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端 邦樹; 漆原 あゆみ*; 山下 真一*; Lin, M.*; 室屋 裕佐*; 鹿園 直哉; 横谷 明徳; Fu, H.*; 勝村 庸介*
Journal of Radiation Research, 56(1), p.59 - 66, 2015/01
被引用回数:6 パーセンタイル:27.68(Biology)Reactions of edaravone (3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one) toward deoxyguanosine monophosphate (dGMP) hydroxyl radical adducts were investigated by pulse radiolysis technique. Edaravone was found to reduce the dGMP hydroxyl radical adducts through electron transfer reactions. The rate constants of the reactions were higher than 4 10
dm
mol
s
and similar to those of the reactions of ascorbic acid, which is a representative antioxidant. Yields of single-strand breaks, base lesions, and abasic sites produced in pUC18 plasmid DNA by
ray irradiation in the presence of low concentrations of edaravone were also quantified, and the chemical repair activity of edaravone was estimated by a method recently developed by the authors. By comparing suppression efficiencies to the induction of each DNA lesion, it was found that base lesions and abasic sites were suppressed by the chemical repair activity of edaravone, although the suppression of single-strand breaks was not very effective. This phenomenon is attributed to the chemical repair activity of edaravone toward base lesions and abasic sites. However, the chemical repair activity of edaravone for base lesions was lower than that of ascorbic acid.
漆原 あゆみ*; 児玉 靖司*; 横谷 明徳
Mutation Research; Genetic Toxicology And Environmental Mutagenesis, 766, p.29 - 34, 2014/05
被引用回数:14 パーセンタイル:41.96(Biotechnology & Applied Microbiology)Ionizing radiation induces genetic instability in the progeny of irradiated cells. Previous studies suggest that DNA double strand-breaks (DSBs) and subsequent repair processes are involved in the induction of genetic instability. Since it seems unlikely that DSBs persist trough several cycle of cell division, we hypothesize that some DNA lesions that remained after repair of DSBs is relevant to the induction of genetic instability. To elucidate whether genetic instability is induced by non-DSBs type of damage, particularly oxidative base lesions, we transferred irradiated chromosome into unirradiated recipient cells by microcell fusion. The transferred chromosomes were analyzed by whole chromosome painting fluorescence in situ hybridization (WCP-FISH). The microcell hybrids transferred with UV-A irradiated human chromosomes increased their ploidy. In addition, chromosome aberrations occurred not only in the UV-A irradiated human chromosome but also in the unirradiated mouse chromosomes, and the frequencies of these abnormalities were increased depending on the irradiation dose of transferred human chromosomes. These results suggest that the non-DSBs damage induced genetic instability.
鹿園 直哉; 赤松 憲; 高橋 桃子*; 野口 実穂; 漆原 あゆみ; O'Neill, P.*; 横谷 明徳
Mutation Research; Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis, 749(1-2), p.9 - 15, 2013/09
被引用回数:14 パーセンタイル:39.31(Biotechnology & Applied Microbiology)クラスターDNA損傷は、電離放射線によってDNAへリックス二回転中に二つ以上の損傷が生じるものである。クラスターDNA損傷がどの程度、また、どのように生物影響を及ぼすのかに関しては不明な点が多い。本研究では、鎖切断と脱塩基部位や8-oxo-7,8-dihydroguanine (8-oxoG)を含むクラスターDNA損傷を用い、大腸菌に形質転換し、形質転換効率及び突然変異頻度を調べた。鎖切断と脱塩基部位からなるクラスターDNA損傷の場合、鎖切断及び脱塩基部位がそれぞれ単独であった場合に対し、形質転換効率は大幅に低下することが明らかになった。損傷間の距離を離す(10-20bp)と、形質転換効率はDNA polymerase I(Pol I)の作用により回復した。一方、鎖切断と8-oxoGからなるクラスターDNA損傷の場合、クラスターDNA損傷による突然変異頻度はPol Iの働きによって低下することが明らかとなった。これらの結果は、クラスターDNA損傷による生物効果にPol Iが深く関与することを示している。
端 邦樹; 漆原 あゆみ; 山下 真一; 鹿園 直哉; 横谷 明徳; 勝村 庸介*
Biochemical and Biophysical Research Communications, 434(2), p.341 - 345, 2013/05
被引用回数:8 パーセンタイル:22.50(Biochemistry & Molecular Biology)In order to clarify whether ascorbic acid, which is a major antioxidant in living systems, chemically repairs radiation damage to DNA. We quantified the yields of base lesions, AP sites and single strand breaks (SSBs) produced in plasmid DNA by -irradiation in the presence of ascorbic acid with concentrations of 10-100
MM. By comparing the suppression efficiencies to the induction of each DNA lesion, it was found that ascorbic acid promotes the chemical repair of precursors of AP-sites and base lesions more effectively than those of single strand breaks. We estimated the efficiency of the chemical repair of each lesion using a kinetic model. Approximately 50-60% of base lesions and AP-sites were repaired by 10
M ascorbic acid, although strand breaks were largely unrepaired by ascorbic acid at low concentrations. The methods in this study will provide a route to understanding the mechanistic aspects of antioxidant activity in living systems.
