円亀裂における塑性拘束は亀裂最深点に比べて表面近傍で弱くなっていることが分かった。また、表面亀裂の場合に比べてクラッド下亀裂の場合には塑性拘束が弱められ、その弱い拘束の影響によりクラッド下亀裂の見かけの破壊靭性が表面亀裂のそれよりも高くなることがローカルアプローチによって示唆された。
河 侑成; 下平 昌樹; 高見澤 悠; 飛田 徹; 勝山 仁哉; 西山 裕孝
Proceedings of ASME 2021 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2021) (Internet), 6 Pages, 2021/07
The semi-elliptical crack sized 10 mm in depth 60 mm in length shall be postulated near the inner surface of a reactor pressure vessel (RPV) in pressurized thermal shock events. We investigated the fracture toughness distribution in the postulated crack area under the PTS events of unirradiated and highly-neutron irradiated RPV steels. Vickers hardness in heat-affected zone (HAZ) due to stainless overlay cladding and 10 mm from the cladding were higher than that of a quarter thickness position, where the surveillance specimens are machined, for both unirradiated (E1) and irradiated (up to 1
10
n/cm
, WIM) materials. Fracture toughness of HAZ and 10 mm from the cladding was higher for the above highly-neutron irradiated material. The same result was obtained in the unirradiated material. Therefore, it was confirmed that fracture toughness obtained from surveillance specimens can provide conservative assessment of structural integrity of RPV.
下平 昌樹; 飛田 徹; 高見澤 悠; 勝山 仁哉; 塙 悟史
Proceedings of ASME 2020 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2020) (Internet), 7 Pages, 2020/08
JEAC4206「原子炉圧力容器に対する供用期間中の破壊靭性の確認方法」では、加圧熱衝撃事象時の原子炉圧力容器(RPV)の健全性評価において、原子炉圧力容器内面のステンレスオーバーレイクラッド(クラッド)下亀裂(UCC)を想定し、亀裂先端の応力拡大係数がRPV鋼の破壊靭性値を上回らないことを定めている。本研究では、クラッドの存在が破壊靭性値に与える影響を評価することを目的に、UCCまたは表面亀裂を有する試験体を用いた3点曲げ破壊靭性試験と有限要素解析(FEA)を行い、UCCに対する塑性拘束効果の影響を調べた。その結果、UCCの破壊靭性値が表面亀裂に比べて高いことを実験的に示した。また、有限要素解析により、クラッドの存在によりUCCの塑性拘束効果が弱められることを示した。
河 侑成; 下平 昌樹; 飛田 徹; 塙 悟史; 山崎 翔太*; 宇野 定則*
2018年度量子科学技術研究開発機構施設共用実施報告書(インターネット), 3 Pages, 2019/09