野口 実穂; 漆原 あゆみ; 横谷 明徳; O'Neill, P.*; 鹿園 直哉
Mutation Research; Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis, 732(1-2), p.34 - 42, 2012/04
被引用回数:17 パーセンタイル:45.38(Biotechnology & Applied Microbiology)In vivoにおいて塩基損傷を伴った鎖切断の効果はいまだ多くが不明である。本研究においてわれわれは1ヌクレオチドgap(GAP)と8-oxoGから成るクラスターDNA損傷の突然変異誘発性について明らかにした。MutY欠損株において、GAPと8-oxoGの2つの損傷から成り、これらが相補鎖にまたがって存在するクラスター損傷の変異頻度は8-oxoGとAPサイトから成るクラスター損傷とほぼ同じ値を示したことから、クラスター損傷内において、GAPはAPサイトと同様に処理されることが示唆された。GAPと8-oxoGが同一鎖上に存在するクラスター損傷の変異頻度は8-oxoG単独損傷とほぼ等しい値であった。3つの損傷から成るクラスター損傷(GAPと8-oxoGが相補鎖、その同一鎖上にもう一つの8-oxoG)の変異頻度は8-oxoG単独損傷より高い値であったが、2つの8-oxoGが相補鎖にまたがって存在するクラスター損傷に比べて低い値であった。これらの結果から、クラスター損傷内にGAPが存在する場合、存在しない場合に比べて、8-oxoGの鋳型として向いに挿入されるヌクレオチドの変異誘発性が低くなることが示唆された。さらに、GAPの修復は相補鎖の8-oxoGにより阻害されるが、同一鎖の8-oxoGには阻害されないことが示唆され、GAPの修復が生物影響に大きく影響を与えることが示された。
横谷 明徳; 鹿園 直哉; 藤井 健太郎; 野口 実穂; 漆原 あゆみ
Radiation Protection Dosimetry, 143(2-4), p.219 - 225, 2011/02
被引用回数:3 パーセンタイル:24.79(Environmental Sciences)高LET放射線によりDNA上に多重1本鎖切断(m-SSBs)が生じることが予測されているが、これまでのプラスミドDNAをモデル分子として用いる手法ではその収率を過小評価してしまう可能性がある。なぜなら複数のSSBがDNAの同一鎖上あるいは2本鎖切断(DSB)にはならない程度離れた反対鎖上に生じた場合はこれを検出することができないためである。われわれはDNA変性を利用した新しいm-SSBsの検出法を開発してきた。この方法では、m-SSBsは1本鎖DNAの分子量変化として電気泳動法により定量される。今回X線及びHeイオンビームが照射された水和pUC18プラスミドDNA中に生じたm-SSBsを定量した。得られた結果は、実験の分解能の範囲内で(
140塩基)1本鎖DNAの半分は無傷で残っているというものであった。これは当初の予想に反し、高LET放射線照射であってもm-SSBs損傷は140塩基対を超えた領域には広がらないことを示唆している。
鹿園 直哉; 横谷 明徳; 漆原 あゆみ; 野口 実穂; 藤井 健太郎
Radiation Protection Dosimetry, 143(2-4), p.181 - 185, 2011/02
被引用回数:2 パーセンタイル:17.59(Environmental Sciences)Although it is widely accepted that the spatial distribution of strand breaks is highly relevant to the biological consequences of radiation, the extent to which strand breaks are clustered is not usually demonstrated directly from experimental data. To evaluate the spatial distribution of radiation-induced strand breaks, we have developed a model for the generation of strand breaks after irradiation. To find out whether the model is valid, we compared the calculated values to experimental data obtained by a plasmid DNA assay. Taking into account the inherent bias of the plasmid assay, the model described well the experimental results of hydrated plasmids exposed to radiation.
鹿園 直哉; 野口 実穂; 藤井 健太郎; 漆原 あゆみ*; 横谷 明徳
Journal of Radiation Research, 50(1), p.27 - 36, 2009/01
被引用回数:120 パーセンタイル:88.08(Biology)クラスターDNA損傷は、電離放射線照射により電離や励起が空間的に不均一に生じることに由来して、ある確率で多数のDNA損傷が局所的に密集(クラスター化)したものであり、二本鎖切断型と非二本鎖切断型に大別される。電離放射線によって生じる二本鎖切断は、細胞死や染色体異常といった生物学的なendpointに深く関連し生物学的に重要な損傷と考えられてきた。そのため、二本鎖切断の生成効率,修復効率さらには修復過程やシグナル伝達に至るまで、これまでに膨大な研究の蓄積がある。一方、非二本鎖切断型クラスターDNA損傷も生物効果が高いと考えられていたにもかかわらず、その検出が難しいことから研究がなかなか進まなかった。しかしながら、検出法の進展に伴い、近年研究が活発に行われてきている。非二本鎖切断型のクラスターDNA損傷が、(1)放射線によってどのくらい生成され、(2)どのようにプロセシングされるのか、(3)生物効果に関連するのか、という点に焦点を当てて研究の現状をまとめた。
横谷 明徳; 藤井 健太郎; 鹿園 直哉; 赤松 憲; 漆原 あゆみ; 渡辺 立子
International Journal of Radiation Biology, 84(12), p.1069 - 1081, 2008/12
被引用回数:12 パーセンタイル:60.21(Biology)われわれはこれまで軟X線を生体試料に照射することで、DNA損傷過程におけるオージェ効果の寄与の程度を調べてきた。生体中で特定元素が内殻光吸収すると、オージェ効果が誘起され、光電子やオージェ電子が放出される。これらの低エネルギー電子は、分子内・外の他の官能基をさらにイオン化あるいは励起するため、数nm程度の領域に損傷が集中するいわゆる「クラスターDNA損傷」が生じやすいと予測される。これまでに、60keV付近の軟X線が-rayに比べ極めて高頻度の塩基除去修復酵素により認識・除去される塩基損傷を誘発すること、より低エネルギー(数keV以下)の軟X線ではこの頻度が低下することからクラスター損傷の生成が起こっていることなどが示唆された。さらに放射光軟X線ビームラインに設置したEPR装置を用いて、DNAの損傷の前駆体であるラジカル過程を調べた結果についても合せて報告する。
横谷 明徳; 鹿園 直哉; 藤井 健太郎; 牛込 剛史*; 鈴木 雅雄*; 漆原 あゆみ; 渡辺 立子
Proceedings of the 27th Symposium on Materials Science and Engineering, Research Center of Ion Beam Technology Hosei University, 8 Pages, 2008/12
イオンビームが誘発する突然変異誘発などの生物影響は、DNA上の数ナノメートル程度の局所に生じるクラスター損傷であることが指摘されている。われわれは、クラスター損傷の修復阻害を調べるため、高水和状態のプラスミドDNAにイオンビーム(LET=20-500keV/m)を照射し、生じた1本鎖切断(SSB)と2本鎖切断(DSB)を定量するとともに、照射試料に対して実際の損傷塩基除去修復酵素を反応させ、損傷塩基の除去活性の阻害の程度を調べた。さらに、クラスター部位で多重に生じたSSBを検出するためにDNAの変性を利用する新しいアッセイ法を開発し、TIARAから得られるHeイオンを照射したDNAについて調べた。その結果、SSB収率はほとんどビームの性質に依存しなかったのに対してDSBはビームのLETに複雑に依存し、さらに塩基除去修復酵素の活性はLETの増大とともに劇的に減少した。一方、多重SSBはほとんど生じていないことがわかった。これらの結果は、クラスター損傷部位にはDSBが生成する場合を除き、SSBは多重には生成せず、一つのSSBと複数の塩基損傷あるいは塩基損傷のみで構成されていることが示唆された。