原子炉圧力容器の母材の内表面から約10mm深さの範囲に生じるステンレスオーバーレイクラッド下溶接熱影響部の照射脆化感受性を調査するための電子線照射試験の準備として、原子炉圧力容器鋼の実機環境相当である290Cを目標とした照射温度の制御実験を実施した。冷却装置や試料固定治具の製作等を行い、電子線照射時の電流値による試料の発熱と熱伝導による冷却のバランスを調整し、照射温度を290
Cに制御する条件を調べた。その結果、適切な厚さのステンレススペーサーの使用により、290.6
C
4.7
C範囲で照射温度を制御できることを確認した。
下平 昌樹; 河 侑成; 高見澤 悠; 瀬戸 仁史*; 勝山 仁哉
no journal, ,
原子炉圧力容器(RPV)の中性子照射脆化に関して、国内脆化予測法は、シャルピー衝撃試験で取得された延性脆性遷移温度移行量や微細組織分析結果に基づいて策定されている。RPVにはステンレスオーバーレイクラッド(クラッド)溶接や継手溶接施工に伴う入熱により母材と異なる金属組織を有する溶接熱影響部(HAZ)が形成されることが知られているが、HAZに対しても母材部と同じ脆化予測法を適用することとしている。本研究では、国内脆化予測法をHAZに適用することの妥当性を確認するため、照射脆化メカニズムの相違の有無を調べることを目的とし、LVR-15で9.810
n/cm
まで中性子照射されたRPV鋼の母材部及びHAZの微細組織分析を透過型電子顕微鏡(TEM)観察により実施した。TEMにより観察された転位ループや銅を中心とした溶質原子クラスタの数密度は、母材部及びHAZで顕著な違いが見られなかった。また、転位線と溶質原子クラスタの分布を比較した結果、転位線に沿って溶質原子クラスタが形成されている様子が観察された。
河 侑成; 下平 昌樹; 勝山 仁哉
no journal, ,
原子炉圧力容器(RPV)の健全性評価に関する国内の民間規格では、溶接熱影響部(HAZ)が一般的に母材と同等以上の破壊靭性を有することを理由に、脆化予測法に用いる対象部位として母材で代表できるとしている。本研究では、その妥当性確認に資するため、HAZの非均質な微細組織に着目し、圧延加工で製作されたRPV鋼を用い、溶接金属と母材の境界からの距離に応じて採取したHAZにおけるシャルピー衝撃特性及び破壊靭性の違いを調べた。その結果、いずれのHAZにおいても母材よりシャルピー吸収エネルギーから求めた延性脆性遷移温度が低く、破壊靭性が優れているものの、HAZのシャルピー吸収エネルギー及び破壊靭性値のばらつきが比較的大きい傾向を示すことが分かった。
端 邦樹; 岩田 景子; 下平 昌樹; 河 侑成; 高見澤 悠; 勝山 仁哉
no journal, ,
原子力機構・安全研究センター・材料評価研究グループでは、試験炉で照射した材料や軽水炉プラントで使用された実機材料等を活用し、安全上重要な機器の経年劣化(原子炉圧力容器(RPV)の照射脆化等)を対象に、長期運転や新検査制度等に資するため、脆化メカニズムから構造健全性評価までの総合的な研究を推進している。その一環として、RPVの健全性評価において母材の板厚1/4位置の破壊靭性を用いてRPVの健全性を評価することの保守性を確認するため、高照射量領域まで中性子照射されたRPV鋼を用いて、ステンレスオーバレイクラッド(クラッド)下10mm位置と板厚1/4位置の破壊靭性や硬さ、金属組織等の比較を行った。その結果、中性子照射前後において、クラッド下10mm位置の破壊靭性は母材の板厚1/4位置に比べて良好であり、現行の評価手法は保守的であることを確認した。
下平 昌樹; 河 侑成; 高見澤 悠; 外山 健*; Du, Y.*; 嶋田 雄介*; 吉田 健太*; 永井 康介*; 勝山 仁哉
no journal, ,
金属組織の違いが照射脆化感受性に及ぼす影響を調べるため、1970年代に運転を開始したプラントを模擬した銅含有量が高い原子炉圧力容器(RPV)鋼の溶接熱影響部(HAZ)及び母材部について、材料試験炉で中性子照射された材料を対象に、3次元アトムプローブ(APT)及び走査透過電子顕微鏡(STEM)により、溶質原子クラスタ及び転位ループの分析を実施した。APTを用いて異なる照射量ごとに溶質原子クラスタの数密度及び寸法を調べた結果、いずれの照射量でもHAZと母材部で顕著な違いは見られなかった。また、STEMにより中性子照射量が高い(約10n/cm