横谷 明徳; 鹿園 直哉; 藤井 健太郎; 漆原 あゆみ; 赤松 憲; 渡辺 立子
Radiation Physics and Chemistry, 77(10-12), p.1280 - 1285, 2008/10
被引用回数:61 パーセンタイル:95.62(Chemistry, Physical)電離放射線の生体への照射により細胞内のDNAに、放射線のエネルギーの直接付与(直接過程)及び拡散性の水ラジカルとの反応(間接効果)を通じて化学的変化(損傷)が生じる。このような損傷は、突然変異などの放射線生物照射効果を誘発する主要な原因の一つとされている。われわれのグループでは、まだ不明な点が数多くある直接効果に着目し、モデルDNA分子として選んだプラスミドDNAに照射したときの1本鎖切断,2本鎖切断及び塩基損傷の収率の放射線の線質依存性を調べた。特に塩基損傷については、塩基除去修復酵素をプローブとして用いて定量した。さらに損傷生成の詳細を調べるため、放射光軟X線ビームラインに設置したEPR装置を用いて短寿命の塩基ラジカルを測定した。これらの実験データを過去に報告されているデータと比較し、直接効果によるDNA損傷の生成機構について議論する。
漆原 あゆみ*; 鹿園 直哉; O'Neill, P.*; 藤井 健太郎; 和田 成一*; 横谷 明徳
International Journal of Radiation Biology, 84(1), p.23 - 33, 2008/01
被引用回数:45 パーセンタイル:92.19(Biology)放射線によりDNAに生じる複雑な損傷の実体を調べるため、水和プラスミドDNAにHe
イオンを照射した時の、1本鎖切断(SSB)、2本鎖切断(DSB)及び塩基損傷の収率を調べた。塩基損傷は塩基除去修復酵素処理により新たに生じるSSBとして定量した。その結果、放射線により直接生じる1本鎖切断の収率は
He
イオンのLETに依存しなかったが塩基損傷の収率はLETの増加に伴い劇的に減少することが明らかになった。さらにDSB及び酵素処理により生じるDSBの収率の和(総クラスター損傷収率)は、実験で利用した最大のLETを除き、LETの増加に伴って増加した。これらの結果から、放射線のイオン化・励起密度が増すに連れ、修復酵素が処理できない複雑なクラスター損傷の生成頻度が増大することが示唆された。
鹿園 直哉; 漆原 あゆみ; 藤井 健太郎; 横谷 明徳
放射線生物研究, 41(4), p.409 - 423, 2006/12
クラスターDNA損傷は、12ヘリカルターン(10-20bp)内に2個以上の損傷を生じたものとして定義され、二本鎖切断型と非二本鎖切断型に大別できる。電離放射線によって生じる二本鎖切断は、細胞死や染色体異常といった生物学的なendpointに深く関連し生物学的に重要な損傷と考えられてきた。そのため、二本鎖切断の生成効率,修復効率さらには修復過程やシグナル伝達に至るまで、これまでに膨大な研究の蓄積がある。一方、非二本鎖切断型クラスターDNA損傷も生物効果が高いと考えられていたにもかかわらず、その検出が難しいことから研究がなかなか進まなかった。しかしながら、検出法の進展に伴い、近年研究が活発に行われてきている。本稿では、非二本鎖切断型のクラスターDNA損傷が、(1)放射線によってどのくらい生成され、(2)どのようにプロセシングされるのか、(3)生物効果に関連するのか、という点に焦点を当てて研究の現状をまとめた。
横谷 明徳; 藤井 健太郎; 牛込 剛史; 鹿園 直哉; 漆原 あゆみ; 渡邊 立子
Radiation Protection Dosimetry, 122(1-4), p.86 - 88, 2006/12
被引用回数:13 パーセンタイル:64.53(Environmental Sciences)軟X線により誘発される、DNA損傷の収率を調べた。軟X線のLETは、線と超軟X線のそれの中間にある。通常のX線発生装置から得られる広いエネルギースペクトルを持つ軟X線は、放射線生物学実験のみならず乳がん検診にも広く用いられている。ICRPの勧告によれば、軟X線の放射線加重係数は
線のそれと同じ1とされている。しかし、そのエネルギースペクトル上には、制動放射により発生する数10keV以下の低エネルギー光子の成分がかなり多い。これらの低エネルギー光子は、光電効果により低速の光電子やAuger電子を多数発生させるためDNAに対してより高密度な電離・励起を与え、複雑なDNA損傷を誘発すると考えられる。われわれはWターゲット,150kVpで運転したX線発生装置より得られる軟X線をDNAに照射し、生じたDNAの鎖切断収率を定量した。さらに、塩基除去修復酵素との反応を利用して定量された塩基損傷の収率についても報告する予定である。
漆原 あゆみ; 鹿園 直哉; 渡辺 立子; 藤井 健太郎; O'Neill, P.*; 横谷 明徳
Radiation Protection Dosimetry, 122(1-4), p.163 - 165, 2006/12
被引用回数:4 パーセンタイル:29.81(Environmental Sciences)近年、電離放射線の照射によって複数の損傷が近接したクラスターDNA損傷が生じ、これが放射線による致死や突然変異誘発等の原因であると予想されている。われわれはクラスター損傷の性質を解明するために、ヘリウムイオンビームのLETを変えて(19, 63及び95keV/m)、高水和状態に保ったpUC18プラスミドDNAに照射し、生じた鎖切断(ssb, dsb)生成頻度及び、照射後の修復酵素(Nth, Fpg)処理によって生じる鎖切断生成頻度の測定を行った。その結果、ssb生成量はほとんど変化しなかったが、dsb生成量はLETに依存して増加した。また、各修復酵素処理後の鎖切断の増加量を比較したところ、LETの増加に伴う酵素修復効率の低下が見られた。以上の結果は、単独で存在していた損傷がLETの増加に伴って徐々に密集し、クラスター化していくことを示唆するものである。また、酵素による修復効率のLET依存的な低下の理由として、クラスター化した損傷の修復の困難さと、密集した損傷であることによる検出限界の二つの可能性が考えられる。
横谷 明徳; 鹿園 直哉; 漆原 あゆみ; 藤井 健太郎; 赤松 憲; 渡邊 立子
放射線生物研究, 40(2), p.168 - 184, 2005/06
放射線によるDNAへの作用と活性酸素(ROS)などの内因性ラジカルによる作用が大きく異なる点は、後者がラジカルの熱的拡散によるランダムヒット事象であるのに対し、前者は放射線の飛跡構造(トラック)に大きく依存することである。このような放射線による直接ヒットによるDNA損傷は、放射線のトラックに沿った微小領域に生じた複数の励起やイオン化を起点とする、いわゆるクラスター化して生じたDNA損傷を引き起こすと考えられるが、その化学構造を含めた実体及びこれに対する細胞中での修復作用機序については未だほとんど解明されていない。本稿では、クラスターDNA損傷研究の最近の動向とわれわれのグループが最近行っている実験の試みを紹介し、クラスターDNA損傷の生成機構と生体内での役割について考察する。
横谷 明徳; 漆原 あゆみ*; 藤井 健太郎; 鹿園 直哉
no journal, ,
われわれは、高密度電離放射線の照射により誘発される複雑なDNA損傷(クラスター損傷)の構造の解明を目指し、DNAの変性を利用する新しいアッセイ方法を開発した。照射したプラスミドDNAを、制限酵素(Hind III)で処理することで直鎖状にした後にホルムアミド(50% v/v)を加え、熱脆弱部位の切断が生じないよう37C, 5分間という穏やかな変性条件で処理することで1本鎖DNA(SS-DNA)にした。この後アガロース電気泳動法により放射線照射で切断されずに残存した無傷のSS-DNAの量を定量した。間接効果が支配的で1ヒット理論が十分適応できる希薄溶液試料に対してX線照射した場合には、予想通りDNAの方鎖だけが切断され相補鎖は無傷であることが、残存S S-DNAの線量効果曲線から結論された。講演では、本手法によるクラスターDNA損傷の直接観察への有効性を紹介する。