)試料中の転位ループを観察した結果、HAZと母材部で顕著な違いは見られなかった。以上の結果から、本研究で用いたRPV鋼において、HAZにおける母材部との金属組織の違いは、微細組織の性状に対してほとんど影響しないことが明らかになった。
下平 昌樹; 端 邦樹; 岩田 景子; 河 侑成; 笠原 茂樹; 勝山 仁哉
no journal, ,
材料評価研究グループでは、軽水炉の運転延長認可の判断や高経年化対策の技術的妥当性確認に資することを目的として、原子炉圧力容器や炉内構造物の材料劣化(照射脆化や応力腐食割れ)を対象に試験研究等を実施している。当グループで実施しているこれらの研究の概要について紹介するとともに、原子炉圧力容器を対象とした現行の健全性評価手法に対する保守性確認のため実施した実機規模の板厚の試験体を使った破壊力学評価に関する試験の最新の成果を報告する。
河 侑成; 下平 昌樹; 勝山 仁哉
no journal, ,
原子力圧力容器(RPV)の内表面クラッド下に生じる熱影響部(HAZ)は、溶接時の温度履歴の違いにより非均質な金属組織を呈する。照射硬化は、照射により生じる溶質原子クラスタ(クラスタ)と相関があることが知られているが、金属組織の違いがクラスタ生成・成長に係る素過程に及ぼす影響は明らかにされていない。そこで本研究では、金属組織の異なるRPV鋼のHAZや母材を対象に、クラスタ生成・成長に影響する照射損傷速度や弾き出し面積の異なるイオン照射と電子線照射を行った。その後、照射前後の試料に対してナノインデンター硬さ試験を行い、HAZの金属組織及び照射条件と硬さの関係を調べた。照射の有無,照射量や照射損傷速度によらず、細粒HAZは母材と粗粒HAZに比べて硬い結果となった。また、照射損傷速度が高い場合、同じ損傷量であっても、粗粒HAZ,細粒HAZ及び母材のいずれも照射損傷速度が低い場合に比べて硬さは低かった。
河 侑成; 下平 昌樹; 高見澤 悠; 勝山 仁哉; 永井 康介*
no journal, ,
原子炉圧力容器(RPV)の内表面には腐食抑制のためにステンレスオーバレイクラッド(クラッド)が施される。健全性評価においてRPVの内表面に想定される亀裂はクラッド下に生じる熱影響部(HAZ)に含まれるとともに、RPV内表面側ほど中性子照射量が高い。現行では、板厚1/4位置から採取される監視試験片を用いて評価が行われていることから、クラッド下の破壊靭性は当該位置より良好であることを確認する必要がある。本研究では、高照射領域(110
n/cm
)まで照射されたRPV鋼を用いてクラッド下の破壊靭性及び微細組織を確認した。具体的には、未照射及び高照射量領域まで照射されたRPV鋼を用いて板厚方向の各部位における破壊靭性分布を調べるとともに、HAZと母材に対してアトムプローブ分析を用いた微細組織観察を実施した。その結果、未照射及び照射材いずれの場合もクラッド下の内表面近傍が母材の板厚1/4位置より優れた破壊靭性を有することを確認した。照射材の内表面近傍のHAZや内表面から10mm及び17mm位置の母材に対するクラスタ分析の結果、現行の脆化予測法において重要なパラメータとなっているクラスタ体積率はいずれのHAZ組織においても17mm位置の母材と大きい違いが認められなかった。
岩田 景子; 河 侑成; 高見澤 悠; 下平 昌樹; 勝山 仁哉; 岡本 芳浩; 本田 充紀; 外山 健*; 西山 裕孝
no journal, ,
Feイオン及び中性子で照射された原子炉圧力容器(RPV)鋼を対象に、照射により生じる溶質原子クラスターの微子構造を調べるため、広域X線吸収微細構造(EXAFS)分析を実施した。イオン照射RPV鋼で確認されたEXAFSスペクトルの変化を検証するため、照射によって形成される欠陥構造を模擬した結晶構造モデルを構築し、そのモデルに対するEXAFSシミュレーションを実施した。実測スペクトルとシミュレーション結果の比較から、CuとNi原子には引張型配置の格子間原子あるいは空孔欠陥が隣接することが示唆された。中性子照射RPV鋼においてはスペクトル自体のノイズ検討が必須であるものの、Cu周辺構造が照射量とともに変化し、より多くの格子欠陥が導入されることが示唆された。