横谷 明徳; 鹿園 直哉; 漆原 あゆみ*; 藤井 健太郎
no journal, ,
放射線により誘発されるクラスターDNA損傷内の多重1本鎖切断を観測するため、DNA変性を利用した新しい定量法を開発した。本方法では、放射線照射されたDNAは1本鎖DNAに変性処理した後に分析される。多重1本鎖切断がDNA2重鎖の両鎖に分布し、かつ2本鎖切断に至らない場合には、アガロースゲル上の正常1本鎖DNAのバンド強度の、線量に依存した減少量を観測することで切断頻度が得られる。熱的処理による付加的なheat labile損傷を避けるため、変性処理は50%のフォルムアミドを加え37Cで行った。DNAの希薄溶液にX線を照射し1本鎖切断のほとんどがOHラジカルで生じる条件下で本実験系をテストしたところ、理論的に予測されるように閉環構造の線量効果曲線を利用するこれまでの手法で得られた線量効果曲線のちょうど1/2の傾きの1本鎖DNAの線量効果曲線が得られた。これにより、本方法の変性処理に起因するartifactによるDNA損傷は生じていないことが確認できたため、他の高LET放射線にもこの手法が適用できる見通しを得た。
野口 実穂; 漆原 あゆみ*; 横谷 明徳; 鹿園 直哉
no journal, ,
クラスターDNA損傷は12ヘリカルターン(10
20bp)に2個以上の損傷を生じたものと定義される。電離放射線により生成されるクラスターDNA損傷の中で二本鎖切断は細胞死や染色体異常に直結する損傷と考えられており、その生成効率や修復効率,修復過程やシグナル伝達に至るまで研究が進んでいる。しかし、非二本鎖切断型クラスター損傷においては高い生物効果が予測されるが、損傷の検出が難しく、研究がほとんど進んでいない。本研究では塩基損傷に鎖切断を伴う複雑な損傷について、2種のDNAグリコシラーゼを欠損した大腸菌株を用いて突然変異誘発を検討した。8-oxoGと相補鎖の鎖切断とによるクラスター損傷の場合、8-oxoG単独の損傷よりも突然変異誘発率が上昇した。しかし、8-oxoGと鎖切断とが同一鎖上にあるクラスター損傷では8-oxoG単独の損傷に比べ突然変異誘発率の顕著な上昇は認められなかった。以上から(1)8-oxoGと相補鎖の鎖切断の場合、相補鎖の鎖切断が8-oxoGの修復を阻害する。(2)同一鎖の場合、8-oxoGは鎖切断の修復に伴い除去されている可能性があることが考えられ、8-oxoGと鎖切断とのクラスター損傷では鎖切断が二本鎖のどちらに存在するかにより突然変異誘発率が大きく変化することが示唆された。
端 邦樹; 漆原 あゆみ; 山下 真一; 鹿園 直哉; 横谷 明徳; 勝村 庸介*
no journal, ,
一般的に、抗酸化物質に期待される照射直後の防護メカニズムはラジカルを除去する化学的プロセスであり、これまでにOHラジカルの捕捉やdGMPラジカルに対する還元作用(化学回復)が報告されている。本研究では、放射線DNA損傷のエダラボンによる化学回復の存在を証明することを目的とした。直接効果が無視できるほどの希薄水溶液の系を考えた場合、エダラボンのOHラジカル捕捉が唯一の防護プロセスであるならば、OHラジカルにより生成する一本鎖切断(SSB)と塩基損傷の収率は同じ比率で抑制される。もし化学回復が起こると、SSBに対する塩基損傷収率の比率は、DNAの立体構造とエダラボンの可触性の兼ね合いから変化する可能性がある。そこで、エダラボン添加によるDNA上のSSBと塩基損傷の比を調べた。エダラボンを添加した10ng/lの希薄プラスミドDNA水溶液に対して
線照射した後に、塩基損傷を酵素処理によって検出し電気泳動により各損傷を定量した。抗酸化剤添加に伴う各損傷の生成パターンの変化から抗酸化剤による化学回復の有無について調べた。測定の結果、塩基脱離部位(APサイト)と呼ばれる損傷に対してエダラボンが選択的に化学回復するということが示唆された。